もしも狂気を孕んだ鬼ごっこに強制参加させられたら…?
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(閉じ込めてるってことは、監禁だから…森の中はないかな。とりあえず範囲を建物に絞ろう)
参加者は役持ちだが、役なしが協力しないとは言い切れない。脅されれば否とは言えないだろう。
しかし、役なし達の住居にまで範囲を広げてはきりがない。短慮だが、ここは権力者の屋敷周辺から虱潰しに見ていくしかない。
〇〇は森を抜けると、賑わいを放つカラフルな領土へと移動した。遊園地だ。
どこに誰がいるかと警戒しながらゲートをくぐる。
従業員達とて加担しているかもしれないと思えば、四方八方を囲まれているようで息がつまった。
なるべく人目につかないように、陰から陰へと動く。アトラクション内には人を生かしたまま監禁し続けられる場所はなさそうだ。
(屋敷を見るしかない、か……)
オーナーとチェシャ猫。園内で姿を見ないとなると、屋敷の中で遭遇する可能性が増す。
もしかしたらすでにここを離れたのかもしれないが、鬼ごっことはいえ、領土を跨いで探し回るよりも自身の住家で待ち構えたほうが効率的ならば、彼らはそうするだろう。
一気に高まる緊張感に頭が痛くなる。見慣れた風景が、こんなにも違って見えるなんて。
全身の感覚を研ぎ澄まして警戒しつつ、〇〇は客室を片っ端から調べていった。
従業員の姿が見えるたび、身を潜め、通り過ぎるのを待って捜索を再開する。
最初からわかっていたことだったが、実際に行動に移ることで、その果てしなさが精神的な負担を加えた。
この世界中を調べて回るなんて、とても終わる気がしない。
(――…弱気になっちゃ駄目だ。とにかく、やるしかないんだから)
怯みそうになる気持ちに喝を入れ、次の部屋へ移動しようと出入り口の前に立ったときだ。
不意に掴んだドアを引かれ、〇〇は前のめりに倒れそうになった。
なんとか体勢を保ったものの、扉の向こうにある姿を見てざっと血の気が引いた。
「ぁ…」
「ああっ、ここにいらっしゃったんですか!オーナーが探してましたよーっ」
無駄に元気よく喋る従業員は、腰にぶら下げた銃を抜くと躊躇なく発砲した。天井に向けて。
そして、ハキハキとした声でにこやかに言った。
「これでよしっと。さあっ、オーナーが来るまでいい子でおとなしくしていましょうね!」
銃声は居場所を知らせるための合図だったのだ。
じりじりと後退しながら、〇〇は冷や汗を流した。ゴーランドだけでなく、直に他の従業員達も集まってきそうだ。
〇〇は迫られるから一歩一歩と後ずさって間隔を保とうとしているのだが、相手にとっては〇〇が逃げていることになるらしい。
逃げないでくださいよっ、と歌のお兄さん的な好青年ぶりのまま、近づいてくる。
「頼むから…見逃してよ」
「駄目でーすっ。そんなことをしたらオーナーに叱られちゃいます!」
相手はすでに銃をしまっていたが、〇〇は銃口を突き出したままだった。
だが、撃てるはずがない。いくら威力を弱めるよう改造されていても、怪我を負わせることにはなるだろう。
平和国家に生まれ育った〇〇に、こんな非日常的な凶器で他人を傷つけるだけの覚悟はない。
武器を扱い慣れた役なしの彼にもそれが手に取るようにわかるのか、無防備なほど警戒心もなく距離を縮めた。
「……来ないで」
「大丈夫です!あなたを傷つけるつもりはありませんから、ねっ?」
伸ばされた手に銃口が震えた。ここで捕まるわけにはいかないのだ。
そう、たとえ相手を傷つけてでも――捕まるわけには――逃げなければ――……!
