ハートの国のアリス(代理)。
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さて、遊園地にやってきたアリスは、早速〇〇をある場所へと連れて行った。
遊具を尻目にオーナーの屋敷を訪ね、ある一室に入ると、迷いなくクローゼットを開く。
「今度はこれでチャレンジしましょう!」
「わー……絶対駄目なやつだ」
棒読みで感想を述べる。ついに来たか、と思う。
〇〇自身だけでは限界があると薄々感じていたが、いざ目の前にメイド服を差し出されると…。
コスチュームに頼るのも痛々しい、が、やる気満々のアリスには逆らえない。
遠慮なく服を脱がしてくる綺麗な細い指に、諾々と従う。
アリスが友人であるはずの余所者をどうしたいのか、さっぱり不明である。
だが、こんなにも楽しげな彼女を間近で見られるのは、まあ悪くない。
「――でも、さすがにこれはないわな…」
思わずそう呟いてしまうほど、ありえないものが出来上がってしまった。
姿見の前に立った〇〇は濁った目をしていたが、後ろから覗き込むアリスは上出来だと笑顔だった。
「いざというときのために用意しておいて正解ね」
アリス=リデル。この赤い世界のヒロインだけのことはある。なかなか恐ろしい子だ。
何故遊園地のオーナーの屋敷に、用意周到にこんなものがあったのか。
以前、アリスがゴーランドと交流した際、〇〇のことが話題になったという。
女らしからぬ飾り気のない〇〇には、どんな服装が似合うだろう。
そんな議題で意外なほど盛り上がったそうで、ゴーランドは実際にさまざまな服を取り揃えたらしい。
その中のひとつがこのメイド服だったというわけだ。金の無駄遣いでしかない。
「私がちゃんと見張ってたから大丈夫、へんてこな服は選んでないわよ?」
「そりゃどうも…」
ありがたい気遣いに涙が出そうだ。そこにあるクローゼットを覗く勇気はない。
「さっ、準備もできたことだし、張り切って行きましょうか!」
るんるんと軽やかな足取りの少女は、しっかりと〇〇の手を握っていた。
(なるほど、逃走を許す気はゼロってわけね…)
毎回律儀に繋がれる手を今さら振り解く気力は、〇〇には残されていなかった。
哀れなターゲットにされるのは、遊園地のオーナーか、居候のチェシャ猫か。
どちらにしろご愁傷様だが、一番同情されるべきは〇〇なので、勘弁してもらいたい。
「私としてはボリスにぶつけてみたいのよねー…」
周囲を見渡しながら、アリスは言う。〇〇は物理的なほうなら任せろと思ったが、
「なんでボリスなんだ?」
「だって、ゴーランドはこの服のことを知ってるでしょ?どうせなら初見のほうが楽しいもの」
「ああ…」
「それに、日頃の仕返しをするなら、ボリスのほうが価値があるわ」
それはつまり、日頃から猫になにかしらされていると。なにそれ気になる!
〇〇の目が活気を帯びた。今すぐ彼女をどこかに連れ込んで、根掘り葉掘り聞き出したい。
しかし、まだやるべきことがある。よし、手早く済ませよう。
〇〇が自分へのご褒美を設け、気合いを入れ直したとき、アリスがあっと声を上げた。
視線を追うと、遠くに目を引く山吹色が見えた。ゴーランドだ。
狙っていたボリスではなかったが、アリスの合図を受けて〇〇は歩き出した。
いつもより足元が涼しい。色気のないシューズもメイド服に合うものに変えたため、若干歩きづらかった。
(しっかし、ゴーランドがアリスと一緒に用意した服だしなあ…)
着るだけではインパクトに欠ける。どうしたら相手の心を動かせるだろう。
やはり服装に見合った言動で挑むべきか。こりゃ吐き気との勝負になりそうだ。
〇〇は静かに背後からゴーランドに歩み寄った。不意を衝くため、三つ編みの付け根をじっと見据え――…そして。
「ご機嫌よう、オーナー」
メイドとしての第一声。なにか違う。これじゃお嬢様かセレブっぽい。
「ご、ゴキゲンヨウ…?って、〇〇かよ!」
振り向いたゴーランドは大声で突っ込んだ。おう、〇〇という名のメイドさんだぞ。
「どこの貴婦人に声をかけられたのかと思っちまったぜ…」
びっくりさせることには成功したが、〇〇が期待していたものとは種類が違った。
ゴーランドはコスプレ姿の余所者を見てすぐに気がついた。
「あんたそれ、俺とアリスが選んだメイド服か…!」
「そうらしいですね。ありがたく着させてもらいましたよ、ご主人様」
「ご主人様ぁ?」
