歪んだ時計の鼓動
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石造りの床は座るとひんやりしていて心地いい。〇〇は大きく息を吸い込むと、だらりと身体を脱力させて塀にもたれた。
ここのところ、ずっと昼が続いている。別に朝昼晩と特に好き嫌いはないのだが、そろそろ夜が恋しい。
夜の時間帯に睡眠をとることを固持するつもりはないとしても、真昼間の明るさが影響して深く眠れないのだ。
「…ねむ」
ふあ、と誰の目も気にすることなく、欠伸をひとつ。ここには自分ひとりしかいない。下がる目蓋に従うと、ちょうどいい具合の風がゆるゆると流れた。
軽く寝不足なのかもしれない、とぼんやり思う。この世界で時間帯にこだわればたちまち健康を害してしまうだろうとわかっていても、眠るなら夜がいいと思ってしまう。それにもし限界が来れば、自ずと身体の方が勝手に睡眠をとるだろう。
あれだ、あの授業中に襲い来る睡魔。あの抗い難いものが来るまでは夜を待とう、と妙な目標を掲げる。
時計塔からの見晴らしは完璧だった。ほら、空がこんなにも近くに感じられる。
静かな空間がやはり性に合っているのだろう。落ち着く。浅い眠りが忍び寄る。だが、それに呑まれるよりも先に、〇〇に近づく者がいた。
「――こんなところで寝るな」
「…ああ、おかえり。ユリウス」
のんびりとそう言うと、呆れの混じった重い溜め息を返された。無理もない、今や〇〇は石畳にごろんと寝転がっているのだ。そりゃ溜め息もつきたくなるだろう。
「おい。言ってるそばから目を閉じるんじゃない」
「んー…だって時計塔(ここ)、気持ちいいんだ」
力の入らない笑みを見せる〇〇に、ぐっと言葉に詰まるユリウス。彼はわざとらしく咳払いをすると、腰に手を当てた。
「…まったく。おまえは理解し難い女だ。まあ、ここに居着く時点でわかっていたことだが」
物好きだとでも言いたいのだろうか。珍妙なものを見る目を向けられる。
〇〇は上体を起こすと、ぐっと伸びをしてからユリウスを見上げた。
「さてと。ユリウスが帰ってきたことだし…。お腹すかない?なにか作るよ」
「!あ、あ…そうだな…」
本当はひとりで先に済ませてしまってもよかったのだが、一人前をわざわざ作る気にもなれず、いつ帰るとも知れないユリウスを待っていたのだ(そこらへんがいかに自分が面倒臭がりかを物語っていると言えよう)。
彼が空腹である確証もないので、不要ならそれはそれでよかった。ユリウスのことだからそこはきっぱりとした返答があると思っていたのに、妙に歯切れが悪い。視線はあっちに行ったりこっちに行ったりと宙を漂い、なにかを言いかける口は閉じたり開いたり…。
一言で言おう。挙動不審である。
「お、おい、〇〇」
「うん?」
「その、だな…」
「うん」
「だからっ…つまり…」
苦悶の表情、とまではいかないが、もどかしさを耐えかねた顔だった。ユリウスがしかめっ面で見下ろしてくる様は、ある種の迫力を伴う。
言いたいことがあるのに上手く言えない、そんな感じを受けた〇〇は先を促そうと口を開く。
「?どうした、ユリ」
「――っし、食事に行かないかと言っている…!」
(……。や、初耳だからね?)
