どうか、気付かれませんように
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「――誰もおらぬようだが。時間は?」
「はっ、たった今指定された時刻になったところです」
「そうか…」
〇〇は冷や汗をかいて目の前の男を見た。こいつ、こんな戯れ事に恐れ多くも女王様を呼び出しやがった。
気高さの窺える女性の声に答えたのは、おそらく何人かいるお付きの兵の一人だろう。それなら複数人なのも頷ける。納得している場合ではない。
息を潜めて様子を探っていると、また別の方向からさらに声がした。
「陛下…?こんなところでなにをなさっているんですか?」
「なんじゃ、ホワイトか」
(ペーターまで来た――!)
女王と宰相が揃いも揃って騎士にあっさり呼び出されるなんて、この城は大丈夫なのだろうか。
妙な心配をしてしまう〇〇だったが、国を担う者達の会話は続く。
「女王自ら堂々とさぼるなんて、配下の者に示しがつきませんよ」
「そういうおまえはどうなのじゃ?毎日飽きもせず、アリスの尻ばかり追いかけておって」
「愛しい人を追いかけ回してなにが悪いんです?愛ゆえの行為ですよ。僕は地の果てまでも追いかけていきます」
「……立派なストーカーになったものよ」
嘆息した女王の呆れっぷりが目に浮かぶようだ。
「それで、陛下がわざわざ足を運んだ本当の目的はなんなんです?」
「…ふん。これが、わらわの手元に届いた」
カサ、と紙の擦れる音。ペーターが受け取ったのだろうか。続く彼の声は皮肉が込められていた。
「女王陛下がこんなものにまんまと呼び出されたんですか」
「そういうおまえも、同じものを受け取ったのだろう?…ふふ、時間にだらしのない白ウサギが律儀にやってきたのは、この差出人の名の効果か」
「馬鹿を言わないでください。虫酸が走ります。誰があの余所者のために…。そういう陛下はどうなんですか」
「わらわはこの、差出人と呼出し人の明らかに異なる紙の誘いに乗ってやっただけのこと。首をはねるよりも面白そうではないか」
「僕はただ気に入らなかっただけです。このくだらない、明白な作為の意図を知るには、指定された時間、指定された場所に出向くのが一番だ」
(……)
種明かしをしてくれた二人によると、どうやら〇〇の名を騙る謎の呼出し状を受け取ったようである。
しかも、いったいどのような内容なのか知らないが、偽物であることはバレバレらしい。
ビバルディが応じた理由は頷けたが、ペーターが応じたのには驚きだ。彼の場合は相手にせず破り捨てておしまいになりそうなものなのに、きちんと時間どおりにやってきたのだから。
とにもかくにも、舞台は整った。エースの笑顔がそう言っている。嫌な具合に高鳴る〇〇の鼓動は手のひらを通して筒抜けだ。
「ははっ。なんのために呼び出されたのか知ったら、二人ともどんな顔するかな」
潔く首を差し出すか、さもなくば磔にされる覚悟をしろ。
「呆れてものも言えな…っ」
ぐ、と握りこまれて息をつめる。すっぽりと覆う手を感じると、膨らみの足りない感じを嫌でも意識させられた。
でたらめではなくはっきりとした意図をもっての動きは巧みで、下着や手袋は少しの緩和にもならない。
胸の先端をくすぐるように指が動くと、身体は素直に愛撫を受け止めてしまう。
「ふ、ぅ…っ」
「我慢なんかしないで、声出しちゃえば?きっと楽になる」
耳を舌で嬲りながら、エースが優しく誘惑する。なんて愉しそうな声だ。
こんなに美味しいシチュエーションを用意するなら、あたしじゃなくてアリスを呼んでくれ。
アリス総受け主義の頭を利用されて陥れられたようなものだったが、懲りない〇〇はこれくらいのことではめげなかった。
なかなか声を上げない〇〇にてこずるエースは、やわやわと緩い刺激を送り続けながら獲物をじっと見下ろした。
こちらも負けじと見返すが、垣根の向こう側に意識を取られた。近づく足音がした。
「ホワイト。そのように嗅ぎ回って、なにをしておる」
「人を犬みたいに言わないでもらえますか?調べているんですよ。呼び出しの時間はとっくに過ぎているのに誰も来ない…。罠かなにかが仕掛けられていても不思議じゃありません」
がさがさと周囲を漁る音がする。ペーターが罠とやらの有無を確かめようとしているようだ。
