一章
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「へぇー、お二人は沖田総司の刀だったんだ」
新たにやってきた加州さんと大和守さん。さすがに私でも聞いたことがある、新撰組の沖田総司。その沖田総司の刀だったらしい。2人同時にやってくるなんて、なにか運命的なものを感じる。
「あ、じゃあちょうど2人部屋でよさそうだね!」
出陣した時に持ち帰られた乱さんで、ちょうど4人の部屋がうまった。元の主が同じという縁があるし、2人で部屋を使ってもらうのが良さそうだ。
「なになに、俺たち同じ部屋なの?」
「えー、清光と一緒ー?」
部屋へと案内する道すがら、後ろでは2人がなにやら言い争っている。内容を聞く限り、仲が悪いわけではなさそうだが、2人部屋でいいのだろうか?
「ここが2人の部屋ね。相談して、中は好きに使っていいよ」
「え!ここを好きに使っていいの!?わぁー、主ありがとっ!」
嬉しそうに部屋を見て回る加州さんに「僕も使うんだからな」と文句を言いつつも、同じように押入れを覗いたりする大和守さん。同じ主に使われていたのもあってか、似た者同士なのかもしれない。
「何か必要なものがあれば言ってね。全部は無理だけど、なるべく用意するから」
刀剣たちからの要望はなるべく聞きたいとは思っている。審神者として働いた分の報酬は、できる限りこの本丸のみんなのために使いたい。
「ありがと。俺、主のためにいっぱい可愛くするね。だから、たくさん使って」
ぎゅ、っと握られた手にはかなりの力が入っている。にこりと可愛らしく浮かべた笑顔とは対照的だ。
「えっと、加州さんは十分可愛いと思うよ。その爪とか、おしゃれさんだね」
目に付いたそれを褒めると、彼の顔が一気に華やいだ。
「え!ほんと?これ、気に入ってるんだ。あ、主にもやってあげようか?」
私の手をとって、ニコニコと期待の目で見られてしまうとどうにも断りにくい。校則でマニキュアは禁止されているから、してもらってもすぐに落とさなければいけない。でも楽しそうな加州さんに水を差すのも気が引けてしまう。
「ちょっと、主困ってるじゃん」
返事につまった私を見て大和守さんが加州さんの肩を引いた。
「あ、ご、ごめんね、主……」
すぐにしゅんとしてしまう加州さん。そうも落ち込まれてしまうと、罪悪感がわいてしまう。別に嫌だったわけじゃないので、誤解はしないでもらいたい。
「ご、ごめんね?学校で禁止されてるから……あ!足、足の爪ならばれないかも!どうかな?」
なんとか加州さんをなぐさめようとして、我ながらいい妥協案を思いついたと思う。加州さんの顔が再びパッと明るくなった。
「いいの?じゃあ俺がとびっきり可愛くしてあげるね!」
部屋に戻り、買ったもののほとんど使わないままだったマニキュアをいくつか取り出す。加州さんはそれらを見比べて、その中から可愛らしいピンクのものを選んだ。
「はい、じゃあ足出して」
正面に座って「ほら」っと手で足を出すように催促する加州さん。今更だが、この格好はなかなかに恥ずかしいかもしれない。しかし、自分から提案した手前、今更断るのもいかがなものだろうか。
「お、おねがい……します」
観念して恐る恐る彼の前に足を出す。ガシッと足首を掴まれて彼の方に引き寄せられる。普段掴まれることのない場所への慣れない感覚に、反射的に足を引っ込めたくなるが、彼がそれを許してくれない。
「だーめ!主、じっとしてて?」
そういいながらも彼が顔を上げることはない。真剣そのものといった顔で爪に色を乗せていく。あまりにも真面目な彼の様子に、私の方も影響されてしまい、おとなしくその仕事の様子を見守ることにする。
最後の小指の爪を塗り終え、ふぅっと息を長めに吐き出した。
「うん、いい感じ!主可愛いっ!」
仕上がりは完璧だ。自分でやるときとは比べものにならないくらいに上手い。
「わぁっ……加州さんありがとう!」
普段はあまりこういうことはしないが、それでもこれだけ綺麗に塗ってもらうとテンションが上がってしまう。まだ裸足で靴を履くには早い時期なのが惜しい。
「あ、まだじっとしててね。乾いてないから」
ふーっと足に息を吹きかけられると少しくすぐったい。
「主はさー、可愛いのとか綺麗なの、好き?」
突然の質問に意図がつかめない。
「うん?人並みには好きだと思うよ。こういうのもあんまりやらないけど、好きだしね」
「そっかー。じゃあさ、俺可愛くしてるから大事にしてね」