引き金にかけた指が痙攣した直後、耳を劈くような音と共に、〇〇に迫っていた従業員が吹き飛んだ。
彼の身体が叩きつけられた壁は崩れ、粉塵が舞う。周囲には鮮やかな色をした臓器が飛び散った。
「ぅ、ぐ……っ」
即死だ――〇〇は蒼白になって口元を押さえた。がくりと膝が折れる。
鼻をつく生臭さ。生命の色。あまりの惨たらしさに胃液が込み上げてくる。
役なしの息の根を止めたライフルを手に、悠然として部屋の中に入ってきたのは、遊園地のオーナーだった。
「知らせてくれとは言ったが、触っていいなんて言ってねえだろ?」
彼は冷ややかというよりは、まるで言うことの聞けない子供に対するように、呆れた一瞥を死体に向ける。
「ゴー…ランド…」
初めてだった。ゴーランドが〇〇の知るところで人を殺したのは。
あまり争いごとを起こさない、穏やかなイメージがあっただけに、目の前で起こった惨劇はショックが大きかった。
「大丈夫か?…気分の悪いものを見せちまったな」
ゴーランドは気遣いの声をかけて、足を踏み出した。
〇〇は無理矢理視線を死体から引き剥がし、それが命であるかのように銃を握り直した。
困ったように笑うゴーランドに、なぜ、と視線で訴えかける。
なんで。どうして。得られるものなどたかが知れているゲームなのに。あたしなんかを手に入れて、どうしようと言うんだ。
「やめてよ、オーナー…」
信じていたのになんていう、そんな安っぽい感傷に浸るつもりはない。
ただ、この光景を信じたくなかった。参加させられているこのゲームの主旨でさえ、いまだに理解できない。
〇〇の懇願を受けて、ゴーランドは眉尻を下げた。
いつもの余裕を失って身を竦ませる〇〇を見て、心を痛めた顔をしながらも、瞳に現れた強い意志だけは変わらずに。
「なあ、〇〇。よく聞けよ」
「……嫌だ、」
「〇〇が逃げ回る分だけ、こういうことが増えていくんだぜ?そんなこと、あんただって望んじゃいないだろう?」
「あたしはこんな世界、望んでない……アリスさえ取り戻せたら…っ」
震える唇を噛みしめれば、じわりと血の味が滲んだ。
ゴーランドはゆっくりと歩み寄りながら、手を差し伸べた。いつもと変わりない笑みを浮かべて、〇〇に言う。
「俺の手を取れ、〇〇。このゲーム、一緒に終わりにしよう」
「……ゴーランド、」
その手を取れば、本当に終わるというのだろうか。
アリスがいて、その周りには役持ち達がいて。みんなに愛されるアリスを、傍らで眺める自分。
思い描こうとして、以前のようにはいかないことを〇〇は知った。
(――終わらない。それは新たな悪夢の始まりだ)
〇〇は役立たずの膝に力を込めると、ふらつきながらも自力で立ち上がった。
「ゴーランド」
呼びかけに和らいだゴーランドの表情が、凍りつく。銃を前に突き出した〇〇は掠れた声で呟いた。
「あたしは、その手を取るわけにはいかないんだよ――」
真っ直ぐゴーランドに突きつけていた銃を真横に向けざま、〇〇は引き金を何度も引いた。
砕けるガラスが乾いた音を立てて、きらきらと床に散った。
〇〇はひび割れた窓目がけて突進すると、腕で頭を庇いながらガラスを突き破って宙に身を躍らせた。
焦った大声を全身に受けながら落下する――地上へと。
参加者は役持ちだが、役なしが協力しないとは言い切れない。脅されれば否とは言えないだろう。
しかし、役なし達の住居にまで範囲を広げてはきりがない。短慮だが、ここは権力者の屋敷周辺から虱潰しに見ていくしかない。
〇〇は森を抜けると、賑わいを放つカラフルな領土へと移動した。遊園地だ。
どこに誰がいるかと警戒しながらゲートをくぐる。
従業員達とて加担しているかもしれないと思えば、四方八方を囲まれているようで息がつまった。
なるべく人目につかないように、陰から陰へと動く。アトラクション内には人を生かしたまま監禁し続けられる場所はなさそうだ。
(屋敷を見るしかない、か……)
オーナーとチェシャ猫。園内で姿を見ないとなると、屋敷の中で遭遇する可能性が増す。
もしかしたらすでにここを離れたのかもしれないが、鬼ごっことはいえ、領土を跨いで探し回るよりも自身の住家で待ち構えたほうが効率的ならば、彼らはそうするだろう。
一気に高まる緊張感に頭が痛くなる。見慣れた風景が、こんなにも違って見えるなんて。
全身の感覚を研ぎ澄まして警戒しつつ、〇〇は客室を片っ端から調べていった。
従業員の姿が見えるたび、身を潜め、通り過ぎるのを待って捜索を再開する。
最初からわかっていたことだったが、実際に行動に移ることで、その果てしなさが精神的な負担を加えた。
この世界中を調べて回るなんて、とても終わる気がしない。
(――…弱気になっちゃ駄目だ。とにかく、やるしかないんだから)
怯みそうになる気持ちに喝を入れ、次の部屋へ移動しようと出入り口の前に立ったときだ。
不意に掴んだドアを引かれ、〇〇は前のめりに倒れそうになった。
なんとか体勢を保ったものの、扉の向こうにある姿を見てざっと血の気が引いた。
「ぁ…」
「ああっ、ここにいらっしゃったんですか!オーナーが探してましたよーっ」
無駄に元気よく喋る従業員は、腰にぶら下げた銃を抜くと躊躇なく発砲した。天井に向けて。
そして、ハキハキとした声でにこやかに言った。
「これでよしっと。さあっ、オーナーが来るまでいい子でおとなしくしていましょうね!」
銃声は居場所を知らせるための合図だったのだ。
じりじりと後退しながら、〇〇は冷や汗を流した。ゴーランドだけでなく、直に他の従業員達も集まってきそうだ。
〇〇は迫られるから一歩一歩と後ずさって間隔を保とうとしているのだが、相手にとっては〇〇が逃げていることになるらしい。
逃げないでくださいよっ、と歌のお兄さん的な好青年ぶりのまま、近づいてくる。
「頼むから…見逃してよ」
「駄目でーすっ。そんなことをしたらオーナーに叱られちゃいます!」
相手はすでに銃をしまっていたが、〇〇は銃口を突き出したままだった。
だが、撃てるはずがない。いくら威力を弱めるよう改造されていても、怪我を負わせることにはなるだろう。
平和国家に生まれ育った〇〇に、こんな非日常的な凶器で他人を傷つけるだけの覚悟はない。
武器を扱い慣れた役なしの彼にもそれが手に取るようにわかるのか、無防備なほど警戒心もなく距離を縮めた。
「……来ないで」
「大丈夫です!あなたを傷つけるつもりはありませんから、ねっ?」
伸ばされた手に銃口が震えた。ここで捕まるわけにはいかないのだ。
そう、たとえ相手を傷つけてでも――捕まるわけには――逃げなければ――……!
