救いを断たれた世界の何処かで。
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ペーターはなにが正常でなにが異常なのか、判断できなくなってしまっている。
彼が一心に愛を捧げる少女の言葉なら、もしかしたら目を覚まさせることができるかもしれない。
どれほど捻じ曲がったものでも、憎悪の名を被せても、〇〇に注ぐものが“愛情”であるはずがないのだ。
「アリス。アリス、お願い…」
ペーターを元に戻して。元通りの、あたしが好きだったあの世界を取り戻してくれ。
弱々しく切実に懇願を繰り返す〇〇は、アリスの髪を撫でるペーターの手が止まったことに気づかなかった。
無意味な呼びかけをしても、男の神経を逆撫でするだけだ。そう悟ったときにはすでに、剣呑な赤い瞳が〇〇を睨めつけていた。
「……どうしてやめるんです。好きなだけ、呼べばいいでしょう?」
口を噤んだ〇〇に、ペーターは口調だけは穏やかに言った。
おもむろに、腕に抱いていた少女を丁寧にソファーに横たえる。
その足で殊更ゆっくりとやってきた彼は、息がつまるような威圧感を放っていた。
「呼べばいいじゃないですか。その口で、僕以外の人間の名を」
「ぅ、ぐ……っ」
ペーターは後ずさろうとした〇〇の首輪を思いきり引いて、苦痛に歪んだ顔を真上から見下ろした。
「そんな小さな声では彼女に届きませんよ。…どうせなら、もっと近くで呼んではどうです」
〇〇の手ではどうしても外れない鎖を首輪からあっさり解いて、ペーターは〇〇の腕を掴んだ。
引きずるようにして歩かされる。〇〇が身に纏うよう強要された、実用的でない華奢なワンピースの裾が、心許なくひらひらと舞った。
突き飛ばされるように放り出され、〇〇はソファーの前に膝をついた。懐かしささえ感じる少女を目の前にして、息を呑む。
「アリス……?」
近くで見るアリスの表情は、遠目で見たものよりも衝撃的だった。
やはり瞬きをするだけで、呼吸はあまりにも静かだ。僅かに開いた唇が人形めいている。
いっそう不安になった〇〇の声を受けて、背後に立ったペーターは事もなげに答えた。
「数時間もすれば薬は切れます。副作用もなければ後遺症もありません」
「っ、そういう問題じゃない…!」
どれほど安全性が高くとも、そういった薬を彼女に使用しようと思う時点でおかしいのだ。
〇〇は背後を振り仰いだが、平然としたペーターの顔には後ろ暗さなど欠片もなかった。
それどころか、アリスの願いを叶えられたという独り善がりな充実感さえ窺える。
いったいどこまで〇〇を絶望に追い立てれば気が済むのだろうか。
ペーターは後ろから覆いかぶさるように床に膝をつくと、〇〇の身体に腕を回した。
片腕で肩を抱き込んで動きを制限し、黒髪に隠れた耳朶を探ってキスをする。
「……っ」
「消毒、しましょうか」
一人では脱ぐことのできない仕様は、ペーターの考案なのか。
彼はワンピースの複雑な留め具を優雅な手つきで外して、背中のファスナーをじりじりと下げていく。
消毒の意味するところを悟って、〇〇は信じられないとばかりに目を瞠った。
「っ……い、」
「くれぐれも、嫌だなんて言って僕を悲しませないでくださいね。ぐちゃぐちゃに抱き殺してしまいたくなりますから」
さらりと告げられた言葉の効力は十分だった。〇〇はぐっと口を閉じる。
その先に解放が待っていようと、そんなおぞましい殺され方はなにがなんでもお断りだ。
嫌だ、の言葉の代わりに〇〇は懸命に言い募った。
「ペーター、待って。アリスが…っ」
「あなたが望んだことでしょう?彼女の名を呼ぶことを、特別に許してあげます。さ、好きなだけ呼びなさい」
あっという間に露になった白い背中を、唇が行き来して愛撫する。
抵抗されない自信があるのか、あるいは抵抗を無意味だと思っているのか、腕は肩から離れていた。
