挑発、触発、そして連鎖
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ブラッド=デュプレ。この帽子屋ファミリーのボスだ。
実は彼とアリスが、〇〇のもっとも好きな組み合わせのひとつだったりする。(まあ、アリス総受けは譲れないが)
いつもアリス同席のお茶会に呼ばれるたびにワクワクしてしまうのだが、どうにもふたりに進展が見られない。
アリスがここに滞在していないのがいけないのだろうか。もしそうなら、ゲームの世界とはいえ、なにもそこまで影響しなくてもいいのにと思う。
滞在先なんて関係ない。もっとアリスを愛でろ。
そんな思いを込めてじーっと視線を返してやると、ブラッドが目を細めた。
傍から見れば、他には見向きもせずに見つめ合うふたりの図、である。
「――おい。こっち向けよ、〇〇」
明るさの抑えられた声と共に、肩を引かれた。外れるふたつの視線。
ぶつかった眼の真剣さに疑問を持つよりも先に、エリオットの視線が逸れた。眉間に皺が刻まれる。
「あんた…怪我したのか?」
「え?いや、別にどこも…」
言い切る前に頬に触られて、ひりりと痛んだ。なるほど、確かに怪我をしているようだ。
いつの間にと驚くことでもない。脳裏にあの一見爽やかな笑顔が浮かんで消えていった。
疑問なのは、どうしてエリオットがこんなにも険しい表情をしているのかということだ。
「エリオット。顔が怖いんだけど」
「――誰だよ…」
誰?誰ってなんだ。
エリオットの急激な変化についていけない〇〇は、睨むように見つめられて疑問符を浮かべた。
「誰だって訊いてんだ。あんたを傷つけた奴は」
「は……?」
「名前を言えよ。…ぶっ殺してきてやる」
なんでそうなる。どうして誰かにやられたことになるんだ。そんなに日頃のあたしの態度がアレか。
しかもたかがこの程度で命を奪われては相手が不憫というものだ。
一瞬また浮かんできたあの顔を、ぶんぶんと首を振って掻き消した。ある意味エースにやられたとも言えるが、ここで素直に名前を出すわけにはいかない。
エースがそう簡単に殺されるとも思えないが、万が一という場合もある。エリオットだってそうだ。
(アリスとどうにかなる前に死なれるのは困るって)
そしてなにより、自分が事の誘因になるのはごめんだった。
誤魔化しには少なからぬ自信がある。
〇〇はふっと息をつくと、長身のエリオットを見上げた。そして引っかかれと願いつつ、にっこりと微笑む。
くらえ、誤魔化しスマイル。可愛くもなんともない、むしろ鳥肌ものの胡散臭さがあるとわかっているが、これが結構外面としては有効なのだ。
案の定、エリオットは驚いたようにたじろいだ。心なしか仰け反っている。
「な、なんだ…?」
「誤解なんだよ、エリオット」
誤解?と首を傾げるオレンジ色のウサギに、大きく頷いて言う。
「これはあたしの不注意でついた傷なんだ。だからさ、アナタがぶっ殺す相手はいないってわけ」
「…そうなのか?」
「そうそ。…んー、と。強いて言うなら、あたしがそうかなー…なんて、」
「あんたを殺せるわけないだろ!」
ほとんど怒鳴り声に近いそれに思わず耳を塞ぐ。
考えてみればいまさら無駄な反射なのだが、身体が勝手に動いてしまうのはしかたがない。
真っ直ぐすぎる目は毒だ。真正面から受け止めるには強すぎる。
入り込まれたくない場所にまで踏み込んでくるような。居心地の悪さに身じろいでしまう。
駄目だ。この眼は、駄目。
「エリオット」
救いの声は、第三者の一言だった。
傍観に徹していたとは思えないほど、するりと自分を中心に戻してしまうのは、さすがマフィアのボスというべきか。
ブラッドの声に、エリオットは我に返った。一瞬にして雰囲気から厳しさが失せる。〇〇の身体も脱力した。
「……俺、もしかしてなんか変なこと言ったか?」
