深夜のアルコールタイム。
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「――ここにいたのか、〇〇。いったい誰の好みでこんなに人気のないところにいるのやら…まあ、察するに難くない」
ほら、やっぱり。〇〇は両腕を縫い止められた格好で首を動かした。
ペーターはチッと舌打ちをして、低く男の名を呟いた。
「ブラッド=デュプレ…」
「なんの断りもなく他の男に攫われるんじゃない。仮に君が断ったところで、私は許可しないがね」
それじゃ断る意味ねーよ。突っ込むに突っ込めないのは、場の空気が一瞬にして凍りついたせいだ。
ブラッドは意味ありげに手のうちでステッキを弄ぶ。
ペーターは強く睨み返す。〇〇を拘束する力が比例して高まり、痛みに少し息が漏れた。
「ちょっ…ペーター。そろそろ放してくれてもいいんじゃない?これ、キープする意味がわからない」
「間違ってもこの僕があなたなんかを留めておきたいはずがないでしょう。頭を下げて頼まれたってごめんです」
「…だったら放してよ」
「あの男に言いなさい。僕だって、さすがに蜂の巣にはされたくありません」
つまりあたしは盾代わりか。たいした強度もなさそうだが。
ブラッドが攻撃してこないところを見ると、少しは役に立つのかもしれない。
ぼそぼそとペーターと言い合っていると、苛立ちを滲ませた声でブラッドが告げた。
「ペーター=ホワイト。今すぐ〇〇を放すか、即この場で息絶えるか。特別に好きなほうを選ばせてやろう」
「それはご親切に。まさか僕がこの余所者を放したくないばかりに殺されるなんて、あなたも思ってないでしょうに」
「さあ…それはどうかな。おまえのような人間を“伏兵”と呼ぶんじゃないのか?」
「……馬鹿馬鹿しい。やってられませんね」
果たしてペーターの手が離れるのが先か、ブラッドの銃が火を噴くのが先か。
騒々しさに目を瞑り耳を塞いでいたのはつかの間のことだった。
そろりと開いた目に飛び込んだ碧の瞳に意識を奪われる。
「ブラッ…」
「君は、私だけでは足りないのか」
「は?」
厄介事ならアナタだけで十分に足りてますが。
日本人はあまりしないだろうスマート且つ強引な動作で、ブラッドは〇〇の腰を抱いて歩き出した。
ずるずると引きずられてきた道を、今度も半ば強制的に連れ戻されていく。
おそらくペーターはもうどこかへ行ってしまったのだろう。
〇〇という盾がなくても十二分に応戦できたに違いないのに、何故彼は離れなかったのか。
白ウサギさんの行動にはあたしの理解の及ばないところがあるから、気にすることでもないか。
二人で訪れるはずだった店に今度こそ入り、一番隅の席に連れていかれる。
テーブルごとに空間が区切られており、通りすぎる際にちらりと見た他のテーブルはどこも密度の高い雰囲気を醸し出していた。
奥に座らされ、通路側をブラッドが塞ぐ。なにこの密着度。
対面で座ったほうがバランスがいいだろうにと、〇〇はがらりとした向かい側に目を向ける。
すでに注文してあったのか、グラスが運ばれてきた。ひとつである。
淡いピンク色の液体の中、炭酸のような泡が店内の控えめな照明を受けて綺麗に光っている。
「これ…酒?」
純粋な疑問を口にすると、ブラッドはグラスに伸ばした手を一瞬止めた。
手元に引き寄せながら、なんでもないように訊き返す。
「白ウサギからなにか聞いたのか?」
「なにかって、たいしたことはなにも。この店は酒を扱ってるとかなんとか」
「…ふっ。それだけか」
ブラッドは喉の奥で笑って、手に持ったそれを〇〇の鼻先に近づけた。
ふわりといい香りが漂ってきた。さっぱりした柑橘系に似た甘さだった。
興味深そうに眺める〇〇に、ブラッドがそっと囁いた。
「酒はいける口か、お嬢さん?」
「んー、普段からあんまり飲まないからなあ。飲めないことはないけど、限界はあたしも知らない」