今度は素っ頓狂な声を出す。忙しない人だ。
しかし彼が動揺しているうちに畳みかける必要がある。何事も勢いは大切なのだ。
〇〇はおもむろにスカートの裾を摘んでみせた。ストッキングに包まれた脚が露になる。
「だって、あたしに着せたくて用意したんでしょう。だったらアナタがあたしのご主人様だ」
「ちょっ、ちょっと待て…」
「どうしたんですご主人様。あたしはアナタのメイドです。心尽くしのご奉仕をさせていただきますよ、ご主人様?」
ご主人様を殊更強調し、もう少し、裾を持ち上げる。膝よりさらに上部がゴーランドの目に晒された。
もしガーターベルトが見えようものなら確実にアウトだろう。
ここは人目の多い遊園地だ。痴女と言われてもしかたのない振る舞いである。
だが、〇〇にはこういった力技しかないのだ。恥などどこかに落としてきた。
捨て身で勝負に出たおかげで、気の毒なターゲットはかなり慌て出した。
スカートを掴む〇〇の両手を必死に押さえて、〇〇の代わりに周囲の目を過剰に気にしながら、
「なんだよ、ドッキリか?ドッキリなんだよなっ?なんでもいい、頼むからここではやめてくれ…!」
「じゃあご主人様のお部屋で?二人っきりでやります?」
とうとうゴーランドは太い悲鳴を上げた。同時に〇〇を強引に横抱きにする。
とにかく人気のないところに逃げたいようで、彼は〇〇を道連れに猛然と走り出した。
予想外の事態に、振り落とされてはたまらないとゴーランドにしがみついたが、
(あっ、アリスは……!)
肝心のアリスは何処へ、と自由になる目を走らせれば。
〇〇の視界を過ぎった青いエプロンドレスの少女は、ぐっと親指を立てていた。
彼女は、かつてないほど最高の笑顔で〇〇を見送ったという。もうやだー。
end。→あとがき
遊具を尻目にオーナーの屋敷を訪ね、ある一室に入ると、迷いなくクローゼットを開く。
「今度はこれでチャレンジしましょう!」
「わー……絶対駄目なやつだ」
棒読みで感想を述べる。ついに来たか、と思う。
〇〇自身だけでは限界があると薄々感じていたが、いざ目の前にメイド服を差し出されると…。
コスチュームに頼るのも痛々しい、が、やる気満々のアリスには逆らえない。
遠慮なく服を脱がしてくる綺麗な細い指に、諾々と従う。
アリスが友人であるはずの余所者をどうしたいのか、さっぱり不明である。
だが、こんなにも楽しげな彼女を間近で見られるのは、まあ悪くない。
「――でも、さすがにこれはないわな…」
思わずそう呟いてしまうほど、ありえないものが出来上がってしまった。
姿見の前に立った〇〇は濁った目をしていたが、後ろから覗き込むアリスは上出来だと笑顔だった。
「いざというときのために用意しておいて正解ね」
アリス=リデル。この赤い世界のヒロインだけのことはある。なかなか恐ろしい子だ。
何故遊園地のオーナーの屋敷に、用意周到にこんなものがあったのか。
以前、アリスがゴーランドと交流した際、〇〇のことが話題になったという。
女らしからぬ飾り気のない〇〇には、どんな服装が似合うだろう。
そんな議題で意外なほど盛り上がったそうで、ゴーランドは実際にさまざまな服を取り揃えたらしい。
その中のひとつがこのメイド服だったというわけだ。金の無駄遣いでしかない。
「私がちゃんと見張ってたから大丈夫、へんてこな服は選んでないわよ?」
「そりゃどうも…」
ありがたい気遣いに涙が出そうだ。そこにあるクローゼットを覗く勇気はない。
「さっ、準備もできたことだし、張り切って行きましょうか!」
るんるんと軽やかな足取りの少女は、しっかりと〇〇の手を握っていた。
(なるほど、逃走を許す気はゼロってわけね…)
毎回律儀に繋がれる手を今さら振り解く気力は、〇〇には残されていなかった。
哀れなターゲットにされるのは、遊園地のオーナーか、居候のチェシャ猫か。
どちらにしろご愁傷様だが、一番同情されるべきは〇〇なので、勘弁してもらいたい。
「私としてはボリスにぶつけてみたいのよねー…」
周囲を見渡しながら、アリスは言う。〇〇は物理的なほうなら任せろと思ったが、
「なんでボリスなんだ?」
「だって、ゴーランドはこの服のことを知ってるでしょ?どうせなら初見のほうが楽しいもの」
「ああ…」
「それに、日頃の仕返しをするなら、ボリスのほうが価値があるわ」
それはつまり、日頃から猫になにかしらされていると。なにそれ気になる!
