一章
名前変換
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「……くん、主君!おはようございます」
随分と気持ちのいい声だ、一体誰の声だろう。
「主君、朝ですよ。起きてください」
「うぅん……起きるー……」
とは言っても体は動かない。もぞもぞと寝返りを打ってはみたが、まだ布団の中だ。
「朝食の準備ができてますよ」
朝食、その言葉でハッと覚醒する。
「やっば……!!寝坊した!!」
本来ならば、目覚ましの音で目を覚ますはずだったのだ。しかし、実際に起きたのは前田さんの声だった。
「い、今何時!?」
「6時半です」
やってしまった。本来なら5時には起きて、朝ごはんの準備を済ませているはずだったのだ。しかし、今は6時半。実に1時間半の大寝坊だ。
鶴丸さんに手伝いを頼んでおいてこの有様だ。情けないにもほどがある。
「前田さん、すみません……すぐに着替えるので、そしたらご飯を……」
今日は遅刻確定かもしれない。審神者と学業、どちらもやろうと決めた矢先にこれだ。自分が嫌になるが、落ち込んでいてもしょうがない。まずは準備だ。
「朝食でしたら、もう用意はできていますよ」
「……へ?」
先に行っています、という前田さんに遅れて、着替えを済ませて下へ降りれば、確かに味噌汁の香りがする。
「おーっと、君があんまりにも遅いから完成してしまったぜ!驚いたか?」
鶴丸さんがお皿を持って現れる。そこには不恰好ではあるが、美味しそうに焼けた卵焼きが乗っている。
「まったく、いいご身分ですね。朝からあの人の大声で起こされるこっちの身にもなってもらいたいものです」
機嫌が悪そうなのは宗三さんだ。その後ろには弟の小夜さんが控えている。2人ともお盆にご飯と味噌汁を乗せて配膳の手伝いをしているようだ。
「兄様は朝が弱いから……でも、僕もびっくりしたよ」
「俺もだぜー!起きたら小夜が今にも鶴丸に飛びかかろうとしてるんだもんなー」
「ぼ、僕もびっくりしました。虎くんたちも……」
どうやらみんなを起こすために、鶴丸さんが朝から驚きをもたらしたらしい。非難轟々だ。
文句を言って、言われながら、着々と食卓には用意が並んでいく。
「あの、鶴丸さん。みなさんも。その、私寝坊しちゃって……」
言い訳にしかならないが、さきほど確認したら目覚ましは時刻をセットしただけでオンになっていなかったのだ。朝が苦手な私が自然に起きれるわけもなく、自業自得ではあるが納得の寝坊だった。
「すみません、早速失態を……」
「別に、飯を用意するのはあんたの仕事ってわけじゃないだろ」
広間の入り口に立ったままだった私の後ろに現れたのは山姥切さんだ。彼で全員が揃ったらしい。
「主君、こちらへどうぞ」
前田さんが席を指し示してくれる。。配膳を終えて、みんなも各々席につきだす。
「あの、私……」
誰も私の寝坊を咎めるようなことは言ってこないが、それでもこちらは罪の意識でいっぱいだ。平気な顔をして食卓につくことができずに、立ち尽くしてしまう。
「あんたが席につかないと始まらないだろう」
そんな私の腕を引いたのは山姥切さんだ。
「あるじさまー!みてください!ぼくもおてつだいしたんですよ!」
「僕もです!主さまに喜んでもらいたくて!」
短刀たちがにこにこと自分が手伝ったであろうおかずの乗ったお皿を見せてくれる。
「朝からみんな張り切って、大盛り上がりだったんだぜ、大将」
「そうじゃ。そんな顔しとったらいかんぜよ?」
陸奥守さんがニッ、と自分の頬を押し上げてみせる。
「あの、みなさん。ありがとう、ございます!」
素直な感謝の気持ちを伝えて笑って見せると、それだけでみんなまで笑顔になってくれる。
「ほめられちゃいましたね!」
「ま、また、お手伝いします……!」
「みんな君のためならとすすんで手伝ってくれたんだ。君が全部背負いすぎることはないさ」
隣に腰を下ろした鶴丸さんがぽんと背中を叩く。じんわりとした暖かさが胸に広がり、何かがこみ上げてくるようだ。
「よーし、冷めないうちに食べるぞ!」
そう言って、鶴丸さんがこちらに目線を投げかける。なるほど、合点がいった。
「それじゃ、……いただきます!」
「いただきます」と私に続いて手を合わせたみんなの声が揃う。彼らのおかげで気分は一転、最高の朝だ。
まだ審神者になってほんの1日の新米だが、私にもわかることがある。私はこの刀たちが好きだ。主として、慕ってくれるからというのはもちろんある。でもそれだけではない。
彼らの優しさに触れてわかった。彼らは人の形をとっただけのモノではない。確かに暖かいのだ。
