心臓の純粋な殺し方。
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どろどろ。どろどろ。いくら生々しくても、そんなものは聞こえるはずがない。溢れる音は幻聴だ。
眼前に広がる赤の水溜まり。手で覆ってもなお鼻を突く鉄臭さに噎せそうになる。
なにが起こったかなんて、一目で判る。判るが、理解が追いつかなかった。眼で見る光景とそれを解する頭が一致しないのだ。
呆然と立ち尽くす〇〇の耳に、ひとつの足音が響く。荒々しい音を立てるでもなく、切羽詰まった印象を与えるでもない。
それはいつもよりやや速く感じるが、やはり悠然と近づく彼――そう、〇〇はそれが誰であるのかを知っていた。
どろどろと領域を拡大する赤が、〇〇の爪先に触れるより早く、背後から身体の両側に突き出される腕。
スローモーションにその腕を視界の両端に認識した次の瞬間には、〇〇は彼の胸に抱き寄せられていた。
「〇〇っ!どこ探してもいないと思ったら、こんなところにいたのか」
「――…エリオット」
エリオット=マーチ。実際の声と心の声で呼ぶ、男の名前。
覗き込んでくる顔は安堵と苛立ちをないまぜに表し、〇〇を見ていた。睨みといってもいいほどの強い眼差し。
だが、〇〇の目を引いたのは、エリオットの手に握られた凶器だ。
うっすら硝煙を纏う銃口を未だに突きつける先には、この屋敷の使用人の姿がふたつ。
折り重なるように倒れる彼らは、自らから流れ出る血に沈んでいる。一言で的確に言い表せる、まさに“惨状”だった。
「ったく、あんたは目を離したらすぐいなくなっちまうんだ。あんまり俺を不安にさせないでくれよ。な?」
「……エリオット。なんで、」
殺したんだ、と続くはずの言葉は発砲音に掻き消された。
息絶えたものに、さらに銃創が増えていく。一度だけではない、二度も三度も。
エリオットは耳に名残が残るほど執拗に死体に銃を向け続ける。〇〇はそのあまりの惨さに目を背けた。
すると、ようやく銃声は止み、次に訪れたのは痛いほどの静寂だった。
まるで自分の呼吸さえも殺されてしまったかのような空気に、〇〇は浅く喘ぐ。
「―――こいつらは、あんたに触れただろ…?」
エリオットの低い声が唸る。静寂と同化してしまうくらい抑揚のない声だった。
「なあ、あんたに触れていいのは俺だけだって、何度言えばわかってくれるんだよ。あんたがそんなふうに無防備だから、他の奴らが易々と付け上がるんだろ?」
他愛もない談話の中で行われた、極めて自然な接触だったはずだ。少し、使用人の指先が〇〇の肩に触れただけ――その結果が、こんな。
タイミング悪くエリオットが目撃してしまったがために、無用の犠牲が出てしまった。
雁字搦めに抱きすくめる手。ぎしぎしと骨が軋む。
「エリオットっ…痛い…」
呻いた〇〇に彼の力は少し緩む。ほっと息をついた直後、絞め殺さんばかりの拘束に顔が苦痛に歪んだ。
「ッエリ…」
「――俺以外の奴に、許すな」
掴まれた二の腕に、ぎりりと爪が食い込んだ。
眼前に広がる赤の水溜まり。手で覆ってもなお鼻を突く鉄臭さに噎せそうになる。
なにが起こったかなんて、一目で判る。判るが、理解が追いつかなかった。眼で見る光景とそれを解する頭が一致しないのだ。
呆然と立ち尽くす〇〇の耳に、ひとつの足音が響く。荒々しい音を立てるでもなく、切羽詰まった印象を与えるでもない。
それはいつもよりやや速く感じるが、やはり悠然と近づく彼――そう、〇〇はそれが誰であるのかを知っていた。
どろどろと領域を拡大する赤が、〇〇の爪先に触れるより早く、背後から身体の両側に突き出される腕。
スローモーションにその腕を視界の両端に認識した次の瞬間には、〇〇は彼の胸に抱き寄せられていた。
「〇〇っ!どこ探してもいないと思ったら、こんなところにいたのか」
「――…エリオット」
エリオット=マーチ。実際の声と心の声で呼ぶ、男の名前。
覗き込んでくる顔は安堵と苛立ちをないまぜに表し、〇〇を見ていた。睨みといってもいいほどの強い眼差し。
だが、〇〇の目を引いたのは、エリオットの手に握られた凶器だ。
うっすら硝煙を纏う銃口を未だに突きつける先には、この屋敷の使用人の姿がふたつ。
折り重なるように倒れる彼らは、自らから流れ出る血に沈んでいる。一言で的確に言い表せる、まさに“惨状”だった。
「ったく、あんたは目を離したらすぐいなくなっちまうんだ。あんまり俺を不安にさせないでくれよ。な?」
「……エリオット。なんで、」
殺したんだ、と続くはずの言葉は発砲音に掻き消された。
息絶えたものに、さらに銃創が増えていく。一度だけではない、二度も三度も。
エリオットは耳に名残が残るほど執拗に死体に銃を向け続ける。〇〇はそのあまりの惨さに目を背けた。
すると、ようやく銃声は止み、次に訪れたのは痛いほどの静寂だった。
まるで自分の呼吸さえも殺されてしまったかのような空気に、〇〇は浅く喘ぐ。
「―――こいつらは、あんたに触れただろ…?」
エリオットの低い声が唸る。静寂と同化してしまうくらい抑揚のない声だった。
「なあ、あんたに触れていいのは俺だけだって、何度言えばわかってくれるんだよ。あんたがそんなふうに無防備だから、他の奴らが易々と付け上がるんだろ?」
他愛もない談話の中で行われた、極めて自然な接触だったはずだ。少し、使用人の指先が〇〇の肩に触れただけ――その結果が、こんな。
タイミング悪くエリオットが目撃してしまったがために、無用の犠牲が出てしまった。
雁字搦めに抱きすくめる手。ぎしぎしと骨が軋む。
「エリオットっ…痛い…」
呻いた〇〇に彼の力は少し緩む。ほっと息をついた直後、絞め殺さんばかりの拘束に顔が苦痛に歪んだ。
「ッエリ…」
「――俺以外の奴に、許すな」
掴まれた二の腕に、ぎりりと爪が食い込んだ。