引き金にかけた指が痙攣した直後、耳を劈くような音と共に、〇〇に迫っていた従業員が吹き飛んだ。
彼の身体が叩きつけられた壁は崩れ、粉塵が舞う。周囲には鮮やかな色をした臓器が飛び散った。
「ぅ、ぐ……っ」
即死だ――〇〇は蒼白になって口元を押さえた。がくりと膝が折れる。
鼻をつく生臭さ。生命の色。あまりの惨たらしさに胃液が込み上げてくる。
役なしの息の根を止めたライフルを手に、悠然として部屋の中に入ってきたのは、遊園地のオーナーだった。
「知らせてくれとは言ったが、触っていいなんて言ってねえだろ?」
彼は冷ややかというよりは、まるで言うことの聞けない子供に対するように、呆れた一瞥を死体に向ける。
「ゴー…ランド…」
初めてだった。ゴーランドが〇〇の知るところで人を殺したのは。
あまり争いごとを起こさない、穏やかなイメージがあっただけに、目の前で起こった惨劇はショックが大きかった。
「大丈夫か?…気分の悪いものを見せちまったな」
ゴーランドは気遣いの声をかけて、足を踏み出した。
〇〇は無理矢理視線を死体から引き剥がし、それが命であるかのように銃を握り直した。
困ったように笑うゴーランドに、なぜ、と視線で訴えかける。
なんで。どうして。得られるものなどたかが知れているゲームなのに。あたしなんかを手に入れて、どうしようと言うんだ。
「やめてよ、オーナー…」
信じていたのになんていう、そんな安っぽい感傷に浸るつもりはない。
ただ、この光景を信じたくなかった。参加させられているこのゲームの主旨でさえ、いまだに理解できない。
〇〇の懇願を受けて、ゴーランドは眉尻を下げた。
いつもの余裕を失って身を竦ませる〇〇を見て、心を痛めた顔をしながらも、瞳に現れた強い意志だけは変わらずに。
「なあ、〇〇。よく聞けよ」
「……嫌だ、」
「〇〇が逃げ回る分だけ、こういうことが増えていくんだぜ?そんなこと、あんただって望んじゃいないだろう?」
「あたしはこんな世界、望んでない……アリスさえ取り戻せたら…っ」
震える唇を噛みしめれば、じわりと血の味が滲んだ。
ゴーランドはゆっくりと歩み寄りながら、手を差し伸べた。いつもと変わりない笑みを浮かべて、〇〇に言う。
「俺の手を取れ、〇〇。このゲーム、一緒に終わりにしよう」
「……ゴーランド、」
その手を取れば、本当に終わるというのだろうか。
アリスがいて、その周りには役持ち達がいて。みんなに愛されるアリスを、傍らで眺める自分。
思い描こうとして、以前のようにはいかないことを〇〇は知った。
(――終わらない。それは新たな悪夢の始まりだ)
〇〇は役立たずの膝に力を込めると、ふらつきながらも自力で立ち上がった。
「ゴーランド」
呼びかけに和らいだゴーランドの表情が、凍りつく。銃を前に突き出した〇〇は掠れた声で呟いた。
「あたしは、その手を取るわけにはいかないんだよ――」
真っ直ぐゴーランドに突きつけていた銃を真横に向けざま、〇〇は引き金を何度も引いた。
砕けるガラスが乾いた音を立てて、きらきらと床に散った。
〇〇はひび割れた窓目がけて突進すると、腕で頭を庇いながらガラスを突き破って宙に身を躍らせた。
焦った大声を全身に受けながら落下する――地上へと。