もう二度と……
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いつだったか、ふとした疑問から尋ねたことがあった。
「ここから出ようとは思わないの?」
「…唐突だね。急にどうしたんだい?」
驚いた様子もなくナイトメアはおおらかに聞き返した。
〇〇はその青白い顔を眺め、隻眼を覗き込むように見つめた。
夢魔という特殊な存在ゆえか、この男には他の役持ちとは異なる底知れなさがある、と時々思う。
「たとえばなんだけど」
「ん?」
「アリスがナイトメア以外の誰かといちゃついてたとする」
「…それはまた、唐突だな」
「いいから。でも、アナタは夢でしかアリスに会えない。っていうか、会わない。それで我慢できるわけ。割り込みたいとか、仲を引き裂きたいとか、そういうのはない?」
重要な役割を担いながらも、アリスの中の夢魔のポジションはあまり上位ではないと〇〇は思っている。
夢での出来事は、するりと指の間を落ちるように不確かなものとなるらしい。アリスははっきりと覚えていないという。
夢とは本来そういうものなのかもしれないが、ナイトメアとて間違いなく彼女に惹かれる役持ちの一員だ。
少しくらい焦れたりすることもあるだろうに。〇〇の憶測に、ナイトメアはふっと笑った。
「期待に沿えなくてすまないが、私はここを悪くないと思っているんだ」
「ふうん?」
「……あー、そう疑いの眼差しを向けないでくれないか。根拠ならちゃんとある」
ふわりと身体を宙に遊ばせる様は、確かに窮屈とは無縁のように思えた。
「君は夢でしかアリスに会わない私を…そうだな、“不利”だと思うかもしれない」
「違うの?」
「発想を転換してごらん」
悠々と漂いながら、ナイトメアは〇〇に語りかけた。
「ここは鎖された空間。受け入れるのも弾くのも、私の意志で決定できる。引き入れるなんてことも可能だ」
「へえ」
「だから、仮に私がアリスをどうこうしたいと願うなら、いつだって機会はあるということさ」
安心したかい、と冗談めかして笑いかける。
つまり、彼にも付け入る隙はあるということか。まあ、そうでないと攻略対象として成り立たない面もあるのだろう。
ふんふんと頷いていた〇〇は、あることに気づき、ぱっと顔を上げた。
おもむろに宙にある足を無造作に掴んで引きずり下ろすと、情けない悲鳴が上がった。
「っな、なんだ…びっくりするじゃないかっ」
「要するに、だ。アリスとの間に進展が見られないのは、アナタが腑抜けだからってこと?」
「ふ、腑抜け?」
「じゃあ、甲斐性無し」
「じゃあってなんだ、じゃあって…」
〇〇はぽんぽん、という形容に似合わず些か強めにナイトメアの肩を叩いた。
うぐ、と口を押さえた顔色の悪さを標準仕様と決めつけて気に留めず、
「頼む。たまには男を見せて、あたしを楽しませて?」
「は、吐きそうだ…。君は…結構大胆に私を唆すんだな。アリスに言い付けるぞ?」
「言ってもいいけど、その代わりアリスがいるときにあたしを夢に呼んでよ」
「……私としては、仮にも脅しているつもりなんだが。なぜ君は対等な取引を持ちかけるんだ」
独り言のように呟く憂えるナイトメアに、〇〇は笑顔で続けた。
「一回くらい考えてくれてもいいだろ?難しいなら、アリスに合わせてあたしを無理矢理夢に引きずり込んでもいいからさ」
ふっと〇〇を見つめる瞳に見かけぬ感情の色が過ぎった。それは刹那のことで、当人でさえ、自分がなにを思ったのか判りかねた。
それでも、奇妙に残る余所者の言葉。引きずり込む、か。
「――…まあ、覚えておこう」
このとき夢魔の返答に紛れ込んだ暗い響きに、〇〇はまったく気づかなかった。
「ここから出ようとは思わないの?」
「…唐突だね。急にどうしたんだい?」
驚いた様子もなくナイトメアはおおらかに聞き返した。
〇〇はその青白い顔を眺め、隻眼を覗き込むように見つめた。
夢魔という特殊な存在ゆえか、この男には他の役持ちとは異なる底知れなさがある、と時々思う。
「たとえばなんだけど」
「ん?」
「アリスがナイトメア以外の誰かといちゃついてたとする」
「…それはまた、唐突だな」
「いいから。でも、アナタは夢でしかアリスに会えない。っていうか、会わない。それで我慢できるわけ。割り込みたいとか、仲を引き裂きたいとか、そういうのはない?」
重要な役割を担いながらも、アリスの中の夢魔のポジションはあまり上位ではないと〇〇は思っている。
夢での出来事は、するりと指の間を落ちるように不確かなものとなるらしい。アリスははっきりと覚えていないという。
夢とは本来そういうものなのかもしれないが、ナイトメアとて間違いなく彼女に惹かれる役持ちの一員だ。
少しくらい焦れたりすることもあるだろうに。〇〇の憶測に、ナイトメアはふっと笑った。
「期待に沿えなくてすまないが、私はここを悪くないと思っているんだ」
「ふうん?」
「……あー、そう疑いの眼差しを向けないでくれないか。根拠ならちゃんとある」
ふわりと身体を宙に遊ばせる様は、確かに窮屈とは無縁のように思えた。
「君は夢でしかアリスに会わない私を…そうだな、“不利”だと思うかもしれない」
「違うの?」
「発想を転換してごらん」
悠々と漂いながら、ナイトメアは〇〇に語りかけた。
「ここは鎖された空間。受け入れるのも弾くのも、私の意志で決定できる。引き入れるなんてことも可能だ」
「へえ」
「だから、仮に私がアリスをどうこうしたいと願うなら、いつだって機会はあるということさ」
安心したかい、と冗談めかして笑いかける。
つまり、彼にも付け入る隙はあるということか。まあ、そうでないと攻略対象として成り立たない面もあるのだろう。
ふんふんと頷いていた〇〇は、あることに気づき、ぱっと顔を上げた。
おもむろに宙にある足を無造作に掴んで引きずり下ろすと、情けない悲鳴が上がった。
「っな、なんだ…びっくりするじゃないかっ」
「要するに、だ。アリスとの間に進展が見られないのは、アナタが腑抜けだからってこと?」
「ふ、腑抜け?」
「じゃあ、甲斐性無し」
「じゃあってなんだ、じゃあって…」
〇〇はぽんぽん、という形容に似合わず些か強めにナイトメアの肩を叩いた。
うぐ、と口を押さえた顔色の悪さを標準仕様と決めつけて気に留めず、
「頼む。たまには男を見せて、あたしを楽しませて?」
「は、吐きそうだ…。君は…結構大胆に私を唆すんだな。アリスに言い付けるぞ?」
「言ってもいいけど、その代わりアリスがいるときにあたしを夢に呼んでよ」
「……私としては、仮にも脅しているつもりなんだが。なぜ君は対等な取引を持ちかけるんだ」
独り言のように呟く憂えるナイトメアに、〇〇は笑顔で続けた。
「一回くらい考えてくれてもいいだろ?難しいなら、アリスに合わせてあたしを無理矢理夢に引きずり込んでもいいからさ」
ふっと〇〇を見つめる瞳に見かけぬ感情の色が過ぎった。それは刹那のことで、当人でさえ、自分がなにを思ったのか判りかねた。
それでも、奇妙に残る余所者の言葉。引きずり込む、か。
「――…まあ、覚えておこう」
このとき夢魔の返答に紛れ込んだ暗い響きに、〇〇はまったく気づかなかった。