水に想いを告げる瞳の警鐘
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余所者達が向かったのは屋敷の大浴場だった。
実は〇〇は随分前から使用許可をもらっていたのだが、実際に使うのは今日が初めてだったりする。
アリスはこの屋敷に滞在していないが、ブラッドの客人であることに変わりない。一緒に使っても問題ないだろう。
何故いきなり入浴なのかと突っ込まれるかと思い、そっとアリスの様子を窺った。明らかに納得しない色を顔に残しながらも、彼女は尋ねてこなかった。
気を遣わせてしまったのかもしれない。そう思うと申し訳なく、〇〇は夢の名残を拭えずにいる自分を静かに嗤った。
脱衣所に入ったアリスは躊躇いと共にエプロンドレスのリボンに手をかけた。
「あ。そういえば、アリスと裸の付き合いをするのもこれが初めてかー」
〇〇も隣に立って服のボタンを外し、一枚脱ぎ、続いてタンクトップも脱ぎ捨てた。
その見事な脱ぎっぷりに、唖然と感心を足して割ったような声でアリスが呟いた。
「……豪快ね、〇〇って……」
「ん、そう?」
さっさと上下とも下着姿になった〇〇は、己の身体を見下ろした。
付いてほしいところに付かず、付いてほしくないところに付く肉。かれこれ長い付き合いだ。
今の生活を改めない限りこの先も連れ添っていくことだろう。
「なんていうか、もう開き直ってるんだよねー。いまさら恥ずかしがっても手遅れ、みたいな?」
「そんな投げやりな…」
「あ、手入れがズサンな部分もあるから、あんま見ないほうがアリスのためかも」
「だから、そういう問題じゃなくて…」
続けかけたアリスだったが、〇〇がブラジャーのホックに指を伸ばすと慌てて目を逸らした。
頬をやや赤くして、肩を落とす。女性の慎ましさ云々について説くことは諦めたらしい。
あけっぴろげな人間を見ると、自分の恥じらいが馬鹿らしく思えてくるというもの。アリスはテキパキと脱いで身体にバスタオルを巻き、長い髪を結い上げた。
縋るような眼差しを受けた〇〇も、タオルで前面を隠して浴室に足を踏み入れた。聞こえた溜め息は空耳だろう。
日本の旅館などの大浴場では一般的に、テレビ撮影などで特別に許可が出る場合を除いて、湯船にタオルを浸けることは遠慮しなければならない。
タオルを巻いて風呂に入った覚えのない〇〇は、この開放感がたまらないと思っている。
きっちり身体の隅々まで洗い、洗髪し、やっとかけ湯をして湯船に足を入れる。
身についた習慣がそうさせるのか、気分転換にひとっ風呂というよりも立派な入浴タイムになった。
置いてあった洗面器を拝借してタオルを入れ、湯に浮かべた。入浴法が異なるため、アリスは先に浸かっていた。
素っ裸の〇〇が淡いピンク色に隠されると、彼女はようやく安堵したように顔を上げた。
「…まるで自分の家にいるみたいよ、〇〇」
「うーん、この入り方、習慣みたいなもんだからなー」
いい匂いに包まれてうっとりする。これはいい。
それに、自宅の詰めてせいぜい二人入れる程度の浴槽とは比べものにならない広さ。これなら本当に水泳可能だろう。
さすがにアリスの許容の目が非難に変わるのは心地よくないので試みはしないが。
「んーっ、すっきりするぅ…。ね、アリス?」
「ええ。のんびりするわね~」
カルチャーショック(?)を乗り越えたアリスは落ち着きを取り戻し、〇〇と肩を並べてほのぼのと同意した。
〇〇はぷかぷかと漂う洗面器を引き寄せ、タオルを取り出して頭のてっぺんに乗せた。この場面での定番は手拭いかもしれないが…まあいいか。
隣ではアリスが腕を伸ばしてリラックスしている。その横顔を見て、やはり西洋人は大人びているなと思った。
「アリスって、なんでも似合うのな」
「え?」
きょとんと向けられた顔をじーっと眺めてしまう。
「髪をアップにしたら、さらに大人っぽく見えるし…バスタオル姿も様になるし」
「えっと…そんなことはないと思うんだけど」
「いーや、そうだって」
