真白を染めゆく感情の名は
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「やっぱりいつものあんたより元気がないな。…風邪でも引いたのか?」
ゴーランドは〇〇の額に手のひらを押し当てた。あたたかな体温を感じられるということは、まったくの平熱だ。
「熱は…ねえな」
「だーから、あたしは健康体だってば」
「じゃあなんだ、精神面に問題があんのか?」
「……別の意味に取られかねない言い方だよな、それ」
幸運なことに、〇〇は心身ともに健全である。向き直ったゴーランドは真摯に〇〇と視線を合わせた。
「悩み事があるなら、いつでも相談に乗るぜ?」
不覚にも、少し言葉につまった。悩み事、か。
従業員達やゴーランドの指摘。その原因が気疲れで、顔に出てしまっているというのなら、不本意ではあるが納得できないこともなかった。
自分のメンタル面が弱いと思ったことはない。ただ最近、物事が思い通りにならないと感じることが増えてきていた。
考えてもその理由が判然とせず、もやもやが凝り固まって心の片隅から消えてくれない。
それが悩みの種だといえば、そうかもしれなかった。だが、これは〇〇の問題であり、そのうえ打ち明けるなど論外な内容なのだ。
「――…ありがと。その気持ちだけで十分だよ」
そう微笑んで感謝の気持ちを表すと、もどかしそうな渋面が返ってきた。
ゴーランドは胡乱げに眉根を寄せて、〇〇の顔を眺める。
「無理に話せとは言わねえ。…けど、俺にはなんでも話してくれよ?遠慮は無用だ」
「うん、わかった」
「あんたが頼ってくれるなら……胸糞悪い話でも聞いてやる。それが帽子屋絡みでもな」
「…はは。了解」
見せしめにブラッドが〇〇に口づけた、例の件をいまだに引きずっているらしい。
こちらの弁解を受け入れて、誤解も解けたのだが、それで気分のいい話に生まれ変わるかというとそうでもなく。
〇〇とて、知り合いと友人の濃厚なキスシーンを拝みたいとは思わないから、加担者として申し訳なかった。
謝罪をすれば、〇〇は被害者なのだから謝る必要はないと言って庇ってくれたけれど。
(ほんと、話の通じるまともな人がいてくれるから助かるよ…)
〇〇はだらしなくソファーに座っている身体を横に傾け、こてんと隣に頭を預けた。
触れ合うところから動揺が伝わってきたが、気にしない。
「っ、〇〇?な、なんだ、具合でも悪くなったか?」
「んーん、ただ癒されたいなあと思っただけ」
チェシャ猫におっさん呼ばわりされるゴーランドだが、つまりは包容力のある大人だ。
ばっちりアリスのお相手候補なのだから、自信を持って彼女にアタックしてほしい。
心の中で勝手なエールを送りつつ、ちょうどいい具合の弾力に頬を寄せる。
「俺は癒しって柄じゃねえが、あんたに甘えられるのは…悪くない、な」
甘えではなく、体のいい枕扱いなのだが。ゴーランドは優しげに傍らの〇〇を見下ろすと、ぱっと表情を輝かせた。
瞬間、ぞわっと嫌な予感に悪寒が駆け抜ける。身に覚えのあるこれは――まさか。
「よしっ、癒しと言えばやっぱ音楽だろう!あんたのためにとっておきの一曲、癒しのメロディーを奏でて…」
皆まで言わせてなるものか。演奏を許してしまえば、冥土への行進曲となるだろう。
ゴーランドが手品のようにバイオリンを取り出す前に、〇〇は彼の胸倉を掴んで引き寄せた。
動作の荒さに本心が表れてしまったが、そこは完成度の高い笑顔でカバーだ。
鼻先に微笑みを突きつけられた彼は、目を見開いて〇〇を凝視した。
「なあ、ゴーランド。あたしが今、一番ほしいものはなんだと思う?」
「え、だから…癒しだろう?」
「そ。音楽も悪くないけど、アナタがただそこにいてくれるだけでいい。十分に癒されるから」
事情を知らない者が聞けば、なかなかの口説き文句である。
〇〇がぱっと手を離しても、ゴーランドが楽器を取り出すことはなかった。彼は口元を手で隠し、視線を意図的に外しながら、
「〇〇……あんた、わざとだろ。いや、絶対にそうだ」
「ん、なあに?」
力なくソファーに座るゴーランドを背凭れにして、〇〇は何食わぬ顔で聞き返す。
存在が癒しになると言われて、気分を害す人間も少数だろう。が、そこまで照れる必要もないのではないだろうか。
余所者の不思議そうな眼差しを受けた遊園地のオーナーは、がっくりと肩を落とし、緩く笑った。
「…そうだよな。あんたはそういう奴だった」
「へ?」
「気にすんな、独り言だ。ほら、あんたはそろそろ休め」
そっと肩を引かれ、ぐらりと重心が傾く。些か柔らかさに欠ける膝の上で、〇〇はぱちぱちと瞬きをした。これは俗に言う、膝枕だ。
「特別にサービスするぜ。さ、存分に癒されてくれ」
人好きのする笑顔はあたたかく、身体は自ずと弛緩していった。
休憩するつもりはなかったが、雇い主の気遣いを無下にするのもどうかと思うので。
「じゃあ、少しだけ…」
「ああ。しばらくしたら、起こしてやる」
アリスも、ゴーランドに膝枕をしてもらったりするのだろうか。位置は反対のほうがしっくりくるが、膝枕をされる彼女も見てみたい。
頭を撫でる手を感じながら、うつらうつらと沈んでいく。
