一章
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朝食を終え、時刻は7時すぎだ。
食器の片付けを買って出てくれた彼らに任せ、私は山姥切さんと2人、鍛刀部屋に来ていた。
審神者がこなすべき日課のうちの1つだ。
「うーん、どうしよう。いっぱい入れればいいってものでもないみたいだけど……」
昨日、何度か鍛刀をしてわかったのは、たくさん資材をつぎ込めばそれなりに大きな刀が作れるということだ。それはなんとなくだが、もともとわかっていたことでもある。
それに加えて、量と出来上がる刀の関係は明確にはわからないということも、収穫の1つだ。
つまり、たくさん入れたからといって、太刀や大太刀が来るわけではないのだ。
まだまだ見ない刀剣が多いこの本丸において、今狙うべきはまだ顕現していない新しい刀剣男士だろう。そうなると、ひたすらに大量の資材をつぎ込むのはあまり効率の良いこととは思えない。
「これでお願いします」
昨日に比べて、全体的に量を減らして依頼する。この後はしばらく戻ってくることができないので、手伝い札は使わずに、鍛刀部屋を後にした。
「今日の指示を出すので、このまま執務室まで来てもらってもいい?」
「ああ、問題ない」
黙って私の後をついて歩く山姥切さんに一応確認を取る。
彼は『近侍』という役職についてもらっている。マニュアルによれば、審神者のそばについて業務をこなす、言ってしまえば秘書のようなものだろうか。
本丸を開ける前に、彼に伝達事項を伝え、不在の間の指揮をとってもらうことにした。
審神者の指揮なく、出陣させることはできないようなので、不在の間はいくつかの部隊に分けて遠征に行ってもらうことにする。そこで資材を調達するシステムのようだ。
また、今後のことを考え、部屋割り、当番などを決めてもらう。これからどんどん人数が増えていく本丸で、最初から躓いていてはいつまでも統率が取れないままだ。早いうちに解決しなければいけない問題だろう。
それらのことを山姥切さんに伝え、決まったことはまとめて報告してもらうことにする。
「何時頃に帰るんだ?」
「うーんと、今日は16時くらいかなぁ。なるべく早く帰るようにはするね」
仕方ないとはいえ、あまり長くは本丸を空けたくない。きっとみんなは私がいなくてもしっかりやってくれるだろうし、そこは心配していないが、私自身が審神者として、しっかりここで仕事をこなしたいと思うのだ。
「……なぁあんた。別に無理に写しなんかをそばに置いておく必要もないんだぞ」
ふと、山姥切さんがぽつりとつぶやく。
「俺は初期刀かもしれないが、別にだからと言って近侍にしなければいけないわけでもないだろう」
こちらを見ないまま、彼はそう言った。
「山姥切さんは近侍のお仕事、嫌?」
「そういうんじゃない。ただ、俺に構う必要はないと言っているんだ。あんただって、話しやすい他の奴らのほうがやりやすいんじゃないか?」
やはり顔を伏せたまま、そう言う彼の本心はどこにあるのだろうか。自分を『写し』だという時の彼の顔はどこか寂しげだ。彼が一体何を気にしているのか、私にはわからない。
「写しであることっていうのは、刀にとっては重要なことなの?私にはよくわかんない。だから、山姥切さんを写しだからって目で見てないし……ごめん、そもそも写しって何かよくわかんないや」
彼を励ましたくて、しかしうまく言葉が出てこない。なんとか、写しというのを気にしてはいないと伝えたかったのだが、そもそも写しとはなんなのか理解していない。真似とかそういうニュアンスなんだろうとは思うのだが、やはりはっきりわからないので、結果的に締まりのない感じになってしまった。
「……そうか。いや、ならいいんだ。あんたの命令なら仕事はやる」
少し面食らったような顔は、知識がないことに対してだろうか。刀のない時代に生きているのだから、そこらへんは勘弁してほしい。だが、写しだということを気にしたことがないというのは伝わったらしい。
命令、といわれるとそこまで大層なものではないのだが、それでも彼がやる気になってくれたようで嬉しい。
「じゃあ、私の不在中お願いね」
「あぁ……期待はするな」
「あーるじ!いるかい?」
廊下から顔を覗かせたのは鶴丸さんだ。
「どうかしました?」
バタバタと聞こえた足音からして、急いでいたように思う。何か緊急の用でもあったのだろうか。
「いや、片付けが終わったんでな。君がまだいるなら見送ろうと思った。出かけるんだろう?」
時間を見れば、確かにもうそろそろ出ようかという時間だ。山姥切さんに後のことはお願いしたし、準備も大丈夫だろう。
「そうですね、そろそろいきます。荷物、とってきますね」
彼らを残し、二階にあがる。スクールバッグを持って、玄関に向かうとその後ろを山姥切さんと鶴丸さんがついてくる。見送りの気持ちは嬉しいが、学校に行くだけでわざわざ門までついて来てくれるのはちょっと大げさかなとも思う。
庭には、外の掃除をしていた人たちもいて、さらに大げさな見送りをされてしまう。
「じゃあ、いってきます」
