もしも主人公がアリスに成り代わったら…?
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次に目を覚ましたとき、あたしの視界には天井と、それ以上の比率を占める男の顔があった。
長く白い耳を頭から生やした彼は、あたしと目が合うと嬉しそうに瞳を輝かせた。
「おはようございます。お目覚めですか。もう少しくらい寝ていてもいいんですよ?」
「…そう?」
「はいっ。その分、僕はあなたの寝顔をじっくり堪能できますからね。さ、ゆっくり眠ってください。…どうしたんです、眠たいんでしょう?」
「……いや、やっぱり起きる」
「そうですか?…それは残念です」
寝顔を見てます宣言をされたら、誰だって安心して眠っていられないじゃないか。
そう思いながら身体を起こそうとする。が、それを制するように身体の上に乗っている、ペーターの腕。
起き上がれない、と無言のまま視線で催促すると、邪気のない笑顔が返ってきた。
「すみません。僕はまだ寝たいんです。ですから、ね?付き合ってくださいよ」
いけしゃあしゃあと言うペーターは、いつの間に着替えたのか、すでにパジャマ姿ではなかった。
ということは、あたしが二度寝している間に一度目を覚まして部屋を出ていき、着替えを済ませた後再び戻ってきたということか。
「……一回起きたんなら、もう寝る必要はないでしょーが」
「いいえ、あります!僕は何度だってあなたと寝たいんです」
整った顔立ちをしているから、きりっとした顔をすると様になる。
あたしといるときはデレデレと締まりのない顔をするストーカー男でも、普段のペーター=ホワイトは冷酷なハートの城の宰相だ。
そうだったと男の役職を思い出すあたしに、ペーターが珍しく真面目な顔をして言うには、
「無防備な眠りにつくあなたがその身を委ねることを許す相手は、この世界で僕一人…。僕だけの特権です」
「……」
あたしはなんとも言えない顔になる。ペーターはころっと表情を一変させ、頬の緩みを隠そうともせずに続けた。
「ああ、なんて幸せなんでしょう。僕が抱き寄せると、無邪気な微笑みを浮かべるあなた…!そんなあなたを胸に抱いて、少しの背徳を感じつつも唇を寄せる、その瞬間が最高の至福――ぐふぅっ」
変態、と一刀両断。恍惚として語るペーターの腹に拳を沈める。人が寝てる間になにしてくれてんだ、おい。
ようやく起き上がることができたあたしは、ベッドで蹲る白ウサギを一瞥して、ネグリジェの乱れを直した。
ベッドから下りたところで、背後からぎゅっと抱きしめられる。その必死さに溜め息が漏れた。
「〇〇、怒っちゃいましたか?僕、あなたを怒らせてしまいましたか?」
「…さあね」
「すみません、謝りますっ。謝りますから怒らないでください。悪気があったわけではなくて…ただ、どうしようもなくあなたのことが好きなだけなんです。愛してます」
出た、と。思わずそう思ってしまった。
ペーターの口から告げられない日はないと思うくらい、頻繁に口にする言葉だ。
そんなにぽんぽん言われると、その言葉にたいした価値はないんじゃないかと思ってしまうほど。
「ペーター、あんまりそういうことは言わないでよ」
「どうしてです?嘘じゃありません、僕は愛しているんです……あなたを、ずっと前から」
そうらしいけど、あたしは知らない。ストーカー、その一言で片づけてしまいたくなる。
音の羅列のようなペーターの愛。中身のない愛なんてつまらない。意味がない。
そう思うのに、下手に中身があっていつか終わりがきたとき、それこそ傷つくことになるだろうと思うと、受け入れてしまいそうになっている自分に気づく。
これは夢だ。いつか目を覚ますときが来る。
ペーターの愛情は偽りのように思えない。だけど言葉に中身がない。だったら、終わるそのときまでなら、受け入れても大丈夫…?
