好きになって欲しい
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光くんの腕が背中に回されて、彼にしっかりと抱きしめられる。どちらのものともわからない心臓の跳ねる音が2人の間をつなぐ。息をするのすら必死で、苦しい。
「名前さん、すき。好きや……」
彼の気持ちを受け入れてしまえたらきっと楽になれるだろう。私は彼のことが嫌いなわけではない。むしろこうして好意を寄せられていることを嬉しく思っている。
彼の背に回した手に力がこもる。このまま身を委ねてしまいたい。
「光くん……」
私の呼びかけに、彼が顔をあげる。そのまま自然に近づいていく顔。ほんの少し、あと少しだけ動かせばまた唇が触れ合う距離だ。彼が動く様子はない。私からのアクションを待っているのだろうか。
したい。キスがしたい。気持ち良さで弱くなった判断力ではもういろいろと考えることなんてできない。ただ、目の前にある快感を求めて、彼の口に自らの唇を寄せる。
ガタン。
扉が音を立てたのはその瞬間だった。2人だけだった世界に、突然入り込む音に、思わず体がこわばる。私は今、光くんにキスしようとしていたのか。冷静さを取り戻す思考の中で、今一番に考えるのは扉の音だ。
向こうに誰かいる。ドアのガラス部分には、ちょうどそれを覆い隠すようにポスターが貼られていて、どちら側からもそれを通して向こうを見ることはできない。でも、こちらからなら、廊下に立つ人の影はよく見えた。誰かが向こう側でドアを開けようと手をかけているのだ。
まずい。この状況を人に見られたら、どうすれば誤魔化せるというのか。言い訳なんて思いつかない。
半ば私を押し倒すようにカウンターに押し付けている光くん。お互い息を荒くして、口元を濡らしている。言い逃れのできない状況なのは明白だ。
隠れなければ。そう考えるが早いか、光くんの腕を引き、本棚の裏あたりに目星をつけ向かおうとする。
しかし、彼は起き上がろうとする私を再びカウンターに縫い付けた。
「ちょ、光くん!?」
彼に真意を尋ねるべく、小声で抗議するが、彼がどいてくれる気配はない。このままでは、入ってきた人にばっちりと姿を見られてしまう。入り口正面に位置するこの場所が見えないなんてことは、なにがあってもないだろう。
扉を開けようとする手に力がこもり、またガタンと音を立てる。しかし、扉は動かない。
「……鍵、ちゃんとかけてるんで」
耳元で小さく囁く。なんと用意周到なことだろう。
囁いた後、ぬるりとした感触が耳を撫でる。慣れないその温かさに思わず声が漏れる。それに気を良くしたのか、何度も行き来して、わざと音を立てて離れていく。ゼロ距離で響くリップ音は先ほどまでと比べものにならないくらいに刺激強い。
腰のあたりがじんわりと痺れるような感覚に、力が抜けてしまう。ほとんど彼にすがるような形で、なんとか体を起こしている状態だ。
「名前さん、声出したらあかんから」
そう言うと、彼の手が私の口を覆い隠す。そして再び顔が耳元に寄せられる。
くちゅくちゅと音を立てて刺激される耳に、耐えきれずに顔を話したくなるが、それは彼の手で阻止される。逃げることもできず、ただひたすらに声を抑え、襲い来る快感に必死に抵抗する。ただ舐められているだけなのに、キスよりもずっといけないことをしているようだ。
いつのまにか、廊下の影はいなくなっていた。だが、そんなことはもう関係なかった。本能のままに私を求めてくる光くんに、抵抗すらままならない私。このままではきっと、いってはいけないところまで進んでしまう。
「ひかる…くっ、ぅあっ……」
止めなければ、と思うのに、口を開けば出てくるのは聞きたくもない高い声だ。聞きなれないその声が無性に恥ずかしくて、彼の名を呼ぶことすらできない。
少しの邪魔では崩れない、そんな空間が確実に出来上がっていく。まずい。
2019.2.9
「名前さん、すき。好きや……」
彼の気持ちを受け入れてしまえたらきっと楽になれるだろう。私は彼のことが嫌いなわけではない。むしろこうして好意を寄せられていることを嬉しく思っている。
彼の背に回した手に力がこもる。このまま身を委ねてしまいたい。
「光くん……」
私の呼びかけに、彼が顔をあげる。そのまま自然に近づいていく顔。ほんの少し、あと少しだけ動かせばまた唇が触れ合う距離だ。彼が動く様子はない。私からのアクションを待っているのだろうか。
したい。キスがしたい。気持ち良さで弱くなった判断力ではもういろいろと考えることなんてできない。ただ、目の前にある快感を求めて、彼の口に自らの唇を寄せる。
ガタン。
扉が音を立てたのはその瞬間だった。2人だけだった世界に、突然入り込む音に、思わず体がこわばる。私は今、光くんにキスしようとしていたのか。冷静さを取り戻す思考の中で、今一番に考えるのは扉の音だ。
向こうに誰かいる。ドアのガラス部分には、ちょうどそれを覆い隠すようにポスターが貼られていて、どちら側からもそれを通して向こうを見ることはできない。でも、こちらからなら、廊下に立つ人の影はよく見えた。誰かが向こう側でドアを開けようと手をかけているのだ。
まずい。この状況を人に見られたら、どうすれば誤魔化せるというのか。言い訳なんて思いつかない。
半ば私を押し倒すようにカウンターに押し付けている光くん。お互い息を荒くして、口元を濡らしている。言い逃れのできない状況なのは明白だ。
隠れなければ。そう考えるが早いか、光くんの腕を引き、本棚の裏あたりに目星をつけ向かおうとする。
しかし、彼は起き上がろうとする私を再びカウンターに縫い付けた。
「ちょ、光くん!?」
彼に真意を尋ねるべく、小声で抗議するが、彼がどいてくれる気配はない。このままでは、入ってきた人にばっちりと姿を見られてしまう。入り口正面に位置するこの場所が見えないなんてことは、なにがあってもないだろう。
扉を開けようとする手に力がこもり、またガタンと音を立てる。しかし、扉は動かない。
「……鍵、ちゃんとかけてるんで」
耳元で小さく囁く。なんと用意周到なことだろう。
囁いた後、ぬるりとした感触が耳を撫でる。慣れないその温かさに思わず声が漏れる。それに気を良くしたのか、何度も行き来して、わざと音を立てて離れていく。ゼロ距離で響くリップ音は先ほどまでと比べものにならないくらいに刺激強い。
腰のあたりがじんわりと痺れるような感覚に、力が抜けてしまう。ほとんど彼にすがるような形で、なんとか体を起こしている状態だ。
「名前さん、声出したらあかんから」
そう言うと、彼の手が私の口を覆い隠す。そして再び顔が耳元に寄せられる。
くちゅくちゅと音を立てて刺激される耳に、耐えきれずに顔を話したくなるが、それは彼の手で阻止される。逃げることもできず、ただひたすらに声を抑え、襲い来る快感に必死に抵抗する。ただ舐められているだけなのに、キスよりもずっといけないことをしているようだ。
いつのまにか、廊下の影はいなくなっていた。だが、そんなことはもう関係なかった。本能のままに私を求めてくる光くんに、抵抗すらままならない私。このままではきっと、いってはいけないところまで進んでしまう。
「ひかる…くっ、ぅあっ……」
止めなければ、と思うのに、口を開けば出てくるのは聞きたくもない高い声だ。聞きなれないその声が無性に恥ずかしくて、彼の名を呼ぶことすらできない。
少しの邪魔では崩れない、そんな空間が確実に出来上がっていく。まずい。
2019.2.9
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