この手から滑り落ちゆく、自由
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どんな手を使って勝とうが、勝ちは勝ち。
〇〇自身、まあひとつくらいなら言うことを聞いてもいいかという寛大な心持ちでいるのに、何故手を捕らわれなくてはならないのだ。
逃走するとでも思っているのだろうか。そう考えて、ふとある可能性が頭を掠めた。
「…ブラッド。ところで、アナタはあたしになにを望む気?」
肝心なことを聞きそびれていた。
賭けが策略なら、当然の勝ちで得るつもりのものもすでに決められているはずだ。
〇〇の僅かな強張りを感じ取ったのだろう、さらに手首の圧迫が高まった。
「さあ…お嬢さんはなんだと思う?」
後ろを歩いている〇〇からは、悦に入ったような口元だけがかろうじて見て取れた。
なんだこの嫌な感じ。こういうものはたいていの場合当たるのだから、ますます思考は嫌な方へと流れた。
そうこうしているうちにブラッドの部屋の前まで来てしまった。扉を開けて先導する手に引っ張り込まれる。
不可抗力で室内に踏み出すと同時にドアが閉まり、〇〇は強引に抱き寄せられていた。
「ブラッド…っ?」
いきなりの接触に困惑し、抵抗する。その際、彼の帽子が床に落ちた。
密着する身体を押しのけようとするがブラッドは物ともせず、〇〇の背後に回した手を動かした。
いとも容易くブラウスの下に侵入した手がタンクトップの裾をジーパンから引き抜く。
「待っ、」
「少しくらいは、こういうことを期待してくれていたんじゃないのか。私にこうして好きなように扱われることを?」
背筋を腰からつつと撫で上げた指が下着にたどり着き、嬲るようにぱちんと軽く弾く。
肌を打つささやかな刺激に、〇〇はなんとも言えない顔をした。
期待などこれっぽっちもしていないが、頭を過ぎった事態ではある。が、約束だからと易々と受け入れていい行為であるとは言えない。
〇〇はブラッドの胸に手をついて押し留めながら、
「これはちょっと…勘弁してくれ」
「なにか問題でも?」
「あー、と……あれだ。人様に見せて喜ばれるようなもんを着けてなくって…」
「肝心なのは中身だと私は思うが、」
ブラッドはちらと視線を下げた。明らかに〇〇の身体のある部分を見て、露骨にからかう眼差しになる。
「君はそう…、少し控えめだからな」
「もう貧乳だとはっきり言いやがれコノヤロー」
そりゃ否定しようのない事実だとしてもなんて不躾な目を向けるんだ、この無神経男。
〇〇は笑顔で足を踏みつけた。無論、体重をかけやすい踵で躙ることも忘れない。
ブラッドはぴくっと眉を動かしたが、苦痛を表には出さなかった。悠々と肌をなぞっていた手を引き、肩を竦める。
「…そんなに男を誘うものじゃない。その気になってしまうだろう?」
「この形相に誘われるなら、アナタのそっち方面の好みを疑わざるを得ないけど?」
それはもうにこりと微笑む。余所行きの外面に含まれるのは、決して微笑むなどという愛らしいものではない。
野良猫に威嚇された人間のように、ブラッドは名残惜しそうに距離を取った。
「…冗談だ。今回はな」
「次はない」
「いや、あるさ。それが賭けに勝った私の望みなのだから」
今知ったのではなく重々承知していたことなのに、ブラッドの図々しさにむっとする〇〇である。
唯我独尊、やりたいことをやりたいようにしかやらないこの男。
ブラッドが帽子を拾っている間に、〇〇はソファーに雑に身を投げ出した。抗議するように軋んだ音がしたが気にしない。
そしてブラッドをじろりと見遣る。今回限りでは済まないというその希望を聞くためだ。
「…詳しく話してくれる?」
「なに、簡単なことだ。私が求めたら、何時如何なるときも、幾度でも賭けに応じろ」
「はあっ?」
想像以上に横暴な要求だった。
思わず立ち上がりかけた〇〇を、彼はその一瞥で制した。なにもこんなときにマフィアの凄みを使わなくてもいいだろうに。
硬直した身体はふっと緩むと、後はソファーに預けるしかなかった。
「言っておくが、君に拒否権はない」
「…だろうな」
あればなにがなんでも行使してやる。
ああ、もうなにを言っても無駄なのだ。すべてが無効化、無力化される。
ブラッドは背凭れに手を置くと、項垂れる〇〇の襟髪を目を細めて眺めた。
せめてもの慰めにとでも思ったのか、そっと腰を折ると耳元に唇を近づけて声をかけた。
「ものは考えようだ、〇〇。悪い話じゃない。私になにかを命じられるのが嫌なら君が勝てばいいだけだ。君の望みなら、どんなことでも叶えてあげよう」
「(命じるのか)…できない約束はしないほうが身のためだよ」
「不可能かどうか、確かめるといい。そのためにも、君は私と賭けをして勝ちを得るしかない」
なんて奴だ。自ら作った一度の機会を、最大限に利用するとは。
なんだか、賢いと言えばいいのか卑怯と言えばいいのか分からなくなってきた(この場合、たとえ彼女が後者を選んでも誰が否定できようか)。
〇〇は理不尽さを拭い去れないまま、用意された菓子をガリガリと齧った。
おいしいはずのクッキーの味は、よく味わえそうにない。
至極ご満悦な様子で紅茶を啜るマフィアのボスを前に、〇〇はなにかを喪失したような漠然とした思いを感じていた。
【この手から滑り落ちゆく、自由】
