どうか、気付かれませんように
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ハートの城の庭はまるで迷路、いや迷路そのものである。
時々女王様の散歩に付き合って歩いたり、アリスと一緒に迷ってみたりと〇〇にとってなかなか楽しい場所だ。
美しく手入れされた生垣。露を浮かべたようにみずみずしく咲き誇る赤の薔薇。
ゲームでは舞踏会イベントの際にも利用されるが、人が通りかかりそうでいてあまり通らない、密会に適した造りになっているらしい。
人目を忍ぶ恋人達にはまさにうってつけのスリリングな野外。
(――で、これはどういう状況?)
服を通してもなお背中に伝わる、チクチクと刺さる葉っぱ。
現在〇〇は立派な生垣を、視覚ではなく触覚で楽しませられていた。ちっとも楽しくはない。
目の前には青空に似合う爽やかな微笑みがあり、見る分には気分は悪くなかった。いただけないのは、無害なはずの笑顔がそれだけに留まらないことである。
ハートの城での仕事を終えた〇〇は、アリスもいないことだし帰るか、と部屋で着替えていた。
そこに突然扉を開け放って現れたのがハートの騎士、エースだった。
半裸で唖然とする〇〇に悪びれもせず謝るエースをとりあえず問答無用で追い出し、着替えを完了させてドアを開ければまだいたので用件を問うと、
「いやー、ここってアリスの部屋だと思ったんだけど…違った?」
「違う。……エースは常に自身の記憶を疑うほうが身のためだと思うよ」
「はははっ、そうかもな~」
忠告をからりと笑ってかわしたエースは「ところで」とあっさり話題を転換した。
「これから暇なら、ちょっと付き合ってくれよ。道案内を頼みたいんだ」
「道案内…?珍しいな、エースがそんなこというなんて」
「ん~、できれば俺も自力で目的地まで辿り着きたいんだけどね。約束の時間が押してるから、そうもいかなくて」
「ふうん」
「アリスに頼もうと思ったんだけど、部屋も見つからないし、これ以上時間を無駄にできないんだ」
選択肢がない、あくまでもアリスの代わりだとでもいうふうに話すものだから、〇〇はかえって気軽に引き受けてしまったのである。
「しょうがない。仕事も終わって帰ろうと思ってたところだから、案内してあげようか」
「えっ、いいの?」
「エースを見た感じ、時間がないってわりには気が急くほどじゃなさそうだ。てことは遠くない場所…どうせ城の近辺ってとこだろ?それなら本当に帰るついでだから、ついで」
「よくわかるなあ。そのとおりだよ」
「少し考えりゃ誰にだってわかる」
「へえ…。まあ、そういうことでよろしく頼むな」
そんな経緯でやはり近場だった案内場所――広大な庭に方向感覚の死滅した騎士を連れてきたというわけだった。
頼まれたのは道案内、この場所に用があるのはハートの騎士。約束と言ったから誰かと待ち合わせなのだろう。
役目を終えた〇〇に「ありがとう、助かったよ」と礼を言ったエースは、別れの挨拶に上げた〇〇の手を掴むと迷路の壁に縫い止めたのであった。意味不明だ。
「あの…離してくれる?」
〇〇が腕に力を込めて抗議を示しても、エースは上回る力で押さえ込んでくる。刺さってる刺さってる、背中になんか食い込んでるから。
「ごめん。無理なんだ」
「なにが無理だ。あたしは帰るんだってば」
「もうすぐ約束の時間だから、君にはここにいてもらわないと」
エースの約束の時間にあたしがこの場所にいなければならない、だって?
