10:囚われのお姫様みたいだ
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ハートの騎士の旅に付き合わされると、たいていの場合、無事では済まない。
彼の不幸体質の影響を受けた結果なのかは知らないが、なにかしら事が起こる。
高確率で不運に見舞われることをわかっているくせに、〇〇は今回もまた断りきれずに(凶器による脅しがあったりなかったり)森の中にいた。
「……」
ああ、空が綺麗――なのだろう、おそらく。
木々の隙間から見える青空は、爽快感たっぷりの笑顔の向こうにある。
現実逃避するように焦点をその僅かな空に合わせ、目の前の男と自身に強いられた体勢を意識から除外した。
(緑に囲まれてごろ寝するのって、気持ちいいよなー…)
遠い目をして、いっそこのまま夢の世界に飛び立ってしまおうかと考える。
しかし、そうは問屋が卸さない。この謎の状況を作り出した張本人の顔が、〇〇のささやかな逃避さえも遮った。
「男に押し倒されてるっていうのに、ずいぶん危機感がないなあ」
「……もう慣れたわコノヤロー」
何度エースの突飛な行動に巻き込まれたと思っているのだ。おかしな耐性をつけてくれてどうも。
冷めた視線もなんのその、〇〇に顔を寄せる彼はそれはもう嬉々としていた。
「へえ…慣れてくれたんだ。君に俺を刻み込めたなんて感激だぜ」
「変な意味を含もうとするの、やめてくれる?」
「あはははっ、そう本気で嫌がらないでくれよ!」
「……はあ」
〇〇は肉体的にも精神的にも脱力した。相手のペースに呑まれては、なにを言っても無駄な気がした。
エースは、おとなしく自分の下に収まっている〇〇をしばらく眺めていた。
地面に縫い止めた〇〇の両手をそっと握った彼は、押し倒された拍子にやや乱れた黒髪を見て、
「――……囚われのお姫様みたいだ」
「はい?」
ふと呟かれた独り言のようなその言葉に、目が点になる。なんだそれは。
お姫様などという上等なものに譬えられる人間がどこにいる。あたしのこと、なのか?
〇〇はエースの感覚を理解できず、つい気味の悪いものを見るような目を彼に向けた。
(この騎士はなに言ってんだか。お姫様、ねえ…。適役なのはやっぱアリスでしょ)
そう思えば彼女を恋しく思う気持ちは強くなり、今この瞬間にもひょっこり現れてくれないだろうかと期待してしまう。
まあ実際、こういう場面で期待どおりになったためしがないが。
案の定、誰の介入もないまま、にっこり笑いかけるエースによって話は進められてしまった。
「なあ、〇〇。捕まったお姫様がどうなるか、知りたくないか?」
「えー……と」
別に知りたいとは思わなかったが、一応想像だけしてみることにした。
囚われのお姫様の運命、か。悪者に攫われたのなら、王子様の助けでも待つのがいいのかもしれない。
なんだかんだあろうと勧善懲悪、ラストにはお姫様が救い出されてめでたしめでたし、だ。
これが基本だろうという〇〇の考えを、しかしエースは好青年の微笑みで却下した。
「それは相手が悪者だった場合だろ?」
「…違うの?」
「違うよ。捕まえたのは騎士だ。まさか守る立場の男がお姫様を捕まえるとは誰も思わないから、当然、助けは来ない」
騎士はまんまとお姫様を手中に収めた。――さて、その次は?
赤い瞳がその中に余所者を捉え、戯れを要求する。笑みの唇が〇〇を狙っていた。
「どうする、お姫様?このままじゃ騎士に好き放題、いやらしいことされちゃうぜ?」
「っ……」
安っぽいエロ漫画並みの展開だ、と笑い飛ばすことはできなかった。
体重をかけてくる男の身体の一部が、当たっている。ああ、弾力のある硬度の正体を知らない乙女でいたかった。
〇〇はようやく抵抗するという選択肢に気づき、身体を捩った。せめて意味不明な欲望にだけは触れていたくない。
「っ…その場違いに反応してるもんを押しつけんな、変態!」
「そう言われても、俺だって健全な男だからな~」
性的に健全であることとその証を押し当ててくる行為は、まったくの別問題である。
「あ、りえない……っ」
〇〇は恥じらって赤くなるどころか、目を見開いて青くなった。相手の性癖を疑わざるを得なかった。
自認するほど色気のない女を前にして普通ここで勃つか?これといったきっかけもなかったろうに。
ヤバイ。いろんな意味で危機感におののく〇〇に向かって、エースは普段どおりの笑顔で言う。
「君相手でも俺が欲情できることがわかって、安心した?」
まるで女としての自信を持てとばかりの激励(?)をもらった。とてつもなく余計なお世話だった。
囚われのお姫様ならぬ余所者は、果たして邪な騎士の思惑を打ち破ることができたのか。