窘められたエリオットがこそっと〇〇に耳打ちする。〇〇は肯定も否定もせず、曖昧な笑みを作るに留めた。
これ以上、この場にいたくないという気持ちが強かった。正確に言うなら、エリオットの傍にいるのは好ましくないと思ったのだ。
なにか不味いことをしでかしたのかと落ち込むエリオットに、「あんま気にするな」と声をかけ、自然なふうを装って離れた。
助けてもらったに違いないのに、ブラッドにむかついてしまうのは何故だろう。きっとこれだ、この面白がるように細められた碧い目と薄く微笑む口元のせいだ。
…前言を撤回する。この性悪のボスからも速やかに離れたい。離れよう。そしてとっとと仕事に向かうに限る。
「――約束を破ったこと、謝る」
〇〇はブラッドのいる机の正面まで歩み寄ると、頭を下げた。
先程非難がましい目を向けたことなど全く感じさせないように。切り替えの早さは褒めてもらいたいものだ。
〇〇の真摯な態度に、ブラッドが小さく笑う。
「たいして気にしていないさ、お嬢さん。君は根が真面目だからな。それなりの事情があったのだろうと察しがつくよ」
理解を示しながらも、やんわりと追及を匂わせる。今まで一度もなかった事態(遅刻)に興味をそそられたかなにかだろう。
〇〇は顔を上げると、髪をくしゃりと掴んで苦笑を零した。
「や、ちょとした冒険に出てたというか…」
「ほう。冒険、ね――」
彼は含み笑いをしたが、その話題はそれまでだった。いや、それまでだった“はず”だ。
現にブラッドはいつものように仕事内容に話を移そうとしていたし、〇〇もそうなるだろうと思っていた。
しかし、不意にブラッドの眼の色が変わった。じっとなにか一点に釘付けになったのだ。
椅子に座るブラッドを少し上の目線から見下ろす形になっていたため、その様がよく見えた。
ブラッドの目線は、〇〇の頬よりも下のどこかに…。
硬直するブラッドに、〇〇ははてと首を傾ける。どうも様子がおかしい。声をかけようとしたが、彼のほうが先に顔を上げた。
その眼に、なんだか嫌な予感がした。
実は彼とアリスが、〇〇のもっとも好きな組み合わせのひとつだったりする。(まあ、アリス総受けは譲れないが)
いつもアリス同席のお茶会に呼ばれるたびにワクワクしてしまうのだが、どうにもふたりに進展が見られない。
アリスがここに滞在していないのがいけないのだろうか。もしそうなら、ゲームの世界とはいえ、なにもそこまで影響しなくてもいいのにと思う。
滞在先なんて関係ない。もっとアリスを愛でろ。
そんな思いを込めてじーっと視線を返してやると、ブラッドが目を細めた。
傍から見れば、他には見向きもせずに見つめ合うふたりの図、である。
「――おい。こっち向けよ、〇〇」
明るさの抑えられた声と共に、肩を引かれた。外れるふたつの視線。
ぶつかった眼の真剣さに疑問を持つよりも先に、エリオットの視線が逸れた。眉間に皺が刻まれる。
「あんた…怪我したのか?」
「え?いや、別にどこも…」
言い切る前に頬に触られて、ひりりと痛んだ。なるほど、確かに怪我をしているようだ。
いつの間にと驚くことでもない。脳裏にあの一見爽やかな笑顔が浮かんで消えていった。
疑問なのは、どうしてエリオットがこんなにも険しい表情をしているのかということだ。
「エリオット。顔が怖いんだけど」
「――誰だよ…」
誰?誰ってなんだ。
エリオットの急激な変化についていけない〇〇は、睨むように見つめられて疑問符を浮かべた。
「誰だって訊いてんだ。あんたを傷つけた奴は」
「は……?」
「名前を言えよ。…ぶっ殺してきてやる」
なんでそうなる。どうして誰かにやられたことになるんだ。そんなに日頃のあたしの態度がアレか。
しかもたかがこの程度で命を奪われては相手が不憫というものだ。
一瞬また浮かんできたあの顔を、ぶんぶんと首を振って掻き消した。ある意味エースにやられたとも言えるが、ここで素直に名前を出すわけにはいかない。
