標的を誤った争奪戦
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ささっと身体を洗い流し、いつもの服に着替えた〇〇は、タオルを手に戻った。ベッドには、ピンクの塊がひとつ。
元々借り物のこの部屋は、遊園地での自室とはいえ、ホテルに泊まるようなよそよそしさがある。
そのため仮にも自分のベッドに遠慮もなく横になるボリスを、なんの迷惑だと思うこともない。ただ、ああ夜行性だから昼間は眠いんだな、程度に認識するだけだ。
頭にタオルを乗せて近づき、猫を見下ろす。熟睡しているようなら、これといった用もなく起こすのは忍びないと思ったのだ。
だが、互いに届くほどの距離に縮まると、待ってましたとばかりに手が伸び上がり〇〇をベッドに転がした。
「…ちょっと。なに、起きてたんだ?」
「なにって…あんたの反応こそなんなんだよ。つまんないなー」
目前に迫った瞳に平然と言うと、どんな反応を望んでいたのかボリスは口を曲げた。
興を削がれて身を起こすかと思いきや、ごろごろと喉を鳴らして擦り寄ってくる。
「あんたの反応も、この部屋も、マジで面白くないよな。このシーツだって、あんたの匂いがまったくしないしさ」
何気にセクハラ発言だと思うも、猫そのものの仕草でじゃれつかれては言う気も失せる。
実際は愛らしい猫ではなく、猫耳と尻尾を生やした男だとしても、だ。
「面白くなくて結構。あたしに構う暇があるなら、アリスを探してくれば?」
「…俺はあんただから構ってほしいってのに、冷たいな」
腰に抱きつかれ、ぐりぐりと頭を腹に押しつけられる。
(や、その辺はヤバイから…)
細腰ならまだいい。でも哀しいかなそうじゃないからやめてくれ。
ぐぐっと押し返して脱出を試みるが――効果なし。
「……」
「ずっと思ってたんだけど、〇〇っていい匂いするよね。石鹸とは違う、なんていうのかな…そう、蜜みたいな…」
クセになりそう。うっとりと囁かれる。
蜜みたいだなんて甘く表現されても反応に困る。喜べばいいのか?それとも頬を染めるべきか。
でも、原因不明なのだからこの場合、それは異臭とでもいうべきじゃなかろうか。とまあ、思考はどうも変な方向に向かってしまう。
自分はどうやら一般的な女性からは多少ズレた位置にいるようだと、妙な再認識。
いろいろなものが混ざって、はあ、と深い溜め息に変わる。…力で引き離せないのなら、奥の手を。
〇〇は一息に、ぴくぴくと動く猫耳をがっしと鷲掴みにした。息を呑み、ボリスの全身から力が抜ける。
「っ…」
「はいどうもー」
束縛力をなくした腕をひょいと退けて起き上がる。
恨めしげに睨まれても気にせず、肩にタオルを引っかけて立ち上がった。その足でテーブルに向かう。
置いてあった例のキャンディーの山からオレンジ色をひとつ摘み、あまりに視線が執拗なのでしかたがなくベッドに戻る。
せっかくの脱出も、これで無意味。
転がされることはなかったが、間隔を狭めて強引に座らされた。金色の瞳が不思議と揺らめいて見える。
「…男をかわすのに手慣れてるあんたも好きだけど、つれなさすぎ」
手慣れるほど場数を踏む機会もなかったはずだが。
とりあえず、ボリスの眼差しを放置してキャンディーを食すことにした。
オレンジ色の包みを開くと、同じくオレンジ色の飴玉が現れる。こりゃ味もオレンジだろう。
(柑橘類、好きなんだよなー。いただきまーす)
「――なあ。そういえば、あんたブラッドさんの情婦になったんだって?」
「ッ、う!」
折りしもまさかのキャロット味に受けた衝撃(にんじんはないだろう、にんじんは)が、オレンジ色のウサギを彷彿させた。
そしてオレンジ色のウサギは、気だるげなボスを連想させる。
期待はずれのにんじん味だからといって捨てるわけにもいかず、飴は口に銜えておくことにして。
(……。今、なに言った?)
