軌道修正不可のゲーム
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〇〇は凍りついた思考が動き出し、素早く対処を導き出すのを感じた。
表情を笑みの形に近づける。強張りを解いた声を演じた。
「エリオット。少し、頭を冷やしておいで。…それから、一緒に帰ろう」
「あ、……ああ……」
呆然とするエリオットがふらりと歩き出すのを見る前に、〇〇は店の扉を押し開いた。
勘違い。聞き間違えた。それだけだ。
機械的に、頼まれた品物だけを選んで手に取り、金を払う。
(だって、有り得ない)
一度心が落ち着くと、欠いていた冷静さは瞬く間に取り戻せた。
買い物を終え、片手に紙袋を抱えて店を出る。
外気を胸に取り込んで内側から吐き出したとき、パッと目を引くピンク色が目の前に現れた。
驚いて一歩退く〇〇に迫るように、金色の瞳がニィと弓形に笑んだ。
「今日はオシャレしてウサギのお兄さんとデート?そんな服着てるから、いったい誰の痴話喧嘩かと思ったぜ」
「……ボリス。見てたのか」
「うん。ばっちり」
随分と余計な場面を目撃されたらしい。
〇〇は溜め息をつき、巨大な襟巻きを押して道を空けさせた。
見渡す限りそこにオレンジ色は見えない。どこまで行ったのだろうか。これは探すしかないなと思う。
ボリスは〇〇が店から出てくるのをわざわざ待っていたらしい。
誰と言うまでもなくわかっているのだろう、一緒に探すと言い〇〇の隣を歩き出した。
「あ、さっきのは冗談だから…って、〇〇。なんか怒ってない?」
「別に」
「うわ、怒ってんじゃん。ごめんってば。まさか真に受けるとは思わなくてさー…」
顔を覗き込むように近づくボリスの尻尾が徒にスカートを撫でる。
どうしても視界に入る困り顔に、〇〇は立ち止まると肩の力を抜いた。
別に怒っているわけでも、真に受けたわけでもなかった。ただ気分があまり浮上しないだけだ。
そのことを素直に話せば、ボリスはほっとしたようだった。仮にこちらの気分を損ねたところで大事には至らないのだが。
「それって帽子屋ファミリーんとこのお仕着せだろ?どういう風の吹き回し?」
「どういう…って」
「〇〇が遊園地で仕事を始めた初日、おっさんに全力でスカート拒否してたの、俺覚えてんだけど」
「…ああ、あれね」
懐かしい記憶だ。ゴーランドが無理強いすることはなかったが、惜しそうな目をしていたことを記憶している。
普段飾り気のない人間だから、一度は違う趣向の服を着せてみたい。そういう誘惑でもあるのだろうか。
…さすがに遊園地の従業員の服装は今後も遠慮したい。
口に出さなくても思考が伝わったのか、ボリスは同意するように頷いた。
そして改めて〇〇の全身をじっと眺めた。誰かと同じように。
「うん、似合ってるよ。誰の趣味かは知らないけど、センスは悪くないね。その肌の見せ具合とか」
「…一応礼でも言っておこうか?」
引き攣ったお愛想顔を面白そうに見ながらボリスは〇〇の手を引いた。
少し高めに積まれた煉瓦の花壇の縁に腰を下ろすように促す。
白いスカートを特に気にすることもなく座った〇〇だったが、
「……〇〇。それはないんじゃない?」
「…あ。そっか」
さすがにこの格好で足を開いて座る女はいないに違いない。
〇〇は面倒くせーと露骨に顔に出して、けれどきっちりと足の隙間を埋めた。
足をそろえて座るというのは案外筋力がいるのだ。こりゃ長時間はきつそうだと思う。
むむと眉間に皺を作る〇〇に、ボリスは噴き出して肩を揺らした。
「っ…どんな格好してても〇〇は〇〇ってことか」
「当たり前だろ。服に合わせて変更できるような性格してないし」
「ははっ…まあ、たまにはそういう服も悪くないって。いつもは隠れてる〇〇の一面が見られるって感じ?」
あたしはアナタの遊び道具のひとつか。他人事だからって、完璧に面白がってるじゃないかこの猫は。
〇〇とて本当に似合うと思えば頑なに拒否したりしない。
そう、たとえばゲームのオプションとしてプロポーションの修正機能でも付いていればよかったのだ。
屋内型人間のため紫外線による肌の傷みの少なさには些かの自信がないでもない。
だが、スポーツでもしない限り引き締まった体つきにはなり得ない。