両手は緩んだ衣服の隙間から前方に回り、慎ましやかな乳房を掴む。
弄ばれる感覚を耐えるように、〇〇はソファーに縋りついた。目の前にはアリスがいる。意識を暗闇に沈めて、虚ろな目をしたアリスが。
「アリ、ス……っ」
無遠慮な指が胸の先端を転がし、摘み上げる。
幾度にも繰り返されてきた行為が〇〇の感度を高めたのは疑いようがなかった。
ペーターの手によって、彼の望むとおりの変化を起こし、喜ばせた。
気遣いの愛撫はもどかしさと紙一重だ。じわりじわりと高ぶっていく身を誤魔化すために、〇〇は目の前の彼女の名を呼んだ。
切実に、縋るように、それが唯一の救いであるかのように。恋慕と錯覚してしまいそうなほどに、哀しく甘い呼び声だった。
二度、三度と繰り返すうちに、ペーターの手からは優しさが剥ぎ取られていった。焦らすことを忘れ、焦燥と激情が気遣いに取って代わった。
「――だから……これだから、僕は…っ」
「いっ、は…ぅ、アリ…」
「僕はっ……嫌だったのに…!」
心臓を握り潰すかのごとく胸を鷲掴みにして、ペーターは苦しげに吐露した。
「口を開けばアリス、アリス、アリス…!あなたはそればかりで、僕のことなんかこれっぽっちも想わない!」
「あ、あっ、ぅ…っ」
「ねえ、この部屋でなにを思いましたか。なにを考え、誰を思い浮かべましたか。あなたの頭を占めていたのはこの僕でしょう?」
「っ……う、くっ」
「僕のことだと…ここに閉じ込められてから、僕のことだけを考えるようになったと、そう言いなさい」
ワンピースの裾をたくし上げて肌を撫で回し、腿の内側に手をかけて脚を開かせる。
本来あるべき下着のないそこは、容易くペーターの手の侵入を許してしまう。
性急に指で中を荒らし、記憶どおりに弱い場所を突いて嬌声を上げさせる。
強制的に数度絶頂に追いやられれば、〇〇はソファーにぐったりと身を預けた。
しかし、休む間もなく上体を起こされた直後、そそり立つ肉茎が蜜口を押し進んできた。
「ッ、ひっ、あ…ぁっ」
あっという間に奥まで貫かれ、揺さぶられる。ソファーに爪を立てても、律動の衝撃に苦悶の声が次から次へと漏れた。
ある種の酩酊状態だった。溺れるような心地よさ――甘受する自分に吐き気がしそうだ。
また一人で達した〇〇は、伏せた顔を上げられなかった。
この指に僅かに触れているぬくもりはきっと、アリスの手。だが気持ちとは裏腹に、〇〇にはもう二度と握れそうにない。
腰の動きを止めたペーターは、やや荒くなった息遣いで〇〇の耳に囁いた。
「食事に薬を混ぜるの、やめにしましょうか」
「っ……!」
自らの欲望を埋め込んだ下腹部を撫でる手のひらは、焼けつくような熱を帯びていた。
なににも阻まれることなく、何度となく交わった、その当然の結果が来ない事実。
〇〇はうっすら気づいていたが、ペーターは初めて認めると同時に、恐るべき事態を招こうとしていた。
「そ、んな……っ」
「ええ、おそらくあなたはすぐに孕むでしょうね」
淡々と未来を述べて、ペーターは軽く腰を揺すった。確かな快感が未知の恐怖へと繋がった瞬間だった。
〇〇は上気していた顔を真っ青にして、身体を震わせた。
子供が強請るように、大人の悪質さをもって、まるで余所者を独り占めしたいがために閉じ込めた白ウサギ。
そんな人間が今さら“血の繋がった他人”を欲しいと願うなど考えられない。ならば、その目的は……。
甘い囁き声が伝えた微笑みに、この部屋で起こった今までが序章に過ぎなかったことを〇〇は知った。
(どうして……)
これから始まる生き地獄には、もはや誰の救いの手も延べられない。
「彼女が目を覚ますまでの数時間、ずっとこうしていましょうね。大丈夫、気を失っても続けてあげますから、ほら――」
反吐が出そうな甘さに身を蝕まれる。本来これを与えられるべきは。
(アリス、ねえ、あたしを解放してよ、アリス……!)
