水に想いを告げる瞳の警鐘
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「見て見て、これがねとねと君だよ!」
じゃーんと効果音をつけて差し出されたのは、粘着質な緑色の液体を纏った物体だった。アリスが引き攣った顔になるのも頷ける。
「……ナマコ?」
「違うよ、ねとねと君だってば。持ってみて、ちゃんとしっかりねとねとしてるでしょう?」
持ちたくねーと意思を前面に押し出しているというのに、ディーは構わず手渡してきた。
〇〇はしかたなく両手で受け取りを試みた、が。
「う、げー…」
ディーはよくぞこれを平然と持てたものだ。
隙間という隙間を埋めんばかりに、ねっとりと密着してくる。体温に反応するように粘膜がぐじゅりと滴り落ちた。
「な、んか……これ、溶けてない?」
「ねとねと君は形態維持があんまり得意じゃないんだよね。優しく扱ってくれないと簡単に壊れちゃう」
扱うもなにも、あたしは微動だにしてないっつーの。ていうか壊れるんじゃなくて確実に溶けてますから。
悪質なスライム的それをダムの手に渡す。驚いたことに粘着は手に残らなかったが、ねとっとした感触を肌はしばらく忘れられそうになかった。
振り払えないとわかっていてもぶんぶんと振らずにはいられない。
気の毒そうな顔で〇〇を見るアリスに、今度はダムが別の玩具を手に近づいた。
「お姉さん、これがうにょうにょ君!ここをこうすると…ほらっ」
「う、わー…」
なんとも言えない動きを見せるうにょうにょ君に、アリスが身を引いた。
ぶっちゃけ、形容し難い卑猥な動きであることに間違いなかった。見ようによっては大人の玩具である。
どれもこれもろくなものではない。ということは、ラスボス――双子のイチ押しという“べとべと君”なるものは、いかほどのものなのか。
〇〇とアリスの目が交差する。こうなったら覚悟を決めるしか、ない。
無邪気にコレクションを紹介する彼らに悪意はないと思いたい。
通称べとべと君が満を持して登場したとき、あえなくそんな良心は見事吹っ飛んだ。
「!? げえ…っ」
「あ、あんた達そんな…っ×××××なもの…!」
いろいろな意味でモザイク推奨の物を生で見せられ、アリスの口から放送禁止用語がぴーっと放たれた。
なるほど、これが例のあれか。なんて感慨深く思う余裕はない。
さすがにそりゃまずいだろうという代物を手にして、ディーは可愛らしく首を傾げた。
「べとべと君、気に入らない?僕は絶品だと思うんだけど…ねえ、兄弟?」
「僕も素敵だと思うよ、兄弟。不規則に蠢く幻想的なフォルム、この世のものとは思えないカラー…」
セールスを始められても困る。〇〇はびしっとべとべと君を指差した。
「まず風呂にあっちゃいけないもんだろ、それ!超個人的なルームとかで密やかに愛でててくれ、頼むから」
「え~?大浴場で使うから楽しいん――あ、」
そのとき、こちらに近づいてきていたディーの手から、ぼとり。零れ落ちるべとべと君。
あろうことかぼちゃんと落ちたのは〇〇の目の前――いったいなんの冗談だ。ぞわっと背筋から全身が粟立った。
(なんで落ちる?べとべとしてるからその名前がついたわけで、べとべとしてんならそれらしく手にくっついとけよ…!)