数十時間帯後にはいつもと変わらぬ二人がいるのだから、結果を語る必要はなさそうである。
end。→あとがき
彼の不幸体質の影響を受けた結果なのかは知らないが、なにかしら事が起こる。
高確率で不運に見舞われることをわかっているくせに、〇〇は今回もまた断りきれずに(凶器による脅しがあったりなかったり)森の中にいた。
「……」
ああ、空が綺麗――なのだろう、おそらく。
木々の隙間から見える青空は、爽快感たっぷりの笑顔の向こうにある。
現実逃避するように焦点をその僅かな空に合わせ、目の前の男と自身に強いられた体勢を意識から除外した。
(緑に囲まれてごろ寝するのって、気持ちいいよなー…)
遠い目をして、いっそこのまま夢の世界に飛び立ってしまおうかと考える。
しかし、そうは問屋が卸さない。この謎の状況を作り出した張本人の顔が、〇〇のささやかな逃避さえも遮った。
「男に押し倒されてるっていうのに、ずいぶん危機感がないなあ」
「……もう慣れたわコノヤロー」
何度エースの突飛な行動に巻き込まれたと思っているのだ。おかしな耐性をつけてくれてどうも。
冷めた視線もなんのその、〇〇に顔を寄せる彼はそれはもう嬉々としていた。
「へえ…慣れてくれたんだ。君に俺を刻み込めたなんて感激だぜ」
「変な意味を含もうとするの、やめてくれる?」
「あはははっ、そう本気で嫌がらないでくれよ!」
「……はあ」
〇〇は肉体的にも精神的にも脱力した。相手のペースに呑まれては、なにを言っても無駄な気がした。
エースは、おとなしく自分の下に収まっている〇〇をしばらく眺めていた。
地面に縫い止めた〇〇の両手をそっと握った彼は、押し倒された拍子にやや乱れた黒髪を見て、
「――……囚われのお姫様みたいだ」
「はい?」
ふと呟かれた独り言のようなその言葉に、目が点になる。なんだそれは。
お姫様などという上等なものに譬えられる人間がどこにいる。あたしのこと、なのか?
〇〇はエースの感覚を理解できず、つい気味の悪いものを見るような目を彼に向けた。
(この騎士はなに言ってんだか。お姫様、ねえ…。適役なのはやっぱアリスでしょ)
そう思えば彼女を恋しく思う気持ちは強くなり、今この瞬間にもひょっこり現れてくれないだろうかと期待してしまう。
まあ実際、こういう場面で期待どおりになったためしがないが。
案の定、誰の介入もないまま、にっこり笑いかけるエースによって話は進められてしまった。
「なあ、〇〇。捕まったお姫様がどうなるか、知りたくないか?」
「えー……と」
別に知りたいとは思わなかったが、一応想像だけしてみることにした。
囚われのお姫様の運命、か。悪者に攫われたのなら、王子様の助けでも待つのがいいのかもしれない。
なんだかんだあろうと勧善懲悪、ラストにはお姫様が救い出されてめでたしめでたし、だ。
これが基本だろうという〇〇の考えを、しかしエースは好青年の微笑みで却下した。
「それは相手が悪者だった場合だろ?」
「…違うの?」
「違うよ。捕まえたのは騎士だ。まさか守る立場の男がお姫様を捕まえるとは誰も思わないから、当然、助けは来ない」
騎士はまんまとお姫様を手中に収めた。――さて、その次は?
赤い瞳がその中に余所者を捉え、戯れを要求する。笑みの唇が〇〇を狙っていた。
「どうする、お姫様?このままじゃ騎士に好き放題、いやらしいことされちゃうぜ?」
「っ……」
安っぽいエロ漫画並みの展開だ、と笑い飛ばすことはできなかった。
体重をかけてくる男の身体の一部が、当たっている。ああ、弾力のある硬度の正体を知らない乙女でいたかった。
〇〇はようやく抵抗するという選択肢に気づき、身体を捩った。せめて意味不明な欲望にだけは触れていたくない。
「っ…その場違いに反応してるもんを押しつけんな、変態!」
「そう言われても、俺だって健全な男だからな~」
性的に健全であることとその証を押し当ててくる行為は、まったくの別問題である。
「あ、りえない……っ」
〇〇は恥じらって赤くなるどころか、目を見開いて青くなった。相手の性癖を疑わざるを得なかった。
自認するほど色気のない女を前にして普通ここで勃つか?これといったきっかけもなかったろうに。
ヤバイ。いろんな意味で危機感におののく〇〇に向かって、エースは普段どおりの笑顔で言う。
「君相手でも俺が欲情できることがわかって、安心した?」
まるで女としての自信を持てとばかりの激励(?)をもらった。とてつもなく余計なお世話だった。
囚われのお姫様ならぬ余所者は、果たして邪な騎士の思惑を打ち破ることができたのか。
数十時間帯後にはいつもと変わらぬ二人がいるのだから、結果を語る必要はなさそうである。
end。→あとがき