白ウサギに愛される余所者の傍らで、救いの少女はただ、瞬きを繰り返すだけ。
end。→あとがき
彼が一心に愛を捧げる少女の言葉なら、もしかしたら目を覚まさせることができるかもしれない。
どれほど捻じ曲がったものでも、憎悪の名を被せても、〇〇に注ぐものが“愛情”であるはずがないのだ。
「アリス。アリス、お願い…」
ペーターを元に戻して。元通りの、あたしが好きだったあの世界を取り戻してくれ。
弱々しく切実に懇願を繰り返す〇〇は、アリスの髪を撫でるペーターの手が止まったことに気づかなかった。
無意味な呼びかけをしても、男の神経を逆撫でするだけだ。そう悟ったときにはすでに、剣呑な赤い瞳が〇〇を睨めつけていた。
「……どうしてやめるんです。好きなだけ、呼べばいいでしょう?」
口を噤んだ〇〇に、ペーターは口調だけは穏やかに言った。
おもむろに、腕に抱いていた少女を丁寧にソファーに横たえる。
その足で殊更ゆっくりとやってきた彼は、息がつまるような威圧感を放っていた。
「呼べばいいじゃないですか。その口で、僕以外の人間の名を」
「ぅ、ぐ……っ」
ペーターは後ずさろうとした〇〇の首輪を思いきり引いて、苦痛に歪んだ顔を真上から見下ろした。
「そんな小さな声では彼女に届きませんよ。…どうせなら、もっと近くで呼んではどうです」
〇〇の手ではどうしても外れない鎖を首輪からあっさり解いて、ペーターは〇〇の腕を掴んだ。
引きずるようにして歩かされる。〇〇が身に纏うよう強要された、実用的でない華奢なワンピースの裾が、心許なくひらひらと舞った。
突き飛ばされるように放り出され、〇〇はソファーの前に膝をついた。懐かしささえ感じる少女を目の前にして、息を呑む。
「アリス……?」
近くで見るアリスの表情は、遠目で見たものよりも衝撃的だった。
やはり瞬きをするだけで、呼吸はあまりにも静かだ。僅かに開いた唇が人形めいている。
いっそう不安になった〇〇の声を受けて、背後に立ったペーターは事もなげに答えた。
「数時間もすれば薬は切れます。副作用もなければ後遺症もありません」
「っ、そういう問題じゃない…!」
どれほど安全性が高くとも、そういった薬を彼女に使用しようと思う時点でおかしいのだ。
〇〇は背後を振り仰いだが、平然としたペーターの顔には後ろ暗さなど欠片もなかった。
それどころか、アリスの願いを叶えられたという独り善がりな充実感さえ窺える。
いったいどこまで〇〇を絶望に追い立てれば気が済むのだろうか。
ペーターは後ろから覆いかぶさるように床に膝をつくと、〇〇の身体に腕を回した。
片腕で肩を抱き込んで動きを制限し、黒髪に隠れた耳朶を探ってキスをする。
「……っ」
「消毒、しましょうか」
一人では脱ぐことのできない仕様は、ペーターの考案なのか。
彼はワンピースの複雑な留め具を優雅な手つきで外して、背中のファスナーをじりじりと下げていく。
消毒の意味するところを悟って、〇〇は信じられないとばかりに目を瞠った。
「っ……い、」
「くれぐれも、嫌だなんて言って僕を悲しませないでくださいね。ぐちゃぐちゃに抱き殺してしまいたくなりますから」
さらりと告げられた言葉の効力は十分だった。〇〇はぐっと口を閉じる。
その先に解放が待っていようと、そんなおぞましい殺され方はなにがなんでもお断りだ。
嫌だ、の言葉の代わりに〇〇は懸命に言い募った。
「ペーター、待って。アリスが…っ」
「あなたが望んだことでしょう?彼女の名を呼ぶことを、特別に許してあげます。さ、好きなだけ呼びなさい」
あっという間に露になった白い背中を、唇が行き来して愛撫する。
抵抗されない自信があるのか、あるいは抵抗を無意味だと思っているのか、腕は肩から離れていた。
両手は緩んだ衣服の隙間から前方に回り、慎ましやかな乳房を掴む。
