好きになって欲しい
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「光く……っ!」
腕を引かれて入ったのは図書室。私を中に引き入れると、光くんはしっかりと戸を閉める。
非常にまずい状況なのは嫌でもわかる。
サボろうと提案したのは私だし、あの場から移動しよう言ったのも私だ。だが、こんな風に誰もいない教室に連れ込まれてみてやっと理解した。この状況はまずい。
キスがしたい、と迫る光くんを私は何といって説得したか。
『────こんなんいつ人がくるかもわからんし……』
この教室には私と彼の2人きり。扉によって外と遮断されたこの教室は誰の邪魔を受ける心配もない。つまり、私が彼を拒む理由がなくなってしまった。
「あの、光くん……」
ドアを閉めたまま、こちらに背を向けている光くんにそっと声をかける。この場からなんとか逃げようにも、彼にそこにいられたのでは図書室を出ることも叶わない。
私の声に彼は反応しない。いや、ピクリと肩が動いたのを見るに、聞こえてはいるようなので、あえて無視をしているといったところか。
気まずいまま沈黙が続く。あまりにもシンとしていて、物音すら立てるのがはばかられる。それなのに、心臓はどんどんその音量を増していくように大きく跳ね上がる。
「名前さん」
沈黙を破ったのは光くんだった。扉の方を向いたまま、私に呼びかける。
「そっち、行ってもいいですか」
そっち、といっても私と光くんの間に伺いを立てるようなたいした距離はない。どうぞ、と言いかけて口を開いた私の言葉を彼が被せるように遮った。
「多分、止まらんくなるけど……いいっすか」
思わず返事を飲み込んだ。それはつまり、彼に許可を与えてしまうことになる。
彼にキスをされることに対して恐らく嫌悪感はない。そこにあるのは罪悪感と、自分への怒りだ。彼を受け入れてしまうのはあまりにも不誠実だと思う。流されかけていた空気が一度切り替わったことで、頭の中は冷静だった。
返事をしない私に、光くんは少しトーンを落とす。
「あかんの?俺じゃ部長に敵わん?」
「その聞き方はずるいよ……」
私は何も蔵と比べて彼を拒んでいるのではない。蔵にキスをされたのは不意打ちだったし、蔵は良くて光くんがダメというわけではないのだ。
それはもう光くんもわかっていることだろうに、それでもその聞き方をするなんて彼はずるい。私が違う、ということをわかっていて、あえての質問なのだ。
「ずるくてもなんでもええっすわ。部長に取られたない。名前さんを渡したくない」
光くんはずいっと私との距離を縮めてくる。
「嫌われたないって、ちゃんと待つんやって思ってたのに。先越されたらそんなん余裕もなくなるっちゅうもんでしょ」
するりと手を絡め取られ、彼との距離はゼロになる。寄せられる体に触れぬよう、数歩下がったところで後ろをカウンターに取られてしまう。逃げ道のなくなった私に、彼は容赦なく体を密着させる。触れたところから、彼の鼓動が伝わってくる。
「名前さん、好き」
絡め取られた手をカウンターに押し付けられて、さらに彼が近づく。すでにゼロ距離だった身体は後ろにそらされ、彼が軽く覆いかぶさるような姿勢になる。
「キス、するんで」
もう許可は求めてこなかった。ただ静かにそう宣言して、彼は私の唇を奪った。
触れるだけの軽いキス。それでも、それは十分すぎる甘さだった。触れたところからじんわりと熱を帯び、頭がしびれるような感覚に陥る。
そっと唇を離し、目を開けた彼の瞳に射抜かれる。ギラギラとした欲を感じるその目に撃ち抜かれたように体が動かない。
「はぁっ、心臓止まりそうや」
短くを息を吐いて、再び彼の顔が寄せられる。私はそれを拒むことはしなかった。
さきほどよりも強く押し付けられた唇。逃がさないというように後頭部に手を回され、抱き込まれる。たっぷりと、時間が流れていく。
小さなリップ音とともに唇が離れる。その音はこの静かな教室のなかでやたらと大きく響いて聞こえた。
彼の目がすっと嬉しそうに細められる。
「やっばいすわ。名前さんめちゃくちゃかわいい」
スリ、と頬をひとなでして、再び手は後頭部に回る。そしてまた彼の顔が私の視界目一杯に広がる。
ヌルリとした感触が唇を滑った。新しい感触に思わず肩を揺らすと、彼は何度も唇を弄び始めた。
何度も舌が唇をなぞる。下唇をついばみ、わざとらしくリップ音を立てて離す。再び舌を滑らせたと思えば、今度はそれが唇を割って、ヌルリと口内へ侵入する。
初めての異物感に顔をそらしたくなるが、しっかりと頭を抱え込んでいる彼の手によってそれは叶わない。遠慮など知らないように、彼の舌が口内を自由に弄る。舌と舌が触れ合うざらついた感触に、だんだんと脳が溶かされていくようだ。次第に何も考えられなくなってくる。
気持ちいい。
その感覚に支配された時にはもう、私は彼にされるがままだった。
欲望のままに舌を動かし、離れたかと思えば間髪入れずにまた吸い付いてくる。口の端からはどちらのものかもわからない唾液が溢れ出す。
室内に響くのは乱れた息づかいと、唾液が混ざり合う音だけ。その音さえも、私から判断力を奪っていく。