エースがそう簡単に殺されるとも思えないが、万が一という場合もある。エリオットだってそうだ。
(アリスとどうにかなる前に死なれるのは困るって)
そしてなにより、自分が事の誘因になるのはごめんだった。
誤魔化しには少なからぬ自信がある。
〇〇はふっと息をつくと、長身のエリオットを見上げた。そして引っかかれと願いつつ、にっこりと微笑む。
くらえ、誤魔化しスマイル。可愛くもなんともない、むしろ鳥肌ものの胡散臭さがあるとわかっているが、これが結構外面としては有効なのだ。
案の定、エリオットは驚いたようにたじろいだ。心なしか仰け反っている。
「な、なんだ…?」
「誤解なんだよ、エリオット」
誤解?と首を傾げるオレンジ色のウサギに、大きく頷いて言う。
「これはあたしの不注意でついた傷なんだ。だからさ、アナタがぶっ殺す相手はいないってわけ」
「…そうなのか?」
「そうそ。…んー、と。強いて言うなら、あたしがそうかなー…なんて、」
「あんたを殺せるわけないだろ!」
ほとんど怒鳴り声に近いそれに思わず耳を塞ぐ。
考えてみればいまさら無駄な反射なのだが、身体が勝手に動いてしまうのはしかたがない。
真っ直ぐすぎる目は毒だ。真正面から受け止めるには強すぎる。
入り込まれたくない場所にまで踏み込んでくるような。居心地の悪さに身じろいでしまう。
駄目だ。この眼は、駄目。
「エリオット」
救いの声は、第三者の一言だった。
傍観に徹していたとは思えないほど、するりと自分を中心に戻してしまうのは、さすがマフィアのボスというべきか。
ブラッドの声に、エリオットは我に返った。一瞬にして雰囲気から厳しさが失せる。〇〇の身体も脱力した。
「……俺、もしかしてなんか変なこと言ったか?」
窘められたエリオットがこそっと〇〇に耳打ちする。〇〇は肯定も否定もせず、曖昧な笑みを作るに留めた。
これ以上、この場にいたくないという気持ちが強かった。正確に言うなら、エリオットの傍にいるのは好ましくないと思ったのだ。
なにか不味いことをしでかしたのかと落ち込むエリオットに、「あんま気にするな」と声をかけ、自然なふうを装って離れた。
助けてもらったに違いないのに、ブラッドにむかついてしまうのは何故だろう。きっとこれだ、この面白がるように細められた碧い目と薄く微笑む口元のせいだ。
…前言を撤回する。この性悪のボスからも速やかに離れたい。離れよう。そしてとっとと仕事に向かうに限る。
「――約束を破ったこと、謝る」
〇〇はブラッドのいる机の正面まで歩み寄ると、頭を下げた。
先程非難がましい目を向けたことなど全く感じさせないように。切り替えの早さは褒めてもらいたいものだ。
〇〇の真摯な態度に、ブラッドが小さく笑う。
「たいして気にしていないさ、お嬢さん。君は根が真面目だからな。それなりの事情があったのだろうと察しがつくよ」
理解を示しながらも、やんわりと追及を匂わせる。今まで一度もなかった事態(遅刻)に興味をそそられたかなにかだろう。
〇〇は顔を上げると、髪をくしゃりと掴んで苦笑を零した。
「や、ちょとした冒険に出てたというか…」
「ほう。冒険、ね――」
彼は含み笑いをしたが、その話題はそれまでだった。いや、それまでだった“はず”だ。
現にブラッドはいつものように仕事内容に話を移そうとしていたし、〇〇もそうなるだろうと思っていた。
しかし、不意にブラッドの眼の色が変わった。じっとなにか一点に釘付けになったのだ。
椅子に座るブラッドを少し上の目線から見下ろす形になっていたため、その様がよく見えた。
ブラッドの目線は、〇〇の頬よりも下のどこかに…。
硬直するブラッドに、〇〇ははてと首を傾ける。どうも様子がおかしい。声をかけようとしたが、彼のほうが先に顔を上げた。
その眼に、なんだか嫌な予感がした。