好きになって欲しい
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「名前ー!いやー、ええ朝やんな!なぁ!」
どうかんがえてもおかしい謙也くんが寄ってくる。朝練が終わったあと、同じクラスの謙也くんと蔵と一緒に教室に戻るのがいつもの流れだ。今日もいつものように2人と一緒に昇降口に向かっているのだが、どう考えても今日の謙也くんはおかしい。
こういう時の謙也くんには下手に関わらない方がいい。バシバシと背中を叩いてくる謙也くんを適当にスルーしながらふと、なんとなく二年生の下足箱の方を見てしまった。探すつもりはなかったのだが、たまたま視線の先にいた彼はこちらを見ていたようで目が合ってしまった。
私が見たことに気づくと、少しだけ笑って見せた彼に私も笑顔を返す。
「ん?あ!財前やんか!なぁ、今財前見て笑ったやろ!」
隣にいた謙也くんが、私の視線の先の光くんを目ざとく見つけたようだ。
「なんやなんや。今日は2人で遅刻ギリギリやったり、いったい何があったんやー?」
ニマニマと気持ち悪い笑顔で迫ってくる謙也くんに耐えきれず、蔵に助け舟を求める。しかし蔵は心ここに在らず、といった感じで、腕を引っ張ってようやくこちらに気づいてくれた。
「ん?あぁ、すまんな。なんやぼーっとしてたわ」
なんとなく、元気がなさそうにも見える。完璧主義な蔵に限ってそんなことは無いと思うが、風邪でも引いたのかと心配になる。
「そういや、白石も今日遅かったやんな。いっつも早い2人がおらんからってみんな心配してたで」
珍しい。蔵はいつも私と同じくらいか、それより早く朝練に出ていた。
「やっぱり、今日体調とか悪かったりするんと違う?」
「いや、大丈夫や。たまたまやで、心配かけてすまん。気にしやんとって」
蔵がそういうなら、これ以上しつこくするのも迷惑だろう。
望んだ形ではなかったが、謙也くんもそれ以降しつこく聞いてくることはなくて、結果として助かってしまった。
と思ったのに。それは一時間目が終わった後だった。
「なあ、ぶっちゃけ財前のことどう思ってるん?」
後ろの席からの、なんの脈絡もない突然の問いかけ。謙也くんだ。彼はまだ興味を失ったわけではなかったようだ。
「昨日の、その、あれ……そういう関係なんと違うの?」
あれ、とは間違いなく図書室でのことだ。
「光くんとは、そういうんじゃないし……」
なるべく思い出さないように努めてみるが、無駄だったようだ。
「顔真っ赤やで」
ニヤニヤと笑う謙也くんを、これほどまでに殴りたいと思ったのは初めてだ。
「名前さん」
それはざわざわとうるさい休み時間の教室でもしっかり私の耳に届いた。
「噂をすれば、やで」
謙也くんの笑みが濃くなるが無視。声をかけられた教室後方のドアには、朝ぶりの光くんが立っていた。
こんな風に彼が教室を訪ねてくるのは初めてでない。何度かうちのクラスにはきたことがあったし、彼がテニス部の後輩であることは周知のことだ。でも呼び出されるのはいつも蔵と謙也くん。私が呼び出されるというのは初めてのことだ。
そんな事態に、クラスから興味津々といったような視線が集まる。
そんな視線気にも留めていないのか、光くんはちょいちょいと手招きする。それを無視するわけにもいかず、「はよいけ」という謙也くんに押されて入り口までやってきた。
「どうしたん?なんか用事?」
まずはこう聞くのが普通だろう。後輩が先輩の教室までくるなんて、よほどの用事がなければそうそうない。今までなかったというだけで、テニス部のマネージャーの私に用があるのかもしれないし。
「いや、特にはないんすけど。移動教室のついでに先輩の顔が見たなったんです。あかんかった?」
あまりにもストレートな理由になんと反応していいかわからない。何も言えない私の代わりに、ドアに近かった女の子たちが小声できゃーきゃーと騒いでいるのが聞こえる。
「あかん、ことはない。けど……」
恥ずかしいからやめてほしい。というのが素直な感想だ。
「迷惑でした?すんません……」
言葉に詰まった私の気持ちを察知してか、光くんが素直に謝る。端から見てもわかるしおれっぷりだ。彼はこんなに感情が豊かに表にでる子だっただろうか。
「迷惑とかじゃ無い!けど……」