行き場のない手を、彼の背に回す。とめどなく押し寄せてくる快感の波に耐えるように、シャツをギュッと握った。
腕を引かれて入ったのは図書室。私を中に引き入れると、光くんはしっかりと戸を閉める。
非常にまずい状況なのは嫌でもわかる。
サボろうと提案したのは私だし、あの場から移動しよう言ったのも私だ。だが、こんな風に誰もいない教室に連れ込まれてみてやっと理解した。この状況はまずい。
キスがしたい、と迫る光くんを私は何といって説得したか。
『────こんなんいつ人がくるかもわからんし……』
この教室には私と彼の2人きり。扉によって外と遮断されたこの教室は誰の邪魔を受ける心配もない。つまり、私が彼を拒む理由がなくなってしまった。
「あの、光くん……」
ドアを閉めたまま、こちらに背を向けている光くんにそっと声をかける。この場からなんとか逃げようにも、彼にそこにいられたのでは図書室を出ることも叶わない。
私の声に彼は反応しない。いや、ピクリと肩が動いたのを見るに、聞こえてはいるようなので、あえて無視をしているといったところか。
気まずいまま沈黙が続く。あまりにもシンとしていて、物音すら立てるのがはばかられる。それなのに、心臓はどんどんその音量を増していくように大きく跳ね上がる。
「名前さん」
沈黙を破ったのは光くんだった。扉の方を向いたまま、私に呼びかける。
「そっち、行ってもいいですか」
そっち、といっても私と光くんの間に伺いを立てるようなたいした距離はない。どうぞ、と言いかけて口を開いた私の言葉を彼が被せるように遮った。
「多分、止まらんくなるけど……いいっすか」
思わず返事を飲み込んだ。それはつまり、彼に許可を与えてしまうことになる。
彼にキスをされることに対して恐らく嫌悪感はない。そこにあるのは罪悪感と、自分への怒りだ。彼を受け入れてしまうのはあまりにも不誠実だと思う。流されかけていた空気が一度切り替わったことで、頭の中は冷静だった。
返事をしない私に、光くんは少しトーンを落とす。
「あかんの?俺じゃ部長に敵わん?」
「その聞き方はずるいよ……」
私は何も蔵と比べて彼を拒んでいるのではない。蔵にキスをされたのは不意打ちだったし、蔵は良くて光くんがダメというわけではないのだ。
それはもう光くんもわかっていることだろうに、それでもその聞き方をするなんて彼はずるい。私が違う、ということをわかっていて、あえての質問なのだ。
「ずるくてもなんでもええっすわ。部長に取られたない。名前さんを渡したくない」
光くんはずいっと私との距離を縮めてくる。
「嫌われたないって、ちゃんと待つんやって思ってたのに。先越されたらそんなん余裕もなくなるっちゅうもんでしょ」
するりと手を絡め取られ、彼との距離はゼロになる。寄せられる体に触れぬよう、数歩下がったところで後ろをカウンターに取られてしまう。逃げ道のなくなった私に、彼は容赦なく体を密着させる。触れたところから、彼の鼓動が伝わってくる。
「名前さん、好き」
絡め取られた手をカウンターに押し付けられて、さらに彼が近づく。すでにゼロ距離だった身体は後ろにそらされ、彼が軽く覆いかぶさるような姿勢になる。
「キス、するんで」
もう許可は求めてこなかった。ただ静かにそう宣言して、彼は私の唇を奪った。
触れるだけの軽いキス。それでも、それは十分すぎる甘さだった。触れたところからじんわりと熱を帯び、頭がしびれるような感覚に陥る。
そっと唇を離し、目を開けた彼の瞳に射抜かれる。ギラギラとした欲を感じるその目に撃ち抜かれたように体が動かない。
「はぁっ、心臓止まりそうや」
短くを息を吐いて、再び彼の顔が寄せられる。私はそれを拒むことはしなかった。
さきほどよりも強く押し付けられた唇。逃がさないというように後頭部に手を回され、抱き込まれる。たっぷりと、時間が流れていく。
小さなリップ音とともに唇が離れる。その音はこの静かな教室のなかでやたらと大きく響いて聞こえた。
彼の目がすっと嬉しそうに細められる。
「やっばいすわ。名前さんめちゃくちゃかわいい」
スリ、と頬をひとなでして、再び手は後頭部に回る。そしてまた彼の顔が私の視界目一杯に広がる。
ヌルリとした感触が唇を滑った。新しい感触に思わず肩を揺らすと、彼は何度も唇を弄び始めた。
何度も舌が唇をなぞる。下唇をついばみ、わざとらしくリップ音を立てて離す。再び舌を滑らせたと思えば、今度はそれが唇を割って、ヌルリと口内へ侵入する。
初めての異物感に顔をそらしたくなるが、しっかりと頭を抱え込んでいる彼の手によってそれは叶わない。遠慮など知らないように、彼の舌が口内を自由に弄る。舌と舌が触れ合うざらついた感触に、だんだんと脳が溶かされていくようだ。次第に何も考えられなくなってくる。
気持ちいい。
その感覚に支配された時にはもう、私は彼にされるがままだった。
欲望のままに舌を動かし、離れたかと思えば間髪入れずにまた吸い付いてくる。口の端からはどちらのものかもわからない唾液が溢れ出す。
室内に響くのは乱れた息づかいと、唾液が混ざり合う音だけ。その音さえも、私から判断力を奪っていく。
行き場のない手を、彼の背に回す。とめどなく押し寄せてくる快感の波に耐えるように、シャツをギュッと握った。