表情で悟れと?なにも満面の笑顔で誘えとは言わないが、その強張った顔はどうにかならないか。
それにしても珍しいことがあるものだ。引きこもりのユリウスが、外出から帰ってすぐにまた出かけようだなんて。熱でもあるのだろうか。
明らかに慣れないことを言った、と前面に表すユリウスに手を伸ばせば、払いのけられてしまった。
「な、なんだっ」
「ユリウスが珍しいこと言うから、体温確認を」
「……たまにはこういう気分になることもある」
彼はむすりと口をへの字に曲げ、焦れたように再度尋ねた。
「それで、行くのか行かないのか、どっちなんだ」
「まあ…。せっかくだから、行こうかな」
「……そうか、」
不自然な咳払い、再び。立ち上がった〇〇がおや?と目線を上げる頃には、すでにユリウスは背を向けて歩き出していた。
ちらりと見えた耳の色に、ふ、と零れる笑みを禁じ得ない。――ああ、もう本当に。
「ユリウスのそういうところ、たまらないんだ。ぜひ、アリスと…」
「なにをぶつぶつ言ってる。早く来い」
「はい、はい」
ここのところ、ずっと昼が続いている。別に朝昼晩と特に好き嫌いはないのだが、そろそろ夜が恋しい。
夜の時間帯に睡眠をとることを固持するつもりはないとしても、真昼間の明るさが影響して深く眠れないのだ。
「…ねむ」
ふあ、と誰の目も気にすることなく、欠伸をひとつ。ここには自分ひとりしかいない。下がる目蓋に従うと、ちょうどいい具合の風がゆるゆると流れた。
軽く寝不足なのかもしれない、とぼんやり思う。この世界で時間帯にこだわればたちまち健康を害してしまうだろうとわかっていても、眠るなら夜がいいと思ってしまう。それにもし限界が来れば、自ずと身体の方が勝手に睡眠をとるだろう。
あれだ、あの授業中に襲い来る睡魔。あの抗い難いものが来るまでは夜を待とう、と妙な目標を掲げる。
時計塔からの見晴らしは完璧だった。ほら、空がこんなにも近くに感じられる。
静かな空間がやはり性に合っているのだろう。落ち着く。浅い眠りが忍び寄る。だが、それに呑まれるよりも先に、〇〇に近づく者がいた。
「――こんなところで寝るな」
「…ああ、おかえり。ユリウス」
のんびりとそう言うと、呆れの混じった重い溜め息を返された。無理もない、今や〇〇は石畳にごろんと寝転がっているのだ。そりゃ溜め息もつきたくなるだろう。
「おい。言ってるそばから目を閉じるんじゃない」
「んー…だって時計塔(ここ)、気持ちいいんだ」
力の入らない笑みを見せる〇〇に、ぐっと言葉に詰まるユリウス。彼はわざとらしく咳払いをすると、腰に手を当てた。
「…まったく。おまえは理解し難い女だ。まあ、ここに居着く時点でわかっていたことだが」
物好きだとでも言いたいのだろうか。珍妙なものを見る目を向けられる。
〇〇は上体を起こすと、ぐっと伸びをしてからユリウスを見上げた。
「さてと。ユリウスが帰ってきたことだし…。お腹すかない?なにか作るよ」
「!あ、あ…そうだな…」
本当はひとりで先に済ませてしまってもよかったのだが、一人前をわざわざ作る気にもなれず、いつ帰るとも知れないユリウスを待っていたのだ(そこらへんがいかに自分が面倒臭がりかを物語っていると言えよう)。
彼が空腹である確証もないので、不要ならそれはそれでよかった。ユリウスのことだからそこはきっぱりとした返答があると思っていたのに、妙に歯切れが悪い。視線はあっちに行ったりこっちに行ったりと宙を漂い、なにかを言いかける口は閉じたり開いたり…。
一言で言おう。挙動不審である。
「お、おい、〇〇」
「うん?」
「その、だな…」
「うん」
「だからっ…つまり…」
苦悶の表情、とまではいかないが、もどかしさを耐えかねた顔だった。ユリウスがしかめっ面で見下ろしてくる様は、ある種の迫力を伴う。
言いたいことがあるのに上手く言えない、そんな感じを受けた〇〇は先を促そうと口を開く。
「?どうした、ユリ」
「――っし、食事に行かないかと言っている…!」
(……。や、初耳だからね?)
表情で悟れと?なにも満面の笑顔で誘えとは言わないが、その強張った顔はどうにかならないか。
それにしても珍しいことがあるものだ。引きこもりのユリウスが、外出から帰ってすぐにまた出かけようだなんて。熱でもあるのだろうか。
明らかに慣れないことを言った、と前面に表すユリウスに手を伸ばせば、払いのけられてしまった。
「な、なんだっ」
「ユリウスが珍しいこと言うから、体温確認を」
「……たまにはこういう気分になることもある」
彼はむすりと口をへの字に曲げ、焦れたように再度尋ねた。
「それで、行くのか行かないのか、どっちなんだ」
「まあ…。せっかくだから、行こうかな」
「……そうか、」
不自然な咳払い、再び。立ち上がった〇〇がおや?と目線を上げる頃には、すでにユリウスは背を向けて歩き出していた。
ちらりと見えた耳の色に、ふ、と零れる笑みを禁じ得ない。――ああ、もう本当に。
「ユリウスのそういうところ、たまらないんだ。ぜひ、アリスと…」
「なにをぶつぶつ言ってる。早く来い」
「はい、はい」