誇れるのは肉付きの良さ――しかも余計なところに付くという余分な代物だ。誰が好き好んで太い腕、脚を晒したがるか。
表情を笑みの形に近づける。強張りを解いた声を演じた。
「エリオット。少し、頭を冷やしておいで。…それから、一緒に帰ろう」
「あ、……ああ……」
呆然とするエリオットがふらりと歩き出すのを見る前に、〇〇は店の扉を押し開いた。
勘違い。聞き間違えた。それだけだ。
機械的に、頼まれた品物だけを選んで手に取り、金を払う。
(だって、有り得ない)
一度心が落ち着くと、欠いていた冷静さは瞬く間に取り戻せた。
買い物を終え、片手に紙袋を抱えて店を出る。
外気を胸に取り込んで内側から吐き出したとき、パッと目を引くピンク色が目の前に現れた。
驚いて一歩退く〇〇に迫るように、金色の瞳がニィと弓形に笑んだ。
「今日はオシャレしてウサギのお兄さんとデート?そんな服着てるから、いったい誰の痴話喧嘩かと思ったぜ」
「……ボリス。見てたのか」
「うん。ばっちり」
随分と余計な場面を目撃されたらしい。
〇〇は溜め息をつき、巨大な襟巻きを押して道を空けさせた。
見渡す限りそこにオレンジ色は見えない。どこまで行ったのだろうか。これは探すしかないなと思う。
ボリスは〇〇が店から出てくるのをわざわざ待っていたらしい。
誰と言うまでもなくわかっているのだろう、一緒に探すと言い〇〇の隣を歩き出した。
「あ、さっきのは冗談だから…って、〇〇。なんか怒ってない?」
「別に」
「うわ、怒ってんじゃん。ごめんってば。まさか真に受けるとは思わなくてさー…」
顔を覗き込むように近づくボリスの尻尾が徒にスカートを撫でる。
どうしても視界に入る困り顔に、〇〇は立ち止まると肩の力を抜いた。
別に怒っているわけでも、真に受けたわけでもなかった。ただ気分があまり浮上しないだけだ。
そのことを素直に話せば、ボリスはほっとしたようだった。仮にこちらの気分を損ねたところで大事には至らないのだが。
「それって帽子屋ファミリーんとこのお仕着せだろ?どういう風の吹き回し?」
「どういう…って」
「〇〇が遊園地で仕事を始めた初日、おっさんに全力でスカート拒否してたの、俺覚えてんだけど」
「…ああ、あれね」
懐かしい記憶だ。ゴーランドが無理強いすることはなかったが、惜しそうな目をしていたことを記憶している。
普段飾り気のない人間だから、一度は違う趣向の服を着せてみたい。そういう誘惑でもあるのだろうか。
…さすがに遊園地の従業員の服装は今後も遠慮したい。
口に出さなくても思考が伝わったのか、ボリスは同意するように頷いた。
そして改めて〇〇の全身をじっと眺めた。誰かと同じように。
「うん、似合ってるよ。誰の趣味かは知らないけど、センスは悪くないね。その肌の見せ具合とか」
「…一応礼でも言っておこうか?」
引き攣ったお愛想顔を面白そうに見ながらボリスは〇〇の手を引いた。
少し高めに積まれた煉瓦の花壇の縁に腰を下ろすように促す。
白いスカートを特に気にすることもなく座った〇〇だったが、
「……〇〇。それはないんじゃない?」
「…あ。そっか」
さすがにこの格好で足を開いて座る女はいないに違いない。
〇〇は面倒くせーと露骨に顔に出して、けれどきっちりと足の隙間を埋めた。
足をそろえて座るというのは案外筋力がいるのだ。こりゃ長時間はきつそうだと思う。
むむと眉間に皺を作る〇〇に、ボリスは噴き出して肩を揺らした。
「っ…どんな格好してても〇〇は〇〇ってことか」
「当たり前だろ。服に合わせて変更できるような性格してないし」
「ははっ…まあ、たまにはそういう服も悪くないって。いつもは隠れてる〇〇の一面が見られるって感じ?」
あたしはアナタの遊び道具のひとつか。他人事だからって、完璧に面白がってるじゃないかこの猫は。
〇〇とて本当に似合うと思えば頑なに拒否したりしない。
そう、たとえばゲームのオプションとしてプロポーションの修正機能でも付いていればよかったのだ。
屋内型人間のため紫外線による肌の傷みの少なさには些かの自信がないでもない。
だが、スポーツでもしない限り引き締まった体つきにはなり得ない。
誇れるのは肉付きの良さ――しかも余計なところに付くという余分な代物だ。誰が好き好んで太い腕、脚を晒したがるか。