危機に直面すると体験するスローモーションを目にし、頭の中で文句を喚き散らし。
瞬きひとつで正常な世界が戻ってくる。〇〇は叫んだ。
「ありえね――っ!!」
「ああっ、べとべと君…!」
ディーが悲しい悲鳴を上げて飛びついた。手探りで湯の中を掻き回して救出を試みる。
「勘弁しろよ!ぎゃっ、膝の辺りに奇妙な感触が…っ」
「ちょっ、〇〇暴れないで!べとべと君が逃げちゃうよっ」
「い、やだぁ…」
泣きそうだ。生理的に受けつけない。
水中にあってなお強力なべとべと感を発揮しているらしく、強烈に肌を刺激していた。
窮地に陥った〇〇は不意にディーの手がある場所に当たったことに気づかない。
ディーは弾かれたように頭を上げ、まじまじと手のひらと〇〇の顔を見比べた。
「え……まさか、〇〇…?」
「早く取れ、今すぐ取れ」
「あ、うん…」
ようやく探し当てたディーは、さらにグロテスクな形態に進化したべとべと君を浴槽の外に放り出した。
〇〇は感触を拭うためにせっせと肌を擦った。アリスはいつの間にか避難していて、そこからそっと声をかけてきた。
「だ、大丈夫?」
「あんまり大丈夫じゃない。なんであたしがこんな目に…」
「そう、よねー…」
「もう、出る」
そこはかとなく疲れた声で言う〇〇に、双子の耳がぴくりと反応した。赤と青の瞳がかち合い、声なき疎通を果たす。
「…じゃあ僕も上がろうかな。兄弟はどうする?」
ディーがぼそっと付け加える。〇〇が上がるんだしさ。
ダムは、あからさますぎるよ兄弟、と小さく呟いて、
「兄弟ったら、はしゃぎすぎて湯あたりしちゃったのかな。しょうがないから僕も付き添うよ」
さっきは不意打ちだったけど今度こそ心の準備はバッチリ、とダムにしかわからない言葉を小声で足した。
「さすが兄弟、機転がきくね」
「こういうときこそ頭を使うんだよ」
「――こら、あんた達は待ちなさい」
包み隠されもしない邪な思惑を咎めたアリスがガシリと双子の肩を掴んだ。
ぐりっと〇〇に背を向けさせると、にっこりと綺麗な笑顔で迫った。
「私と趣味の最悪な玩具を置いてどこに行くつもり?」
「お姉さん、なんだか笑顔が怖い…」
「ディー、それは幻覚だわ。私は優しい“お姉さん”だもの。…ダム、今振り向いたら承知しないわよ」
「やっぱり怖いよ、お姉さん…」
水音を耳に、揺れる水面を肌に感じながら、双子は子供らしからぬ無念の溜め息をこっそりついたのだった。
じゃーんと効果音をつけて差し出されたのは、粘着質な緑色の液体を纏った物体だった。アリスが引き攣った顔になるのも頷ける。
「……ナマコ?」
「違うよ、ねとねと君だってば。持ってみて、ちゃんとしっかりねとねとしてるでしょう?」
持ちたくねーと意思を前面に押し出しているというのに、ディーは構わず手渡してきた。
〇〇はしかたなく両手で受け取りを試みた、が。
「う、げー…」
ディーはよくぞこれを平然と持てたものだ。
隙間という隙間を埋めんばかりに、ねっとりと密着してくる。体温に反応するように粘膜がぐじゅりと滴り落ちた。
「な、んか……これ、溶けてない?」
「ねとねと君は形態維持があんまり得意じゃないんだよね。優しく扱ってくれないと簡単に壊れちゃう」
扱うもなにも、あたしは微動だにしてないっつーの。ていうか壊れるんじゃなくて確実に溶けてますから。
悪質なスライム的それをダムの手に渡す。驚いたことに粘着は手に残らなかったが、ねとっとした感触を肌はしばらく忘れられそうになかった。
振り払えないとわかっていてもぶんぶんと振らずにはいられない。
気の毒そうな顔で〇〇を見るアリスに、今度はダムが別の玩具を手に近づいた。
「お姉さん、これがうにょうにょ君!ここをこうすると…ほらっ」
「う、わー…」
なんとも言えない動きを見せるうにょうにょ君に、アリスが身を引いた。
ぶっちゃけ、形容し難い卑猥な動きであることに間違いなかった。見ようによっては大人の玩具である。