(最近、そんなことばっかり考えてる気がする。……馬鹿馬鹿しい)
嫌われるよりも、好かれていたい。人間なら誰だってそう思うだろう。
そう思うのが自然なことなら、そこまでで留まるべきなんだ。友愛でいいじゃないか。なぜ、それより先を求めようとする。
「〇〇…?どうかしましたか?」
様子を窺うような、少し不安の滲んだ声があたしの意識を呼び戻す。
好きだ愛してると言われる理由がわからない。でも、好意を持たれるのは、悪くないと思うから。
抱きしめる腕を解かせて、彼の動揺が暗い思考を連れてくるその前に、正面から抱きついてその不安を抑え込んでやった。
「っ、〇〇!?」
「言い忘れてた。…おはよう、ペーター」
昨日はどこに行ってたの。アナタがいなくて寂しかった。(うわあ、鳥肌が立つわ、これ)
わざと女の子らしくいじらしく言ってみると、感極まった白ウサギさんはがばりとベッドに押し倒してきた。
見上げた先にいる彼の色白の頬は上気し、瞳は感情の高ぶりを表して潤んでいた。
「お、おはようございます、僕の愛しい〇〇…!」
「うん、おはよう」
「大好きです、愛してます!」
「あーはいはい。わかってるってば」
ここで暴走されてはかなわないから、とりあえず落ち着かせようと昨日のことについて尋ねて気を逸らせた。
聞くところによると、昨日は仕事を片づけていたそうだ。真面目に働くペーターは珍しい。
つい本音を漏らせば、ペーターはあたしにだけ見せる優しい笑顔で、
「だって、仕事の山を片づけなければあなたに会わせないと陛下が言うんです。…まあ、いざとなれば仕事なんて王にでも押しつけて始末をつけますけど」
「……駄目だろ、それは」
「僕とあなたの障害になり得るあらゆるものは、排除しなければ気が済みません」
ペーターの手があたしに差し伸べられる。その手を借りて上体を起こした。
ペーターはあたしの髪についているんだろう寝癖を指で梳いて整えた後、後頭部に手を添えて引き寄せた。
頬に触れる唇。一秒ほどの触れあいは慈しみに溢れていて、受けるあたしは背筋がくすぐったくなる。
「仕事をきちんと片づけなければ、あなたに叱られると思って、真面目に働いてきました。ね、僕、偉いでしょう?」
「そうだね。よく頑張ったよ」
いい子いい子と頭を撫でてやる。ちょっと子ども扱いだったかなと思うも、満たされた様子のペーターを見て自然と頬が綻んだ。
「仕事も終わりましたし、僕達の仲を邪魔するものはありません。今日は一日中ずっと、一緒に過ごしましょうね」
昨日は昨日、今日は今日で仕事はあると思うんだけど。
ペーターの笑顔を見て、そう水をさすのも躊躇われるなんて、あたしはもう引き返しようがないところまで来てしまっているんだ。
(はは…あたしもそろそろ観念するしかないのかなー)
だけど受け入れてしまったら、なにかが終わりそうな気がする。それが少し怖い。
どうしても自ら逃げ道を断つことができないあたしは、想いの欠片を込めてペーターに微笑んだ。
ねえ、ペーター。もう少しだけこのままでいさせてね。
どうかアナタはいつまでも、あたしにとって優しい、心地のいい場所であって。
end。→あとがき
長く白い耳を頭から生やした彼は、あたしと目が合うと嬉しそうに瞳を輝かせた。
「おはようございます。お目覚めですか。もう少しくらい寝ていてもいいんですよ?」
「…そう?」
「はいっ。その分、僕はあなたの寝顔をじっくり堪能できますからね。さ、ゆっくり眠ってください。…どうしたんです、眠たいんでしょう?」
「……いや、やっぱり起きる」
「そうですか?…それは残念です」
寝顔を見てます宣言をされたら、誰だって安心して眠っていられないじゃないか。
そう思いながら身体を起こそうとする。が、それを制するように身体の上に乗っている、ペーターの腕。
起き上がれない、と無言のまま視線で催促すると、邪気のない笑顔が返ってきた。
「すみません。僕はまだ寝たいんです。ですから、ね?付き合ってくださいよ」
いけしゃあしゃあと言うペーターは、いつの間に着替えたのか、すでにパジャマ姿ではなかった。
ということは、あたしが二度寝している間に一度目を覚まして部屋を出ていき、着替えを済ませた後再び戻ってきたということか。
「……一回起きたんなら、もう寝る必要はないでしょーが」
「いいえ、あります!僕は何度だってあなたと寝たいんです」
整った顔立ちをしているから、きりっとした顔をすると様になる。
あたしといるときはデレデレと締まりのない顔をするストーカー男でも、普段のペーター=ホワイトは冷酷なハートの城の宰相だ。
そうだったと男の役職を思い出すあたしに、ペーターが珍しく真面目な顔をして言うには、
「無防備な眠りにつくあなたがその身を委ねることを許す相手は、この世界で僕一人…。僕だけの特権です」
「……」
あたしはなんとも言えない顔になる。ペーターはころっと表情を一変させ、頬の緩みを隠そうともせずに続けた。
「ああ、なんて幸せなんでしょう。僕が抱き寄せると、無邪気な微笑みを浮かべるあなた…!そんなあなたを胸に抱いて、少しの背徳を感じつつも唇を寄せる、その瞬間が最高の至福――ぐふぅっ」
変態、と一刀両断。恍惚として語るペーターの腹に拳を沈める。人が寝てる間になにしてくれてんだ、おい。
ようやく起き上がることができたあたしは、ベッドで蹲る白ウサギを一瞥して、ネグリジェの乱れを直した。
ベッドから下りたところで、背後からぎゅっと抱きしめられる。その必死さに溜め息が漏れた。
「〇〇、怒っちゃいましたか?僕、あなたを怒らせてしまいましたか?」
「…さあね」
「すみません、謝りますっ。謝りますから怒らないでください。悪気があったわけではなくて…ただ、どうしようもなくあなたのことが好きなだけなんです。愛してます」
出た、と。思わずそう思ってしまった。
ペーターの口から告げられない日はないと思うくらい、頻繁に口にする言葉だ。
そんなにぽんぽん言われると、その言葉にたいした価値はないんじゃないかと思ってしまうほど。
「ペーター、あんまりそういうことは言わないでよ」
「どうしてです?嘘じゃありません、僕は愛しているんです……あなたを、ずっと前から」
そうらしいけど、あたしは知らない。ストーカー、その一言で片づけてしまいたくなる。
音の羅列のようなペーターの愛。中身のない愛なんてつまらない。意味がない。
そう思うのに、下手に中身があっていつか終わりがきたとき、それこそ傷つくことになるだろうと思うと、受け入れてしまいそうになっている自分に気づく。
これは夢だ。いつか目を覚ますときが来る。
ペーターの愛情は偽りのように思えない。だけど言葉に中身がない。だったら、終わるそのときまでなら、受け入れても大丈夫…?
