一章
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「俺らの主は随分ご機嫌じゃないか」
「久しぶりの現世が楽しみなんでしょ。ここ最近、ずっと頑張ってたもんね」
「ふーん、俺らのことなんかどうでもいいってか?ひどいな、主は」
「ちょっと遊びに行くだけじゃないですか!なんでそんな罪悪感を煽るような言い方するんですか!」
肩を組むようにしてそう言ってくる鶴丸さんの腕を払い退ける。どうせいつものようにからかって楽しみたいんだろうが、そういうめんどくさい絡み方は勘弁してほしい。
「ちょっとなんていって、帰ってこなかったらずっと呪ってやるからな……」
「神様からの呪いって冗談抜きで怖いんですけど……本気っぽいトーンで言うのやめてくださいよ」
「あー、もう。めんどくさいおじいさんは散った散った!ねえ主、オシャレするなら手伝わせてよ!俺、主の爪塗らせてほしいなぁ」
鶴丸さんを押しのけて、加州さんがそばに寄ってくる。
時刻は7時過ぎ。夕飯を終えて、みんな思い思いにくつろいでいる時間だ。明日のお出かけに備えて、やらなければいけないことは終わらせている。せっかくだし加州さんにお願いしようか。
「加州さん、お願いしてもいい?春らしい可愛い色だと嬉しいなぁ」
季節は春。本丸の庭に咲く桜の木もちょうど見頃を迎えている。近いうちにみんなでお花見をするのもいいかもしれない。
「おっけーおっけー!任せて!俺、部屋に道具取りに行ってくるね!」
バタバタと加州さんが出て行く。
「加州くんってば嬉しそうだね」
「ですね、あんなに喜ばれるとこっちまで嬉しくなりますね」
「めかし込んだりして、そんなに楽しみか」
加州さんに押しのけられて、鶴丸さんは膝を抱えていじけた子供みたいになっている。
「そんなに楽しいのか現世は。俺だって行ってみたいなぁ」
「鶴丸さん、一番言いたかったのそれでしょ。連れて行けませんからね」
本音が漏れている鶴丸さんに釘を刺す。驚きを求める彼のことだ。現世に興味を持つのはよくわかるが、政府が指定する時間以外への刀剣男士の出陣はできない。そうでなくても、友人たちとの集まりに鶴丸さんを連れて行くなんてしないが。
「おまたせ、主。やっぱり春だから、ピンクが可愛いかなって思うんだけどどう?」
「うん、それがいい!お願いします」
加州さんが可愛らしいマニキュアを取り出して、丁寧に爪に塗ってくれる。その手つきは慣れたもので、とても綺麗なうえに仕事が早い。
「明日はお友達と何するのー?」
退屈させないように、会話を振るのも完璧だ。まるでプロのネイリストさんだ。
「明日は私の誕生日だから、みんながケーキ用意してくれるんだって。手作りらしくて、めちゃくちゃ楽しみなの」
「え、今なんて?」
ピタリと手の動きを止めて、加州さんが顔を上げた。
「手作りらしくて楽しみ……?」
「その前、その前!」
「明日は私の誕生日だから……」
「え!!主の誕生日、明日なの!?」
加州さんが大声を上げる。その声は周りにも届いていたようで、みんなが反応する。
「ちょっと待ってよ!俺そんなの聞いてないよ! ?」
「うん、言ってなかったっけ……?」
「聞いてない!ねえ、ちょっと、みんな知ってたの!?」
加州さんが周りに問いかけるが、誰も知っているものはいなかった。
それもそうだ。誰かと特別その話題になったような覚えはないし、そうでない限り自分の誕生日なんて言っていないはずだ。
案の定、周りからも「知らなかった!」と声が上がる。
「なんで教えてくれなかったの!?」
「や、聞かれなかったし……」
「もー……主ってそういうとこある……」
うなだれる加州さん。しかしそんなにも落ち込む必要はあるだろうか。
「とりあえず、爪、終わらせちゃうね……」
それでもしっかり最後までやってくれるのはプロ意識が高い。プロではないが。
「はぁ……どうしよっかなぁ」
そう独り言のようにつぶやいたのが、一体なんのことかはわからなかったが、彼はそのまま作業を続けるものだから、結局尋ねることはしなかった。その一言が今夜私の知らないところで動き始めることにきっかけになるとは知らずに。