「ふむ。おまえにしては気の利く思いつきじゃな」
「陛下のためではありませんよ。間違っても不本意な相手と心中しないためです」
「それはわらわも同じだ、心配いらぬ。…おまえ達、ぼーっとしておる暇があるならさっさと手伝わぬか」
「はっ!」
「も、申し訳ございません!」
兵士達が慌ただしく動き出す。声と音だけでもだいたいの動きが掴めるのは救いだろう。
しかし、一見葉と枝で敷き詰められている壁も間近で見ると僅かに隙間があり、薄く光を透かしている。
注意深い人間なら反対側に人が立っていることに――気がつくかもしれない。
「っあ…!」
慣れを見出しかけていた絶妙のタイミングで不意をついて強い刺激を受け、油断した口を割って鋭い声が飛び出した。
やば、と唇を噛む。かなりの近さに人が立ち止まる気配がした。
「――今、なにか聞こえませんでしたか、陛下?」
「なにかとは?」
「声ですよ。悲鳴のような……女?」
声を殺してエースが笑う。片腕で強く腰を抱き寄せ、もう一方の手では跳ね上がる心音を味わっている。
両腕の拘束は解かれたが相手の思惑通り、〇〇は抵抗どころか身じろぎも許されない。
「ペーターさんにサービスしちゃおうか。こんなにいい具合に乱れた君を見せてあげたら、きっと歯軋りして喜ぶんだろうなあ」
また、ひそかな笑いが密着する身体から伝わる喉の震えでわかった。
楽しげな囁きに、〇〇はコート越しに無言の抗議。致し方なく肩に置いていた手で、ぎりりと爪を立てれば、
「あ、せっかくだからそれは背中にしてほしいな。俺も脱ぐから、いくらでも傷つけてくれよ。君の爪痕を、たっぷりと…な?」
「ば、」
馬鹿だろ、と思わず罵る言葉は唇ごと奪われエースの中へ。キスの勢いで垣根に押しつけられ、盛大に葉が擦れて鳴いた。
「そこに誰かいるんですか」
ペーターの声が飛ぶ。かつかつとなにかを覚ったような足音が近づいてくる。と、エースの指が下着の隙間に滑り込んできた。
喘ぎを誘い出そうと口の中でいっそう激しく暴れる舌に、〇〇は目眩がした。
不規則に荒くなる息を抑えながら、無茶を承知で神に祈る。頼む。どうか、気づかれませんように。
――かつ…と、運命の足音がそこに止まった。
end。→あとがき
「はっ、たった今指定された時刻になったところです」
「そうか…」
〇〇は冷や汗をかいて目の前の男を見た。こいつ、こんな戯れ事に恐れ多くも女王様を呼び出しやがった。
気高さの窺える女性の声に答えたのは、おそらく何人かいるお付きの兵の一人だろう。それなら複数人なのも頷ける。納得している場合ではない。
息を潜めて様子を探っていると、また別の方向からさらに声がした。
「陛下…?こんなところでなにをなさっているんですか?」
「なんじゃ、ホワイトか」
(ペーターまで来た――!)
女王と宰相が揃いも揃って騎士にあっさり呼び出されるなんて、この城は大丈夫なのだろうか。
妙な心配をしてしまう〇〇だったが、国を担う者達の会話は続く。
「女王自ら堂々とさぼるなんて、配下の者に示しがつきませんよ」
「そういうおまえはどうなのじゃ?毎日飽きもせず、アリスの尻ばかり追いかけておって」
「愛しい人を追いかけ回してなにが悪いんです?愛ゆえの行為ですよ。僕は地の果てまでも追いかけていきます」
「……立派なストーカーになったものよ」
嘆息した女王の呆れっぷりが目に浮かぶようだ。
「それで、陛下がわざわざ足を運んだ本当の目的はなんなんです?」
「…ふん。これが、わらわの手元に届いた」
カサ、と紙の擦れる音。ペーターが受け取ったのだろうか。続く彼の声は皮肉が込められていた。
「女王陛下がこんなものにまんまと呼び出されたんですか」
「そういうおまえも、同じものを受け取ったのだろう?…ふふ、時間にだらしのない白ウサギが律儀にやってきたのは、この差出人の名の効果か」
「馬鹿を言わないでください。虫酸が走ります。誰があの余所者のために…。そういう陛下はどうなんですか」
「わらわはこの、差出人と呼出し人の明らかに異なる紙の誘いに乗ってやっただけのこと。首をはねるよりも面白そうではないか」
「僕はただ気に入らなかっただけです。このくだらない、明白な作為の意図を知るには、指定された時間、指定された場所に出向くのが一番だ」
(……)
