踏み荒らしたい境界線
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見れば、脱ぎ散らかしたはずの服はきちんと畳まれて枕元に置いてあった。
それから遠慮なくベッドを占領されたのでは、文句らしい文句も思いつかなかった。もとより文句を言う気はなかったが。
〇〇は服を片づけようとベッドに近づいたが、伸ばした手は逆に掴まれ阻まれた。
「ん?なに、ボリス」
至って自然な問いかけに、ボリスは不服そうに眉を寄せた。
「あんた、俺のことちゃんと見えてる?」
〇〇の動作は軽く腰を屈めた姿勢で止められていた。この体勢はちょっときついなと、もう片方の手をシーツの上についた。
「あたし、目はいいほうだよ」
視力が悪かったとしても、この距離で見えなければ相当である。つまり、なにかしら別の意図があって問われたのだ。
なんとなく察しながらも、〇〇は額面どおりに受け答えした。
やはりボリスは不機嫌に目を眇めるだけだった。
「じゃあ、自分がどういう格好なのかは自覚してる?」
「……」
そう言われて見下ろした先、白いバスローブ。しまった。なんだかんだですっかり忘れていた。
ああ、だから不愉快そうなのか。〇〇は苦笑いを浮かべて彼に詫びた。
「ごめんごめん、見苦しかったよな?今着替えるから……、っ?」
手が、外れない。それどころか急に思いきり引かれたことで、〇〇は均衡を失って前のめりになった。
ベッドに倒されたかと思えば、ぐるりと視界が回った。
「……ボリス?」
覆いかぶさる影の名を呼ぶ。なんだこの体勢。いやまあ、さっきより楽だけど。なんかおかしいぞ。
〇〇を組み敷いたボリスは、眉尻を下げ、情けない表情で自嘲した。
「なあ、〇〇。頼むからうわべだけでも警戒してくれよ。俺だけ意識してるって、想像以上にすっげー惨めな気分だ…」
感情を表すように、猫耳もしょげている。気になって触りたくなったが、手首を縫い止められているためにかなわない。
そしてその手を解放したのもつかの間で、今度は胴体を抱きしめてきた。
「ちょっ…ボリスっ?」
豊満とは程遠い胸元に顔をすり寄せ、頭を動かして位置を探る。
くすぐったさに身を捩るも、抜け出せない。
目的がなにかは、ようやく位置を定めた猫の満足そうな吐息で知ることができた。
「アリスと同じ、心臓の音だ…」
「そりゃまあ、余所者だから?」
「……でも、時計の音も聞こえる」
耳を澄ませば、〇〇も感じた。
自分の中に埋まった時計の存在を。久しく意識に及ばなかった、時を刻む秒針の鼓動を。
「なんで〇〇にこれがあるんだよ。心臓の音だけほしいのに、邪魔でしょうがないな」
本来余所者が持つはずのない時計に対して、チェシャ猫は追及しなかった。ただ純粋に疎ましく思っているだけのようだ。
内心助かったとほっとしたとき、反してぎくりと〇〇の身体が強張った。
熱い唇が、バスローブの合わせ目から覗く肌に触れていた。
「な、に――」
「音、もっと大きくしてよ」
俺も協力するからさ、とぺろっと首筋を舐め上げられ、ぞわっと鳥肌が立った。
この世界の住人にとって、自分達にはない心臓には惹かれるなにかがあるらしい。
もっと聴かせてと強請るように、バスローブの上から胸を撫でられる。
なだらかな丘の輪郭をなぞるように動く手に、〇〇は奇声を発しそうになった。
「じ、自分でなんとかするから!」
そこまでして聞きたいというのなら、億劫でもマラソンなりなんなりして脈拍数を上げてこよう。
だが、〇〇の考えを別方向に解釈したらしく、ボリスは嬉しそうに喉を鳴らした。
「いいねえ。〇〇が自分でやってみせてくれんの?」
(……なんの話だ、おい)
悟れてしまった自分が悲しい。そんな羞恥プレイ、土下座して頼まれたって誰がやるか。
肩を押しのけようと手をかけると、すっとボリスは身を引いた。
この隙にと〇〇は肘をついて上体を起こそうとする。が、思いがけず足首を掴まれて、ひょいと持ち上げられてしまった。
「わあ!だっ、めだって……っ」
割れそうになるバスローブの合わせを必死になって引っ張る。上ならまだしも、下は本気でヤバイ!