ビバルディとは違う種類の色気を彼女は持っている。別に僻みではないが、ちょっとした羨望がある。
創造の女性達と張り合う気はなくても、身近にあればなんとなく我が身と比較してしまうものだ。
(贅沢は言わない。せめてもうちょっとだけ、どうにかならないもんかなあ…)
色気と短絡的に結びつく、女性の象徴。誰かさんに「可愛い」と揶揄されたパーツである。
大きければ大きいなりの悩みがあるのだろうが、小さい場合もそれは同じこと。掴むとすっぽり隠れる慎ましさに溜め息をつきたくなる。
「ちょっと、なにしてるのよ…」
「ん。俗説に踊らされる哀れな人間を演じてる?」
不自然に揺れる水面を見て、アリスは頭痛がするのか額に手をやった。揉めばいいってものでもないでしょう、と。
リラクゼーション空間のせいか日頃よりも開放的な振る舞いをする〇〇に、なんとも言えない視線を送る。
前触れもなく浴室と脱衣所を繋ぐ扉が開いたのはそのときだった。
「あ」
「なっ」
余所者が同時に驚きの声を上げた。対する闖入者らは予想通りの光景といったようにまったく動じず、にぱっと笑顔になった。
鏡で映したような、そっくりな二つの笑い顔。
「お姉さんも〇〇も楽しんでるー?」
「水臭いよ。二人で楽しむなら僕らも呼んでくれなくちゃ」
堂々と入ってきたのは双子の門番だった。二人揃ってなにやらカラフルな物体をいろいろ抱えている。
思わぬイベント発生に、〇〇は嬉々として片手をひらひら振った。
「ナイスタイミング。ディー、ダム」
「……むしろバッドタイミングなんじゃないかしら」
冷静に述べるアリス。ナイスだろうがバッドだろうが、定番の反応を示せない女性陣である。
双子はそれぞれ玩具を手にすると、さっさと肩まで湯に浸かった。
アリスが一応といった感じで彼らに尋ねた。
「仕事はどうしたの?」
「僕ら、今日は随分と頑張って働いたんだ。そろそろ休息が必要だと思ってさ」
「いーっぱい働いたからね。タダで癒される権利があるんだよ」
本当かどうか非常に怪しいものだ。
思い思いに遊び始める二人の持つ玩具に〇〇は見覚えがあった。
ディーの玩具は頭に花みたいな触角を生やした物体。ダムのそれは爬虫類的な赤と青の細長いボディをしている。
「なあ、二人とも。それ…」
「これ?これがどうかしたの?」
「そういえば紹介がまだだよ、兄弟」
ダムが言うと、ディーは「ああっ」と破願して頷いた。アリスと〇〇によく見えるように持ち上げると、
「これは“ぱくぱく君”だよ!ぱくぱくぱくーって高速で開閉ができるんだ。僕のお気に入りっ。で、兄弟のお気に入りが…」
「“によろにょろ君”っていうんだ。ほぅら、すっごくにょろにょろするんだよ~」
二人は得意げに自慢の玩具を披露する。アリスは「趣味悪いわね」と呟いたが、〇〇は実物を生で見られて喜んだ。
これが例のぱくぱく君とにょろにょろ君か。ならば、と浴槽の外に残されたものを見遣る。彼らの遊び道具は種類豊富、あの中にはきっと…。
「“うにょうにょ君”とか“ねとねと君”てのも、ひょっとしてあるんじゃない?」
丸くなった二対の目が〇〇に集中する。当たりだ。
「そのとおりだよ。どうして〇〇が知ってるの?」
「イチ押しの“べとべと君”もいるけど…」
べとべと君まで連れてきていたのか。タイミングの良さに笑う唇を抑え切れなかった。
「結構ネーミングが単純だから、想像すればだいたい察しがつく」
存在を知っていた、とは言えない。心配には及ばず、適当な誤魔化しでうまく納得させられたようだった。
「妙な名前の玩具ばっかり集めてるのね」
「お姉さん、見たい?特別に見せてあげようか?」
アリスの独り言を拾ったディーが目を輝かせて身を乗り出した。同じ表情をしたダムが〇〇に期待の目を向ける。
「〇〇も見たい?見たいよね?名前を当てたから、〇〇にも特別に見せてあげる。使いたかったら遠慮なく使っていいよ」
二つ以外は初見の玩具だ。興味をそそられる。使いたいというよりもアリスに使って見せてほしい、危険な意味で。
