これは萌えですか、いいえ違います。そのよん
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滞在地である時計塔に帰ってきた〇〇は、マグカップを手に椅子に座っていた。
ほんのりコーヒーが香る牛乳を啜ると、なんだか懐かしい気持ちになった。
長い旅路を終え、ようやく我が家に帰ってきたかのような…。気のせいか。
遠い目でこれまでの記憶をめぐる〇〇の視界には、落ち着きのない人間が一人映り込んでいた。
時計の修理に勤しんでいるようでいて、まったく作業は進んでいない。
ちらちらと〇〇を窺っては、しきりに眼鏡をかけたり外したり。頻繁に目頭を揉む。
なにか言いたげに口を開きかけるも、黙ってコーヒーを口に流し込んでは、また捗らない仕事に戻った。
いつまで経ってもそんな行動が続くので、とうとう〇〇のほうから声をかけた。
「ユリウス。言いたいことがあるなら、はっきりどうぞ?」
ぎくっとユリウスの肩が揺れる。なんともわかりやすい態度だ。
〇〇が投げやりな笑顔で促せば、彼はついに作業を中断して言った。
「……私に見えている、おまえのその姿は、現実なのか」
躊躇いがちに確認され、「できれば逃避したいけどね」と〇〇は虚ろな目で答えた。
ハートの城、帽子屋屋敷、そして遊園地。
行く先々でさまざまなコスプレ風のアニマル化を経て、〇〇の精神はかなり疲弊していた。
休息を欲して時計塔に戻ってきたものの、やはりここでも避けて通れぬ事態は発生した。
時計塔に足を踏み入れた瞬間、覚えのある感覚に襲われても、動揺は最小限に抑えられた。
万が一を想定してゴーランドから譲り受けた(レンタルのつもりがプレゼントされた)スカートが、早くも役に立ってしまった。
長い階段を上る途中で服を着替え、〇〇はそしらぬ顔でユリウスのところに帰ってきたのだ。
頭には動物の耳。滅多に着用しないスカートの裾からは尻尾がゆらり。
今か今かと全力で突っ込み待ちの格好である。早く突っ込んでくれ。放置はむしろつらい。
そんな〇〇の内心など知る由もない男は、何故か心底安堵したように溜め息をついた。
「私はてっきり、幻覚を見るほど仕事に没頭しすぎたのかと…」
「まあ、ユリウスはいつも根をつめすぎてると思うけど」
「これでも一応休息はとっているつもりだ。……妄想が具現化するなど、洒落にならん」
「確かになー」
〇〇は深く同意した。あたしを妄想のネタにする時点ですでにアウトだ。相当ヤバイ。
アリスのコスプレ姿を頭に描くのなら、真っ当な思考回路だと言えるだろう。
そして、ここでやっとユリウスがまともな突っ込みを入れてくれた。
〇〇がこれまでの経緯を話し出すと、彼の表情は次第に同情的なものに変わっていった。
「おまえは、おかしなものに好かれる体質らしいな」
しみじみと言われても。そのような好意は願い下げだ。
この世界では余所者として、ある程度は好かれる存在であることが望ましいが、これは違う。
「とにかく、この猫耳と尻尾が消えるまではここから出ないから」
「……それは構わないが。ちゃんと消えるのか?」
「不吉なこと言わないでくれる…?消えなきゃあたし、アナタのペットになるよ?」
半ば脅すように低い声を出せば、ユリウスはぐっと言葉につまった。
アリス以外の余所者がペットとして居着いてはさぞ困るだろう。そうだろう。
愛するヒロインに会えないのは不本意ではあるが、人目を避けることを優先した〇〇は、マグカップを口元へと運んだ。
ペットか、となにやら思い浮かべて慌てて首を振る時計屋を、不思議そうに眺めながら。
ほんのりコーヒーが香る牛乳を啜ると、なんだか懐かしい気持ちになった。
長い旅路を終え、ようやく我が家に帰ってきたかのような…。気のせいか。
遠い目でこれまでの記憶をめぐる〇〇の視界には、落ち着きのない人間が一人映り込んでいた。
時計の修理に勤しんでいるようでいて、まったく作業は進んでいない。
ちらちらと〇〇を窺っては、しきりに眼鏡をかけたり外したり。頻繁に目頭を揉む。
なにか言いたげに口を開きかけるも、黙ってコーヒーを口に流し込んでは、また捗らない仕事に戻った。
いつまで経ってもそんな行動が続くので、とうとう〇〇のほうから声をかけた。
「ユリウス。言いたいことがあるなら、はっきりどうぞ?」
ぎくっとユリウスの肩が揺れる。なんともわかりやすい態度だ。
〇〇が投げやりな笑顔で促せば、彼はついに作業を中断して言った。
「……私に見えている、おまえのその姿は、現実なのか」
躊躇いがちに確認され、「できれば逃避したいけどね」と〇〇は虚ろな目で答えた。
ハートの城、帽子屋屋敷、そして遊園地。
行く先々でさまざまなコスプレ風のアニマル化を経て、〇〇の精神はかなり疲弊していた。
休息を欲して時計塔に戻ってきたものの、やはりここでも避けて通れぬ事態は発生した。
時計塔に足を踏み入れた瞬間、覚えのある感覚に襲われても、動揺は最小限に抑えられた。
万が一を想定してゴーランドから譲り受けた(レンタルのつもりがプレゼントされた)スカートが、早くも役に立ってしまった。
長い階段を上る途中で服を着替え、〇〇はそしらぬ顔でユリウスのところに帰ってきたのだ。
頭には動物の耳。滅多に着用しないスカートの裾からは尻尾がゆらり。
今か今かと全力で突っ込み待ちの格好である。早く突っ込んでくれ。放置はむしろつらい。
そんな〇〇の内心など知る由もない男は、何故か心底安堵したように溜め息をついた。
「私はてっきり、幻覚を見るほど仕事に没頭しすぎたのかと…」
「まあ、ユリウスはいつも根をつめすぎてると思うけど」
「これでも一応休息はとっているつもりだ。……妄想が具現化するなど、洒落にならん」
「確かになー」
〇〇は深く同意した。あたしを妄想のネタにする時点ですでにアウトだ。相当ヤバイ。
アリスのコスプレ姿を頭に描くのなら、真っ当な思考回路だと言えるだろう。
そして、ここでやっとユリウスがまともな突っ込みを入れてくれた。
〇〇がこれまでの経緯を話し出すと、彼の表情は次第に同情的なものに変わっていった。
「おまえは、おかしなものに好かれる体質らしいな」
しみじみと言われても。そのような好意は願い下げだ。
この世界では余所者として、ある程度は好かれる存在であることが望ましいが、これは違う。
「とにかく、この猫耳と尻尾が消えるまではここから出ないから」
「……それは構わないが。ちゃんと消えるのか?」
「不吉なこと言わないでくれる…?消えなきゃあたし、アナタのペットになるよ?」
半ば脅すように低い声を出せば、ユリウスはぐっと言葉につまった。
アリス以外の余所者がペットとして居着いてはさぞ困るだろう。そうだろう。
愛するヒロインに会えないのは不本意ではあるが、人目を避けることを優先した〇〇は、マグカップを口元へと運んだ。
ペットか、となにやら思い浮かべて慌てて首を振る時計屋を、不思議そうに眺めながら。