標的を誤った争奪戦
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しばらく歩いた先に、果たしてその姿を見つけた〇〇は軽くダメージを受けた。
そこにいたのは、青いワンピースの少女と鮮やかなピンク色の猫。
(アリスが来てんなら、もっと早く教えてくれ…!)
恨めしい、でも会えて嬉しい。この複雑な感情をどうしようかと、前を行くやまぶき色の広い背中を見た。
ああ、でもアリスと猫の組み合わせは久しぶりだ。これは堪能せねば、と意気込む〇〇の内心など露知らず、彼らの後ろ姿に、あろうことかゴーランドが意気揚々と接近しようとする。
〇〇は慌ててその腕をむんずと掴むと、手近な物陰にゴーランドを引っ張り込んだ。勢いづいてバランスを崩し、二人して倒れてしまう。
「お、おい〇〇っ」
「ちょっと黙って」
困惑と狼狽を露にするゴーランドを尻目に、〇〇はそっと顔を覗かせた。
猫が顔を寄せる、少女が身を引く、さらに猫が迫り、あっと驚く間もなく少女の頬に舌を伸ばした。
会話ははっきりとは聞こえないが、アリスが舐められた頬を染めて抗議する様子が見られただけでも大満足だ。やるじゃないか、猫。にんまりと緩む〇〇の顔。
「……あんた、覗きが趣味だったのか」
やけに近くでゴーランドの声がしたが、観賞中の〇〇の気の留めるところではない。
「失礼な。あたしはただ、アリスが愛でられてる様を見るのが好きなだけだ」
「あんま変わんねえだろそれ…」
「悔しかったらアナタも混ざってくれば?むしろ行ってこい。あたしは大歓迎だから」
さっきは割り込むのを阻んだくせに、今度は焚きつけるようなことを言う。我ながら自分勝手だ。
向こうの二人にすればゴーランドの介入は邪魔でしかないだろうが、〇〇にはご馳走にデザートといった感じなのだ。
的外れに言葉を返す〇〇は、目の前の光景に心を奪われたように他に見向きもしない。当然、傍の男が滅多に見せない類いの不穏な空気を纏ったことにも気づかない。
「…なあ、〇〇」
「んー?」
「あいつらが楽しんでんだから、こっちはこっちで楽しむってのはどうだ?」
ぎゅ、と掴まれた手に、ようやく〇〇の意識が移った。そして遅ればせながら、自分たちの微妙な体勢を知る。
尻餅をつき、後ろ手に身体を支えるゴーランド。その投げ出された足に乗っかり、身を乗り出す〇〇。
「……」
「……あれ?」
身に覚えのない、妙な体勢。ゴーランドは無言だ。
アリス観賞に夢中になっていた〇〇は、笑みのない彼の顔と馴染みのない場の雰囲気に圧され、声が出ない。
メリー=ゴーランドがなんだか変だ。そう思ったが今この口に出せば火に油を注ぐことになりかねない。
触れ合う手が熱い。外せない視線に、居たたまれなくなるのはどうして。
なにも言えず、なにもできない。ふと傾いてくる大きな身体に〇〇の肩が強張った。束縛の手が強さを増す。
「――おっさん、なにしてんの?」
ひやりと首筋に当てられた氷。そう感じるほどに温度の低い声が二人の間に落とされた。
いつの間に近づいたのか、ピンク色の猫が仁王立ちでそこにいた。片手に銃を携えて。
ぴんと張られていた緊張の糸が、不意に切れるのを身に感じた。どういうわけか、雰囲気を作り出した張本人であるはずのゴーランドが、そのことに安堵の息さえついたのだ。
状況を打ち破られて、ほっとしているかのような。
「この状態で、俺のほうがなにかされてるとは考えねえのかよ…」
ゴーランドが苦笑じみた表情を浮かべる。見ようによっては、確かに〇〇が彼を襲っているようにも見える。
自分がでんと足の上に座っていては立つに立てないだろうと腰を浮かすと、一足早く行動に出たゴーランドが手を伸べ、素早く〇〇の腕の下に己が腕を通す。
立ち上がる手助けをされた〇〇は、身体が浮くほどの力強さに「わ」と声を上げた。やや強引でいて慎重な手つきはまるで女の子に対する扱いで、何故かびびってしまった。(これは違う、となにがどうというでもなく直感的にそう思った)
すとん、と地面につく足。ゴーランドの腰にある馬の形をした飾りが〇〇から離れた。
猫――ボリス=エレイは冷やかに瞳を細めてゴーランドを見て言う。
「〇〇がよっぽど危機的に飢えない限り、あんたみたいなおっさんが相手にされる日は永遠に来ないね」
金色の瞳がこちらを向き、そうだろ?と首肯を求める。飢えるってなんだ。男にか。
銃口はゴーランドに定まっているが、なんだか彼を人質に脅されている気分だ。
おっさん呼ばわりのゴーランドだが、まだまだ若い部類に入るだろう。〇〇にとっては、アリスの恋愛対象圏にゴーランドが入っていればそれでいいわけだが。それにほら、世の中にはいい言葉もある。
「“恋愛に年齢なんて関係ない”よな、アリス?」
「えっ……まあ、そうね」
遅れてやってきたアリスは、〇〇の勢い込んだ問いに戸惑いながらも答える。
望んだ返答に満足そうに頷く〇〇。「そうだよな」と嬉しそうなゴーランド。面白くないといったふうのボリス。
三者三様の反応を見て、自分が来るまでになにがあったのだろうと思うアリスである。
そこにいたのは、青いワンピースの少女と鮮やかなピンク色の猫。
(アリスが来てんなら、もっと早く教えてくれ…!)
