毒を発散する人、蓄積する人。
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ここは確かにハートの城であったはずだ。ハートの女王が統べる城の、客室に面した長い廊下。
その真ん中で、野営用だろうと思われるテントが張られ、おまけに火まで焚かれている。
「……」
「おっ、〇〇!ちょうどいいところに…」
〇〇はまずいものを見たとばかりに、くるりと方向転換をした。あたしはなにも見なかった。なにも聞かなかった。
自分の都合に合わせて記憶を修正するも虚しく、がしりと肩を掴まれた〇〇の足は意に反して止まってしまった。
「なにもあからさまに立ち去ろうとしなくてもいいだろう?」
「……ああ、いたんだ、エース。視界に入らなかったよ」
「あはははっ、ばっちり目を合わせておいてよく言うぜ!」
肩を抱かれ、遠ざかりたかったテントに逆戻りさせられる。
焚火に当たるように勧められたが、丁重にお断りした。流されてはいけない。このまま付き合わされる羽目になりかねない。
用心に心持ち構える〇〇とは対照的に、騎士はなんとも楽しげだ。
「やっぱり一人より二人だよなあ!ここのところ、ずっと一人きりでさすがに飽きてきてたんだ」
「…飽きがくるぐらい、ここでずっとキャンプしてるわけ?」
「いや、場所は変えてるよ。移動しながらね。まだたどり着けないけど、着実に近づいているはずなんだ」
「……どこに?」
なんとなく予想はつくものの、〇〇は一応友人としての付き合い程度に会話を繋げた。
案の定「自室にだよ」と答えたエースは、〇〇の呆れた視線をものともせずに、
「いや~、久しぶりに帰ろうと思ったんだけどさ、どういうわけか予想以上に時間がかかっちゃって…」
「どういうわけもない、ただ迷子になってるだけでしょーが」
そうでなければ、そのような長期戦になるはずがない。
いい加減その極度の方向音痴を自覚してはどうだろうか。そうすれば傍迷惑な冒険に付き合わされることもなくなるだろうに。
エースが自重というものを理解していればの話だが。
懲りないハートの騎士は、例によって“旅”という便利な言葉で現状を片づけた。
「ところで、〇〇はこんなところでなにしてるんだ?あ、俺に用があったとか」
「それはない。…あたしは、アリスに会いに行くところ」
どうやら彼女がペーターの部屋にいるらしいという情報を得たのである。
邪魔をするのは忍びない。かといって、おいしい組み合わせを見過ごすのは非常にもったいない。
ちょっと覗くぐらいなら許されるかなと思い、〇〇は実行に移すべく目的地に向かっているところだったのだ。
足止めを食う時間も惜しいのだと、エースには暗に伝えたつもりだ。
だというのにこの男、こちらの事情をさらっと流すと見事に爽やかのみで構成された笑顔になった。
「アリスにならいつでも会えるだろ?今日のところは諦めてよ」
「…は?なんであたしが」
「俺は同じ場所に留まることが少ないから、君になかなか会えない。ここで会えたのは旅の神様のお導きだと思うんだ」
なんだその神様は。胡散臭い。ついでにそんなものを信仰するエースも胡散臭い。
「じゃあ、その人に言っといて。お導きは間違いでしたってね」
すげなく言って通り過ぎようとする、その肩をエースはきっちり掴んだ。
「いや、これは運命だよ。君はここで俺とキャンプしなくちゃ。従わないとなにが起こるかわからないぜ?」
「……。新手の脅しか」
嫌がる相手を引き止めようなんて、無駄な時間を費やさなくていいのに。
エースの粘り強さに、〇〇の気持ちが同情的に傾き出した。
とりあえず少し付き合って、早々に飽きられるほうが得策なのではないだろうか。
「ちょっとだけでいいから、俺の相手をしてくれよ」
「…本当に、ちょっとだけでいい?」
「もちろん。無理に引き止めようなんてしないから、な?」
現に足止めしながら言われても、信憑性が薄いのだが。まあ、いざとなったら制止を振り切ればいいだけのことだ。