きっとこれから、審神者として彼らを支えて、彼らに支えられて頑張っていけるのだと、そう確信できた朝だった。
随分と気持ちのいい声だ、一体誰の声だろう。
「主君、朝ですよ。起きてください」
「うぅん……起きるー……」
とは言っても体は動かない。もぞもぞと寝返りを打ってはみたが、まだ布団の中だ。
「朝食の準備ができてますよ」
朝食、その言葉でハッと覚醒する。
「やっば……!!寝坊した!!」
本来ならば、目覚ましの音で目を覚ますはずだったのだ。しかし、実際に起きたのは前田さんの声だった。
「い、今何時!?」
「6時半です」
やってしまった。本来なら5時には起きて、朝ごはんの準備を済ませているはずだったのだ。しかし、今は6時半。実に1時間半の大寝坊だ。
鶴丸さんに手伝いを頼んでおいてこの有様だ。情けないにもほどがある。
「前田さん、すみません……すぐに着替えるので、そしたらご飯を……」
今日は遅刻確定かもしれない。審神者と学業、どちらもやろうと決めた矢先にこれだ。自分が嫌になるが、落ち込んでいてもしょうがない。まずは準備だ。
「朝食でしたら、もう用意はできていますよ」
「……へ?」
先に行っています、という前田さんに遅れて、着替えを済ませて下へ降りれば、確かに味噌汁の香りがする。
「おーっと、君があんまりにも遅いから完成してしまったぜ!驚いたか?」
鶴丸さんがお皿を持って現れる。そこには不恰好ではあるが、美味しそうに焼けた卵焼きが乗っている。
「まったく、いいご身分ですね。朝からあの人の大声で起こされるこっちの身にもなってもらいたいものです」
機嫌が悪そうなのは宗三さんだ。その後ろには弟の小夜さんが控えている。2人ともお盆にご飯と味噌汁を乗せて配膳の手伝いをしているようだ。
「兄様は朝が弱いから……でも、僕もびっくりしたよ」
「俺もだぜー!起きたら小夜が今にも鶴丸に飛びかかろうとしてるんだもんなー」
「ぼ、僕もびっくりしました。虎くんたちも……」
どうやらみんなを起こすために、鶴丸さんが朝から驚きをもたらしたらしい。非難轟々だ。
文句を言って、言われながら、着々と食卓には用意が並んでいく。
「あの、鶴丸さん。みなさんも。その、私寝坊しちゃって……」
言い訳にしかならないが、さきほど確認したら目覚ましは時刻をセットしただけでオンになっていなかったのだ。朝が苦手な私が自然に起きれるわけもなく、自業自得ではあるが納得の寝坊だった。
「すみません、早速失態を……」
「別に、飯を用意するのはあんたの仕事ってわけじゃないだろ」
広間の入り口に立ったままだった私の後ろに現れたのは山姥切さんだ。彼で全員が揃ったらしい。
「主君、こちらへどうぞ」
前田さんが席を指し示してくれる。。配膳を終えて、みんなも各々席につきだす。
「あの、私……」
誰も私の寝坊を咎めるようなことは言ってこないが、それでもこちらは罪の意識でいっぱいだ。平気な顔をして食卓につくことができずに、立ち尽くしてしまう。
「あんたが席につかないと始まらないだろう」
そんな私の腕を引いたのは山姥切さんだ。
「あるじさまー!みてください!ぼくもおてつだいしたんですよ!」
「僕もです!主さまに喜んでもらいたくて!」
短刀たちがにこにこと自分が手伝ったであろうおかずの乗ったお皿を見せてくれる。
「朝からみんな張り切って、大盛り上がりだったんだぜ、大将」
「そうじゃ。そんな顔しとったらいかんぜよ?」
陸奥守さんがニッ、と自分の頬を押し上げてみせる。
「あの、みなさん。ありがとう、ございます!」
素直な感謝の気持ちを伝えて笑って見せると、それだけでみんなまで笑顔になってくれる。
「ほめられちゃいましたね!」
「ま、また、お手伝いします……!」
「みんな君のためならとすすんで手伝ってくれたんだ。君が全部背負いすぎることはないさ」
隣に腰を下ろした鶴丸さんがぽんと背中を叩く。じんわりとした暖かさが胸に広がり、何かがこみ上げてくるようだ。
「よーし、冷めないうちに食べるぞ!」
そう言って、鶴丸さんがこちらに目線を投げかける。なるほど、合点がいった。
「それじゃ、……いただきます!」
「いただきます」と私に続いて手を合わせたみんなの声が揃う。彼らのおかげで気分は一転、最高の朝だ。
まだ審神者になってほんの1日の新米だが、私にもわかることがある。私はこの刀たちが好きだ。主として、慕ってくれるからというのはもちろんある。でもそれだけではない。
彼らの優しさに触れてわかった。彼らは人の形をとっただけのモノではない。確かに暖かいのだ。
きっとこれから、審神者として彼らを支えて、彼らに支えられて頑張っていけるのだと、そう確信できた朝だった。