少し照れくさいな、と思いながらも彼らに手を振って、門をくぐった。
食器の片付けを買って出てくれた彼らに任せ、私は山姥切さんと2人、鍛刀部屋に来ていた。
審神者がこなすべき日課のうちの1つだ。
「うーん、どうしよう。いっぱい入れればいいってものでもないみたいだけど……」
昨日、何度か鍛刀をしてわかったのは、たくさん資材をつぎ込めばそれなりに大きな刀が作れるということだ。それはなんとなくだが、もともとわかっていたことでもある。
それに加えて、量と出来上がる刀の関係は明確にはわからないということも、収穫の1つだ。
つまり、たくさん入れたからといって、太刀や大太刀が来るわけではないのだ。
まだまだ見ない刀剣が多いこの本丸において、今狙うべきはまだ顕現していない新しい刀剣男士だろう。そうなると、ひたすらに大量の資材をつぎ込むのはあまり効率の良いこととは思えない。
「これでお願いします」
昨日に比べて、全体的に量を減らして依頼する。この後はしばらく戻ってくることができないので、手伝い札は使わずに、鍛刀部屋を後にした。
「今日の指示を出すので、このまま執務室まで来てもらってもいい?」
「ああ、問題ない」
黙って私の後をついて歩く山姥切さんに一応確認を取る。
彼は『近侍』という役職についてもらっている。マニュアルによれば、審神者のそばについて業務をこなす、言ってしまえば秘書のようなものだろうか。
本丸を開ける前に、彼に伝達事項を伝え、不在の間の指揮をとってもらうことにした。
審神者の指揮なく、出陣させることはできないようなので、不在の間はいくつかの部隊に分けて遠征に行ってもらうことにする。そこで資材を調達するシステムのようだ。
また、今後のことを考え、部屋割り、当番などを決めてもらう。これからどんどん人数が増えていく本丸で、最初から躓いていてはいつまでも統率が取れないままだ。早いうちに解決しなければいけない問題だろう。
それらのことを山姥切さんに伝え、決まったことはまとめて報告してもらうことにする。
「何時頃に帰るんだ?」
「うーんと、今日は16時くらいかなぁ。なるべく早く帰るようにはするね」
仕方ないとはいえ、あまり長くは本丸を空けたくない。きっとみんなは私がいなくてもしっかりやってくれるだろうし、そこは心配していないが、私自身が審神者として、しっかりここで仕事をこなしたいと思うのだ。
「……なぁあんた。別に無理に写しなんかをそばに置いておく必要もないんだぞ」
ふと、山姥切さんがぽつりとつぶやく。
「俺は初期刀かもしれないが、別にだからと言って近侍にしなければいけないわけでもないだろう」
こちらを見ないまま、彼はそう言った。
「山姥切さんは近侍のお仕事、嫌?」
「そういうんじゃない。ただ、俺に構う必要はないと言っているんだ。あんただって、話しやすい他の奴らのほうがやりやすいんじゃないか?」
やはり顔を伏せたまま、そう言う彼の本心はどこにあるのだろうか。自分を『写し』だという時の彼の顔はどこか寂しげだ。彼が一体何を気にしているのか、私にはわからない。
「写しであることっていうのは、刀にとっては重要なことなの?私にはよくわかんない。だから、山姥切さんを写しだからって目で見てないし……ごめん、そもそも写しって何かよくわかんないや」
彼を励ましたくて、しかしうまく言葉が出てこない。なんとか、写しというのを気にしてはいないと伝えたかったのだが、そもそも写しとはなんなのか理解していない。真似とかそういうニュアンスなんだろうとは思うのだが、やはりはっきりわからないので、結果的に締まりのない感じになってしまった。
「……そうか。いや、ならいいんだ。あんたの命令なら仕事はやる」
少し面食らったような顔は、知識がないことに対してだろうか。刀のない時代に生きているのだから、そこらへんは勘弁してほしい。だが、写しだということを気にしたことがないというのは伝わったらしい。
命令、といわれるとそこまで大層なものではないのだが、それでも彼がやる気になってくれたようで嬉しい。
「じゃあ、私の不在中お願いね」
「あぁ……期待はするな」
「あーるじ!いるかい?」
廊下から顔を覗かせたのは鶴丸さんだ。
「どうかしました?」
バタバタと聞こえた足音からして、急いでいたように思う。何か緊急の用でもあったのだろうか。
「いや、片付けが終わったんでな。君がまだいるなら見送ろうと思った。出かけるんだろう?」
時間を見れば、確かにもうそろそろ出ようかという時間だ。山姥切さんに後のことはお願いしたし、準備も大丈夫だろう。
「そうですね、そろそろいきます。荷物、とってきますね」
彼らを残し、二階にあがる。スクールバッグを持って、玄関に向かうとその後ろを山姥切さんと鶴丸さんがついてくる。見送りの気持ちは嬉しいが、学校に行くだけでわざわざ門までついて来てくれるのはちょっと大げさかなとも思う。
庭には、外の掃除をしていた人たちもいて、さらに大げさな見送りをされてしまう。
「じゃあ、いってきます」
少し照れくさいな、と思いながらも彼らに手を振って、門をくぐった。