手折られぬ君を翻弄。
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ユリウスの仕事にひと区切りついたのを察して、食事に行こうと誘ったのは〇〇だった。
不意を突かれたように顔を上げ、凝視してくる表情に首を傾げる。あたしはなにかおかしなことを言っただろうか。
「ほら。食事に行く約束、してたじゃない」
「……いつの話だ、それは」
思い当たることがあったに違いない。
ユリウスは一瞬その思いを過ぎらせたが、むすっと口を曲げるとそっぽを向いてしまった。
(あれ…?覚えてなかった?)
二人の間で交わした約束なのだ。一方的な満足で果たしたとしても意味がない。
〇〇は逸らされた視線の先に回り込んで、実のところどうなのだと目で探ろうとした。
意地でも目を合わせようとしないものだから、両手でその顔を掴んで。
ぎょっとしたのはユリウスだったが、不覚にも、〇〇のほうも顔の近さにやや狼狽した。
重しをつけて深く深くに沈めようとしていた記憶。
〇〇は目覚めと共にそれを頭の中から削除することに決め、同居人にも一切悟らせないように努めた。
ここで自滅してはならない。
すぐに笑顔を繕えば、目論見どおり相手の動揺に掻き消された。
「忘れちゃった?ビバルディの急な呼び出しで一緒に行けなくなった、あのときのだよ」
「そ、そんな随分前のことを覚えているわけがないだろうっ」
「いつの約束かは覚えてるのに、約束した内容は覚えてないんだ?」
それもおかしな話だと言うと、ユリウスはぐっと押し黙った。ばつが悪そうにやはり視線を外す。
むすっとした顔が拗ねているそれに見えて、〇〇は思わず微笑を零すと、
「もしかして、あたしが誘うのをずっと待っててくれた?」
「ちっ、違う…!誰が…」
「ごめんってばー。そんなに楽しみにしてくれてたなんて知らなくてさ。なかなか言い出すタイミングが掴めなかったんだ」
実は昨夜見た夢がきっかけとなったなど、誰が知っているだろう。
欲望が夢に影響した結果好きな子に不埒なことを致してしまったのなら、まだ情状酌量の余地があるといえよう。
しかし〇〇は、そういった感情を露ほども抱かぬ相手(しかも世話になっている同居人)を出演させてしまったことに、少なからず後ろめたさを感じていた。
確かにユリウスに対して“好意”はあるが、ああいう肉体的な接触を求めるそれではない。
(まあ、自分の気持ちを軽くするために、約束を引っ張り出して利用するのもどうかと思うけど)
まさか詫びの意味も兼ねて食事に誘っているとはユリウスも知るまい。
「ね、一緒に行こ?嫌なら嫌でいいから、でも今回だけあたしのわがままに付き合うと思って、な?」
「……嫌だとは言っていない」
我知らず滲んだ懇願の響きを、ユリウスがどう解釈したのかはわからない。
ぼそっと言葉を返した彼は、いまだ頬を挟む〇〇の両手を掴んで外させた。
離す目的を果たした後も、何故か手を取ったままで。
「ユリウス?」
「おまえは…私と、行きたいと思っているのか?」
問いかけに、なにを今さらと〇〇は首を縦に振った。現にあたしはこうしてユリウスに声をかけているじゃないか。
「そう、か…」
「え、やっぱりあたしとは行きたくない?」
それは困る。あたしに今後もこの罪悪感を引きずっていけと?
どんな感情が顔に出ていたのか、ユリウスは「そんな顔をするな」と慰めるように手を握った。
眼差しが思いの外柔らかくて、ドキリと…心のうちを見透かされたかとぎくりとする。
形だけしかたなさそうな体(てい)を作ったユリウスは、そっと〇〇の手を解放した。
「私は少しここを片づける。おまえも出かける支度をしろ」
「…了解」
二人の心中が少々噛み合わないことにはもちろん双方気づかなかった。
不意を突かれたように顔を上げ、凝視してくる表情に首を傾げる。あたしはなにかおかしなことを言っただろうか。
「ほら。食事に行く約束、してたじゃない」
「……いつの話だ、それは」
思い当たることがあったに違いない。
ユリウスは一瞬その思いを過ぎらせたが、むすっと口を曲げるとそっぽを向いてしまった。
(あれ…?覚えてなかった?)
二人の間で交わした約束なのだ。一方的な満足で果たしたとしても意味がない。
〇〇は逸らされた視線の先に回り込んで、実のところどうなのだと目で探ろうとした。
意地でも目を合わせようとしないものだから、両手でその顔を掴んで。
ぎょっとしたのはユリウスだったが、不覚にも、〇〇のほうも顔の近さにやや狼狽した。
重しをつけて深く深くに沈めようとしていた記憶。
〇〇は目覚めと共にそれを頭の中から削除することに決め、同居人にも一切悟らせないように努めた。
ここで自滅してはならない。
すぐに笑顔を繕えば、目論見どおり相手の動揺に掻き消された。
「忘れちゃった?ビバルディの急な呼び出しで一緒に行けなくなった、あのときのだよ」
「そ、そんな随分前のことを覚えているわけがないだろうっ」
「いつの約束かは覚えてるのに、約束した内容は覚えてないんだ?」
それもおかしな話だと言うと、ユリウスはぐっと押し黙った。ばつが悪そうにやはり視線を外す。
むすっとした顔が拗ねているそれに見えて、〇〇は思わず微笑を零すと、
「もしかして、あたしが誘うのをずっと待っててくれた?」
「ちっ、違う…!誰が…」
「ごめんってばー。そんなに楽しみにしてくれてたなんて知らなくてさ。なかなか言い出すタイミングが掴めなかったんだ」
実は昨夜見た夢がきっかけとなったなど、誰が知っているだろう。
欲望が夢に影響した結果好きな子に不埒なことを致してしまったのなら、まだ情状酌量の余地があるといえよう。
しかし〇〇は、そういった感情を露ほども抱かぬ相手(しかも世話になっている同居人)を出演させてしまったことに、少なからず後ろめたさを感じていた。
確かにユリウスに対して“好意”はあるが、ああいう肉体的な接触を求めるそれではない。
(まあ、自分の気持ちを軽くするために、約束を引っ張り出して利用するのもどうかと思うけど)
まさか詫びの意味も兼ねて食事に誘っているとはユリウスも知るまい。
「ね、一緒に行こ?嫌なら嫌でいいから、でも今回だけあたしのわがままに付き合うと思って、な?」
「……嫌だとは言っていない」
我知らず滲んだ懇願の響きを、ユリウスがどう解釈したのかはわからない。
ぼそっと言葉を返した彼は、いまだ頬を挟む〇〇の両手を掴んで外させた。
離す目的を果たした後も、何故か手を取ったままで。
「ユリウス?」
「おまえは…私と、行きたいと思っているのか?」
問いかけに、なにを今さらと〇〇は首を縦に振った。現にあたしはこうしてユリウスに声をかけているじゃないか。
「そう、か…」
「え、やっぱりあたしとは行きたくない?」
それは困る。あたしに今後もこの罪悪感を引きずっていけと?
どんな感情が顔に出ていたのか、ユリウスは「そんな顔をするな」と慰めるように手を握った。
眼差しが思いの外柔らかくて、ドキリと…心のうちを見透かされたかとぎくりとする。
形だけしかたなさそうな体(てい)を作ったユリウスは、そっと〇〇の手を解放した。
「私は少しここを片づける。おまえも出かける支度をしろ」
「…了解」
二人の心中が少々噛み合わないことにはもちろん双方気づかなかった。