どれもこれもろくなものではない。ということは、ラスボス――双子のイチ押しという“べとべと君”なるものは、いかほどのものなのか。
〇〇とアリスの目が交差する。こうなったら覚悟を決めるしか、ない。
無邪気にコレクションを紹介する彼らに悪意はないと思いたい。
通称べとべと君が満を持して登場したとき、あえなくそんな良心は見事吹っ飛んだ。
「!? げえ…っ」
「あ、あんた達そんな…っ×××××なもの…!」
いろいろな意味でモザイク推奨の物を生で見せられ、アリスの口から放送禁止用語がぴーっと放たれた。
なるほど、これが例のあれか。なんて感慨深く思う余裕はない。
さすがにそりゃまずいだろうという代物を手にして、ディーは可愛らしく首を傾げた。
「べとべと君、気に入らない?僕は絶品だと思うんだけど…ねえ、兄弟?」
「僕も素敵だと思うよ、兄弟。不規則に蠢く幻想的なフォルム、この世のものとは思えないカラー…」
セールスを始められても困る。〇〇はびしっとべとべと君を指差した。
「まず風呂にあっちゃいけないもんだろ、それ!超個人的なルームとかで密やかに愛でててくれ、頼むから」
「え~?大浴場で使うから楽しいん――あ、」
そのとき、こちらに近づいてきていたディーの手から、ぼとり。零れ落ちるべとべと君。
あろうことかぼちゃんと落ちたのは〇〇の目の前――いったいなんの冗談だ。ぞわっと背筋から全身が粟立った。
(なんで落ちる?べとべとしてるからその名前がついたわけで、べとべとしてんならそれらしく手にくっついとけよ…!)
危機に直面すると体験するスローモーションを目にし、頭の中で文句を喚き散らし。
瞬きひとつで正常な世界が戻ってくる。〇〇は叫んだ。
「ありえね――っ!!」
「ああっ、べとべと君…!」
ディーが悲しい悲鳴を上げて飛びついた。手探りで湯の中を掻き回して救出を試みる。
「勘弁しろよ!ぎゃっ、膝の辺りに奇妙な感触が…っ」
「ちょっ、〇〇暴れないで!べとべと君が逃げちゃうよっ」
「い、やだぁ…」
泣きそうだ。生理的に受けつけない。
水中にあってなお強力なべとべと感を発揮しているらしく、強烈に肌を刺激していた。
窮地に陥った〇〇は不意にディーの手がある場所に当たったことに気づかない。
ディーは弾かれたように頭を上げ、まじまじと手のひらと〇〇の顔を見比べた。
「え……まさか、〇〇…?」
「早く取れ、今すぐ取れ」
「あ、うん…」
ようやく探し当てたディーは、さらにグロテスクな形態に進化したべとべと君を浴槽の外に放り出した。
〇〇は感触を拭うためにせっせと肌を擦った。アリスはいつの間にか避難していて、そこからそっと声をかけてきた。
「だ、大丈夫?」
「あんまり大丈夫じゃない。なんであたしがこんな目に…」
「そう、よねー…」
「もう、出る」
そこはかとなく疲れた声で言う〇〇に、双子の耳がぴくりと反応した。赤と青の瞳がかち合い、声なき疎通を果たす。
「…じゃあ僕も上がろうかな。兄弟はどうする?」
ディーがぼそっと付け加える。〇〇が上がるんだしさ。
ダムは、あからさますぎるよ兄弟、と小さく呟いて、
「兄弟ったら、はしゃぎすぎて湯あたりしちゃったのかな。しょうがないから僕も付き添うよ」
さっきは不意打ちだったけど今度こそ心の準備はバッチリ、とダムにしかわからない言葉を小声で足した。
「さすが兄弟、機転がきくね」
「こういうときこそ頭を使うんだよ」
「――こら、あんた達は待ちなさい」
包み隠されもしない邪な思惑を咎めたアリスがガシリと双子の肩を掴んだ。
ぐりっと〇〇に背を向けさせると、にっこりと綺麗な笑顔で迫った。
「私と趣味の最悪な玩具を置いてどこに行くつもり?」
「お姉さん、なんだか笑顔が怖い…」
「ディー、それは幻覚だわ。私は優しい“お姉さん”だもの。…ダム、今振り向いたら承知しないわよ」
「やっぱり怖いよ、お姉さん…」
水音を耳に、揺れる水面を肌に感じながら、双子は子供らしからぬ無念の溜め息をこっそりついたのだった。