勝手な未来
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その日はどうも、様子がおかしかった。
審神者がここに連れ去られてからというもの、彼らはそれが日常であるかのように穏やかな日々を過ごしていた。それは、まるで審神者の本丸での刀剣たちの様子をみているかのような、本当に何の変哲も無い日常の日々だった。
そんな日常の中に、突然現れた違和感。
朝、という時間なのかはわからないが、審神者が目覚めると、遡行軍たちはただ静かにそこにいた。
静かに、というといつもと変わらないように聞こえるかもしれない。彼らは言葉を発しない。ゆえに騒がしい、といったことは今までも当然なかったのだが、そういった音のうるささではなかった。
いつものような生活をやめ、ただ何をするでもなく、静かに佇むその姿は、まるで刀本来のそこに在るという姿そのもののように見えた。
「どうしたの……なにかあるの……?」
審神者のその問いに、答える声はもちろんない。いつもならば返事はなくとも何かしらの方法でそれを伝えてくれていた打刀も、今は目を閉じ、ただそこに存在していた。
「どういうこと?なんでなにも説明してくれないの?あなたたちは一体何なの……?」
答えがないことで、今まで抱いてきた疑問も含めて、湧き出るように言葉が溢れ出す。
「あなた達の修正しようとした歴史ってなに?私が関係しているの?」
彼らが歴史修正主義者であるということは、つまり何か修正したい歴史があったということ。そんな彼らが審神者に接触したということは、その歴史というのは審神者にも関わってくるものではないか。というのが、この数日で審神者が考えていたことだった。
だが、だとしたら、一体どんな歴史に自分が関わっているのか。自分を誘拐することで、歴史にどんな修正が加わるというのか。それはあくまで想像の域を出ないものでしかなかったが、修正されるような歴史となればきっと審神者の辿る運命は良いものではないのだというのは簡単に想像がついた。だからこそ、その真実を聞くことを今までしなかったのだ。
しかし、突然態度を変えた遡行軍たちに、審神者はもうなりふり構っていられなかった。
「ねえ、あなたたちは、一体どんな未来を知っているの?教えて……長谷部」
審神者は、一振りの刀の名前を口にした。
気づいていた。自分のよく知る刀剣に姿が重なっていたその打刀に、審神者はその名前を呼ぶ。するとどうだろうか。禍々しい遡行軍の姿をしていたはずの打刀は、見覚えのある整った顔立ちの刀に姿を変えていた。
「お気付きでしたか」
「気づくよ。他のみんなだって、そう……みんな、私の知っている刀だ」
本丸が姿を変える。
そこは見覚えのある場所で、確かに審神者の本丸だった。だが、審神者は知らない。こんな風に荒れ果ててしまった本丸を。
まるで、時間の流れから外れてしまったように、時が進まないここは、一体何なのか。
「時期に、ここは消えます」
長谷部が静かにつぶやく。
「長谷部達も……」
「ええ、消えます。安心してください、貴方は進むべき歴史に戻るのです」
進むべき歴史、という含んだ言い方に違和感を覚える。
「許して欲しいとはいいません。きっと貴方は怒るでしょうね。でも、俺たちの作った勝手な未来を生きてください……主」
そういって微笑んだ長谷部は、間違いなく、審神者の長谷部だった。だが、審神者の知らない何かを知っている。審神者の知る長谷部とは、少しだけ違う、そんな気がした。
「待って長谷部、あなたは────」
2019.5.3
審神者がここに連れ去られてからというもの、彼らはそれが日常であるかのように穏やかな日々を過ごしていた。それは、まるで審神者の本丸での刀剣たちの様子をみているかのような、本当に何の変哲も無い日常の日々だった。
そんな日常の中に、突然現れた違和感。
朝、という時間なのかはわからないが、審神者が目覚めると、遡行軍たちはただ静かにそこにいた。
静かに、というといつもと変わらないように聞こえるかもしれない。彼らは言葉を発しない。ゆえに騒がしい、といったことは今までも当然なかったのだが、そういった音のうるささではなかった。
いつものような生活をやめ、ただ何をするでもなく、静かに佇むその姿は、まるで刀本来のそこに在るという姿そのもののように見えた。
「どうしたの……なにかあるの……?」
審神者のその問いに、答える声はもちろんない。いつもならば返事はなくとも何かしらの方法でそれを伝えてくれていた打刀も、今は目を閉じ、ただそこに存在していた。
「どういうこと?なんでなにも説明してくれないの?あなたたちは一体何なの……?」
答えがないことで、今まで抱いてきた疑問も含めて、湧き出るように言葉が溢れ出す。
「あなた達の修正しようとした歴史ってなに?私が関係しているの?」
彼らが歴史修正主義者であるということは、つまり何か修正したい歴史があったということ。そんな彼らが審神者に接触したということは、その歴史というのは審神者にも関わってくるものではないか。というのが、この数日で審神者が考えていたことだった。
だが、だとしたら、一体どんな歴史に自分が関わっているのか。自分を誘拐することで、歴史にどんな修正が加わるというのか。それはあくまで想像の域を出ないものでしかなかったが、修正されるような歴史となればきっと審神者の辿る運命は良いものではないのだというのは簡単に想像がついた。だからこそ、その真実を聞くことを今までしなかったのだ。
しかし、突然態度を変えた遡行軍たちに、審神者はもうなりふり構っていられなかった。
「ねえ、あなたたちは、一体どんな未来を知っているの?教えて……長谷部」
審神者は、一振りの刀の名前を口にした。
気づいていた。自分のよく知る刀剣に姿が重なっていたその打刀に、審神者はその名前を呼ぶ。するとどうだろうか。禍々しい遡行軍の姿をしていたはずの打刀は、見覚えのある整った顔立ちの刀に姿を変えていた。
「お気付きでしたか」
「気づくよ。他のみんなだって、そう……みんな、私の知っている刀だ」
本丸が姿を変える。
そこは見覚えのある場所で、確かに審神者の本丸だった。だが、審神者は知らない。こんな風に荒れ果ててしまった本丸を。
まるで、時間の流れから外れてしまったように、時が進まないここは、一体何なのか。
「時期に、ここは消えます」
長谷部が静かにつぶやく。
「長谷部達も……」
「ええ、消えます。安心してください、貴方は進むべき歴史に戻るのです」
進むべき歴史、という含んだ言い方に違和感を覚える。
「許して欲しいとはいいません。きっと貴方は怒るでしょうね。でも、俺たちの作った勝手な未来を生きてください……主」
そういって微笑んだ長谷部は、間違いなく、審神者の長谷部だった。だが、審神者の知らない何かを知っている。審神者の知る長谷部とは、少しだけ違う、そんな気がした。
「待って長谷部、あなたは────」
2019.5.3