引き金を引いたのは誰か
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今が夜の時間帯であることと自分が寝つきのいい体質であることが重なったのは幸いだった。
約束を破るという歓迎できない状況に、〇〇は開き直ることにした。
テントの隅っこにお邪魔するなどという慎みに必要性を感じなかったから、無遠慮に思われるほどきっちり布団の半分を占領する。
赤いジャケットを脱いでいたエースはこの(予想外であろう)行動に目を丸くした。
含み笑いをすると、〇〇の隣へと身を滑り込ませた。
「…積極的だね」
「バカ言ってないで、とっとと寝んの」
軽口にぽいと言葉を放って答える。
そして例の大剣の置き場をきちんと確認した後、安心して身体の力を抜いた。大丈夫、あそこにあるなら危険はない。
弛緩する意識に、すぐさま眠気が忍び込む。
手を伸ばせばお互いを侵略できそうなほどの距離で、エースが片肘をついてこちらを眺めていることがわかっても、これといった抵抗心も浮かばなかった。
「そういえば、ユリウスにはちゃんと言ってきたの?」
エースの問いに、ぼんやりとした頭で返す。
「んー…ユリウス…?」
「不本意にも君の保護者役にされたユリウスだよ。かわいそうに、あいつは知らないんだろうね。“我が子”と自分の親友が共に一夜を過ごすことになったなんて、さ」
ああ、エースはいったいなにを言っているのだろう。とろとろと沈みゆく意識に、〇〇は生返事しかできない。
エースはそれを承知の上だというふうに、一方的ともいえる会話をした。
「なあ、〇〇。君は警戒心がなさすぎるんだ。それなのに、頑なさで守備を固めているんだね」
「……エー、ス……?」
「無防備なくせに付け入る隙を見せない。純粋な好意は受け入れるくせに、不純な好意は受け入れない。…いや、少し違うかな。友情は歓迎するのに、そこに少しでも恋愛感情が混じるのを感じると、君は必死に回避する。芽吹いた想いを、君はそいつが気づく前に握り潰してしまうんだよ」
ゆっくり。ゆっくりと。髪を梳く手が心地良い。
微睡に浸る〇〇は、素直に心地良さを受け入れて口元を緩めた。
エースの眼がその様を見て、そっと手を頬へと滑らせる。〇〇は気づいていなかったが、そこには赤い線が一筋走っていた。
あのとき葉が傷つけた頬に、エースは唇を寄せる。一度押し当ててから、ちろりと出した舌先で傷口をなぞった。意識して、やや強く。
「っ…」
痛んだのか〇〇は小さく呻いたが、すぐに安らかな寝息を取り戻した。エースは低い声で笑った。
眼を細めて、寝顔を晒す余所者を見下ろした。
「――俺はこんなに君を意識してるっていうのに、まったく……」
どうにかしてやりたくなるじゃないか。
愉しげにそう言うと、顔をずらして鼻先で首筋を探った。そのまま頸動脈辺りに牙を剥く。
瞬間、〇〇はびくりと震え、その呼吸が乱れた。反応といえば、それだけ。
まるで意地でも睡眠を貪ろうとするような姿に、エースは思わず噴き出した。
爽快な笑い声は、陰気な森に不釣合いのそれ。
「やっぱり君を旅に誘って正解だったよ、〇〇!」
自分の選択に間違いはなかったのだと、エースは嬉しくなった。
同時に、きっと自分は彼女の求める形の存在にはなれないだろうと気づく。
そしてこれはこの先面白くなりそうだとまた笑った。
――ごめんね、〇〇。
形ばかりの謝罪を、騎士は眠り姫の耳元に囁いた。
【引き金を引いたのは誰か】
望まれるままでいてあげるほど 俺はお人よしじゃないんだよ?
continue…?→あとがき。
約束を破るという歓迎できない状況に、〇〇は開き直ることにした。
テントの隅っこにお邪魔するなどという慎みに必要性を感じなかったから、無遠慮に思われるほどきっちり布団の半分を占領する。
赤いジャケットを脱いでいたエースはこの(予想外であろう)行動に目を丸くした。
含み笑いをすると、〇〇の隣へと身を滑り込ませた。
「…積極的だね」
「バカ言ってないで、とっとと寝んの」
軽口にぽいと言葉を放って答える。
そして例の大剣の置き場をきちんと確認した後、安心して身体の力を抜いた。大丈夫、あそこにあるなら危険はない。
弛緩する意識に、すぐさま眠気が忍び込む。
手を伸ばせばお互いを侵略できそうなほどの距離で、エースが片肘をついてこちらを眺めていることがわかっても、これといった抵抗心も浮かばなかった。
「そういえば、ユリウスにはちゃんと言ってきたの?」
エースの問いに、ぼんやりとした頭で返す。
「んー…ユリウス…?」
「不本意にも君の保護者役にされたユリウスだよ。かわいそうに、あいつは知らないんだろうね。“我が子”と自分の親友が共に一夜を過ごすことになったなんて、さ」
ああ、エースはいったいなにを言っているのだろう。とろとろと沈みゆく意識に、〇〇は生返事しかできない。
エースはそれを承知の上だというふうに、一方的ともいえる会話をした。
「なあ、〇〇。君は警戒心がなさすぎるんだ。それなのに、頑なさで守備を固めているんだね」
「……エー、ス……?」
「無防備なくせに付け入る隙を見せない。純粋な好意は受け入れるくせに、不純な好意は受け入れない。…いや、少し違うかな。友情は歓迎するのに、そこに少しでも恋愛感情が混じるのを感じると、君は必死に回避する。芽吹いた想いを、君はそいつが気づく前に握り潰してしまうんだよ」
ゆっくり。ゆっくりと。髪を梳く手が心地良い。
微睡に浸る〇〇は、素直に心地良さを受け入れて口元を緩めた。
エースの眼がその様を見て、そっと手を頬へと滑らせる。〇〇は気づいていなかったが、そこには赤い線が一筋走っていた。
あのとき葉が傷つけた頬に、エースは唇を寄せる。一度押し当ててから、ちろりと出した舌先で傷口をなぞった。意識して、やや強く。
「っ…」
痛んだのか〇〇は小さく呻いたが、すぐに安らかな寝息を取り戻した。エースは低い声で笑った。
眼を細めて、寝顔を晒す余所者を見下ろした。
「――俺はこんなに君を意識してるっていうのに、まったく……」
どうにかしてやりたくなるじゃないか。
愉しげにそう言うと、顔をずらして鼻先で首筋を探った。そのまま頸動脈辺りに牙を剥く。
瞬間、〇〇はびくりと震え、その呼吸が乱れた。反応といえば、それだけ。
まるで意地でも睡眠を貪ろうとするような姿に、エースは思わず噴き出した。
爽快な笑い声は、陰気な森に不釣合いのそれ。
「やっぱり君を旅に誘って正解だったよ、〇〇!」
自分の選択に間違いはなかったのだと、エースは嬉しくなった。
同時に、きっと自分は彼女の求める形の存在にはなれないだろうと気づく。
そしてこれはこの先面白くなりそうだとまた笑った。
――ごめんね、〇〇。
形ばかりの謝罪を、騎士は眠り姫の耳元に囁いた。
【引き金を引いたのは誰か】
望まれるままでいてあげるほど 俺はお人よしじゃないんだよ?
continue…?→あとがき。