バレンタイン2019
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「鶴丸さん!さて、私はあなたに用事があります。一体なんでしょう?」
「おぉ、きみか。それにしても、急だなぁ!」
縁側で黄昏ている鶴丸さんの姿を見つけて、そっと近く。反応を見るに、私の接近には気付かれていたみたいだが、きっとまだチョコのことは察知できていないはずだ。思わずニマニマと緩みそうになる頬を引き締めて、彼に問う。
「ふふふ、なんだと思います?」
「うーん……そうやって聞いてくるところをみるに、何か特別なことなんだろうなぁ?」
「さぁ、どうですかねー?」
いつもやられてばかりの鶴丸さんが頭をひねっている様子はどこか楽しいものがある。彼の隣に腰を下ろしてその姿を堪能する。
「きみ、楽しそうだな」
「そう見えますか?」
「楽しいことなら俺にもわけて欲しいもんだな」
どうやらお手上げみたいだ。心の中で少しだけ「してやったり」と思いつつ、彼にチョコを渡す。
「はい、鶴丸さん。いつもありがとう。初めて会った日から優しい鶴丸さんが大好きです!」
目をぱちくりとする鶴丸さん。長い睫毛が揺れて綺麗だ。端正な顔がぽかんと口を開けている姿は絶妙に間が抜けていて面白い。
「鶴丸さーん?」
これは一本とってやったのではなかろうか。いつも驚かせてばかりいる鶴丸さんも、たまには驚かされる側の気分を味わうべきだ。
「こ、れは?きみが、俺に?」
どういうことか理解できないのか、まだ鶴丸さんの頭には疑問符がたくさん浮かんでいるように見える。
「今日はバレンタインっていう日なんです。大切な人にチョコを送って、気持ちを伝える日なんですよ」
そんな彼に、このプレゼントの意図を説明する。
「ばれんたいん?ちょこ……これか?」
「うん!本丸のみんなに、日頃の感謝を込めて渡してるんです。鶴丸さんも受け取ってください」
差し出されたそれを、彼がようやく手にしてくれる。
「は、はは。そうか、みんなに……。これは驚きだな。突然何を言い出すのかとびっくりした」
「せっかくだから、みんなにはバレないように用意したんです。鶴丸さんも、驚いてくれたなら何より!」
なのだが、どこか晴れない顔をしている鶴丸さん。感謝の気持ちはきちんと伝えられたと思ったのだが、何か引っ掛かることでもあるのだろうか。
「鶴丸さん?どうかしました?」
私から顔をそらし、何かを考え込むようなそぶりを見せた彼。その正面に回ってしゃがみ、顔を下から覗き込む。その顔はどこか不機嫌そうで悲しそうな、嬉しいといった感情とは遠い顔をしている。
私は彼の機嫌を損ねるようなことをしてしまっただろうか?
私の不安が伝わったのか、彼は笑顔を作る。
「あぁ、すまん。気にしないでくれ。俺だけにくれたものだと勘違いして勝手にぬか喜びしただけだ」
「へ?」
「他の奴らにも配るんだろう。これはありがたく受け取った」
それだけ言うと、鶴丸さんはその場を立ち上がる。いつもと違ってどこか悲しげな彼の様子に慌てて袖を掴んで引き止める。
「鶴丸さん、どうし…「……くははっ!驚いたか?」
そう言って振り返った彼は実に楽しそうな笑顔を浮かべている。いつもの、いたずらが成功した時の顔だ。つまり、さっきまでのあれは……
「なっ……!演技!?」
「なかなかの名演技だっただろう?」
「びっくりってか、普通に焦ったんですけど!」
なんの疑いもなく騙されてしまったようだ。あれが演技だというのだから彼は名役者だ。
「すまんすまん、きみがあまりにも得意げな顔をするからな。つい仕返しがしたくなった」
鶴丸さんから一本とってやった!と思ったあまりに、どうやらそれが顔に出ていたらしい。結局また彼にしてやられてしまった。
「こんなことをした後でなんだが、きみの気持ちが嬉しいのは本当だ。それに、チョコを独り占めできないのも残念だな」
「ダメですよ、これはみんなの分ですから」
彼はそんなに甘いものが好きだったような記憶はないが、なぜがチョコに独占欲を示しているようなので、袋を後手にもって警戒する。
「冗談だ、そんなに食い意地は張ってないさ」
一歩引いた私を笑うと、彼はその距離を詰めて頭をポンポンと叩いた。
「ありがとうな。いつも頑張っているきみのことは誰よりも見ているつもりだ。これからも、よろしく頼む」
ポンポンとしていた手が、そのまま髪を撫で付けるように動かされる。
「こちらこそ、頼りにしてます、鶴丸さん!」
頭の上の手に、自分の手を重ねてそれに応える。満足そうに笑った彼は頭から手を話すと、チョコの包みを解きにかかる。
「このチョコには驚きが隠されていたりしないよな?びっくりするような味だったら今度こそ一本取られてしまうが……」
ニヤニヤと笑ってこちらを見る彼は、どうやら味のことを言いたいようだ。
「ちゃんと味見してます!美味しいですよ……きっと!」
味見はしたが、その辺に関してはほとんど友人の監修なので、どこか他人行儀な言い方になってしまうのは仕方ない。そのままチョコを口に運ぶ鶴丸さんをじっと見つめる。きっと大丈夫だとは思うものの、目の前で食べられるのは緊張する。
「ふむ、美味いな」
「ほんと!?よかったー」
パァッと華やいだ顔でチョコを頬張る彼に、味の心配は吹き飛ぶ。
