スキンシップ。
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端から見たらこの光景はどのように受け取られるのだろうか。甚だ疑問だ。
〇〇は真っ赤なコートの肩に両手を置いた状態でそう思った。すると散漫した意識を咎めるように、ぐいと腰を持って行かれた。
「今、他のことを考えてただろ?ちゃんと俺だけを見てくれないと駄目だよ」
「はあ」
気のない返事をして、〇〇は同じ空間にいるもう一人に視線を向けた。
先刻勝手にやってろと作業に戻った男は、やはり気が散るのかちらちらとこちらを見ていた。
ばっちり目が合った途端、ふいっとあからさまに逸らされた。なんだかなあ、と〇〇は溜め息をついた。おかしな事態になってるぞ。
そもそも〇〇が必要以上に騎士と接近しているのは、曰くユリウスへのレクチャーらしい。
つまり、雰囲気作りをアドバイスしてあげよう、という有難迷惑なエースの善意だった。
必然的にパートナー役に任命された〇〇も、むしろアドバイスされる側に属すると思われるのだが。
エースはまず〇〇を“恋人”に仕立てようとしているようだった。…そこでどうしてその関係をチョイスしたのかは不明だ。
「ほらほら、もっと力入れて。手を添えるより、首に腕を回してくれたほうがムードが出るぜ?」
「はあ…そうかな」
どんなポーズをとっても、このやる気のなさがすべてを台無しにしているような気がする。
一度始めたからには、もう少し付き合うべきだろう。〇〇はよいしょと両腕を持ち上げ、エースの首に巻きつけた。
「これで文句はない?」
「ん~…そうだなー」
エースはじーっと〇〇を見つめてくる。この状態で他にすることもなく、〇〇もじーっと見つめ返した。
間近で見れば見るほど整った顔立ちだとあらためて思う。さすがは恋愛ゲーム。身体も細そうに見えてしっかりしてるのな。
なんて考えていると、思案して見下ろす赤い瞳が楽しげに輝いた。
「じゃあ、もうちょっと顔を寄せて…」
「…こう?」
「そうそう。そのまま背伸びする感じで――」
バンッ!机を叩く音に気を取られ、そちらに顔を逸らした瞬間、〇〇の頬にちゅっと唇が落ちた。
は?と視線を戻せば、惜しいとエースが笑っていた。
派手に音を立てて妨害したユリウスは、不機嫌この上ない顔でエースを睨んでいた。
「なにがムード作りだ、馬鹿馬鹿しい。仕事の邪魔をするならよそでやれ」
「ははっ、妬いちゃった?」
エースは爽やかに感じ悪く笑うという器用なことをやってのけた。ああ、ユリウスがますます怖い顔になっている。
〇〇はエースから離れると、ご機嫌斜めの彼の傍に立った。
「ユリウス、ごめん。怒らないで」
「〇〇…」
申し訳なさそうな〇〇に、ユリウスの険しさが少し和らいだ、が。
「エースはアナタの数少ない友達だもんな。あたしが取っちゃって悪かったよ」
眦を下げて謝ると、何故かユリウスの表情が固まった。エースが噴き出し、肩を揺らしながら歩み寄ってきて、ぽんと彼の肩を叩いた。
ユリウスは額に手を当ててうなだれてしまった。言葉もなく意思疎通を果たした二人を見て、さすがは親友同士だと見当違いな感心をする〇〇だった。
笑いがおさまったエースは、「じゃあ次はユリウスの番だぜ!」と強引に腰を上げさせた。
「なにが私の番なんだっ」
「決まってるだろう?準備万端な〇〇を待たせるなんてかわいそうじゃないか」
「……あたしは用意もなにもしてないから、無理にさせなくてもいいんだけど」
〇〇の呟きは誰にも受け取ってもらえなかった。
背中を押し出されたユリウスが、渋々〇〇の前に立った。
やる気がないのは自分も同じだから人のことは言えない。だが、腕を組んで仁王立ち、むすりと見下ろされては少々物申したくなる。
ユリウスはそのままのユリウスで十分アリスとやっていけると思うが、僅かばかりの練習が物語に良くない展開を招くことはないだろう。