しかしそうなると、三人の行為を眺めるというアブノーマルに突入だ。間接的にならまだしも、生観賞はアリスに酷か。
などと実現しそうにない夢想に浸る〇〇の頭から、ずり落ちたタオルが湯船へ。
気づいたのは淡いピンク色に白い布が完全に染まってからだった。
「あれ、タオル…?」
「後ろに落ちたよ」
ダムが腕を伸ばして沈みかけたそれを拾い上げようとする。掴んだ拍子に水中で触れた感触――彼はぱちりと瞬いた。
「え……?」
すべ、としたそれは明らかに布地ではない。
「ダム?取ってくれた?」
「もしかして〇〇……タオル、ないの…?」
「? いや、さっきまで頭に乗っけてたから、そこら辺にあるはずだけど」
身体ごと振り向こうとする途中でダムの手が視界に入った。水分を含んだタオルが握られている。
ちゃんとあるじゃないか、と訝しげに顔を見やれば、ダムの目はある一点を凝視していた。
視線を辿り、ようやく合点が行く。
「あ、こっちのこと?」
色つきの湯で見えない裸体。が、少し腰を上げるか水面が大きく波打ちでもすれば確実に胸が見えるだろう。
〇〇は湿り気を帯びた髪を弄りながら、念のために言い訳をした。
「だって、濡れたタオルって纏わりつくし…?鬱陶しいだろ、せっかくの入浴なのに」
「そういう問題じゃないと思う…」
珍しく正論を言うダムの顔はやや赤く、見えそうで見えない部分に釘付けだ。
ま、気にすんな。と多少は頓着してもよかろうほどにあっさりと〇〇は言い切った。
少し離れた場所ではディーがアリスに新たな玩具を紹介している。なかなか来ない二人に焦れたのか、声が飛んできた。
「なにしてるんだよ兄弟。〇〇も早くこっちにおいでよ!」
「今行くー」
「あっ、〇〇!立ち上がっちゃ駄目!」
反射的にだろう、ダムが慌てふためいて手を引いた。〇〇は体勢を崩して危うくピンク色を飲むところだった。
文句のひとつでもと口を開こうとしたが、目の前の少年の姿を見て思い直す。
些か軽率だったかと反省の態度を示し、肩まで浸かった状態で移動した。
奇妙な行動にディーは不思議そうな顔をしたが、興味の対象にはならなかったようだった。
実は〇〇は随分前から使用許可をもらっていたのだが、実際に使うのは今日が初めてだったりする。
アリスはこの屋敷に滞在していないが、ブラッドの客人であることに変わりない。一緒に使っても問題ないだろう。
何故いきなり入浴なのかと突っ込まれるかと思い、そっとアリスの様子を窺った。明らかに納得しない色を顔に残しながらも、彼女は尋ねてこなかった。
気を遣わせてしまったのかもしれない。そう思うと申し訳なく、〇〇は夢の名残を拭えずにいる自分を静かに嗤った。
脱衣所に入ったアリスは躊躇いと共にエプロンドレスのリボンに手をかけた。
「あ。そういえば、アリスと裸の付き合いをするのもこれが初めてかー」
〇〇も隣に立って服のボタンを外し、一枚脱ぎ、続いてタンクトップも脱ぎ捨てた。
その見事な脱ぎっぷりに、唖然と感心を足して割ったような声でアリスが呟いた。
「……豪快ね、〇〇って……」
「ん、そう?」
さっさと上下とも下着姿になった〇〇は、己の身体を見下ろした。
付いてほしいところに付かず、付いてほしくないところに付く肉。かれこれ長い付き合いだ。
今の生活を改めない限りこの先も連れ添っていくことだろう。
「なんていうか、もう開き直ってるんだよねー。いまさら恥ずかしがっても手遅れ、みたいな?」
「そんな投げやりな…」
「あ、手入れがズサンな部分もあるから、あんま見ないほうがアリスのためかも」
「だから、そういう問題じゃなくて…」
続けかけたアリスだったが、〇〇がブラジャーのホックに指を伸ばすと慌てて目を逸らした。
頬をやや赤くして、肩を落とす。女性の慎ましさ云々について説くことは諦めたらしい。
あけっぴろげな人間を見ると、自分の恥じらいが馬鹿らしく思えてくるというもの。アリスはテキパキと脱いで身体にバスタオルを巻き、長い髪を結い上げた。
縋るような眼差しを受けた〇〇も、タオルで前面を隠して浴室に足を踏み入れた。聞こえた溜め息は空耳だろう。
