唇に銃口を、さあカウントダウン
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マフィアの抗争に巻き込まれた、と言えばなんだか非現実的に聞こえてしまう。
実際はそれほど大仰なものではなく、〇〇の負った傷もたいしたことはなかった。
帽子屋屋敷で手当てを受けた〇〇は、仮滞在地である時計塔に向かった。
三月ウサギの猛然たる反対を宥めすかし、説き伏せるのにはたいそう骨が折れたが。
(まったく、エリオットのせいじゃないって言ってるのに…)
必死に引き止めたのは負い目ゆえか、あるいは時計屋への対抗心か。
ともあれ、自分が無謀にも飛び出してしまったのが悪い。だから、エリオットが責任を感じる必要はまったくなかった。
さて、なんとか帽子屋屋敷を出られたものの、次に困ったのはどんな顔をして帰るべきかということだった。
連れ去られるように時計塔を離れてから、何日も経過している。離れ際のブラッドの余計な言動を、ユリウスはどう受け取っただろう。
いっそのことハートの城に直行して、舞踏会の日までを過ごすか。いや、さすがにそれはできない。
あの日の彼の様子を思い出せば、どんな顔であっても見せなければ申し訳なかった。
結局どういう顔をすればいいのか見当がつかないまま、〇〇は時計塔に戻った。
予想を遥かに上回るほど心配をかけていたらしい。顔を見るなり強く抱きしめてきた時計屋は、些か憔悴した様子さえ窺えた。
「だ、大丈夫、ユリウス?」
「……それは、私の台詞だ」
ここにいることを確かめようと、背中を抱いた腕が締まる。堪えようとする間もなく痛んだ左腕に、〇〇は短く息を切った。
咄嗟に身を引いてしまったことは、密着した状態では誤魔化しようがなかった。
安堵ついでに鈍感になってくれていればよかったものを、残念ながらそうもいかず。
「〇〇、まさか……また、なのか?」
「…あー…」
そういえばこの間も、痛めた身体を運悪くユリウスに見られたのだ。
前科が即否定するのを邪魔した。あれだけ切々と胸のうちを告げられて、また同じことを繰り返す度胸はない。
ユリウスは真剣すぎて怒りに似た瞳をし、食い入るように覗き込んでくる。〇〇は観念して、わざと明るい笑顔で彼を見上げた。
「たいしたもんじゃないけど、“掠り傷”を少々…ね」
誰かさんの言を拝借して白状すると、数秒の間を置いて、ユリウスの顔から血の気が引いた。
それから負傷の経緯を激しく問いつめられ、傷を見せろと言われた〇〇は、諾々と従った。
もちろん、濁すところは譲らず濁し、きちんと辻褄の合うように話した。
ユリウスもブラッドによって肩を怪我していたはずだ。大丈夫かと問うと、短く大丈夫だと返ってきたうえ、話を逸らすなと叱られてしまった。
「――……つまり、負傷の原因は三月ウサギか」
「いやいや、ちゃんと聞いてた?原因はあたしの不注意なんだって」
話を聞き終えたユリウスの表情が改善されることはなかった。
低く吐き出された結論に、〇〇はぱたぱたと手を振る。庇う必要のない相手を庇って怪我をした。事実はそれだけだ。
しかし彼は〇〇の弁護さえ煩わしげに顔を顰め、包帯を巻き直しながら、
「もし僅かにでも傷痕が残るようなら、私は奴を…」
「ユリウス?」
続きが音になることはなかった。〇〇は確かに穏やかならざるものを感じ取り、次いで胸に妙な違和感を覚えた。
(なんだ……?)
不思議に思い、手のひらを当てると霧散した。気のせいだったのかもしれない。
違和感の正体を考える間もなく、今度は帽子屋に連れ去られた後のことを詰問され。
〇〇は気合いで笑顔を作るため努めることになったのだった。
実際はそれほど大仰なものではなく、〇〇の負った傷もたいしたことはなかった。
帽子屋屋敷で手当てを受けた〇〇は、仮滞在地である時計塔に向かった。
三月ウサギの猛然たる反対を宥めすかし、説き伏せるのにはたいそう骨が折れたが。
(まったく、エリオットのせいじゃないって言ってるのに…)
必死に引き止めたのは負い目ゆえか、あるいは時計屋への対抗心か。
ともあれ、自分が無謀にも飛び出してしまったのが悪い。だから、エリオットが責任を感じる必要はまったくなかった。
さて、なんとか帽子屋屋敷を出られたものの、次に困ったのはどんな顔をして帰るべきかということだった。
連れ去られるように時計塔を離れてから、何日も経過している。離れ際のブラッドの余計な言動を、ユリウスはどう受け取っただろう。
いっそのことハートの城に直行して、舞踏会の日までを過ごすか。いや、さすがにそれはできない。
あの日の彼の様子を思い出せば、どんな顔であっても見せなければ申し訳なかった。
結局どういう顔をすればいいのか見当がつかないまま、〇〇は時計塔に戻った。
予想を遥かに上回るほど心配をかけていたらしい。顔を見るなり強く抱きしめてきた時計屋は、些か憔悴した様子さえ窺えた。
「だ、大丈夫、ユリウス?」
「……それは、私の台詞だ」
ここにいることを確かめようと、背中を抱いた腕が締まる。堪えようとする間もなく痛んだ左腕に、〇〇は短く息を切った。
咄嗟に身を引いてしまったことは、密着した状態では誤魔化しようがなかった。
安堵ついでに鈍感になってくれていればよかったものを、残念ながらそうもいかず。
「〇〇、まさか……また、なのか?」
「…あー…」
そういえばこの間も、痛めた身体を運悪くユリウスに見られたのだ。
前科が即否定するのを邪魔した。あれだけ切々と胸のうちを告げられて、また同じことを繰り返す度胸はない。
ユリウスは真剣すぎて怒りに似た瞳をし、食い入るように覗き込んでくる。〇〇は観念して、わざと明るい笑顔で彼を見上げた。
「たいしたもんじゃないけど、“掠り傷”を少々…ね」
誰かさんの言を拝借して白状すると、数秒の間を置いて、ユリウスの顔から血の気が引いた。
それから負傷の経緯を激しく問いつめられ、傷を見せろと言われた〇〇は、諾々と従った。
もちろん、濁すところは譲らず濁し、きちんと辻褄の合うように話した。
ユリウスもブラッドによって肩を怪我していたはずだ。大丈夫かと問うと、短く大丈夫だと返ってきたうえ、話を逸らすなと叱られてしまった。
「――……つまり、負傷の原因は三月ウサギか」
「いやいや、ちゃんと聞いてた?原因はあたしの不注意なんだって」
話を聞き終えたユリウスの表情が改善されることはなかった。
低く吐き出された結論に、〇〇はぱたぱたと手を振る。庇う必要のない相手を庇って怪我をした。事実はそれだけだ。
しかし彼は〇〇の弁護さえ煩わしげに顔を顰め、包帯を巻き直しながら、
「もし僅かにでも傷痕が残るようなら、私は奴を…」
「ユリウス?」
続きが音になることはなかった。〇〇は確かに穏やかならざるものを感じ取り、次いで胸に妙な違和感を覚えた。
(なんだ……?)
不思議に思い、手のひらを当てると霧散した。気のせいだったのかもしれない。
違和感の正体を考える間もなく、今度は帽子屋に連れ去られた後のことを詰問され。
〇〇は気合いで笑顔を作るため努めることになったのだった。