標的を誤った争奪戦
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陽気な音楽と、この領地特有の楽しげな雰囲気に包まれながら任された仕事を片づけた頃、夕方が朝に押されるようにして時間帯が変わった。
運動はあまり好きではないが、一仕事を終えた後の充実感はなかなか気持ちがいいものだ。
余談だが、〇〇は普段着とは別に、この世界で購入した服を仕事着として着用している。
仕事先の領地で使用人の服をもらおうと思えばもらえるのだ(誰とは言わないが、要らないと言っても押しつけてきた雇い主もいる。物は即クローゼットに眠らせた)。
だが、あんなひらひらしたもの(スカート)を着こなせる自信もなく、またかえって働きづらいだろうというわけで早々に辞退していた。アリスならば文句なしに似合うのだが。
「よっ、〇〇!お疲れさん」
ぽんと肩を叩かれて振り向くと、遊園地のオーナーが人好きのする笑みを浮かべて立っていた。いつもありがとな、と言われ、いえいえこちらこそ、と笑い返す。
ゴーランドは雇い主の中で、というか役持ちの中では貴重な、まともな人間だ。難点があるにはあるが、普段接する分には充分話の通じる相手だ。少なくとも他とは違い、無理難題を押しつけるということはない。
「ん…?オーナー、それなに?」
「ああ、これか?これは遊びに来てくれた子供に配ってんだよ」
ゴーランドは腕にかけていたバスケットを傾け、中を見せてくれた。可愛らしい、色とりどりの棒付キャンディーだった。
彼は大きな手でその山をひと掴みすると「ほらよ」と〇〇に差し出した。反射的に両手で受け取る。と、さらにもうひと掴み上乗せされた。
「え、こんなにくれるの?」
「おう。あんたにやろうと思って持ってきたんだからな」
これは近所の気のいいおじさんが近所の子供にお菓子を与える構図だ。瞬間的にそう思った。
(てことは、あたしは飴で喜ぶガキ…?)
成人した身としては悲しむべきか。両手いっぱいのキャンディーと、目の前の人のいい笑顔を見比べる。
まあ、甘いものは好きだし、ゴーランドの「遠慮すんなよ」という表情に嫌がらせ要素を見出せなかったので、素直に好意として受け取っておくことにした。
「……あ。まさか、これを給料代わりにするっていうんじゃあ…」
「ないない。俺がんなシケた真似するわけねえだろうが」
失礼な物言いを軽々と一蹴し、ゴーランドはひょいと〇〇の腕を取った。
え、と思う間もなく、引っ張られるままに歩き出す。拍子に棒付キャンディーが三つ、零れ落ちた。
「ただ、ちょ~っと付き合ってくれるとありがてえんだけどなあ?」
付き合うも合わないも、これは断れない状態だろう。
そうでなくともゴーランドの頼みが(何故か)断りづらい〇〇は、息をつく。承諾、もしくは降参の溜め息だった。
手にある残りのカラフルをポケットに突っ込む。
「…それで、あたしはなにに付き合えばいいんだ?」
「おっ、やっぱ話のわかる奴だなあんた。なに、たいしたことじゃねえって。新しいアトラクションを設置したんで、誰よりも早くあんたに試乗してもらおうと思ってな!」
「そ、それはー……楽しみ、だよ」
アトラクションの試乗と聞いて、若干体温が下がった。内心で絶叫マシーンは勘弁してくれと祈る。
ただでさえあの体内の臓器が味わう感覚が苦手なのに、そこに脱線の受け入れがたい恐怖系浮遊感まで加味されてはたまったもんじゃない。
試す前から、いやその正体を知る前から肝が冷える。これは不吉な予感。悪寒。
「ゴーランド、あたしやっぱり遠慮す…」
「わかったわかった、俺も乗ってやるから。なっ?一緒に楽しもうぜ!」