さっき、加州さんたちの部屋でも似たようなことを言っていたような気がする。彼がやたら可愛いことにこだわるのは、主人である私に大事にしてもらうためなんだろうか。
加州さんは十分可愛い見た目をしていると思うし、可愛くないから、という理由で彼を捨てるようなことは絶対にないだろう。でも、それで加州さんに可愛くしている必要はない、というのは何か違う気がする。
彼が使われるために努力をするというなら、私は主としてそれを汲んであげるべきではないだろうか。
「うん。大事にするから、いっぱい活躍してね」
「本当?任せて!俺主のためにがんばるから」
パッと華やいだ顔で笑う加州さんは可愛い。使って欲しいと思ってくれる刀の期待に応えられるよう、私も使い方というのを磨かなければならない。そう改めて決意させられた。
「主、いるか?」
ふと、部屋の外から声がかかる。この声は山姥切さんだ。
「いますよー、どうぞ」
襖が開いて、布に包まれた彼が姿を見せる。
「明日からの部隊編成についてなんだが……加州?」
なぜ彼がここにいるのか、といった目で加州さんを見やる。
「やっほー、山姥切。ねぇ見てよ、主可愛いでしょ?」
それに気づいてか気づかずか、私の足を持ち上げて山姥切さんに見せる。それだけでは合点がいかないのか、山姥切さんはまだ疑問がありそうな顔をしている。
「なんだ?色をつけたのか?なんの意味があるんだ?」
予想できた反応だ。山姥切さんにとっては馴染みのないものだろうし、爪に色をつけて何になると言われればただ見た目が華やかになるだけだ。意味を求められては何も言うことはない。
「ちょっ、もっと褒めたりとかないわけぇ!?」
なぜか私よりも納得いかない様子の加州さんが山姥切さんに食ってかかる。私はあまり気にしていないのだが、せっかくの仕事を評価されないのは気に食わなかったのかもしれない。
「主はさぁ、女の子なんだよ?可愛くしてたら褒める!そしたらもっと可愛くなるのに……」
「う、写しには着飾ったりなんだのはわからな……」
「そういうの関係ないから。だいたいその布さぁ……」
なぜか山姥切さんの布に飛び火した加州さんの可愛い語りは、一緒に部屋を出て行った山姥切さんを相手にしばらく続いたらしい。その山姥切さんは部隊編成が、とか言っていた気がするがそのまま部屋を出て行ってしまった。またあとで彼を見かけたら声をかけてみようか。
2019.2.13
新たにやってきた加州さんと大和守さん。さすがに私でも聞いたことがある、新撰組の沖田総司。その沖田総司の刀だったらしい。2人同時にやってくるなんて、なにか運命的なものを感じる。
「あ、じゃあちょうど2人部屋でよさそうだね!」
出陣した時に持ち帰られた乱さんで、ちょうど4人の部屋がうまった。元の主が同じという縁があるし、2人で部屋を使ってもらうのが良さそうだ。
「なになに、俺たち同じ部屋なの?」
「えー、清光と一緒ー?」
部屋へと案内する道すがら、後ろでは2人がなにやら言い争っている。内容を聞く限り、仲が悪いわけではなさそうだが、2人部屋でいいのだろうか?
「ここが2人の部屋ね。相談して、中は好きに使っていいよ」
「え!ここを好きに使っていいの!?わぁー、主ありがとっ!」
嬉しそうに部屋を見て回る加州さんに「僕も使うんだからな」と文句を言いつつも、同じように押入れを覗いたりする大和守さん。同じ主に使われていたのもあってか、似た者同士なのかもしれない。
「何か必要なものがあれば言ってね。全部は無理だけど、なるべく用意するから」
刀剣たちからの要望はなるべく聞きたいとは思っている。審神者として働いた分の報酬は、できる限りこの本丸のみんなのために使いたい。
「ありがと。俺、主のためにいっぱい可愛くするね。だから、たくさん使って」
ぎゅ、っと握られた手にはかなりの力が入っている。にこりと可愛らしく浮かべた笑顔とは対照的だ。
「えっと、加州さんは十分可愛いと思うよ。その爪とか、おしゃれさんだね」
目に付いたそれを褒めると、彼の顔が一気に華やいだ。
「え!ほんと?これ、気に入ってるんだ。あ、主にもやってあげようか?」
私の手をとって、ニコニコと期待の目で見られてしまうとどうにも断りにくい。校則でマニキュアは禁止されているから、してもらってもすぐに落とさなければいけない。でも楽しそうな加州さんに水を差すのも気が引けてしまう。
「ちょっと、主困ってるじゃん」
返事につまった私を見て大和守さんが加州さんの肩を引いた。
「あ、ご、ごめんね、主……」
