テニプリ/手塚国光
こちらでは名前変換をしてからお楽しみ下さい
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「あ…、い…、う…、え…、」
静かな図書室に響く五十音を唱える怪しげな声
誰も来ない奥の机で一人ひっそりと真っ白な紙と鉛筆、ペン等様々な筆記用具を広げ授業中ですら見せないような真剣な表情を浮かべながらひたすら紙に向き合う
「どうしても左上がりの字になるなぁ。しかも汚すぎて読めないし。」
紙の左上から横に順に書かれたひらがなの上につい先程まで左手に握られていたシャーペンを軽く放り投げる
誰しも一度は試した事があるだろう利き手では無い手、つまり私の場合左手で文字を書くという一見意味がありそうで大して役に立たない事を一人黙々と実践していた
右利きが多い日本において数少ない左利きには妙な憧れを感じるのだ
ペンの握りかた、腕の動き
右利きの私から見て不思議に感じる動作が多く時々こうして試したくなる
だが現実はそんなに厳しく一向に上手く書ける気配は無い
利き手では無い手を意図的に使用することで脳が活性するとはよく聞くが私の目的はそれではない
いや、決して頭は良い方ではないから活性化されたほうがいいんだけども
手塚のような綺麗な字が書けるまで、なんて贅沢は言わないがもう少しマシに書けたら練習の甲斐あるものだ
「よし、もう一回最初から!」
色々試した結果、シャーペンが一番マシなことに気付きしっかりと左手で握りしめて再び紙に向き合う
「あ…、い…」
「何をしている?」
「わっ!?」
突然後ろから聞こえた低い声に驚き静かな空間の中で変な声を上げてしまった
「すまない、そこまで驚くとは思っていなかった。」
「いやいや、手塚は悪くないから。」
入り口付近に居た生徒数人にチラリと睨まれ声を抑えながら言う
そういえば今日は部活が早く終わると英二が廊下で騒いでたっけ
普段ならテニスコートにいるはずの手塚を見ながら昼休みの光景を思い出す
恐らく奥の棚の本を見に来たのであろう
そこには私には到底理解出来ないような難しい本が並んでいる
手塚は私の左手に握られたシャーペンと汚いひらがなが綴られた紙を見て静かに聞いてきた
「…神崎は何をしていたんだ?」
「なんというか、脳の活性化?」
「活性化?文字を書くことが、か?」
「正直に言えば左利きに対する憧れというか。練習してたらそのうち書けるようになるかなって思ったんだけど難しいね。」
そう言いながらおかしな持ち方で引き続き文字らしきものを綴っていく
しばらくその動作を見ていた手塚の気配が近付きそっと私の左手に大きな手が重ねられた
「えっ、ちょっ、手塚!?」
「握り方が違う。右手と同じように書いていては無理だ。」
「あ、はい。」
直接伝わってくる手塚の体温がこの状況は現実だと私に認識させる
ラケットを握っているんだからマメだらけなのは当然で、でもその割には綺麗な指で…
手塚の話も聞かずにただひたすら手に視線が集中してしまう
そんな私に気付いた手塚はどうした?の言葉と同時に私の視線を辿りしっかり握られた左手を見るや直ぐに手を離した
「…すまない。」
「いや、別に、嫌だったんじゃなくて!寧ろありがたいというかなんというか…っじゃなくて!!」
途中から何を言っているのかわからないほど最後の方は消え入りそうな声で手塚に弁明する
しばらく動きを止めていた手塚は何を思ったのかひらがなで一杯になった紙に手を伸ばしあろうことかひっくり返そうとしていた
「う、裏面はダメ!!」
「……。」
私の制止も虚しく手塚の手によって紙は綺麗に裏返された
無茶苦茶にひらがなが書かれた先ほどの面と違いそこにはたった7文字の言葉が丁寧に書かれていた
“てづかくにみつ”と
見られた、完璧に
自分の名前ならともかくどうして手塚の名前なんだって話だよね
しかも無駄に上手く書けたからって消さずに置いといたのが失敗だった
相変わらず眉一つ動かさない手塚を横目で盗み見すれば私が使っていたシャーペンを握り余白部分に文字を書き始めた
「手塚?」
「見本だ。」
一言、呟いたあとスラスラと書かれていく文字を順に読んでいく
お…ま…え…が…す…、きって
私の大好きな手塚の字はひらがなで“おまえがすきだ”と確かにそう書かれていた
私が書いた手塚の名前からなぜ告白に繋がるのか
呆然と何度も何度も読み直していれば左側からすっとシャーペンを差し出される
「書いてみろ。」
「あ、はい。」
まるで先生かのような威圧感?に思わず姿勢を正し紙に向き直る
緊張しているせいでシャーペンを持つ手は震えているが手塚が書いてくれた見本を見ながら一文字一文字丁寧に書いていく
ただ一言