言葉がアンテナに引っ掛かる。今の言いようでは、言動に矛盾が生じるではないか。不審を露にして視線を返す。
こういうときにも変わらぬ笑顔があるから胡散臭さが増すのを、この男はわかっているのだろうか。
探る黒い目と平然と受け止める赤い目。と、エースは二人の体勢など気にしない気楽さで話し出した。
「君ってこの頃、付き合い悪くなったよな」
「はあ?」
現に今こうして訳のわからぬ行為に付き合っている身としては看過することのできない台詞である。
〇〇は眉を跳ね上げて、ふざけたことをと目を細めてやや険を込めて言った。
「本当に付き合いが悪いなら、道案内なんか引き受けるか」
「そうじゃなくてさ。旅だよ、旅。俺が誘ってもちっとも相手にしてくれなくなったじゃないか」
拗ねたというか、理由がわからないと言いたげにエースは事実を口にする。今度はすぐに切り返せなかった。
確かに彼の言うとおり、最後に同行したのは随分前のことになる。なんのかのと理由をつけてかわしていたのを付き合いが悪いと称されるなら否定できなかった。
咄嗟に言い返せなかったことで〇〇の分が悪くなった。エースは顔を寄せてそっと低く声を響かせた。
「寂しかったなあ、君のいない独り寝は。今まではなんともなかったのに、妙に物足りないんだ。これって明らかに〇〇のせいだよな?」
「いや、違…」
「だからさ、今日はちょっとした仕返しをしてやろうかと思って」
言葉を遮って不穏な単語を爽やかに放ったエースは、間髪入れずに身体を密着させてきた。
押さえつけていた両腕を鮮やかな手並みで頭上にまとめてしまうと、自由になった手で〇〇の衣服を乱していく。
「ちょっ、エースっ?なに脱がせてる」
「脱がせてないよ。ただちょっと着崩れを起こさせようと…」
「それは人為的に起こさせるようなものじゃ――」
いや待てよ。最近の男子学生がズボンをずり下げて穿いてるあれは……着崩れじゃなくてファッションか。一瞬抵抗が止まるが、もちろんそんなことはどうでもいい議題である。
あれよあれよという間に開帳されてしまった上着、その下のタンクトップまで引き上げられては本格的に抵抗しなければ女としていかがなものか。
とりあえず片足で蹴りを繰り出すが、相手は騎士でこちらは一般ピーポー、容易にいなされてしまった。
ラッキー、とエースは笑いを含ませて口に出し、膝を割り込ませてくる。なにがラッキーだと〇〇は悪態をついた。
「仕返しってなに。これが仕返しなわけ?」
青空のもと辱めようというのなら、乙女ではない〇〇には通用しない手だ。
効き目の薄い、〇〇の恥じらいに達しない冷静さを、エースは予想通りというように頷いた。
ならば何故こんなことを。首の後ろがじりじりするような落ち着きのなさを自覚し、例によって嫌な予感がした。なにかを見落としている。
「約束。してるんだよね」
「!」
――そうだ。“約束”だ。
誰かと落ち合うつもりらしいエースに頼まれて、ここまで連れてきたのではなかったか。
さすがの〇〇も公開プレイとなると焦らずにはいられない。そんなアブノーマルは嗜好に反する。
「ぁ……っ」
不意をついてブラジャーの上から胸を揉まれ、思わず声が出た。エースは嬉しそうに笑うと、耳元に唇を落として、
「もうすぐ観客が来ると思うよ。ほら、足音が聞こえてきた…」
そんな馬鹿なと思うが、次第にはっきりと届く音に〇〇は息を殺した。一人、ではない。複数人いる。
唯一の救いはそれが垣根の向こうに聞こえたことだった。やってきた誰かは壁を挟んだ向こう側の、ここからそれほど離れていないところに立ち止まったようだった。
時々女王様の散歩に付き合って歩いたり、アリスと一緒に迷ってみたりと〇〇にとってなかなか楽しい場所だ。
美しく手入れされた生垣。露を浮かべたようにみずみずしく咲き誇る赤の薔薇。
ゲームでは舞踏会イベントの際にも利用されるが、人が通りかかりそうでいてあまり通らない、密会に適した造りになっているらしい。
人目を忍ぶ恋人達にはまさにうってつけのスリリングな野外。
(――で、これはどういう状況?)
服を通してもなお背中に伝わる、チクチクと刺さる葉っぱ。
現在〇〇は立派な生垣を、視覚ではなく触覚で楽しませられていた。ちっとも楽しくはない。
目の前には青空に似合う爽やかな微笑みがあり、見る分には気分は悪くなかった。いただけないのは、無害なはずの笑顔がそれだけに留まらないことである。
ハートの城での仕事を終えた〇〇は、アリスもいないことだし帰るか、と部屋で着替えていた。
そこに突然扉を開け放って現れたのがハートの騎士、エースだった。
半裸で唖然とする〇〇に悪びれもせず謝るエースをとりあえず問答無用で追い出し、着替えを完了させてドアを開ければまだいたので用件を問うと、
「いやー、ここってアリスの部屋だと思ったんだけど…違った?」
「違う。……エースは常に自身の記憶を疑うほうが身のためだと思うよ」
「はははっ、そうかもな~」
忠告をからりと笑ってかわしたエースは「ところで」とあっさり話題を転換した。
「これから暇なら、ちょっと付き合ってくれよ。道案内を頼みたいんだ」
「道案内…?珍しいな、エースがそんなこというなんて」
「ん~、できれば俺も自力で目的地まで辿り着きたいんだけどね。約束の時間が押してるから、そうもいかなくて」
「ふうん」
「アリスに頼もうと思ったんだけど、部屋も見つからないし、これ以上時間を無駄にできないんだ」
選択肢がない、あくまでもアリスの代わりだとでもいうふうに話すものだから、〇〇はかえって気軽に引き受けてしまったのである。
「しょうがない。仕事も終わって帰ろうと思ってたところだから、案内してあげようか」
「えっ、いいの?」
「エースを見た感じ、時間がないってわりには気が急くほどじゃなさそうだ。てことは遠くない場所…どうせ城の近辺ってとこだろ?それなら本当に帰るついでだから、ついで」
「よくわかるなあ。そのとおりだよ」
「少し考えりゃ誰にだってわかる」
「へえ…。まあ、そういうことでよろしく頼むな」
そんな経緯でやはり近場だった案内場所――広大な庭に方向感覚の死滅した騎士を連れてきたというわけだった。
頼まれたのは道案内、この場所に用があるのはハートの騎士。約束と言ったから誰かと待ち合わせなのだろう。
役目を終えた〇〇に「ありがとう、助かったよ」と礼を言ったエースは、別れの挨拶に上げた〇〇の手を掴むと迷路の壁に縫い止めたのであった。意味不明だ。
「あの…離してくれる?」
〇〇が腕に力を込めて抗議を示しても、エースは上回る力で押さえ込んでくる。刺さってる刺さってる、背中になんか食い込んでるから。
「ごめん。無理なんだ」
「なにが無理だ。あたしは帰るんだってば」
「もうすぐ約束の時間だから、君にはここにいてもらわないと」
エースの約束の時間にあたしがこの場所にいなければならない、だって?