しかたなさそうに頷いた〇〇に、エースの唇が新たに無害そうな笑みを形作った。
その真ん中で、野営用だろうと思われるテントが張られ、おまけに火まで焚かれている。
「……」
「おっ、〇〇!ちょうどいいところに…」
〇〇はまずいものを見たとばかりに、くるりと方向転換をした。あたしはなにも見なかった。なにも聞かなかった。
自分の都合に合わせて記憶を修正するも虚しく、がしりと肩を掴まれた〇〇の足は意に反して止まってしまった。
「なにもあからさまに立ち去ろうとしなくてもいいだろう?」
「……ああ、いたんだ、エース。視界に入らなかったよ」
「あはははっ、ばっちり目を合わせておいてよく言うぜ!」
肩を抱かれ、遠ざかりたかったテントに逆戻りさせられる。
焚火に当たるように勧められたが、丁重にお断りした。流されてはいけない。このまま付き合わされる羽目になりかねない。
用心に心持ち構える〇〇とは対照的に、騎士はなんとも楽しげだ。
「やっぱり一人より二人だよなあ!ここのところ、ずっと一人きりでさすがに飽きてきてたんだ」
「…飽きがくるぐらい、ここでずっとキャンプしてるわけ?」
「いや、場所は変えてるよ。移動しながらね。まだたどり着けないけど、着実に近づいているはずなんだ」
「……どこに?」
なんとなく予想はつくものの、〇〇は一応友人としての付き合い程度に会話を繋げた。
案の定「自室にだよ」と答えたエースは、〇〇の呆れた視線をものともせずに、
「いや~、久しぶりに帰ろうと思ったんだけどさ、どういうわけか予想以上に時間がかかっちゃって…」
「どういうわけもない、ただ迷子になってるだけでしょーが」
そうでなければ、そのような長期戦になるはずがない。
いい加減その極度の方向音痴を自覚してはどうだろうか。そうすれば傍迷惑な冒険に付き合わされることもなくなるだろうに。
エースが自重というものを理解していればの話だが。
懲りないハートの騎士は、例によって“旅”という便利な言葉で現状を片づけた。
「ところで、〇〇はこんなところでなにしてるんだ?あ、俺に用があったとか」
「それはない。…あたしは、アリスに会いに行くところ」
どうやら彼女がペーターの部屋にいるらしいという情報を得たのである。
邪魔をするのは忍びない。かといって、おいしい組み合わせを見過ごすのは非常にもったいない。
ちょっと覗くぐらいなら許されるかなと思い、〇〇は実行に移すべく目的地に向かっているところだったのだ。
足止めを食う時間も惜しいのだと、エースには暗に伝えたつもりだ。
だというのにこの男、こちらの事情をさらっと流すと見事に爽やかのみで構成された笑顔になった。
「アリスにならいつでも会えるだろ?今日のところは諦めてよ」
「…は?なんであたしが」
「俺は同じ場所に留まることが少ないから、君になかなか会えない。ここで会えたのは旅の神様のお導きだと思うんだ」
なんだその神様は。胡散臭い。ついでにそんなものを信仰するエースも胡散臭い。
「じゃあ、その人に言っといて。お導きは間違いでしたってね」
すげなく言って通り過ぎようとする、その肩をエースはきっちり掴んだ。
「いや、これは運命だよ。君はここで俺とキャンプしなくちゃ。従わないとなにが起こるかわからないぜ?」
「……。新手の脅しか」
嫌がる相手を引き止めようなんて、無駄な時間を費やさなくていいのに。
エースの粘り強さに、〇〇の気持ちが同情的に傾き出した。
とりあえず少し付き合って、早々に飽きられるほうが得策なのではないだろうか。
「ちょっとだけでいいから、俺の相手をしてくれよ」
「…本当に、ちょっとだけでいい?」
「もちろん。無理に引き止めようなんてしないから、な?」
現に足止めしながら言われても、信憑性が薄いのだが。まあ、いざとなったら制止を振り切ればいいだけのことだ。
しかたなさそうに頷いた〇〇に、エースの唇が新たに無害そうな笑みを形作った。