〇〇の常にない慌てように、ボリスは一瞬面食らったようだったが、視線はゆっくりと下方へと下りていった。
「え……嘘だろ?冗談抜きであんた、穿いてないわけ?」
「……」
無言で目を逸らす〇〇。マジで、とボリスは息を呑んだ。
そもそも誰のせいでこうなったと――あれ、もしかしてあたしか。あたしのせいか?
いろいろな不運が重なって現状が出来上がったようにも思える。
羞恥を煽られる状況だったが、〇〇はばれたことで少し安堵してもいた。知ったからには、これ以上のことは起こらないだろうと。
しかし、まさかの形で〇〇の期待は裏切られた。
俄かにボリスの手に力が込められると、思わぬところに息がかかった。
なんとボリスは躊躇いなく〇〇の足に口を寄せたのである。
熱い呼気に満ちた口腔に指が消える。〇〇は、うそ、と呟いた。信じられない。
「ボリス!?なにして……っ、汚いから!」
「んっ……大丈夫、あんたは綺麗だよ」
さらりと言ってのけた彼の言葉は、ある意味では正しかった。
(た、確かにシャワー浴びたとこだけど、でも!)
そういう問題ではないだろう。衛生的に考えて好ましい行為であるはずがない。
そんなことはお構いなしに、猫の舌は指と指の間までも丹念に舐めていった。その部分に初めて受ける刺激で、びくりと足が跳ねた。
ぞわぞわとした感覚が爪先から頭の頂点へと駆け抜ける。
「嫌だ、って言ってんのに……っ」
〇〇は唇を噛んで声の上擦りを抑えた。
多少の着崩れ覚悟で、少しは融通のきく片足で蹴り上げたなら、あるいは逃げられないこともないだろう。
だが、手ならまだしも足を使うことには躊躇いがあった。この期に及んで行儀が悪いなどと言っている場合ではないのだが。
(ああもうっ、これがボスとか騎士だったらほんっとに躊躇しないんだけどな!)
その頭にある猫耳のせいだろうか、相手はいたいけな小動物ではないのに、足を出すことに抵抗を感じてしまう。
〇〇の迷いをいいことに、ボリスが自らやめる気配はまるでなかった。
それから遠慮なくベッドを占領されたのでは、文句らしい文句も思いつかなかった。もとより文句を言う気はなかったが。
〇〇は服を片づけようとベッドに近づいたが、伸ばした手は逆に掴まれ阻まれた。
「ん?なに、ボリス」
至って自然な問いかけに、ボリスは不服そうに眉を寄せた。
「あんた、俺のことちゃんと見えてる?」
〇〇の動作は軽く腰を屈めた姿勢で止められていた。この体勢はちょっときついなと、もう片方の手をシーツの上についた。
「あたし、目はいいほうだよ」
視力が悪かったとしても、この距離で見えなければ相当である。つまり、なにかしら別の意図があって問われたのだ。
なんとなく察しながらも、〇〇は額面どおりに受け答えした。
やはりボリスは不機嫌に目を眇めるだけだった。
「じゃあ、自分がどういう格好なのかは自覚してる?」
「……」
そう言われて見下ろした先、白いバスローブ。しまった。なんだかんだですっかり忘れていた。
ああ、だから不愉快そうなのか。〇〇は苦笑いを浮かべて彼に詫びた。
「ごめんごめん、見苦しかったよな?今着替えるから……、っ?」
手が、外れない。それどころか急に思いきり引かれたことで、〇〇は均衡を失って前のめりになった。
ベッドに倒されたかと思えば、ぐるりと視界が回った。
「……ボリス?」
覆いかぶさる影の名を呼ぶ。なんだこの体勢。いやまあ、さっきより楽だけど。なんかおかしいぞ。
〇〇を組み敷いたボリスは、眉尻を下げ、情けない表情で自嘲した。
「なあ、〇〇。頼むからうわべだけでも警戒してくれよ。俺だけ意識してるって、想像以上にすっげー惨めな気分だ…」
感情を表すように、猫耳もしょげている。気になって触りたくなったが、手首を縫い止められているためにかなわない。
そしてその手を解放したのもつかの間で、今度は胴体を抱きしめてきた。
「ちょっ…ボリスっ?」
豊満とは程遠い胸元に顔をすり寄せ、頭を動かして位置を探る。