仕掛けられた罠を、あたしはまだ知らない
continue…?→あとがき。
〇〇自身、まあひとつくらいなら言うことを聞いてもいいかという寛大な心持ちでいるのに、何故手を捕らわれなくてはならないのだ。
逃走するとでも思っているのだろうか。そう考えて、ふとある可能性が頭を掠めた。
「…ブラッド。ところで、アナタはあたしになにを望む気?」
肝心なことを聞きそびれていた。
賭けが策略なら、当然の勝ちで得るつもりのものもすでに決められているはずだ。
〇〇の僅かな強張りを感じ取ったのだろう、さらに手首の圧迫が高まった。
「さあ…お嬢さんはなんだと思う?」
後ろを歩いている〇〇からは、悦に入ったような口元だけがかろうじて見て取れた。
なんだこの嫌な感じ。こういうものはたいていの場合当たるのだから、ますます思考は嫌な方へと流れた。
そうこうしているうちにブラッドの部屋の前まで来てしまった。扉を開けて先導する手に引っ張り込まれる。
不可抗力で室内に踏み出すと同時にドアが閉まり、〇〇は強引に抱き寄せられていた。
「ブラッド…っ?」
いきなりの接触に困惑し、抵抗する。その際、彼の帽子が床に落ちた。
密着する身体を押しのけようとするがブラッドは物ともせず、〇〇の背後に回した手を動かした。
いとも容易くブラウスの下に侵入した手がタンクトップの裾をジーパンから引き抜く。
「待っ、」
「少しくらいは、こういうことを期待してくれていたんじゃないのか。私にこうして好きなように扱われることを?」
背筋を腰からつつと撫で上げた指が下着にたどり着き、嬲るようにぱちんと軽く弾く。
肌を打つささやかな刺激に、〇〇はなんとも言えない顔をした。
期待などこれっぽっちもしていないが、頭を過ぎった事態ではある。が、約束だからと易々と受け入れていい行為であるとは言えない。
〇〇はブラッドの胸に手をついて押し留めながら、
「これはちょっと…勘弁してくれ」
「なにか問題でも?」
「あー、と……あれだ。人様に見せて喜ばれるようなもんを着けてなくって…」
「肝心なのは中身だと私は思うが、」
ブラッドはちらと視線を下げた。明らかに〇〇の身体のある部分を見て、露骨にからかう眼差しになる。
「君はそう…、少し控えめだからな」
「もう貧乳だとはっきり言いやがれコノヤロー」
そりゃ否定しようのない事実だとしてもなんて不躾な目を向けるんだ、この無神経男。
〇〇は笑顔で足を踏みつけた。無論、体重をかけやすい踵で躙ることも忘れない。
ブラッドはぴくっと眉を動かしたが、苦痛を表には出さなかった。悠々と肌をなぞっていた手を引き、肩を竦める。
「…そんなに男を誘うものじゃない。その気になってしまうだろう?」
「この形相に誘われるなら、アナタのそっち方面の好みを疑わざるを得ないけど?」
それはもうにこりと微笑む。余所行きの外面に含まれるのは、決して微笑むなどという愛らしいものではない。
野良猫に威嚇された人間のように、ブラッドは名残惜しそうに距離を取った。
「…冗談だ。今回はな」
「次はない」
「いや、あるさ。それが賭けに勝った私の望みなのだから」
今知ったのではなく重々承知していたことなのに、ブラッドの図々しさにむっとする〇〇である。
唯我独尊、やりたいことをやりたいようにしかやらないこの男。
ブラッドが帽子を拾っている間に、〇〇はソファーに雑に身を投げ出した。抗議するように軋んだ音がしたが気にしない。
そしてブラッドをじろりと見遣る。今回限りでは済まないというその希望を聞くためだ。
「…詳しく話してくれる?」
「なに、簡単なことだ。私が求めたら、何時如何なるときも、幾度でも賭けに応じろ」
「はあっ?」
想像以上に横暴な要求だった。
思わず立ち上がりかけた〇〇を、彼はその一瞥で制した。なにもこんなときにマフィアの凄みを使わなくてもいいだろうに。
硬直した身体はふっと緩むと、後はソファーに預けるしかなかった。
「言っておくが、君に拒否権はない」
「…だろうな」
あればなにがなんでも行使してやる。
ああ、もうなにを言っても無駄なのだ。すべてが無効化、無力化される。
ブラッドは背凭れに手を置くと、項垂れる〇〇の襟髪を目を細めて眺めた。
せめてもの慰めにとでも思ったのか、そっと腰を折ると耳元に唇を近づけて声をかけた。
「ものは考えようだ、〇〇。悪い話じゃない。私になにかを命じられるのが嫌なら君が勝てばいいだけだ。君の望みなら、どんなことでも叶えてあげよう」
「(命じるのか)…できない約束はしないほうが身のためだよ」
「不可能かどうか、確かめるといい。そのためにも、君は私と賭けをして勝ちを得るしかない」
なんて奴だ。自ら作った一度の機会を、最大限に利用するとは。
なんだか、賢いと言えばいいのか卑怯と言えばいいのか分からなくなってきた(この場合、たとえ彼女が後者を選んでも誰が否定できようか)。
〇〇は理不尽さを拭い去れないまま、用意された菓子をガリガリと齧った。
おいしいはずのクッキーの味は、よく味わえそうにない。
至極ご満悦な様子で紅茶を啜るマフィアのボスを前に、〇〇はなにかを喪失したような漠然とした思いを感じていた。
【この手から滑り落ちゆく、自由】
仕掛けられた罠を、あたしはまだ知らない
continue…?→あとがき。