歪んだ時計の鼓動
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今や残された宰相と騎士が留まる理由はなくなった。
ペーターは余所者の背中が完璧に見えなくなると、手に持つ銃を時計に戻す。
そして同じように見送っていた騎士を疑わしげに睨んだ。下手物食い、とその口が毒を吐く。
「あなた、いったいあの余所者になにをしたんですか?」
「なにって?…ははっ、まあいろいろさ」
「気になるの?」という無邪気な問いに、ペーターは鼻白んで「ハッ…冗談でしょう」と嘲笑する。
「それより…あなたこそ、彼女を連れ込んでなんの得があると言うんです?僕なら、間違っても彼女だけは選びませんね」
「ペーターさんはわかってないなあ。俺なら毎日でも連れ込みたいくらいだ。……あいにく、自分の部屋までたどり着けないから実現は難しいんだけど」
エースはう~んと頭を悩ませ、「あっ、そうだ」、名案が浮かんだとポンと手を打った。連れ込む予行練習をしておこう、と爽快感たっぷりに言い放つ。
「そういうわけだから、ペーターさん…」
「さっさと行ってくださいよ」
目障りだと言わんばかりのペーターの態度を、ははっとエースは笑い飛ばした。両者共にいつものことだとわかりきっているのだ。
エースは自室を探す旅に出る。ペーターはアリスを探しに歩き出す。
擦れ違いざま、エースは不意に低く囁いた。
「――〇〇の良さが解らないなんて、かわいそうなペーターさん。ずっとこの先もそのままでいてくれよ?」
エースの背中を突き刺す視線は、互いの姿が確認できなくなるまで続いた。
エースは早速、自室を探す旅を始めた。とはいえ、目的に対する意気込みはあくまでも軽い。運がよければ見つかるだろう、とその程度で、ひとりてくてくと歩いていく。
「…まあ、俺としては特に意外でもなかったんだけどなー」
誰もいない廊下に、エースの独り言が浮遊する。
どうしようか、と腰に下げた剣の柄を優しく撫で、小さく呟いた。とりあえずペーターさんは要注意だ、と。
一方、最後に残された城の宰相は、じっと足元を見つめていた。
が、立ち尽くす自身に気づくと、くいと眼鏡を指で押し上げた。
「良さ?――…そんなもの、解りたくもない」
吐き捨て、颯爽と歩き出す。その実、ひどく気分が悪かった。
そんな気分を転換するために、愛しいアリスの笑顔を想い浮かべようとする。それを、純白に一点、黒の染みを落とされたような心地が邪魔をした。
笑顔が、消えない。嫌悪感を前面に押し出してもなお、屈することなく向けられる、あの笑顔が。
ぐ、と強く掴んだ胸元の下で、彼の時計は歪な音を立てた。
【歪んだ時計の鼓動】
僕は認めません こんなこと、あるはずがない
continue…?→あとがき。
ペーターは余所者の背中が完璧に見えなくなると、手に持つ銃を時計に戻す。
そして同じように見送っていた騎士を疑わしげに睨んだ。下手物食い、とその口が毒を吐く。
「あなた、いったいあの余所者になにをしたんですか?」
「なにって?…ははっ、まあいろいろさ」
「気になるの?」という無邪気な問いに、ペーターは鼻白んで「ハッ…冗談でしょう」と嘲笑する。
「それより…あなたこそ、彼女を連れ込んでなんの得があると言うんです?僕なら、間違っても彼女だけは選びませんね」
「ペーターさんはわかってないなあ。俺なら毎日でも連れ込みたいくらいだ。……あいにく、自分の部屋までたどり着けないから実現は難しいんだけど」
エースはう~んと頭を悩ませ、「あっ、そうだ」、名案が浮かんだとポンと手を打った。連れ込む予行練習をしておこう、と爽快感たっぷりに言い放つ。
「そういうわけだから、ペーターさん…」
「さっさと行ってくださいよ」
目障りだと言わんばかりのペーターの態度を、ははっとエースは笑い飛ばした。両者共にいつものことだとわかりきっているのだ。
エースは自室を探す旅に出る。ペーターはアリスを探しに歩き出す。
擦れ違いざま、エースは不意に低く囁いた。
「――〇〇の良さが解らないなんて、かわいそうなペーターさん。ずっとこの先もそのままでいてくれよ?」
エースの背中を突き刺す視線は、互いの姿が確認できなくなるまで続いた。
エースは早速、自室を探す旅を始めた。とはいえ、目的に対する意気込みはあくまでも軽い。運がよければ見つかるだろう、とその程度で、ひとりてくてくと歩いていく。
「…まあ、俺としては特に意外でもなかったんだけどなー」
誰もいない廊下に、エースの独り言が浮遊する。
どうしようか、と腰に下げた剣の柄を優しく撫で、小さく呟いた。とりあえずペーターさんは要注意だ、と。
一方、最後に残された城の宰相は、じっと足元を見つめていた。
が、立ち尽くす自身に気づくと、くいと眼鏡を指で押し上げた。
「良さ?――…そんなもの、解りたくもない」
吐き捨て、颯爽と歩き出す。その実、ひどく気分が悪かった。
そんな気分を転換するために、愛しいアリスの笑顔を想い浮かべようとする。それを、純白に一点、黒の染みを落とされたような心地が邪魔をした。
笑顔が、消えない。嫌悪感を前面に押し出してもなお、屈することなく向けられる、あの笑顔が。
ぐ、と強く掴んだ胸元の下で、彼の時計は歪な音を立てた。
【歪んだ時計の鼓動】
僕は認めません こんなこと、あるはずがない
continue…?→あとがき。