〇〇の目が活気を帯びた。今すぐ彼女をどこかに連れ込んで、根掘り葉掘り聞き出したい。
しかし、まだやるべきことがある。よし、手早く済ませよう。
〇〇が自分へのご褒美を設け、気合いを入れ直したとき、アリスがあっと声を上げた。
視線を追うと、遠くに目を引く山吹色が見えた。ゴーランドだ。
狙っていたボリスではなかったが、アリスの合図を受けて〇〇は歩き出した。
いつもより足元が涼しい。色気のないシューズもメイド服に合うものに変えたため、若干歩きづらかった。
(しっかし、ゴーランドがアリスと一緒に用意した服だしなあ…)
着るだけではインパクトに欠ける。どうしたら相手の心を動かせるだろう。
やはり服装に見合った言動で挑むべきか。こりゃ吐き気との勝負になりそうだ。
〇〇は静かに背後からゴーランドに歩み寄った。不意を衝くため、三つ編みの付け根をじっと見据え――…そして。
「ご機嫌よう、オーナー」
メイドとしての第一声。なにか違う。これじゃお嬢様かセレブっぽい。
「ご、ゴキゲンヨウ…?って、〇〇かよ!」
振り向いたゴーランドは大声で突っ込んだ。おう、〇〇という名のメイドさんだぞ。
「どこの貴婦人に声をかけられたのかと思っちまったぜ…」
びっくりさせることには成功したが、〇〇が期待していたものとは種類が違った。
ゴーランドはコスプレ姿の余所者を見てすぐに気がついた。
「あんたそれ、俺とアリスが選んだメイド服か…!」
「そうらしいですね。ありがたく着させてもらいましたよ、ご主人様」
「ご主人様ぁ?」
今度は素っ頓狂な声を出す。忙しない人だ。
しかし彼が動揺しているうちに畳みかける必要がある。何事も勢いは大切なのだ。
〇〇はおもむろにスカートの裾を摘んでみせた。ストッキングに包まれた脚が露になる。
「だって、あたしに着せたくて用意したんでしょう。だったらアナタがあたしのご主人様だ」
「ちょっ、ちょっと待て…」
「どうしたんですご主人様。あたしはアナタのメイドです。心尽くしのご奉仕をさせていただきますよ、ご主人様?」
ご主人様を殊更強調し、もう少し、裾を持ち上げる。膝よりさらに上部がゴーランドの目に晒された。
もしガーターベルトが見えようものなら確実にアウトだろう。
ここは人目の多い遊園地だ。痴女と言われてもしかたのない振る舞いである。
だが、〇〇にはこういった力技しかないのだ。恥などどこかに落としてきた。
捨て身で勝負に出たおかげで、気の毒なターゲットはかなり慌て出した。
スカートを掴む〇〇の両手を必死に押さえて、〇〇の代わりに周囲の目を過剰に気にしながら、
「なんだよ、ドッキリか?ドッキリなんだよなっ?なんでもいい、頼むからここではやめてくれ…!」
「じゃあご主人様のお部屋で?二人っきりでやります?」
とうとうゴーランドは太い悲鳴を上げた。同時に〇〇を強引に横抱きにする。
とにかく人気のないところに逃げたいようで、彼は〇〇を道連れに猛然と走り出した。
予想外の事態に、振り落とされてはたまらないとゴーランドにしがみついたが、
(あっ、アリスは……!)
肝心のアリスは何処へ、と自由になる目を走らせれば。
〇〇の視界を過ぎった青いエプロンドレスの少女は、ぐっと親指を立てていた。
彼女は、かつてないほど最高の笑顔で〇〇を見送ったという。もうやだー。
end。→あとがき