すぐにしゅんとしてしまう加州さん。そうも落ち込まれてしまうと、罪悪感がわいてしまう。別に嫌だったわけじゃないので、誤解はしないでもらいたい。
「ご、ごめんね?学校で禁止されてるから……あ!足、足の爪ならばれないかも!どうかな?」
なんとか加州さんをなぐさめようとして、我ながらいい妥協案を思いついたと思う。加州さんの顔が再びパッと明るくなった。
「いいの?じゃあ俺がとびっきり可愛くしてあげるね!」
部屋に戻り、買ったもののほとんど使わないままだったマニキュアをいくつか取り出す。加州さんはそれらを見比べて、その中から可愛らしいピンクのものを選んだ。
「はい、じゃあ足出して」
正面に座って「ほら」っと手で足を出すように催促する加州さん。今更だが、この格好はなかなかに恥ずかしいかもしれない。しかし、自分から提案した手前、今更断るのもいかがなものだろうか。
「お、おねがい……します」
観念して恐る恐る彼の前に足を出す。ガシッと足首を掴まれて彼の方に引き寄せられる。普段掴まれることのない場所への慣れない感覚に、反射的に足を引っ込めたくなるが、彼がそれを許してくれない。
「だーめ!主、じっとしてて?」
そういいながらも彼が顔を上げることはない。真剣そのものといった顔で爪に色を乗せていく。あまりにも真面目な彼の様子に、私の方も影響されてしまい、おとなしくその仕事の様子を見守ることにする。
最後の小指の爪を塗り終え、ふぅっと息を長めに吐き出した。
「うん、いい感じ!主可愛いっ!」
仕上がりは完璧だ。自分でやるときとは比べものにならないくらいに上手い。
「わぁっ……加州さんありがとう!」
普段はあまりこういうことはしないが、それでもこれだけ綺麗に塗ってもらうとテンションが上がってしまう。まだ裸足で靴を履くには早い時期なのが惜しい。
「あ、まだじっとしててね。乾いてないから」
ふーっと足に息を吹きかけられると少しくすぐったい。
「主はさー、可愛いのとか綺麗なの、好き?」
突然の質問に意図がつかめない。
「うん?人並みには好きだと思うよ。こういうのもあんまりやらないけど、好きだしね」
「そっかー。じゃあさ、俺可愛くしてるから大事にしてね」
さっき、加州さんたちの部屋でも似たようなことを言っていたような気がする。彼がやたら可愛いことにこだわるのは、主人である私に大事にしてもらうためなんだろうか。
加州さんは十分可愛い見た目をしていると思うし、可愛くないから、という理由で彼を捨てるようなことは絶対にないだろう。でも、それで加州さんに可愛くしている必要はない、というのは何か違う気がする。
彼が使われるために努力をするというなら、私は主としてそれを汲んであげるべきではないだろうか。
「うん。大事にするから、いっぱい活躍してね」
「本当?任せて!俺主のためにがんばるから」
パッと華やいだ顔で笑う加州さんは可愛い。使って欲しいと思ってくれる刀の期待に応えられるよう、私も使い方というのを磨かなければならない。そう改めて決意させられた。
「主、いるか?」
ふと、部屋の外から声がかかる。この声は山姥切さんだ。
「いますよー、どうぞ」
襖が開いて、布に包まれた彼が姿を見せる。
「明日からの部隊編成についてなんだが……加州?」
なぜ彼がここにいるのか、といった目で加州さんを見やる。
「やっほー、山姥切。ねぇ見てよ、主可愛いでしょ?」
それに気づいてか気づかずか、私の足を持ち上げて山姥切さんに見せる。それだけでは合点がいかないのか、山姥切さんはまだ疑問がありそうな顔をしている。
「なんだ?色をつけたのか?なんの意味があるんだ?」
予想できた反応だ。山姥切さんにとっては馴染みのないものだろうし、爪に色をつけて何になると言われればただ見た目が華やかになるだけだ。意味を求められては何も言うことはない。
「ちょっ、もっと褒めたりとかないわけぇ!?」
なぜか私よりも納得いかない様子の加州さんが山姥切さんに食ってかかる。私はあまり気にしていないのだが、せっかくの仕事を評価されないのは気に食わなかったのかもしれない。
「主はさぁ、女の子なんだよ?可愛くしてたら褒める!そしたらもっと可愛くなるのに……」
「う、写しには着飾ったりなんだのはわからな……」
「そういうの関係ないから。だいたいその布さぁ……」
なぜか山姥切さんの布に飛び火した加州さんの可愛い語りは、一緒に部屋を出て行った山姥切さんを相手にしばらく続いたらしい。その山姥切さんは部隊編成が、とか言っていた気がするがそのまま部屋を出て行ってしまった。またあとで彼を見かけたら声をかけてみようか。
2019.2.13