日本の旅館などの大浴場では一般的に、テレビ撮影などで特別に許可が出る場合を除いて、湯船にタオルを浸けることは遠慮しなければならない。
タオルを巻いて風呂に入った覚えのない〇〇は、この開放感がたまらないと思っている。
きっちり身体の隅々まで洗い、洗髪し、やっとかけ湯をして湯船に足を入れる。
身についた習慣がそうさせるのか、気分転換にひとっ風呂というよりも立派な入浴タイムになった。
置いてあった洗面器を拝借してタオルを入れ、湯に浮かべた。入浴法が異なるため、アリスは先に浸かっていた。
素っ裸の〇〇が淡いピンク色に隠されると、彼女はようやく安堵したように顔を上げた。
「…まるで自分の家にいるみたいよ、〇〇」
「うーん、この入り方、習慣みたいなもんだからなー」
いい匂いに包まれてうっとりする。これはいい。
それに、自宅の詰めてせいぜい二人入れる程度の浴槽とは比べものにならない広さ。これなら本当に水泳可能だろう。
さすがにアリスの許容の目が非難に変わるのは心地よくないので試みはしないが。
「んーっ、すっきりするぅ…。ね、アリス?」
「ええ。のんびりするわね~」
カルチャーショック(?)を乗り越えたアリスは落ち着きを取り戻し、〇〇と肩を並べてほのぼのと同意した。
〇〇はぷかぷかと漂う洗面器を引き寄せ、タオルを取り出して頭のてっぺんに乗せた。この場面での定番は手拭いかもしれないが…まあいいか。
隣ではアリスが腕を伸ばしてリラックスしている。その横顔を見て、やはり西洋人は大人びているなと思った。
「アリスって、なんでも似合うのな」
「え?」
きょとんと向けられた顔をじーっと眺めてしまう。
「髪をアップにしたら、さらに大人っぽく見えるし…バスタオル姿も様になるし」
「えっと…そんなことはないと思うんだけど」
「いーや、そうだって」
ビバルディとは違う種類の色気を彼女は持っている。別に僻みではないが、ちょっとした羨望がある。
創造の女性達と張り合う気はなくても、身近にあればなんとなく我が身と比較してしまうものだ。
(贅沢は言わない。せめてもうちょっとだけ、どうにかならないもんかなあ…)
色気と短絡的に結びつく、女性の象徴。誰かさんに「可愛い」と揶揄されたパーツである。
大きければ大きいなりの悩みがあるのだろうが、小さい場合もそれは同じこと。掴むとすっぽり隠れる慎ましさに溜め息をつきたくなる。
「ちょっと、なにしてるのよ…」
「ん。俗説に踊らされる哀れな人間を演じてる?」
不自然に揺れる水面を見て、アリスは頭痛がするのか額に手をやった。揉めばいいってものでもないでしょう、と。
リラクゼーション空間のせいか日頃よりも開放的な振る舞いをする〇〇に、なんとも言えない視線を送る。
前触れもなく浴室と脱衣所を繋ぐ扉が開いたのはそのときだった。
「あ」
「なっ」
余所者が同時に驚きの声を上げた。対する闖入者らは予想通りの光景といったようにまったく動じず、にぱっと笑顔になった。
鏡で映したような、そっくりな二つの笑い顔。
「お姉さんも〇〇も楽しんでるー?」
「水臭いよ。二人で楽しむなら僕らも呼んでくれなくちゃ」
堂々と入ってきたのは双子の門番だった。二人揃ってなにやらカラフルな物体をいろいろ抱えている。
思わぬイベント発生に、〇〇は嬉々として片手をひらひら振った。
「ナイスタイミング。ディー、ダム」
「……むしろバッドタイミングなんじゃないかしら」
冷静に述べるアリス。ナイスだろうがバッドだろうが、定番の反応を示せない女性陣である。
双子はそれぞれ玩具を手にすると、さっさと肩まで湯に浸かった。
アリスが一応といった感じで彼らに尋ねた。
「仕事はどうしたの?」
「僕ら、今日は随分と頑張って働いたんだ。そろそろ休息が必要だと思ってさ」
「いーっぱい働いたからね。タダで癒される権利があるんだよ」
本当かどうか非常に怪しいものだ。
思い思いに遊び始める二人の持つ玩具に〇〇は見覚えがあった。