2019.4.15
「久しぶりの現世が楽しみなんでしょ。ここ最近、ずっと頑張ってたもんね」
「ふーん、俺らのことなんかどうでもいいってか?ひどいな、主は」
「ちょっと遊びに行くだけじゃないですか!なんでそんな罪悪感を煽るような言い方するんですか!」
肩を組むようにしてそう言ってくる鶴丸さんの腕を払い退ける。どうせいつものようにからかって楽しみたいんだろうが、そういうめんどくさい絡み方は勘弁してほしい。
「ちょっとなんていって、帰ってこなかったらずっと呪ってやるからな……」
「神様からの呪いって冗談抜きで怖いんですけど……本気っぽいトーンで言うのやめてくださいよ」
「あー、もう。めんどくさいおじいさんは散った散った!ねえ主、オシャレするなら手伝わせてよ!俺、主の爪塗らせてほしいなぁ」
鶴丸さんを押しのけて、加州さんがそばに寄ってくる。
時刻は7時過ぎ。夕飯を終えて、みんな思い思いにくつろいでいる時間だ。明日のお出かけに備えて、やらなければいけないことは終わらせている。せっかくだし加州さんにお願いしようか。
「加州さん、お願いしてもいい?春らしい可愛い色だと嬉しいなぁ」
季節は春。本丸の庭に咲く桜の木もちょうど見頃を迎えている。近いうちにみんなでお花見をするのもいいかもしれない。
「おっけーおっけー!任せて!俺、部屋に道具取りに行ってくるね!」
バタバタと加州さんが出て行く。
「加州くんってば嬉しそうだね」
「ですね、あんなに喜ばれるとこっちまで嬉しくなりますね」
「めかし込んだりして、そんなに楽しみか」
加州さんに押しのけられて、鶴丸さんは膝を抱えていじけた子供みたいになっている。
「そんなに楽しいのか現世は。俺だって行ってみたいなぁ」
「鶴丸さん、一番言いたかったのそれでしょ。連れて行けませんからね」
本音が漏れている鶴丸さんに釘を刺す。驚きを求める彼のことだ。現世に興味を持つのはよくわかるが、政府が指定する時間以外への刀剣男士の出陣はできない。そうでなくても、友人たちとの集まりに鶴丸さんを連れて行くなんてしないが。
「おまたせ、主。やっぱり春だから、ピンクが可愛いかなって思うんだけどどう?」
「うん、それがいい!お願いします」
加州さんが可愛らしいマニキュアを取り出して、丁寧に爪に塗ってくれる。その手つきは慣れたもので、とても綺麗なうえに仕事が早い。
「明日はお友達と何するのー?」
退屈させないように、会話を振るのも完璧だ。まるでプロのネイリストさんだ。
「明日は私の誕生日だから、みんながケーキ用意してくれるんだって。手作りらしくて、めちゃくちゃ楽しみなの」
「え、今なんて?」
ピタリと手の動きを止めて、加州さんが顔を上げた。
「手作りらしくて楽しみ……?」
「その前、その前!」
「明日は私の誕生日だから……」
「え!!主の誕生日、明日なの!?」
加州さんが大声を上げる。その声は周りにも届いていたようで、みんなが反応する。
「ちょっと待ってよ!俺そんなの聞いてないよ! ?」
「うん、言ってなかったっけ……?」
「聞いてない!ねえ、ちょっと、みんな知ってたの!?」
加州さんが周りに問いかけるが、誰も知っているものはいなかった。
それもそうだ。誰かと特別その話題になったような覚えはないし、そうでない限り自分の誕生日なんて言っていないはずだ。
案の定、周りからも「知らなかった!」と声が上がる。
「なんで教えてくれなかったの!?」
「や、聞かれなかったし……」
「もー……主ってそういうとこある……」
うなだれる加州さん。しかしそんなにも落ち込む必要はあるだろうか。
「とりあえず、爪、終わらせちゃうね……」
それでもしっかり最後までやってくれるのはプロ意識が高い。プロではないが。
「はぁ……どうしよっかなぁ」
そう独り言のようにつぶやいたのが、一体なんのことかはわからなかったが、彼はそのまま作業を続けるものだから、結局尋ねることはしなかった。その一言が今夜私の知らないところで動き始めることにきっかけになるとは知らずに。
2019.4.15