くすぐったさに身を捩るも、抜け出せない。
目的がなにかは、ようやく位置を定めた猫の満足そうな吐息で知ることができた。
「アリスと同じ、心臓の音だ…」
「そりゃまあ、余所者だから?」
「……でも、時計の音も聞こえる」
耳を澄ませば、〇〇も感じた。
自分の中に埋まった時計の存在を。久しく意識に及ばなかった、時を刻む秒針の鼓動を。
「なんで〇〇にこれがあるんだよ。心臓の音だけほしいのに、邪魔でしょうがないな」
本来余所者が持つはずのない時計に対して、チェシャ猫は追及しなかった。ただ純粋に疎ましく思っているだけのようだ。
内心助かったとほっとしたとき、反してぎくりと〇〇の身体が強張った。
熱い唇が、バスローブの合わせ目から覗く肌に触れていた。
「な、に――」
「音、もっと大きくしてよ」
俺も協力するからさ、とぺろっと首筋を舐め上げられ、ぞわっと鳥肌が立った。
この世界の住人にとって、自分達にはない心臓には惹かれるなにかがあるらしい。
もっと聴かせてと強請るように、バスローブの上から胸を撫でられる。
なだらかな丘の輪郭をなぞるように動く手に、〇〇は奇声を発しそうになった。
「じ、自分でなんとかするから!」
そこまでして聞きたいというのなら、億劫でもマラソンなりなんなりして脈拍数を上げてこよう。
だが、〇〇の考えを別方向に解釈したらしく、ボリスは嬉しそうに喉を鳴らした。
「いいねえ。〇〇が自分でやってみせてくれんの?」
(……なんの話だ、おい)
悟れてしまった自分が悲しい。そんな羞恥プレイ、土下座して頼まれたって誰がやるか。
肩を押しのけようと手をかけると、すっとボリスは身を引いた。
この隙にと〇〇は肘をついて上体を起こそうとする。が、思いがけず足首を掴まれて、ひょいと持ち上げられてしまった。
「わあ!だっ、めだって……っ」
割れそうになるバスローブの合わせを必死になって引っ張る。上ならまだしも、下は本気でヤバイ!
〇〇の常にない慌てように、ボリスは一瞬面食らったようだったが、視線はゆっくりと下方へと下りていった。
「え……嘘だろ?冗談抜きであんた、穿いてないわけ?」
「……」
無言で目を逸らす〇〇。マジで、とボリスは息を呑んだ。
そもそも誰のせいでこうなったと――あれ、もしかしてあたしか。あたしのせいか?
いろいろな不運が重なって現状が出来上がったようにも思える。
羞恥を煽られる状況だったが、〇〇はばれたことで少し安堵してもいた。知ったからには、これ以上のことは起こらないだろうと。
しかし、まさかの形で〇〇の期待は裏切られた。
俄かにボリスの手に力が込められると、思わぬところに息がかかった。
なんとボリスは躊躇いなく〇〇の足に口を寄せたのである。
熱い呼気に満ちた口腔に指が消える。〇〇は、うそ、と呟いた。信じられない。
「ボリス!?なにして……っ、汚いから!」
「んっ……大丈夫、あんたは綺麗だよ」
さらりと言ってのけた彼の言葉は、ある意味では正しかった。
(た、確かにシャワー浴びたとこだけど、でも!)
そういう問題ではないだろう。衛生的に考えて好ましい行為であるはずがない。
そんなことはお構いなしに、猫の舌は指と指の間までも丹念に舐めていった。その部分に初めて受ける刺激で、びくりと足が跳ねた。
ぞわぞわとした感覚が爪先から頭の頂点へと駆け抜ける。
「嫌だ、って言ってんのに……っ」
〇〇は唇を噛んで声の上擦りを抑えた。
多少の着崩れ覚悟で、少しは融通のきく片足で蹴り上げたなら、あるいは逃げられないこともないだろう。
だが、手ならまだしも足を使うことには躊躇いがあった。この期に及んで行儀が悪いなどと言っている場合ではないのだが。
(ああもうっ、これがボスとか騎士だったらほんっとに躊躇しないんだけどな!)
その頭にある猫耳のせいだろうか、相手はいたいけな小動物ではないのに、足を出すことに抵抗を感じてしまう。
〇〇の迷いをいいことに、ボリスが自らやめる気配はまるでなかった。