わたしもすきです、と
そこに左手を添える
(想いの籠ったその4文字は) (一番綺麗に書けた)
静かな図書室に響く五十音を唱える怪しげな声
誰も来ない奥の机で一人ひっそりと真っ白な紙と鉛筆、ペン等様々な筆記用具を広げ授業中ですら見せないような真剣な表情を浮かべながらひたすら紙に向き合う
「どうしても左上がりの字になるなぁ。しかも汚すぎて読めないし。」
紙の左上から横に順に書かれたひらがなの上につい先程まで左手に握られていたシャーペンを軽く放り投げる
誰しも一度は試した事があるだろう利き手では無い手、つまり私の場合左手で文字を書くという一見意味がありそうで大して役に立たない事を一人黙々と実践していた
右利きが多い日本において数少ない左利きには妙な憧れを感じるのだ
ペンの握りかた、腕の動き
右利きの私から見て不思議に感じる動作が多く時々こうして試したくなる
だが現実はそんなに厳しく一向に上手く書ける気配は無い
利き手では無い手を意図的に使用することで脳が活性するとはよく聞くが私の目的はそれではない
いや、決して頭は良い方ではないから活性化されたほうがいいんだけども
手塚のような綺麗な字が書けるまで、なんて贅沢は言わないがもう少しマシに書けたら練習の甲斐あるものだ
「よし、もう一回最初から!」
色々試した結果、シャーペンが一番マシなことに気付きしっかりと左手で握りしめて再び紙に向き合う
「あ…、い…」
「何をしている?」
「わっ!?」
突然後ろから聞こえた低い声に驚き静かな空間の中で変な声を上げてしまった
「すまない、そこまで驚くとは思っていなかった。」
「いやいや、手塚は悪くないから。」
入り口付近に居た生徒数人にチラリと睨まれ声を抑えながら言う
そういえば今日は部活が早く終わると英二が廊下で騒いでたっけ
普段ならテニスコートにいるはずの手塚を見ながら昼休みの光景を思い出す
恐らく奥の棚の本を見に来たのであろう
そこには私には到底理解出来ないような難しい本が並んでいる
手塚は私の左手に握られたシャーペンと汚いひらがなが綴られた紙を見て静かに聞いてきた
「…神崎は何をしていたんだ?」
「なんというか、脳の活性化?」
「活性化?文字を書くことが、か?」
「正直に言えば左利きに対する憧れというか。練習してたらそのうち書けるようになるかなって思ったんだけど難しいね。」
そう言いながらおかしな持ち方で引き続き文字らしきものを綴っていく
しばらくその動作を見ていた手塚の気配が近付きそっと私の左手に大きな手が重ねられた
「えっ、ちょっ、手塚!?」
「握り方が違う。右手と同じように書いていては無理だ。」
「あ、はい。」
直接伝わってくる手塚の体温がこの状況は現実だと私に認識させる
ラケットを握っているんだからマメだらけなのは当然で、でもその割には綺麗な指で…
手塚の話も聞かずにただひたすら手に視線が集中してしまう
そんな私に気付いた手塚はどうした?の言葉と同時に私の視線を辿りしっかり握られた左手を見るや直ぐに手を離した
「…すまない。」
「いや、別に、嫌だったんじゃなくて!寧ろありがたいというかなんというか…っじゃなくて!!」
途中から何を言っているのかわからないほど最後の方は消え入りそうな声で手塚に弁明する
しばらく動きを止めていた手塚は何を思ったのかひらがなで一杯になった紙に手を伸ばしあろうことかひっくり返そうとしていた
「う、裏面はダメ!!」
「……。」
私の制止も虚しく手塚の手によって紙は綺麗に裏返された
無茶苦茶にひらがなが書かれた先ほどの面と違いそこにはたった7文字の言葉が丁寧に書かれていた
“てづかくにみつ”と
見られた、完璧に
自分の名前ならともかくどうして手塚の名前なんだって話だよね
しかも無駄に上手く書けたからって消さずに置いといたのが失敗だった
相変わらず眉一つ動かさない手塚を横目で盗み見すれば私が使っていたシャーペンを握り余白部分に文字を書き始めた
「手塚?」
「見本だ。」
一言、呟いたあとスラスラと書かれていく文字を順に読んでいく
お…ま…え…が…す…、きって
私の大好きな手塚の字はひらがなで“おまえがすきだ”と確かにそう書かれていた
私が書いた手塚の名前からなぜ告白に繋がるのか
呆然と何度も何度も読み直していれば左側からすっとシャーペンを差し出される
「書いてみろ。」
「あ、はい。」
まるで先生かのような威圧感?に思わず姿勢を正し紙に向き直る
緊張しているせいでシャーペンを持つ手は震えているが手塚が書いてくれた見本を見ながら一文字一文字丁寧に書いていく
ただ一言
わたしもすきです、と
そこに左手を添える
(想いの籠ったその4文字は) (一番綺麗に書けた)
1/2ページ