腹の上に置いた手を取り上げられ、指先に口づけられた気がしたが、きっと夢の中の出来事だったのだろう。
ゴーランドは〇〇の額に手のひらを押し当てた。あたたかな体温を感じられるということは、まったくの平熱だ。
「熱は…ねえな」
「だーから、あたしは健康体だってば」
「じゃあなんだ、精神面に問題があんのか?」
「……別の意味に取られかねない言い方だよな、それ」
幸運なことに、〇〇は心身ともに健全である。向き直ったゴーランドは真摯に〇〇と視線を合わせた。
「悩み事があるなら、いつでも相談に乗るぜ?」
不覚にも、少し言葉につまった。悩み事、か。
従業員達やゴーランドの指摘。その原因が気疲れで、顔に出てしまっているというのなら、不本意ではあるが納得できないこともなかった。
自分のメンタル面が弱いと思ったことはない。ただ最近、物事が思い通りにならないと感じることが増えてきていた。
考えてもその理由が判然とせず、もやもやが凝り固まって心の片隅から消えてくれない。
それが悩みの種だといえば、そうかもしれなかった。だが、これは〇〇の問題であり、そのうえ打ち明けるなど論外な内容なのだ。
「――…ありがと。その気持ちだけで十分だよ」
そう微笑んで感謝の気持ちを表すと、もどかしそうな渋面が返ってきた。
ゴーランドは胡乱げに眉根を寄せて、〇〇の顔を眺める。
「無理に話せとは言わねえ。…けど、俺にはなんでも話してくれよ?遠慮は無用だ」
「うん、わかった」
「あんたが頼ってくれるなら……胸糞悪い話でも聞いてやる。それが帽子屋絡みでもな」
「…はは。了解」
見せしめにブラッドが〇〇に口づけた、例の件をいまだに引きずっているらしい。
こちらの弁解を受け入れて、誤解も解けたのだが、それで気分のいい話に生まれ変わるかというとそうでもなく。
〇〇とて、知り合いと友人の濃厚なキスシーンを拝みたいとは思わないから、加担者として申し訳なかった。
謝罪をすれば、〇〇は被害者なのだから謝る必要はないと言って庇ってくれたけれど。
(ほんと、話の通じるまともな人がいてくれるから助かるよ…)
〇〇はだらしなくソファーに座っている身体を横に傾け、こてんと隣に頭を預けた。
触れ合うところから動揺が伝わってきたが、気にしない。
「っ、〇〇?な、なんだ、具合でも悪くなったか?」
「んーん、ただ癒されたいなあと思っただけ」
チェシャ猫におっさん呼ばわりされるゴーランドだが、つまりは包容力のある大人だ。
ばっちりアリスのお相手候補なのだから、自信を持って彼女にアタックしてほしい。
心の中で勝手なエールを送りつつ、ちょうどいい具合の弾力に頬を寄せる。
「俺は癒しって柄じゃねえが、あんたに甘えられるのは…悪くない、な」
甘えではなく、体のいい枕扱いなのだが。ゴーランドは優しげに傍らの〇〇を見下ろすと、ぱっと表情を輝かせた。
瞬間、ぞわっと嫌な予感に悪寒が駆け抜ける。身に覚えのあるこれは――まさか。
「よしっ、癒しと言えばやっぱ音楽だろう!あんたのためにとっておきの一曲、癒しのメロディーを奏でて…」
皆まで言わせてなるものか。演奏を許してしまえば、冥土への行進曲となるだろう。
ゴーランドが手品のようにバイオリンを取り出す前に、〇〇は彼の胸倉を掴んで引き寄せた。
動作の荒さに本心が表れてしまったが、そこは完成度の高い笑顔でカバーだ。
鼻先に微笑みを突きつけられた彼は、目を見開いて〇〇を凝視した。
「なあ、ゴーランド。あたしが今、一番ほしいものはなんだと思う?」
「え、だから…癒しだろう?」
「そ。音楽も悪くないけど、アナタがただそこにいてくれるだけでいい。十分に癒されるから」
事情を知らない者が聞けば、なかなかの口説き文句である。
〇〇がぱっと手を離しても、ゴーランドが楽器を取り出すことはなかった。彼は口元を手で隠し、視線を意図的に外しながら、
「〇〇……あんた、わざとだろ。いや、絶対にそうだ」
「ん、なあに?」
力なくソファーに座るゴーランドを背凭れにして、〇〇は何食わぬ顔で聞き返す。
存在が癒しになると言われて、気分を害す人間も少数だろう。が、そこまで照れる必要もないのではないだろうか。
余所者の不思議そうな眼差しを受けた遊園地のオーナーは、がっくりと肩を落とし、緩く笑った。
「…そうだよな。あんたはそういう奴だった」
「へ?」
「気にすんな、独り言だ。ほら、あんたはそろそろ休め」
そっと肩を引かれ、ぐらりと重心が傾く。些か柔らかさに欠ける膝の上で、〇〇はぱちぱちと瞬きをした。これは俗に言う、膝枕だ。
「特別にサービスするぜ。さ、存分に癒されてくれ」
人好きのする笑顔はあたたかく、身体は自ずと弛緩していった。
休憩するつもりはなかったが、雇い主の気遣いを無下にするのもどうかと思うので。
「じゃあ、少しだけ…」
「ああ。しばらくしたら、起こしてやる」
アリスも、ゴーランドに膝枕をしてもらったりするのだろうか。位置は反対のほうがしっくりくるが、膝枕をされる彼女も見てみたい。
頭を撫でる手を感じながら、うつらうつらと沈んでいく。
腹の上に置いた手を取り上げられ、指先に口づけられた気がしたが、きっと夢の中の出来事だったのだろう。