耳を疑う単語が聞こえやしなかったか。
当の本人はいつの間にか〇〇の銃を手にし、
「あ。これ、せっかく俺があんたのいいように改造してやったのに、全然使ってないじゃん」
「……いやいや、待てボリス。アナタ、さっきなんて言った?」
普通に話題が飛んだ。聞き過ごせない台詞を再度要求すれば、ボリスは銃を弄りながら繰り返す。
「だから、帽子屋ファミリーに囲われてんだろ?」
「……」
誰が誰の囲い者だ。ていうかなんの話だ。
「…なにかの間違いじゃないかな。ほら、例えばアリスとか」
「えー。でも、ちゃんと聞いたんだぜ?」
間違いなら間違いで俺は嬉しいけど、なんて笑う。こちらにとっては笑い事ではない。
妙な噂が出回りでもしたら、それこそ楽しみの死活問題だ。
出所はどこだと詰め寄らんばかりに問い質す。意外にもボリスはあっさり白状した。
「どこって、門番たちだよ。前に遊びに行ったときに愚痴られたんだ。〇〇をボスに取られたーって」
元々借り物のこの部屋は、遊園地での自室とはいえ、ホテルに泊まるようなよそよそしさがある。
そのため仮にも自分のベッドに遠慮もなく横になるボリスを、なんの迷惑だと思うこともない。ただ、ああ夜行性だから昼間は眠いんだな、程度に認識するだけだ。
頭にタオルを乗せて近づき、猫を見下ろす。熟睡しているようなら、これといった用もなく起こすのは忍びないと思ったのだ。
だが、互いに届くほどの距離に縮まると、待ってましたとばかりに手が伸び上がり〇〇をベッドに転がした。
「…ちょっと。なに、起きてたんだ?」
「なにって…あんたの反応こそなんなんだよ。つまんないなー」
目前に迫った瞳に平然と言うと、どんな反応を望んでいたのかボリスは口を曲げた。
興を削がれて身を起こすかと思いきや、ごろごろと喉を鳴らして擦り寄ってくる。
「あんたの反応も、この部屋も、マジで面白くないよな。このシーツだって、あんたの匂いがまったくしないしさ」
何気にセクハラ発言だと思うも、猫そのものの仕草でじゃれつかれては言う気も失せる。
実際は愛らしい猫ではなく、猫耳と尻尾を生やした男だとしても、だ。
「面白くなくて結構。あたしに構う暇があるなら、アリスを探してくれば?」
「…俺はあんただから構ってほしいってのに、冷たいな」
腰に抱きつかれ、ぐりぐりと頭を腹に押しつけられる。
(や、その辺はヤバイから…)
細腰ならまだいい。でも哀しいかなそうじゃないからやめてくれ。
ぐぐっと押し返して脱出を試みるが――効果なし。
「……」
「ずっと思ってたんだけど、〇〇っていい匂いするよね。石鹸とは違う、なんていうのかな…そう、蜜みたいな…」
クセになりそう。うっとりと囁かれる。
蜜みたいだなんて甘く表現されても反応に困る。喜べばいいのか?それとも頬を染めるべきか。
でも、原因不明なのだからこの場合、それは異臭とでもいうべきじゃなかろうか。とまあ、思考はどうも変な方向に向かってしまう。
自分はどうやら一般的な女性からは多少ズレた位置にいるようだと、妙な再認識。
いろいろなものが混ざって、はあ、と深い溜め息に変わる。…力で引き離せないのなら、奥の手を。
〇〇は一息に、ぴくぴくと動く猫耳をがっしと鷲掴みにした。息を呑み、ボリスの全身から力が抜ける。
「っ…」
「はいどうもー」
束縛力をなくした腕をひょいと退けて起き上がる。
恨めしげに睨まれても気にせず、肩にタオルを引っかけて立ち上がった。その足でテーブルに向かう。
置いてあった例のキャンディーの山からオレンジ色をひとつ摘み、あまりに視線が執拗なのでしかたがなくベッドに戻る。
せっかくの脱出も、これで無意味。
転がされることはなかったが、間隔を狭めて強引に座らされた。金色の瞳が不思議と揺らめいて見える。
「…男をかわすのに手慣れてるあんたも好きだけど、つれなさすぎ」
手慣れるほど場数を踏む機会もなかったはずだが。
とりあえず、ボリスの眼差しを放置してキャンディーを食すことにした。
オレンジ色の包みを開くと、同じくオレンジ色の飴玉が現れる。こりゃ味もオレンジだろう。
(柑橘類、好きなんだよなー。いただきまーす)
「――なあ。そういえば、あんたブラッドさんの情婦になったんだって?」
「ッ、う!」
折りしもまさかのキャロット味に受けた衝撃(にんじんはないだろう、にんじんは)が、オレンジ色のウサギを彷彿させた。
そしてオレンジ色のウサギは、気だるげなボスを連想させる。
期待はずれのにんじん味だからといって捨てるわけにもいかず、飴は口に銜えておくことにして。
(……。今、なに言った?)
耳を疑う単語が聞こえやしなかったか。
当の本人はいつの間にか〇〇の銃を手にし、
「あ。これ、せっかく俺があんたのいいように改造してやったのに、全然使ってないじゃん」
「……いやいや、待てボリス。アナタ、さっきなんて言った?」
普通に話題が飛んだ。聞き過ごせない台詞を再度要求すれば、ボリスは銃を弄りながら繰り返す。
「だから、帽子屋ファミリーに囲われてんだろ?」
「……」
誰が誰の囲い者だ。ていうかなんの話だ。
「…なにかの間違いじゃないかな。ほら、例えばアリスとか」
「えー。でも、ちゃんと聞いたんだぜ?」
間違いなら間違いで俺は嬉しいけど、なんて笑う。こちらにとっては笑い事ではない。
妙な噂が出回りでもしたら、それこそ楽しみの死活問題だ。
出所はどこだと詰め寄らんばかりに問い質す。意外にもボリスはあっさり白状した。
「どこって、門番たちだよ。前に遊びに行ったときに愚痴られたんだ。〇〇をボスに取られたーって」