恨めしい、でも会えて嬉しい。この複雑な感情をどうしようかと、前を行くやまぶき色の広い背中を見た。
ああ、でもアリスと猫の組み合わせは久しぶりだ。これは堪能せねば、と意気込む〇〇の内心など露知らず、彼らの後ろ姿に、あろうことかゴーランドが意気揚々と接近しようとする。
〇〇は慌ててその腕をむんずと掴むと、手近な物陰にゴーランドを引っ張り込んだ。勢いづいてバランスを崩し、二人して倒れてしまう。
「お、おい〇〇っ」
「ちょっと黙って」
困惑と狼狽を露にするゴーランドを尻目に、〇〇はそっと顔を覗かせた。
猫が顔を寄せる、少女が身を引く、さらに猫が迫り、あっと驚く間もなく少女の頬に舌を伸ばした。
会話ははっきりとは聞こえないが、アリスが舐められた頬を染めて抗議する様子が見られただけでも大満足だ。やるじゃないか、猫。にんまりと緩む〇〇の顔。
「……あんた、覗きが趣味だったのか」
やけに近くでゴーランドの声がしたが、観賞中の〇〇の気の留めるところではない。
「失礼な。あたしはただ、アリスが愛でられてる様を見るのが好きなだけだ」
「あんま変わんねえだろそれ…」
「悔しかったらアナタも混ざってくれば?むしろ行ってこい。あたしは大歓迎だから」
さっきは割り込むのを阻んだくせに、今度は焚きつけるようなことを言う。我ながら自分勝手だ。
向こうの二人にすればゴーランドの介入は邪魔でしかないだろうが、〇〇にはご馳走にデザートといった感じなのだ。
的外れに言葉を返す〇〇は、目の前の光景に心を奪われたように他に見向きもしない。当然、傍の男が滅多に見せない類いの不穏な空気を纏ったことにも気づかない。
「…なあ、〇〇」
「んー?」
「あいつらが楽しんでんだから、こっちはこっちで楽しむってのはどうだ?」
ぎゅ、と掴まれた手に、ようやく〇〇の意識が移った。そして遅ればせながら、自分たちの微妙な体勢を知る。
尻餅をつき、後ろ手に身体を支えるゴーランド。その投げ出された足に乗っかり、身を乗り出す〇〇。
「……」
「……あれ?」
身に覚えのない、妙な体勢。ゴーランドは無言だ。
アリス観賞に夢中になっていた〇〇は、笑みのない彼の顔と馴染みのない場の雰囲気に圧され、声が出ない。
メリー=ゴーランドがなんだか変だ。そう思ったが今この口に出せば火に油を注ぐことになりかねない。
触れ合う手が熱い。外せない視線に、居たたまれなくなるのはどうして。
なにも言えず、なにもできない。ふと傾いてくる大きな身体に〇〇の肩が強張った。束縛の手が強さを増す。
「――おっさん、なにしてんの?」
ひやりと首筋に当てられた氷。そう感じるほどに温度の低い声が二人の間に落とされた。
いつの間に近づいたのか、ピンク色の猫が仁王立ちでそこにいた。片手に銃を携えて。
ぴんと張られていた緊張の糸が、不意に切れるのを身に感じた。どういうわけか、雰囲気を作り出した張本人であるはずのゴーランドが、そのことに安堵の息さえついたのだ。
状況を打ち破られて、ほっとしているかのような。
「この状態で、俺のほうがなにかされてるとは考えねえのかよ…」
ゴーランドが苦笑じみた表情を浮かべる。見ようによっては、確かに〇〇が彼を襲っているようにも見える。
自分がでんと足の上に座っていては立つに立てないだろうと腰を浮かすと、一足早く行動に出たゴーランドが手を伸べ、素早く〇〇の腕の下に己が腕を通す。
立ち上がる手助けをされた〇〇は、身体が浮くほどの力強さに「わ」と声を上げた。やや強引でいて慎重な手つきはまるで女の子に対する扱いで、何故かびびってしまった。(これは違う、となにがどうというでもなく直感的にそう思った)
すとん、と地面につく足。ゴーランドの腰にある馬の形をした飾りが〇〇から離れた。
猫――ボリス=エレイは冷やかに瞳を細めてゴーランドを見て言う。
「〇〇がよっぽど危機的に飢えない限り、あんたみたいなおっさんが相手にされる日は永遠に来ないね」
金色の瞳がこちらを向き、そうだろ?と首肯を求める。飢えるってなんだ。男にか。
銃口はゴーランドに定まっているが、なんだか彼を人質に脅されている気分だ。
おっさん呼ばわりのゴーランドだが、まだまだ若い部類に入るだろう。〇〇にとっては、アリスの恋愛対象圏にゴーランドが入っていればそれでいいわけだが。それにほら、世の中にはいい言葉もある。
「“恋愛に年齢なんて関係ない”よな、アリス?」
「えっ……まあ、そうね」
遅れてやってきたアリスは、〇〇の勢い込んだ問いに戸惑いながらも答える。
望んだ返答に満足そうに頷く〇〇。「そうだよな」と嬉しそうなゴーランド。面白くないといったふうのボリス。
三者三様の反応を見て、自分が来るまでになにがあったのだろうと思うアリスである。