「そうか。これはきっと君も気に入ってくれるだろう。…癖になるかもしれないぞ?」
言うなり、ブラッドはグラスを傾けた。あ、と思う〇〇の目の前で彼自身が飲んでしまう。
くれるんじゃないのか。少なからず期待していた〇〇は思わずその様子をじっと見つめた。
しかし、ブラッドの喉が上下することはなかった。次の瞬間、〇〇の顎は固定され口を開けさせられた。
酒を喉まで注ぎ込まれ、嗅いだときとは比べものにならないくらい濃厚な香りがいっぱいに広がった。
「ぅっ…ん……っ」
「――は、どうだ。美味いだろう?」
蠱惑的に問いかけるブラッドに、〇〇は軽く噎せながら喉を押さえた。
口移しについて言いたいことはあったが、ひとまず感想を述べる。
「美味いっていうか…味はいいけど、かなりきつくない?」
見た目に反してアルコール度数が高いのだろうか。暑い。…熱い。
一口だけなのにもう顔が上気し、汗が滲んでいるのがわかる。
対するブラッドはというと、顔色ひとつ変えていない。なんだこの差は。
彼は例によってけだるそうでありながら、唯一濡れたような瞳だけが研ぎ澄まされて鋭い光を宿しているように見えた。
「きつくはないさ。ちょうどいい。君が弱いだけなんじゃないか?」
「そう、かな」
「ああ。それに、これは“それらしい”気分を演出してくれる優れ物だ」
「それ、らしい…?」
ぼーっと繰り返す唇に、またブラッドが口に含んだ熱を移す。
今度は注ぎ終わっても離れず、周辺に口づけを落としていく。そして静かな口調で尋ねた。
「それで、奴は君のどこに触れた」
「奴…ペーターのこと?」
「そうだ。腕だけか?…それで済んだとはとても思えないが」
「んん、腕、だけ」
「本当に?」
「うん、本当に――ん、」
ブラッドは〇〇の手首を掴んで持ち上げ、袖を捲り上げた。日焼けしていない白い肌は早くも火照っている。
赤みを辿るように、唇でなぞっていく。産毛を撫でるようなささやかな刺激に、〇〇は身を捩った。
「あ、くすぐった…っ」
「気持ち良さそうな顔をしているな。これがイイか?それとも…もっと?」
「いい…っていうか、ぁ、悪くない、かも…?」
自分がなにを言っているのか、どういう状態なのか。もうよくわからない。
ただ気分はいいような気がしたから、素直に〇〇はそう答えた。
ブラッドはようやく機嫌を直し、満足そうに口元を緩めた。その笑みがどうにもいやらしく映った。
「これを気に入ってもらえたようで嬉しいよ。まだまだある。何杯でも頼んであげよう」
「や、一杯だけでもう…」
「遠慮深いな。もっと貪欲になればいい。私も、君の欲求に応えるのは好きだよ」
目で君の姿態を、耳で君の声を、唇でその味を味わえるなんて、最高に愉しいじゃないか。
〇〇は定まらない意識の中で、この状況が当初の目的と大きく外れているとぼんやり考えた。
徐々に大胆になるブラッドに身体ごと抱き寄せられながら、どうにか言葉にしようとする。
「ブラッド…アナタ確か、アリスに会えるって、言ったよな…?」
「いや?運がよければ会えるだろう、と言っただけだ」
おいおい、なんて無責任な。だが、言葉の曖昧さを見抜けなかった自分にも非はある。
どこまでも許容範囲を広げてしまいそうなのは、きっと慣れない酒に酔ったからだ。
酔っているから、こんな状態になってどうしようなんて帰りの心配をしているし、ブラッドがいるなら大丈夫かなんて悠長に考えているのだ。
アリスに会えないなら、なんでブラッド相手にこんなところでこんなことをしているのだろう。
疑問は酒と一緒に身体の奥深くへとブラッドに流し込まれてしまう。
熱と唇に交互に翻弄される〇〇の耳元に落ちた、ブラッドの台詞。
素面ならなにかしらそこに潜むものを感じ取っただろうに、〇〇は少しの危機感もなくただ、声の響きが心地いいなと思うだけだった。