今回はしてやられてしまったが、少しでも彼を驚かせられたのでよしとしよう。もちろん、一番大事な感謝の気持ちも伝わったはずだ。
「おぉ、きみか。それにしても、急だなぁ!」
縁側で黄昏ている鶴丸さんの姿を見つけて、そっと近く。反応を見るに、私の接近には気付かれていたみたいだが、きっとまだチョコのことは察知できていないはずだ。思わずニマニマと緩みそうになる頬を引き締めて、彼に問う。
「ふふふ、なんだと思います?」
「うーん……そうやって聞いてくるところをみるに、何か特別なことなんだろうなぁ?」
「さぁ、どうですかねー?」
いつもやられてばかりの鶴丸さんが頭をひねっている様子はどこか楽しいものがある。彼の隣に腰を下ろしてその姿を堪能する。
「きみ、楽しそうだな」
「そう見えますか?」
「楽しいことなら俺にもわけて欲しいもんだな」
どうやらお手上げみたいだ。心の中で少しだけ「してやったり」と思いつつ、彼にチョコを渡す。
「はい、鶴丸さん。いつもありがとう。初めて会った日から優しい鶴丸さんが大好きです!」
目をぱちくりとする鶴丸さん。長い睫毛が揺れて綺麗だ。端正な顔がぽかんと口を開けている姿は絶妙に間が抜けていて面白い。
「鶴丸さーん?」
これは一本とってやったのではなかろうか。いつも驚かせてばかりいる鶴丸さんも、たまには驚かされる側の気分を味わうべきだ。
「こ、れは?きみが、俺に?」
どういうことか理解できないのか、まだ鶴丸さんの頭には疑問符がたくさん浮かんでいるように見える。
「今日はバレンタインっていう日なんです。大切な人にチョコを送って、気持ちを伝える日なんですよ」
そんな彼に、このプレゼントの意図を説明する。
「ばれんたいん?ちょこ……これか?」
「うん!本丸のみんなに、日頃の感謝を込めて渡してるんです。鶴丸さんも受け取ってください」
差し出されたそれを、彼がようやく手にしてくれる。
「は、はは。そうか、みんなに……。これは驚きだな。突然何を言い出すのかとびっくりした」
「せっかくだから、みんなにはバレないように用意したんです。鶴丸さんも、驚いてくれたなら何より!」
なのだが、どこか晴れない顔をしている鶴丸さん。感謝の気持ちはきちんと伝えられたと思ったのだが、何か引っ掛かることでもあるのだろうか。
「鶴丸さん?どうかしました?」
私から顔をそらし、何かを考え込むようなそぶりを見せた彼。その正面に回ってしゃがみ、顔を下から覗き込む。その顔はどこか不機嫌そうで悲しそうな、嬉しいといった感情とは遠い顔をしている。
私は彼の機嫌を損ねるようなことをしてしまっただろうか?
私の不安が伝わったのか、彼は笑顔を作る。
「あぁ、すまん。気にしないでくれ。俺だけにくれたものだと勘違いして勝手にぬか喜びしただけだ」
「へ?」
「他の奴らにも配るんだろう。これはありがたく受け取った」
それだけ言うと、鶴丸さんはその場を立ち上がる。いつもと違ってどこか悲しげな彼の様子に慌てて袖を掴んで引き止める。
「鶴丸さん、どうし…「……くははっ!驚いたか?」
そう言って振り返った彼は実に楽しそうな笑顔を浮かべている。いつもの、いたずらが成功した時の顔だ。つまり、さっきまでのあれは……
「なっ……!演技!?」
「なかなかの名演技だっただろう?」
「びっくりってか、普通に焦ったんですけど!」
なんの疑いもなく騙されてしまったようだ。あれが演技だというのだから彼は名役者だ。
「すまんすまん、きみがあまりにも得意げな顔をするからな。つい仕返しがしたくなった」
鶴丸さんから一本とってやった!と思ったあまりに、どうやらそれが顔に出ていたらしい。結局また彼にしてやられてしまった。
「こんなことをした後でなんだが、きみの気持ちが嬉しいのは本当だ。それに、チョコを独り占めできないのも残念だな」
「ダメですよ、これはみんなの分ですから」
彼はそんなに甘いものが好きだったような記憶はないが、なぜがチョコに独占欲を示しているようなので、袋を後手にもって警戒する。
「冗談だ、そんなに食い意地は張ってないさ」
一歩引いた私を笑うと、彼はその距離を詰めて頭をポンポンと叩いた。
「ありがとうな。いつも頑張っているきみのことは誰よりも見ているつもりだ。これからも、よろしく頼む」
ポンポンとしていた手が、そのまま髪を撫で付けるように動かされる。
「こちらこそ、頼りにしてます、鶴丸さん!」
頭の上の手に、自分の手を重ねてそれに応える。満足そうに笑った彼は頭から手を話すと、チョコの包みを解きにかかる。
「このチョコには驚きが隠されていたりしないよな?びっくりするような味だったら今度こそ一本取られてしまうが……」
ニヤニヤと笑ってこちらを見る彼は、どうやら味のことを言いたいようだ。
「ちゃんと味見してます!美味しいですよ……きっと!」
味見はしたが、その辺に関してはほとんど友人の監修なので、どこか他人行儀な言い方になってしまうのは仕方ない。そのままチョコを口に運ぶ鶴丸さんをじっと見つめる。きっと大丈夫だとは思うものの、目の前で食べられるのは緊張する。
「ふむ、美味いな」
「ほんと!?よかったー」
パァッと華やいだ顔でチョコを頬張る彼に、味の心配は吹き飛ぶ。
今回はしてやられてしまったが、少しでも彼を驚かせられたのでよしとしよう。もちろん、一番大事な感謝の気持ちも伝わったはずだ。