「ユリウス。腕解いて」
「なにをするつもりだ」
「なにって言われても。とにかく腕を…ああもう、いい」
わざわざ説明させないでくれと〇〇は腕を掴んで解かせ、自らその胸に身体を捩り込ませた。
ぎょっとしたユリウスが引き離そうとしてきたが、〇〇は背中に回した両手で服を鷲掴んでしがみついた。
何故そこまでむきになるのかと問われたら、単なる意地だと返しただろう。
自分から抱きつきに行くなんて、滅多なことがない限りありえない。あたしにここまでさせたのだから、逃がしてなるものか。とまあ、こんな心境なのであった。
「は、離れろ…っ」
「嫌」
びたっとくっつかれたことで、今度は対処に狼狽えたらしい。宙に浮いた手は行き場を失って不自然な動きを見せていた。
面白い、とようやく楽しみを見出した〇〇は、にんまりと笑んだ。
「ユリウスもさー、ちょっとは免疫つけといても損はないと思うよ?このくらいのことでジタバタしない」
「う…余計なお世話だ。そんなことより、軽々しく抱きつくな。それでも女か」
「性別でとやかく言われたかないね。それならユリウスだって、男ならどんと構えて、たまには自分からアリスにアタックしてみろっての」
「そこで何故あいつの名前が出てくるんだ」
足掻いても無駄な抵抗だと悟ったユリウスは、手持ち無沙汰な両腕を脇にぶら下げた。
今さらながら自ら抱きついた身体の頑丈さに性別を感じつつ、〇〇は顎を反らして視線を合わせた。
普段からすれば滅多にない至近距離に、ユリウスは目を細めた。
「だって、アリスだから」
「……理由になっていないぞ」
背中に添えられる手の感触。少しは慣れてきたのだろうか。〇〇は微笑んで顔を見上げた。
長身の男の傍に寄ると、自分が小さくなった気がしてなかなか面白い。
「〇〇」
「なにー?」
「…楽しそうだな」
「まあねえ」
ユリウスはふんと鼻で笑うと、思いがけない力強さで〇〇の腰を引いた。
おかげで柔らかみのない身体に鼻をぶつけるところだったが、頬を掬い上げられて無事だった。
「おまえは安上がりな女だ」
「お褒め言葉、ありがとう」
嫌みな感じもなく言われて、〇〇も同じように返した。
「――いい雰囲気のところ悪いけど、俺を空気にしないでくれよ…?」
唐突に響いた低い声の色気に、ぞわりとユリウスの身が怖気立った。
その肩にしなだれかかるように腕を乗せたエースが、ふぅ…と耳に息を吹き込むようにして囁いたのだ。
〇〇を離し、ばっとエースを振り払ったユリウスは耳を手で覆って怒鳴った。
「気色悪いことをするな、エース!」
「えー。だって俺だけ仲間割れにして二人で楽しむなんて、ずるい」
「誰が楽しんで…」
「〇〇もユリウスには積極的になっちゃってさ。あ、もしかしてユリウスのツンデレって、そういう作戦?」
隅に置けないなあ、などと爽やかに笑われてしまい、ユリウスはこめかみを押さえた。苛立つ気を抑制する様がひくひく震える頬に表れている。
騎士の指摘に余所者が理由を述べるなら、それは時計屋の乗りの悪さにこちらが積極的にならざるを得ないのだということをここに追記しておこう。
さて、お遊びはこのくらいで、エースの気も済んだはずだ。
ここにアリスがいればなあと例によって思いながら、〇〇は元の椅子に戻った。正確には、戻ろうとした。
「……なに、エース」
それがかなわなかったのは、手を掴んで引き止められたからだ。
「勝手にお開きしちゃったみたいだけど、まだ終わってないよ」
まだやる気か。というか今度はなにをする気だ。
一見含みのない好青年の微笑みなのだが、これ以上ないほど疑い深く見つめてしまう。
ユリウスも同じらしく、捗らない机上に思わず目をやっていた。その大きな背には不釣り合いの哀愁が漂っていたとかいなかったとか。
周囲の発するネガティブな空気をからりと流して、エースは言った。
「練習はこれでよしとして…。じゃあ、これから本番いってみようか」
そして、沈黙する二人にそれはそれは素晴らしい笑顔を贈った。