「最後まで付き合ってもらうぞ、〇〇。この制御し損なった感情を、すべて君に注ぎ込むまで」
end。→あとがき
ほら、やっぱり。〇〇は両腕を縫い止められた格好で首を動かした。
ペーターはチッと舌打ちをして、低く男の名を呟いた。
「ブラッド=デュプレ…」
「なんの断りもなく他の男に攫われるんじゃない。仮に君が断ったところで、私は許可しないがね」
それじゃ断る意味ねーよ。突っ込むに突っ込めないのは、場の空気が一瞬にして凍りついたせいだ。
ブラッドは意味ありげに手のうちでステッキを弄ぶ。
ペーターは強く睨み返す。〇〇を拘束する力が比例して高まり、痛みに少し息が漏れた。
「ちょっ…ペーター。そろそろ放してくれてもいいんじゃない?これ、キープする意味がわからない」
「間違ってもこの僕があなたなんかを留めておきたいはずがないでしょう。頭を下げて頼まれたってごめんです」
「…だったら放してよ」
「あの男に言いなさい。僕だって、さすがに蜂の巣にはされたくありません」
つまりあたしは盾代わりか。たいした強度もなさそうだが。
ブラッドが攻撃してこないところを見ると、少しは役に立つのかもしれない。
ぼそぼそとペーターと言い合っていると、苛立ちを滲ませた声でブラッドが告げた。
「ペーター=ホワイト。今すぐ〇〇を放すか、即この場で息絶えるか。特別に好きなほうを選ばせてやろう」
「それはご親切に。まさか僕がこの余所者を放したくないばかりに殺されるなんて、あなたも思ってないでしょうに」
「さあ…それはどうかな。おまえのような人間を“伏兵”と呼ぶんじゃないのか?」
「……馬鹿馬鹿しい。やってられませんね」
果たしてペーターの手が離れるのが先か、ブラッドの銃が火を噴くのが先か。
騒々しさに目を瞑り耳を塞いでいたのはつかの間のことだった。
そろりと開いた目に飛び込んだ碧の瞳に意識を奪われる。
「ブラッ…」
「君は、私だけでは足りないのか」
「は?」
厄介事ならアナタだけで十分に足りてますが。
日本人はあまりしないだろうスマート且つ強引な動作で、ブラッドは〇〇の腰を抱いて歩き出した。
ずるずると引きずられてきた道を、今度も半ば強制的に連れ戻されていく。
おそらくペーターはもうどこかへ行ってしまったのだろう。
〇〇という盾がなくても十二分に応戦できたに違いないのに、何故彼は離れなかったのか。
白ウサギさんの行動にはあたしの理解の及ばないところがあるから、気にすることでもないか。
二人で訪れるはずだった店に今度こそ入り、一番隅の席に連れていかれる。
テーブルごとに空間が区切られており、通りすぎる際にちらりと見た他のテーブルはどこも密度の高い雰囲気を醸し出していた。
奥に座らされ、通路側をブラッドが塞ぐ。なにこの密着度。
対面で座ったほうがバランスがいいだろうにと、〇〇はがらりとした向かい側に目を向ける。
すでに注文してあったのか、グラスが運ばれてきた。ひとつである。
淡いピンク色の液体の中、炭酸のような泡が店内の控えめな照明を受けて綺麗に光っている。
「これ…酒?」
純粋な疑問を口にすると、ブラッドはグラスに伸ばした手を一瞬止めた。
手元に引き寄せながら、なんでもないように訊き返す。
「白ウサギからなにか聞いたのか?」
「なにかって、たいしたことはなにも。この店は酒を扱ってるとかなんとか」
「…ふっ。それだけか」
ブラッドは喉の奥で笑って、手に持ったそれを〇〇の鼻先に近づけた。
ふわりといい香りが漂ってきた。さっぱりした柑橘系に似た甘さだった。
興味深そうに眺める〇〇に、ブラッドがそっと囁いた。
「酒はいける口か、お嬢さん?」
「んー、普段からあんまり飲まないからなあ。飲めないことはないけど、限界はあたしも知らない」
「そうか。これはきっと君も気に入ってくれるだろう。…癖になるかもしれないぞ?」