そこまで行って、ここが自分の教室だということを思い出す。バッと後ろを振り返れば、奥の席で相変わらず謙也くんがニヤニヤしている。
「ちょっと外でよか」
返事も待たないまま、人の少ない廊下の端まで彼の腕をひっぱる。
「そんなに恥ずかしがらんでええのに」
ニヤッと笑った彼はどうやらすべてお見通しなようだ。
「わかってるなら教室までこんとってや!」
「いい牽制になると思って。先輩らに宣戦布告です」
「どういうことやの……」
「名前さんには俺がおるってアピールしとかな。ライバルが増えるのいやなんで」
ライバルなんて、心配しなくてもそんなのいやしない。こんな風に困らせられるのは光くんが初めてだ。
「光くん以外でそんな物好きおらんで」
「いや、名前さんが気づかんだけかもしれんですよ?」
そんなことを真剣な顔で言ってのける。
「もうチャイム鳴んで。早よ行きや」
照れ隠しの意味も込めて、彼の背中をグイっと押して階段の方に追いやる。
「また来てもいいっすか?」
「ダメ……ではないけど、あんまし人に見られんのは嫌や」
「じゃあ2人きりになれるように頑張りますわ」
そういうことを言いたいんじゃないのだが。否定する前に彼は階段を登って行ってしまった。どうも彼といると調子が狂ってしまう。
教室に戻った私を迎えたのは、なんとも楽しそうな謙也くん。そして、どこか上の空な蔵だ。このさい謙也くんはスルーして、気になるのは蔵だ。
「ねぇ、やっぱ体調悪いんとちゃう?保健室行く?」
「いや、そういうのとちゃうねん。考え事っちゅーか……」
今日の蔵はどうも歯切れが悪い。
「なんかあったんなら相談乗るで?」
いつもの完璧な彼の元気のない姿はどうしても気になってしまう。
「おん。そうやな、今日のお昼、ちょっと時間もらってもええか?」
「もちろん、ええよ。私で役に立てるかわからんけど……」
「ありがとうな。助かるわ」
そこでタイミングよくチャイムがなりその場はおとなしく自分の席へ解散となる。
「白石、どうしたんやろな」
謙也くんもなんだかんだで気にしていたようで、こそっと話しかけてくる。しかし、全く心当たりはない。謙也くんにも心当たりがないとなると、部活のことという線は薄いだろう。
いったい何が彼を悩ませているのだろう。
どうかんがえてもおかしい謙也くんが寄ってくる。朝練が終わったあと、同じクラスの謙也くんと蔵と一緒に教室に戻るのがいつもの流れだ。今日もいつものように2人と一緒に昇降口に向かっているのだが、どう考えても今日の謙也くんはおかしい。
こういう時の謙也くんには下手に関わらない方がいい。バシバシと背中を叩いてくる謙也くんを適当にスルーしながらふと、なんとなく二年生の下足箱の方を見てしまった。探すつもりはなかったのだが、たまたま視線の先にいた彼はこちらを見ていたようで目が合ってしまった。
私が見たことに気づくと、少しだけ笑って見せた彼に私も笑顔を返す。
「ん?あ!財前やんか!なぁ、今財前見て笑ったやろ!」
隣にいた謙也くんが、私の視線の先の光くんを目ざとく見つけたようだ。
「なんやなんや。今日は2人で遅刻ギリギリやったり、いったい何があったんやー?」
ニマニマと気持ち悪い笑顔で迫ってくる謙也くんに耐えきれず、蔵に助け舟を求める。しかし蔵は心ここに在らず、といった感じで、腕を引っ張ってようやくこちらに気づいてくれた。
「ん?あぁ、すまんな。なんやぼーっとしてたわ」
なんとなく、元気がなさそうにも見える。完璧主義な蔵に限ってそんなことは無いと思うが、風邪でも引いたのかと心配になる。
「そういや、白石も今日遅かったやんな。いっつも早い2人がおらんからってみんな心配してたで」
珍しい。蔵はいつも私と同じくらいか、それより早く朝練に出ていた。
「やっぱり、今日体調とか悪かったりするんと違う?」
「いや、大丈夫や。たまたまやで、心配かけてすまん。気にしやんとって」
蔵がそういうなら、これ以上しつこくするのも迷惑だろう。
望んだ形ではなかったが、謙也くんもそれ以降しつこく聞いてくることはなくて、結果として助かってしまった。
と思ったのに。それは一時間目が終わった後だった。
「なあ、ぶっちゃけ財前のことどう思ってるん?」
後ろの席からの、なんの脈絡もない突然の問いかけ。謙也くんだ。彼はまだ興味を失ったわけではなかったようだ。