弄ばれる感覚を耐えるように、〇〇はソファーに縋りついた。目の前にはアリスがいる。意識を暗闇に沈めて、虚ろな目をしたアリスが。
「アリ、ス……っ」
無遠慮な指が胸の先端を転がし、摘み上げる。
幾度にも繰り返されてきた行為が〇〇の感度を高めたのは疑いようがなかった。
ペーターの手によって、彼の望むとおりの変化を起こし、喜ばせた。
気遣いの愛撫はもどかしさと紙一重だ。じわりじわりと高ぶっていく身を誤魔化すために、〇〇は目の前の彼女の名を呼んだ。
切実に、縋るように、それが唯一の救いであるかのように。恋慕と錯覚してしまいそうなほどに、哀しく甘い呼び声だった。
二度、三度と繰り返すうちに、ペーターの手からは優しさが剥ぎ取られていった。焦らすことを忘れ、焦燥と激情が気遣いに取って代わった。
「――だから……これだから、僕は…っ」
「いっ、は…ぅ、アリ…」
「僕はっ……嫌だったのに…!」
心臓を握り潰すかのごとく胸を鷲掴みにして、ペーターは苦しげに吐露した。
「口を開けばアリス、アリス、アリス…!あなたはそればかりで、僕のことなんかこれっぽっちも想わない!」
「あ、あっ、ぅ…っ」
「ねえ、この部屋でなにを思いましたか。なにを考え、誰を思い浮かべましたか。あなたの頭を占めていたのはこの僕でしょう?」
「っ……う、くっ」
「僕のことだと…ここに閉じ込められてから、僕のことだけを考えるようになったと、そう言いなさい」
ワンピースの裾をたくし上げて肌を撫で回し、腿の内側に手をかけて脚を開かせる。
本来あるべき下着のないそこは、容易くペーターの手の侵入を許してしまう。
性急に指で中を荒らし、記憶どおりに弱い場所を突いて嬌声を上げさせる。
強制的に数度絶頂に追いやられれば、〇〇はソファーにぐったりと身を預けた。
しかし、休む間もなく上体を起こされた直後、そそり立つ肉茎が蜜口を押し進んできた。
「ッ、ひっ、あ…ぁっ」
あっという間に奥まで貫かれ、揺さぶられる。ソファーに爪を立てても、律動の衝撃に苦悶の声が次から次へと漏れた。
ある種の酩酊状態だった。溺れるような心地よさ――甘受する自分に吐き気がしそうだ。
また一人で達した〇〇は、伏せた顔を上げられなかった。
この指に僅かに触れているぬくもりはきっと、アリスの手。だが気持ちとは裏腹に、〇〇にはもう二度と握れそうにない。
腰の動きを止めたペーターは、やや荒くなった息遣いで〇〇の耳に囁いた。
「食事に薬を混ぜるの、やめにしましょうか」
「っ……!」
自らの欲望を埋め込んだ下腹部を撫でる手のひらは、焼けつくような熱を帯びていた。
なににも阻まれることなく、何度となく交わった、その当然の結果が来ない事実。
〇〇はうっすら気づいていたが、ペーターは初めて認めると同時に、恐るべき事態を招こうとしていた。
「そ、んな……っ」
「ええ、おそらくあなたはすぐに孕むでしょうね」
淡々と未来を述べて、ペーターは軽く腰を揺すった。確かな快感が未知の恐怖へと繋がった瞬間だった。
〇〇は上気していた顔を真っ青にして、身体を震わせた。
子供が強請るように、大人の悪質さをもって、まるで余所者を独り占めしたいがために閉じ込めた白ウサギ。
そんな人間が今さら“血の繋がった他人”を欲しいと願うなど考えられない。ならば、その目的は……。
甘い囁き声が伝えた微笑みに、この部屋で起こった今までが序章に過ぎなかったことを〇〇は知った。
(どうして……)
これから始まる生き地獄には、もはや誰の救いの手も延べられない。
「彼女が目を覚ますまでの数時間、ずっとこうしていましょうね。大丈夫、気を失っても続けてあげますから、ほら――」
反吐が出そうな甘さに身を蝕まれる。本来これを与えられるべきは。
(アリス、ねえ、あたしを解放してよ、アリス……!)
白ウサギに愛される余所者の傍らで、救いの少女はただ、瞬きを繰り返すだけ。
end。→あとがき