言うなり、ブラッドはグラスを傾けた。あ、と思う〇〇の目の前で彼自身が飲んでしまう。
くれるんじゃないのか。少なからず期待していた〇〇は思わずその様子をじっと見つめた。
しかし、ブラッドの喉が上下することはなかった。次の瞬間、〇〇の顎は固定され口を開けさせられた。
酒を喉まで注ぎ込まれ、嗅いだときとは比べものにならないくらい濃厚な香りがいっぱいに広がった。
「ぅっ…ん……っ」
「――は、どうだ。美味いだろう?」
蠱惑的に問いかけるブラッドに、〇〇は軽く噎せながら喉を押さえた。
口移しについて言いたいことはあったが、ひとまず感想を述べる。
「美味いっていうか…味はいいけど、かなりきつくない?」
見た目に反してアルコール度数が高いのだろうか。暑い。…熱い。
一口だけなのにもう顔が上気し、汗が滲んでいるのがわかる。
対するブラッドはというと、顔色ひとつ変えていない。なんだこの差は。
彼は例によってけだるそうでありながら、唯一濡れたような瞳だけが研ぎ澄まされて鋭い光を宿しているように見えた。
「きつくはないさ。ちょうどいい。君が弱いだけなんじゃないか?」
「そう、かな」
「ああ。それに、これは“それらしい”気分を演出してくれる優れ物だ」
「それ、らしい…?」
ぼーっと繰り返す唇に、またブラッドが口に含んだ熱を移す。
今度は注ぎ終わっても離れず、周辺に口づけを落としていく。そして静かな口調で尋ねた。
「それで、奴は君のどこに触れた」
「奴…ペーターのこと?」
「そうだ。腕だけか?…それで済んだとはとても思えないが」
「んん、腕、だけ」
「本当に?」
「うん、本当に――ん、」
ブラッドは〇〇の手首を掴んで持ち上げ、袖を捲り上げた。日焼けしていない白い肌は早くも火照っている。
赤みを辿るように、唇でなぞっていく。産毛を撫でるようなささやかな刺激に、〇〇は身を捩った。
「あ、くすぐった…っ」
「気持ち良さそうな顔をしているな。これがイイか?それとも…もっと?」
「いい…っていうか、ぁ、悪くない、かも…?」
自分がなにを言っているのか、どういう状態なのか。もうよくわからない。
ただ気分はいいような気がしたから、素直に〇〇はそう答えた。
ブラッドはようやく機嫌を直し、満足そうに口元を緩めた。その笑みがどうにもいやらしく映った。
「これを気に入ってもらえたようで嬉しいよ。まだまだある。何杯でも頼んであげよう」
「や、一杯だけでもう…」
「遠慮深いな。もっと貪欲になればいい。私も、君の欲求に応えるのは好きだよ」
目で君の姿態を、耳で君の声を、唇でその味を味わえるなんて、最高に愉しいじゃないか。
〇〇は定まらない意識の中で、この状況が当初の目的と大きく外れているとぼんやり考えた。
徐々に大胆になるブラッドに身体ごと抱き寄せられながら、どうにか言葉にしようとする。
「ブラッド…アナタ確か、アリスに会えるって、言ったよな…?」
「いや?運がよければ会えるだろう、と言っただけだ」
おいおい、なんて無責任な。だが、言葉の曖昧さを見抜けなかった自分にも非はある。
どこまでも許容範囲を広げてしまいそうなのは、きっと慣れない酒に酔ったからだ。
酔っているから、こんな状態になってどうしようなんて帰りの心配をしているし、ブラッドがいるなら大丈夫かなんて悠長に考えているのだ。
アリスに会えないなら、なんでブラッド相手にこんなところでこんなことをしているのだろう。
疑問は酒と一緒に身体の奥深くへとブラッドに流し込まれてしまう。
熱と唇に交互に翻弄される〇〇の耳元に落ちた、ブラッドの台詞。
素面ならなにかしらそこに潜むものを感じ取っただろうに、〇〇は少しの危機感もなくただ、声の響きが心地いいなと思うだけだった。
「最後まで付き合ってもらうぞ、〇〇。この制御し損なった感情を、すべて君に注ぎ込むまで」
end。→あとがき