言葉がアンテナに引っ掛かる。今の言いようでは、言動に矛盾が生じるではないか。不審を露にして視線を返す。
こういうときにも変わらぬ笑顔があるから胡散臭さが増すのを、この男はわかっているのだろうか。
探る黒い目と平然と受け止める赤い目。と、エースは二人の体勢など気にしない気楽さで話し出した。
「君ってこの頃、付き合い悪くなったよな」
「はあ?」
現に今こうして訳のわからぬ行為に付き合っている身としては看過することのできない台詞である。
〇〇は眉を跳ね上げて、ふざけたことをと目を細めてやや険を込めて言った。
「本当に付き合いが悪いなら、道案内なんか引き受けるか」
「そうじゃなくてさ。旅だよ、旅。俺が誘ってもちっとも相手にしてくれなくなったじゃないか」
拗ねたというか、理由がわからないと言いたげにエースは事実を口にする。今度はすぐに切り返せなかった。
確かに彼の言うとおり、最後に同行したのは随分前のことになる。なんのかのと理由をつけてかわしていたのを付き合いが悪いと称されるなら否定できなかった。
咄嗟に言い返せなかったことで〇〇の分が悪くなった。エースは顔を寄せてそっと低く声を響かせた。
「寂しかったなあ、君のいない独り寝は。今まではなんともなかったのに、妙に物足りないんだ。これって明らかに〇〇のせいだよな?」
「いや、違…」
「だからさ、今日はちょっとした仕返しをしてやろうかと思って」
言葉を遮って不穏な単語を爽やかに放ったエースは、間髪入れずに身体を密着させてきた。
押さえつけていた両腕を鮮やかな手並みで頭上にまとめてしまうと、自由になった手で〇〇の衣服を乱していく。
「ちょっ、エースっ?なに脱がせてる」
「脱がせてないよ。ただちょっと着崩れを起こさせようと…」
「それは人為的に起こさせるようなものじゃ――」
いや待てよ。最近の男子学生がズボンをずり下げて穿いてるあれは……着崩れじゃなくてファッションか。一瞬抵抗が止まるが、もちろんそんなことはどうでもいい議題である。
あれよあれよという間に開帳されてしまった上着、その下のタンクトップまで引き上げられては本格的に抵抗しなければ女としていかがなものか。
とりあえず片足で蹴りを繰り出すが、相手は騎士でこちらは一般ピーポー、容易にいなされてしまった。
ラッキー、とエースは笑いを含ませて口に出し、膝を割り込ませてくる。なにがラッキーだと〇〇は悪態をついた。
「仕返しってなに。これが仕返しなわけ?」
青空のもと辱めようというのなら、乙女ではない〇〇には通用しない手だ。
効き目の薄い、〇〇の恥じらいに達しない冷静さを、エースは予想通りというように頷いた。
ならば何故こんなことを。首の後ろがじりじりするような落ち着きのなさを自覚し、例によって嫌な予感がした。なにかを見落としている。
「約束。してるんだよね」
「!」
――そうだ。“約束”だ。
誰かと落ち合うつもりらしいエースに頼まれて、ここまで連れてきたのではなかったか。
さすがの〇〇も公開プレイとなると焦らずにはいられない。そんなアブノーマルは嗜好に反する。
「ぁ……っ」
不意をついてブラジャーの上から胸を揉まれ、思わず声が出た。エースは嬉しそうに笑うと、耳元に唇を落として、
「もうすぐ観客が来ると思うよ。ほら、足音が聞こえてきた…」
そんな馬鹿なと思うが、次第にはっきりと届く音に〇〇は息を殺した。一人、ではない。複数人いる。
唯一の救いはそれが垣根の向こうに聞こえたことだった。やってきた誰かは壁を挟んだ向こう側の、ここからそれほど離れていないところに立ち止まったようだった。