ディーの玩具は頭に花みたいな触角を生やした物体。ダムのそれは爬虫類的な赤と青の細長いボディをしている。
「なあ、二人とも。それ…」
「これ?これがどうかしたの?」
「そういえば紹介がまだだよ、兄弟」
ダムが言うと、ディーは「ああっ」と破願して頷いた。アリスと〇〇によく見えるように持ち上げると、
「これは“ぱくぱく君”だよ!ぱくぱくぱくーって高速で開閉ができるんだ。僕のお気に入りっ。で、兄弟のお気に入りが…」
「“によろにょろ君”っていうんだ。ほぅら、すっごくにょろにょろするんだよ~」
二人は得意げに自慢の玩具を披露する。アリスは「趣味悪いわね」と呟いたが、〇〇は実物を生で見られて喜んだ。
これが例のぱくぱく君とにょろにょろ君か。ならば、と浴槽の外に残されたものを見遣る。彼らの遊び道具は種類豊富、あの中にはきっと…。
「“うにょうにょ君”とか“ねとねと君”てのも、ひょっとしてあるんじゃない?」
丸くなった二対の目が〇〇に集中する。当たりだ。
「そのとおりだよ。どうして〇〇が知ってるの?」
「イチ押しの“べとべと君”もいるけど…」
べとべと君まで連れてきていたのか。タイミングの良さに笑う唇を抑え切れなかった。
「結構ネーミングが単純だから、想像すればだいたい察しがつく」
存在を知っていた、とは言えない。心配には及ばず、適当な誤魔化しでうまく納得させられたようだった。
「妙な名前の玩具ばっかり集めてるのね」
「お姉さん、見たい?特別に見せてあげようか?」
アリスの独り言を拾ったディーが目を輝かせて身を乗り出した。同じ表情をしたダムが〇〇に期待の目を向ける。
「〇〇も見たい?見たいよね?名前を当てたから、〇〇にも特別に見せてあげる。使いたかったら遠慮なく使っていいよ」
二つ以外は初見の玩具だ。興味をそそられる。使いたいというよりもアリスに使って見せてほしい、危険な意味で。
しかしそうなると、三人の行為を眺めるというアブノーマルに突入だ。間接的にならまだしも、生観賞はアリスに酷か。
などと実現しそうにない夢想に浸る〇〇の頭から、ずり落ちたタオルが湯船へ。
気づいたのは淡いピンク色に白い布が完全に染まってからだった。
「あれ、タオル…?」
「後ろに落ちたよ」
ダムが腕を伸ばして沈みかけたそれを拾い上げようとする。掴んだ拍子に水中で触れた感触――彼はぱちりと瞬いた。
「え……?」
すべ、としたそれは明らかに布地ではない。
「ダム?取ってくれた?」
「もしかして〇〇……タオル、ないの…?」
「? いや、さっきまで頭に乗っけてたから、そこら辺にあるはずだけど」
身体ごと振り向こうとする途中でダムの手が視界に入った。水分を含んだタオルが握られている。
ちゃんとあるじゃないか、と訝しげに顔を見やれば、ダムの目はある一点を凝視していた。
視線を辿り、ようやく合点が行く。
「あ、こっちのこと?」
色つきの湯で見えない裸体。が、少し腰を上げるか水面が大きく波打ちでもすれば確実に胸が見えるだろう。
〇〇は湿り気を帯びた髪を弄りながら、念のために言い訳をした。
「だって、濡れたタオルって纏わりつくし…?鬱陶しいだろ、せっかくの入浴なのに」
「そういう問題じゃないと思う…」
珍しく正論を言うダムの顔はやや赤く、見えそうで見えない部分に釘付けだ。
ま、気にすんな。と多少は頓着してもよかろうほどにあっさりと〇〇は言い切った。
少し離れた場所ではディーがアリスに新たな玩具を紹介している。なかなか来ない二人に焦れたのか、声が飛んできた。
「なにしてるんだよ兄弟。〇〇も早くこっちにおいでよ!」
「今行くー」
「あっ、〇〇!立ち上がっちゃ駄目!」
反射的にだろう、ダムが慌てふためいて手を引いた。〇〇は体勢を崩して危うくピンク色を飲むところだった。
文句のひとつでもと口を開こうとしたが、目の前の少年の姿を見て思い直す。
些か軽率だったかと反省の態度を示し、肩まで浸かった状態で移動した。
奇妙な行動にディーは不思議そうな顔をしたが、興味の対象にはならなかったようだった。