手折られぬ君を翻弄。
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「もう大丈夫だ。助けにきたよ、〇〇」
大好きな声だ、と心が告げた。〇〇は急速に“現実”が戻ってくるのを感じた。
顔をそっと上げれば、眼帯をつけた綺麗な顔立ちがあった。
「ナイトメア……?」
「そう、私だ」
いつになく弱々しい口調に、夢魔は柔らかく頷いた。
彼はしっかりと〇〇の腰に腕を回し、“夢”の空間を漂っていた。
ユリウスもブラッドもいない。逃れられたのだ、と確信した途端、体中の力が一気に抜け落ちた。
「約束はちゃんと守っただろう?」
肩に額を預ける〇〇に、ナイトメアがどこか誇らしげに笑う。
約束。“あのとき”、夢の中で〇〇の拳をかろうじて避けた彼は、今度から〇〇が困っているときには助けることを約束したのだ。
「私は今、自分が夢魔だということに感謝しているよ。おかげで、都合よく君を救えるのは私だけなんだからね」
「……反対に、都合よく助けてくれない場合もあるけどな」
〇〇がぼそっと呟くと、ナイトメアは「うっ」と少したじろいだ。
「お、怒らないでくれ。ほら、今回は約束どおり君を攫ってきたじゃないか」
「うん、わかってる」
〇〇は弁解を快く受け入れ、ありがとうと囁いた。
ナイトメアがあの悪夢――時計屋と帽子屋を相手にあれこれした、否、された――を傍観していたことを、根に持っているわけではなかった。
ただ気恥ずかしさから気を逸らすために、わざと不機嫌を装ってみただけだ。
「あー…ユリウスと違って、あたしは酔ったつもりはなかったんだけどなー」
〇〇は明るくそう言うと、不意に目の前にある首筋に腕を回した。
なんとなく気分で抱きついたのだが、不意打ちに狼狽える身体が面白く、彼の肩口に頬を当てて笑い声を漏らした。
「よ、酔ってるだろう。確実に普段の君じゃないぞっ?」
「あはは。酔ってない、酔ってない」
「酔っ払いの常套句を…」
と呆れつつ、ナイトメアも離れようとはしなかった。
〇〇は救いの手を伸べてくれたナイトメアに、感謝の気持ちを込めて笑った。
「窮地を救うヒーローみたいで、かっこよかったよ」
「それじゃあ、君はさしずめ囚われのお姫様かい?……柄じゃないな」
「それを言うならナイトメアも、ヒーローって柄じゃないでしょーよ」
きっちり切り返されたナイトメアは瞬くと、ふっと楽しげな表情を〇〇に近づけた。
「――確かに、そのとおりだよ」
ふわりと夢魔の口が額に落ち、〇〇は緩やかに眠りへと誘われた。
いい夢を、と最後に唇に触れたものはなんだったのだろう。
(夢魔に現実から救い出してもらって、夢の中でまた夢を見るの?)
頭がこんがらがりそうなことを思いながら、〇〇は目蓋を下ろす。
次に目覚めたときにはきっと、いつもどおりの日常がそこにあるのだ。
end。→あとがき
大好きな声だ、と心が告げた。〇〇は急速に“現実”が戻ってくるのを感じた。
顔をそっと上げれば、眼帯をつけた綺麗な顔立ちがあった。
「ナイトメア……?」
「そう、私だ」
いつになく弱々しい口調に、夢魔は柔らかく頷いた。
彼はしっかりと〇〇の腰に腕を回し、“夢”の空間を漂っていた。
ユリウスもブラッドもいない。逃れられたのだ、と確信した途端、体中の力が一気に抜け落ちた。
「約束はちゃんと守っただろう?」
肩に額を預ける〇〇に、ナイトメアがどこか誇らしげに笑う。
約束。“あのとき”、夢の中で〇〇の拳をかろうじて避けた彼は、今度から〇〇が困っているときには助けることを約束したのだ。
「私は今、自分が夢魔だということに感謝しているよ。おかげで、都合よく君を救えるのは私だけなんだからね」
「……反対に、都合よく助けてくれない場合もあるけどな」
〇〇がぼそっと呟くと、ナイトメアは「うっ」と少したじろいだ。
「お、怒らないでくれ。ほら、今回は約束どおり君を攫ってきたじゃないか」
「うん、わかってる」
〇〇は弁解を快く受け入れ、ありがとうと囁いた。
ナイトメアがあの悪夢――時計屋と帽子屋を相手にあれこれした、否、された――を傍観していたことを、根に持っているわけではなかった。
ただ気恥ずかしさから気を逸らすために、わざと不機嫌を装ってみただけだ。
「あー…ユリウスと違って、あたしは酔ったつもりはなかったんだけどなー」
〇〇は明るくそう言うと、不意に目の前にある首筋に腕を回した。
なんとなく気分で抱きついたのだが、不意打ちに狼狽える身体が面白く、彼の肩口に頬を当てて笑い声を漏らした。
「よ、酔ってるだろう。確実に普段の君じゃないぞっ?」
「あはは。酔ってない、酔ってない」
「酔っ払いの常套句を…」
と呆れつつ、ナイトメアも離れようとはしなかった。
〇〇は救いの手を伸べてくれたナイトメアに、感謝の気持ちを込めて笑った。
「窮地を救うヒーローみたいで、かっこよかったよ」
「それじゃあ、君はさしずめ囚われのお姫様かい?……柄じゃないな」
「それを言うならナイトメアも、ヒーローって柄じゃないでしょーよ」
きっちり切り返されたナイトメアは瞬くと、ふっと楽しげな表情を〇〇に近づけた。
「――確かに、そのとおりだよ」
ふわりと夢魔の口が額に落ち、〇〇は緩やかに眠りへと誘われた。
いい夢を、と最後に唇に触れたものはなんだったのだろう。
(夢魔に現実から救い出してもらって、夢の中でまた夢を見るの?)
頭がこんがらがりそうなことを思いながら、〇〇は目蓋を下ろす。
次に目覚めたときにはきっと、いつもどおりの日常がそこにあるのだ。
end。→あとがき