……人の話を聞いちゃいない。陽気なオーナーに余所者が引きずられていき、しばらく経った頃。
ひとつの声なき悲鳴が、喧騒に消えた。
運動はあまり好きではないが、一仕事を終えた後の充実感はなかなか気持ちがいいものだ。
余談だが、〇〇は普段着とは別に、この世界で購入した服を仕事着として着用している。
仕事先の領地で使用人の服をもらおうと思えばもらえるのだ(誰とは言わないが、要らないと言っても押しつけてきた雇い主もいる。物は即クローゼットに眠らせた)。
だが、あんなひらひらしたもの(スカート)を着こなせる自信もなく、またかえって働きづらいだろうというわけで早々に辞退していた。アリスならば文句なしに似合うのだが。
「よっ、〇〇!お疲れさん」
ぽんと肩を叩かれて振り向くと、遊園地のオーナーが人好きのする笑みを浮かべて立っていた。いつもありがとな、と言われ、いえいえこちらこそ、と笑い返す。
ゴーランドは雇い主の中で、というか役持ちの中では貴重な、まともな人間だ。難点があるにはあるが、普段接する分には充分話の通じる相手だ。少なくとも他とは違い、無理難題を押しつけるということはない。
「ん…?オーナー、それなに?」
「ああ、これか?これは遊びに来てくれた子供に配ってんだよ」
ゴーランドは腕にかけていたバスケットを傾け、中を見せてくれた。可愛らしい、色とりどりの棒付キャンディーだった。
彼は大きな手でその山をひと掴みすると「ほらよ」と〇〇に差し出した。反射的に両手で受け取る。と、さらにもうひと掴み上乗せされた。
「え、こんなにくれるの?」
「おう。あんたにやろうと思って持ってきたんだからな」
これは近所の気のいいおじさんが近所の子供にお菓子を与える構図だ。瞬間的にそう思った。
(てことは、あたしは飴で喜ぶガキ…?)
成人した身としては悲しむべきか。両手いっぱいのキャンディーと、目の前の人のいい笑顔を見比べる。
まあ、甘いものは好きだし、ゴーランドの「遠慮すんなよ」という表情に嫌がらせ要素を見出せなかったので、素直に好意として受け取っておくことにした。
「……あ。まさか、これを給料代わりにするっていうんじゃあ…」
「ないない。俺がんなシケた真似するわけねえだろうが」
失礼な物言いを軽々と一蹴し、ゴーランドはひょいと〇〇の腕を取った。
え、と思う間もなく、引っ張られるままに歩き出す。拍子に棒付キャンディーが三つ、零れ落ちた。
「ただ、ちょ~っと付き合ってくれるとありがてえんだけどなあ?」
付き合うも合わないも、これは断れない状態だろう。
そうでなくともゴーランドの頼みが(何故か)断りづらい〇〇は、息をつく。承諾、もしくは降参の溜め息だった。
手にある残りのカラフルをポケットに突っ込む。
「…それで、あたしはなにに付き合えばいいんだ?」
「おっ、やっぱ話のわかる奴だなあんた。なに、たいしたことじゃねえって。新しいアトラクションを設置したんで、誰よりも早くあんたに試乗してもらおうと思ってな!」
「そ、それはー……楽しみ、だよ」
アトラクションの試乗と聞いて、若干体温が下がった。内心で絶叫マシーンは勘弁してくれと祈る。
ただでさえあの体内の臓器が味わう感覚が苦手なのに、そこに脱線の受け入れがたい恐怖系浮遊感まで加味されてはたまったもんじゃない。
試す前から、いやその正体を知る前から肝が冷える。これは不吉な予感。悪寒。
「ゴーランド、あたしやっぱり遠慮す…」
「わかったわかった、俺も乗ってやるから。なっ?一緒に楽しもうぜ!」
……人の話を聞いちゃいない。陽気なオーナーに余所者が引きずられていき、しばらく経った頃。
ひとつの声なき悲鳴が、喧騒に消えた。