「――もちろん、今度は三人で仲良くしような?」
end。→あとがき
〇〇は真っ赤なコートの肩に両手を置いた状態でそう思った。すると散漫した意識を咎めるように、ぐいと腰を持って行かれた。
「今、他のことを考えてただろ?ちゃんと俺だけを見てくれないと駄目だよ」
「はあ」
気のない返事をして、〇〇は同じ空間にいるもう一人に視線を向けた。
先刻勝手にやってろと作業に戻った男は、やはり気が散るのかちらちらとこちらを見ていた。
ばっちり目が合った途端、ふいっとあからさまに逸らされた。なんだかなあ、と〇〇は溜め息をついた。おかしな事態になってるぞ。
そもそも〇〇が必要以上に騎士と接近しているのは、曰くユリウスへのレクチャーらしい。
つまり、雰囲気作りをアドバイスしてあげよう、という有難迷惑なエースの善意だった。
必然的にパートナー役に任命された〇〇も、むしろアドバイスされる側に属すると思われるのだが。
エースはまず〇〇を“恋人”に仕立てようとしているようだった。…そこでどうしてその関係をチョイスしたのかは不明だ。
「ほらほら、もっと力入れて。手を添えるより、首に腕を回してくれたほうがムードが出るぜ?」
「はあ…そうかな」
どんなポーズをとっても、このやる気のなさがすべてを台無しにしているような気がする。
一度始めたからには、もう少し付き合うべきだろう。〇〇はよいしょと両腕を持ち上げ、エースの首に巻きつけた。
「これで文句はない?」
「ん~…そうだなー」
エースはじーっと〇〇を見つめてくる。この状態で他にすることもなく、〇〇もじーっと見つめ返した。
間近で見れば見るほど整った顔立ちだとあらためて思う。さすがは恋愛ゲーム。身体も細そうに見えてしっかりしてるのな。
なんて考えていると、思案して見下ろす赤い瞳が楽しげに輝いた。
「じゃあ、もうちょっと顔を寄せて…」
「…こう?」
「そうそう。そのまま背伸びする感じで――」
バンッ!机を叩く音に気を取られ、そちらに顔を逸らした瞬間、〇〇の頬にちゅっと唇が落ちた。
は?と視線を戻せば、惜しいとエースが笑っていた。
派手に音を立てて妨害したユリウスは、不機嫌この上ない顔でエースを睨んでいた。
「なにがムード作りだ、馬鹿馬鹿しい。仕事の邪魔をするならよそでやれ」
「ははっ、妬いちゃった?」
エースは爽やかに感じ悪く笑うという器用なことをやってのけた。ああ、ユリウスがますます怖い顔になっている。
〇〇はエースから離れると、ご機嫌斜めの彼の傍に立った。
「ユリウス、ごめん。怒らないで」
「〇〇…」
申し訳なさそうな〇〇に、ユリウスの険しさが少し和らいだ、が。
「エースはアナタの数少ない友達だもんな。あたしが取っちゃって悪かったよ」
眦を下げて謝ると、何故かユリウスの表情が固まった。エースが噴き出し、肩を揺らしながら歩み寄ってきて、ぽんと彼の肩を叩いた。
ユリウスは額に手を当ててうなだれてしまった。言葉もなく意思疎通を果たした二人を見て、さすがは親友同士だと見当違いな感心をする〇〇だった。
笑いがおさまったエースは、「じゃあ次はユリウスの番だぜ!」と強引に腰を上げさせた。
「なにが私の番なんだっ」
「決まってるだろう?準備万端な〇〇を待たせるなんてかわいそうじゃないか」
「……あたしは用意もなにもしてないから、無理にさせなくてもいいんだけど」
〇〇の呟きは誰にも受け取ってもらえなかった。
背中を押し出されたユリウスが、渋々〇〇の前に立った。
やる気がないのは自分も同じだから人のことは言えない。だが、腕を組んで仁王立ち、むすりと見下ろされては少々物申したくなる。
ユリウスはそのままのユリウスで十分アリスとやっていけると思うが、僅かばかりの練習が物語に良くない展開を招くことはないだろう。
「ユリウス。腕解いて」
「なにをするつもりだ」
「なにって言われても。とにかく腕を…ああもう、いい」