種明かしをしてくれた二人によると、どうやら〇〇の名を騙る謎の呼出し状を受け取ったようである。
しかも、いったいどのような内容なのか知らないが、偽物であることはバレバレらしい。
ビバルディが応じた理由は頷けたが、ペーターが応じたのには驚きだ。彼の場合は相手にせず破り捨てておしまいになりそうなものなのに、きちんと時間どおりにやってきたのだから。
とにもかくにも、舞台は整った。エースの笑顔がそう言っている。嫌な具合に高鳴る〇〇の鼓動は手のひらを通して筒抜けだ。
「ははっ。なんのために呼び出されたのか知ったら、二人ともどんな顔するかな」
潔く首を差し出すか、さもなくば磔にされる覚悟をしろ。
「呆れてものも言えな…っ」
ぐ、と握りこまれて息をつめる。すっぽりと覆う手を感じると、膨らみの足りない感じを嫌でも意識させられた。
でたらめではなくはっきりとした意図をもっての動きは巧みで、下着や手袋は少しの緩和にもならない。
胸の先端をくすぐるように指が動くと、身体は素直に愛撫を受け止めてしまう。
「ふ、ぅ…っ」
「我慢なんかしないで、声出しちゃえば?きっと楽になる」
耳を舌で嬲りながら、エースが優しく誘惑する。なんて愉しそうな声だ。
こんなに美味しいシチュエーションを用意するなら、あたしじゃなくてアリスを呼んでくれ。
アリス総受け主義の頭を利用されて陥れられたようなものだったが、懲りない〇〇はこれくらいのことではめげなかった。
なかなか声を上げない〇〇にてこずるエースは、やわやわと緩い刺激を送り続けながら獲物をじっと見下ろした。
こちらも負けじと見返すが、垣根の向こう側に意識を取られた。近づく足音がした。
「ホワイト。そのように嗅ぎ回って、なにをしておる」
「人を犬みたいに言わないでもらえますか?調べているんですよ。呼び出しの時間はとっくに過ぎているのに誰も来ない…。罠かなにかが仕掛けられていても不思議じゃありません」
がさがさと周囲を漁る音がする。ペーターが罠とやらの有無を確かめようとしているようだ。
「ふむ。おまえにしては気の利く思いつきじゃな」
「陛下のためではありませんよ。間違っても不本意な相手と心中しないためです」
「それはわらわも同じだ、心配いらぬ。…おまえ達、ぼーっとしておる暇があるならさっさと手伝わぬか」
「はっ!」
「も、申し訳ございません!」
兵士達が慌ただしく動き出す。声と音だけでもだいたいの動きが掴めるのは救いだろう。
しかし、一見葉と枝で敷き詰められている壁も間近で見ると僅かに隙間があり、薄く光を透かしている。
注意深い人間なら反対側に人が立っていることに――気がつくかもしれない。
「っあ…!」
慣れを見出しかけていた絶妙のタイミングで不意をついて強い刺激を受け、油断した口を割って鋭い声が飛び出した。
やば、と唇を噛む。かなりの近さに人が立ち止まる気配がした。
「――今、なにか聞こえませんでしたか、陛下?」
「なにかとは?」
「声ですよ。悲鳴のような……女?」
声を殺してエースが笑う。片腕で強く腰を抱き寄せ、もう一方の手では跳ね上がる心音を味わっている。
両腕の拘束は解かれたが相手の思惑通り、〇〇は抵抗どころか身じろぎも許されない。
「ペーターさんにサービスしちゃおうか。こんなにいい具合に乱れた君を見せてあげたら、きっと歯軋りして喜ぶんだろうなあ」
また、ひそかな笑いが密着する身体から伝わる喉の震えでわかった。
楽しげな囁きに、〇〇はコート越しに無言の抗議。致し方なく肩に置いていた手で、ぎりりと爪を立てれば、
「あ、せっかくだからそれは背中にしてほしいな。俺も脱ぐから、いくらでも傷つけてくれよ。君の爪痕を、たっぷりと…な?」
「ば、」
馬鹿だろ、と思わず罵る言葉は唇ごと奪われエースの中へ。キスの勢いで垣根に押しつけられ、盛大に葉が擦れて鳴いた。
「そこに誰かいるんですか」
ペーターの声が飛ぶ。かつかつとなにかを覚ったような足音が近づいてくる。と、エースの指が下着の隙間に滑り込んできた。
喘ぎを誘い出そうと口の中でいっそう激しく暴れる舌に、〇〇は目眩がした。
不規則に荒くなる息を抑えながら、無茶を承知で神に祈る。頼む。どうか、気づかれませんように。
――かつ…と、運命の足音がそこに止まった。
end。→あとがき