「昨日の、その、あれ……そういう関係なんと違うの?」
あれ、とは間違いなく図書室でのことだ。
「光くんとは、そういうんじゃないし……」
なるべく思い出さないように努めてみるが、無駄だったようだ。
「顔真っ赤やで」
ニヤニヤと笑う謙也くんを、これほどまでに殴りたいと思ったのは初めてだ。
「名前さん」
それはざわざわとうるさい休み時間の教室でもしっかり私の耳に届いた。
「噂をすれば、やで」
謙也くんの笑みが濃くなるが無視。声をかけられた教室後方のドアには、朝ぶりの光くんが立っていた。
こんな風に彼が教室を訪ねてくるのは初めてでない。何度かうちのクラスにはきたことがあったし、彼がテニス部の後輩であることは周知のことだ。でも呼び出されるのはいつも蔵と謙也くん。私が呼び出されるというのは初めてのことだ。
そんな事態に、クラスから興味津々といったような視線が集まる。
そんな視線気にも留めていないのか、光くんはちょいちょいと手招きする。それを無視するわけにもいかず、「はよいけ」という謙也くんに押されて入り口までやってきた。
「どうしたん?なんか用事?」
まずはこう聞くのが普通だろう。後輩が先輩の教室までくるなんて、よほどの用事がなければそうそうない。今までなかったというだけで、テニス部のマネージャーの私に用があるのかもしれないし。
「いや、特にはないんすけど。移動教室のついでに先輩の顔が見たなったんです。あかんかった?」
あまりにもストレートな理由になんと反応していいかわからない。何も言えない私の代わりに、ドアに近かった女の子たちが小声できゃーきゃーと騒いでいるのが聞こえる。
「あかん、ことはない。けど……」
恥ずかしいからやめてほしい。というのが素直な感想だ。
「迷惑でした?すんません……」
言葉に詰まった私の気持ちを察知してか、光くんが素直に謝る。端から見てもわかるしおれっぷりだ。彼はこんなに感情が豊かに表にでる子だっただろうか。
「迷惑とかじゃ無い!けど……」
そこまで行って、ここが自分の教室だということを思い出す。バッと後ろを振り返れば、奥の席で相変わらず謙也くんがニヤニヤしている。
「ちょっと外でよか」
返事も待たないまま、人の少ない廊下の端まで彼の腕をひっぱる。
「そんなに恥ずかしがらんでええのに」
ニヤッと笑った彼はどうやらすべてお見通しなようだ。
「わかってるなら教室までこんとってや!」
「いい牽制になると思って。先輩らに宣戦布告です」
「どういうことやの……」
「名前さんには俺がおるってアピールしとかな。ライバルが増えるのいやなんで」
ライバルなんて、心配しなくてもそんなのいやしない。こんな風に困らせられるのは光くんが初めてだ。
「光くん以外でそんな物好きおらんで」
「いや、名前さんが気づかんだけかもしれんですよ?」
そんなことを真剣な顔で言ってのける。
「もうチャイム鳴んで。早よ行きや」
照れ隠しの意味も込めて、彼の背中をグイっと押して階段の方に追いやる。
「また来てもいいっすか?」
「ダメ……ではないけど、あんまし人に見られんのは嫌や」
「じゃあ2人きりになれるように頑張りますわ」
そういうことを言いたいんじゃないのだが。否定する前に彼は階段を登って行ってしまった。どうも彼といると調子が狂ってしまう。
教室に戻った私を迎えたのは、なんとも楽しそうな謙也くん。そして、どこか上の空な蔵だ。このさい謙也くんはスルーして、気になるのは蔵だ。
「ねぇ、やっぱ体調悪いんとちゃう?保健室行く?」
「いや、そういうのとちゃうねん。考え事っちゅーか……」
今日の蔵はどうも歯切れが悪い。
「なんかあったんなら相談乗るで?」
いつもの完璧な彼の元気のない姿はどうしても気になってしまう。
「おん。そうやな、今日のお昼、ちょっと時間もらってもええか?」
「もちろん、ええよ。私で役に立てるかわからんけど……」
「ありがとうな。助かるわ」
そこでタイミングよくチャイムがなりその場はおとなしく自分の席へ解散となる。
「白石、どうしたんやろな」
謙也くんもなんだかんだで気にしていたようで、こそっと話しかけてくる。しかし、全く心当たりはない。謙也くんにも心当たりがないとなると、部活のことという線は薄いだろう。
いったい何が彼を悩ませているのだろう。