わざわざ説明させないでくれと〇〇は腕を掴んで解かせ、自らその胸に身体を捩り込ませた。
ぎょっとしたユリウスが引き離そうとしてきたが、〇〇は背中に回した両手で服を鷲掴んでしがみついた。
何故そこまでむきになるのかと問われたら、単なる意地だと返しただろう。
自分から抱きつきに行くなんて、滅多なことがない限りありえない。あたしにここまでさせたのだから、逃がしてなるものか。とまあ、こんな心境なのであった。
「は、離れろ…っ」
「嫌」
びたっとくっつかれたことで、今度は対処に狼狽えたらしい。宙に浮いた手は行き場を失って不自然な動きを見せていた。
面白い、とようやく楽しみを見出した〇〇は、にんまりと笑んだ。
「ユリウスもさー、ちょっとは免疫つけといても損はないと思うよ?このくらいのことでジタバタしない」
「う…余計なお世話だ。そんなことより、軽々しく抱きつくな。それでも女か」
「性別でとやかく言われたかないね。それならユリウスだって、男ならどんと構えて、たまには自分からアリスにアタックしてみろっての」
「そこで何故あいつの名前が出てくるんだ」
足掻いても無駄な抵抗だと悟ったユリウスは、手持ち無沙汰な両腕を脇にぶら下げた。
今さらながら自ら抱きついた身体の頑丈さに性別を感じつつ、〇〇は顎を反らして視線を合わせた。
普段からすれば滅多にない至近距離に、ユリウスは目を細めた。
「だって、アリスだから」
「……理由になっていないぞ」
背中に添えられる手の感触。少しは慣れてきたのだろうか。〇〇は微笑んで顔を見上げた。
長身の男の傍に寄ると、自分が小さくなった気がしてなかなか面白い。
「〇〇」
「なにー?」
「…楽しそうだな」
「まあねえ」
ユリウスはふんと鼻で笑うと、思いがけない力強さで〇〇の腰を引いた。
おかげで柔らかみのない身体に鼻をぶつけるところだったが、頬を掬い上げられて無事だった。
「おまえは安上がりな女だ」
「お褒め言葉、ありがとう」
嫌みな感じもなく言われて、〇〇も同じように返した。
「――いい雰囲気のところ悪いけど、俺を空気にしないでくれよ…?」
唐突に響いた低い声の色気に、ぞわりとユリウスの身が怖気立った。
その肩にしなだれかかるように腕を乗せたエースが、ふぅ…と耳に息を吹き込むようにして囁いたのだ。
〇〇を離し、ばっとエースを振り払ったユリウスは耳を手で覆って怒鳴った。
「気色悪いことをするな、エース!」
「えー。だって俺だけ仲間割れにして二人で楽しむなんて、ずるい」
「誰が楽しんで…」
「〇〇もユリウスには積極的になっちゃってさ。あ、もしかしてユリウスのツンデレって、そういう作戦?」
隅に置けないなあ、などと爽やかに笑われてしまい、ユリウスはこめかみを押さえた。苛立つ気を抑制する様がひくひく震える頬に表れている。
騎士の指摘に余所者が理由を述べるなら、それは時計屋の乗りの悪さにこちらが積極的にならざるを得ないのだということをここに追記しておこう。
さて、お遊びはこのくらいで、エースの気も済んだはずだ。
ここにアリスがいればなあと例によって思いながら、〇〇は元の椅子に戻った。正確には、戻ろうとした。
「……なに、エース」
それがかなわなかったのは、手を掴んで引き止められたからだ。
「勝手にお開きしちゃったみたいだけど、まだ終わってないよ」
まだやる気か。というか今度はなにをする気だ。
一見含みのない好青年の微笑みなのだが、これ以上ないほど疑い深く見つめてしまう。
ユリウスも同じらしく、捗らない机上に思わず目をやっていた。その大きな背には不釣り合いの哀愁が漂っていたとかいなかったとか。
周囲の発するネガティブな空気をからりと流して、エースは言った。
「練習はこれでよしとして…。じゃあ、これから本番いってみようか」
そして、沈黙する二人にそれはそれは素晴らしい笑顔を贈った。
「――もちろん、今度は三人で仲良くしような?」
end。→あとがき