(最近、そんなことばっかり考えてる気がする。……馬鹿馬鹿しい)
嫌われるよりも、好かれていたい。人間なら誰だってそう思うだろう。
そう思うのが自然なことなら、そこまでで留まるべきなんだ。友愛でいいじゃないか。なぜ、それより先を求めようとする。
「〇〇…?どうかしましたか?」
様子を窺うような、少し不安の滲んだ声があたしの意識を呼び戻す。
好きだ愛してると言われる理由がわからない。でも、好意を持たれるのは、悪くないと思うから。
抱きしめる腕を解かせて、彼の動揺が暗い思考を連れてくるその前に、正面から抱きついてその不安を抑え込んでやった。
「っ、〇〇!?」
「言い忘れてた。…おはよう、ペーター」
昨日はどこに行ってたの。アナタがいなくて寂しかった。(うわあ、鳥肌が立つわ、これ)
わざと女の子らしくいじらしく言ってみると、感極まった白ウサギさんはがばりとベッドに押し倒してきた。
見上げた先にいる彼の色白の頬は上気し、瞳は感情の高ぶりを表して潤んでいた。
「お、おはようございます、僕の愛しい〇〇…!」
「うん、おはよう」
「大好きです、愛してます!」
「あーはいはい。わかってるってば」
ここで暴走されてはかなわないから、とりあえず落ち着かせようと昨日のことについて尋ねて気を逸らせた。
聞くところによると、昨日は仕事を片づけていたそうだ。真面目に働くペーターは珍しい。
つい本音を漏らせば、ペーターはあたしにだけ見せる優しい笑顔で、
「だって、仕事の山を片づけなければあなたに会わせないと陛下が言うんです。…まあ、いざとなれば仕事なんて王にでも押しつけて始末をつけますけど」
「……駄目だろ、それは」
「僕とあなたの障害になり得るあらゆるものは、排除しなければ気が済みません」
ペーターの手があたしに差し伸べられる。その手を借りて上体を起こした。
ペーターはあたしの髪についているんだろう寝癖を指で梳いて整えた後、後頭部に手を添えて引き寄せた。
頬に触れる唇。一秒ほどの触れあいは慈しみに溢れていて、受けるあたしは背筋がくすぐったくなる。
「仕事をきちんと片づけなければ、あなたに叱られると思って、真面目に働いてきました。ね、僕、偉いでしょう?」
「そうだね。よく頑張ったよ」
いい子いい子と頭を撫でてやる。ちょっと子ども扱いだったかなと思うも、満たされた様子のペーターを見て自然と頬が綻んだ。
「仕事も終わりましたし、僕達の仲を邪魔するものはありません。今日は一日中ずっと、一緒に過ごしましょうね」
昨日は昨日、今日は今日で仕事はあると思うんだけど。
ペーターの笑顔を見て、そう水をさすのも躊躇われるなんて、あたしはもう引き返しようがないところまで来てしまっているんだ。
(はは…あたしもそろそろ観念するしかないのかなー)
だけど受け入れてしまったら、なにかが終わりそうな気がする。それが少し怖い。
どうしても自ら逃げ道を断つことができないあたしは、想いの欠片を込めてペーターに微笑んだ。
ねえ、ペーター。もう少しだけこのままでいさせてね。
どうかアナタはいつまでも、あたしにとって優しい、心地のいい場所であって。
end。→あとがき