罅割れた夢現
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倦怠感の生々しい身体を、〇〇は自室に引きずっていった。
中に入ると鍵をかけ、服を脱ぎ捨ててシャワーを浴びる。湯になりきらない水に打たれ、少し肌が震えた。
他者によって無理矢理与えられた熱を、早く流してしまいたかった。
何故こんな展開になってしまうのか、わけがわからない。はっきりしているのは、〇〇自身には奔放な性生活を送るつもりはまったくないということだ。
(なんであたしが、こんな目に遭ってんの…?)
アリスだ。彼女が絡まれるのなら真っ当なのだ。
この世界のヒロインが役持ちに好かれ、愛情を受けるのなら理解できる。
しかし、〇〇はアリスではなく、単に“余所者”に分類されるだけの人間だ。皆、その肩書きに惑わされているのではなかろうか。
「あー……やだ、な」
自身に関わる性には貪欲なほうではないと、〇〇は思っている。アリスを絡めた妄想力ならば逞しく、頭の中で楽しむことも間々あるが。
徐々に、塗り替えられる。この身がこの世界に馴染まされていく。
プレイヤーとしての傍観が失われつつあると、誰が認められようか。
汗や体液と共に杞憂であるはずの危惧を洗い流して、〇〇は浴室を出た。
清潔な服に着替え、ぼすんとベッドに倒れ込む。洗い立てのように気持ちのいいシーツに頬を寄せ、深々と息を吐いた。
「……。寝るか」
そうだ、そうしよう。心身の疲労を睡眠で払拭しよう。
昼寝なんて久しぶりだと懐かしみ、目を閉じる。できれば、どんな夢も見ずに眠りたかった。
それから何分経った頃だろう。おそらく三十分と経過しないうちに、部屋の扉をノックする音がした。
気が急いているのか、荒っぽい叩き方。そしてうとうとしかけていた〇〇が返事をする前に、扉はばーんと開放された。
「〇〇っ、居るか!?」
「……ノックの意義を吹っ飛ばす勢いだな」
三月ウサギはベッドに横たわる〇〇を見つけると、ぱっと表情を輝かせた。ずかずかと室内を闊歩し、近づいてくる。
礼儀がどうのと言う気もない〇〇は、上体を起こして彼を迎えた。
「あ、悪い。寝てたのか?」
「まあ…ちょっと休んでただけ。あたしになにか用?」
午睡を味わうのは諦め、顔を上げてエリオットを見上げた。彼は頬を上気させ、キラキラした眼差しを注いでくる。
この顔は見覚えがある、と思い出す間もなく、相手はがばっと迫ってきた。
仰け反るように回避しなければ、確実に頭突きを食らわされている。
「っ、あぶな…」
「聞いてくれよ、〇〇!街にすっげーうまいにんじん料理を出す店ができたらしいんだ!」
にんじん。と反芻して、〇〇は納得した。この瞳の輝きに興奮は好物に対する高揚だ。
よほど嬉しいのか、聞いて聞いてと全身から伝わってくる。犬の尻尾があれば、きっとぶんぶんと忙しなく揺れていたことだろう。
でもアナタ、犬じゃなくてウサギだから。ベッドに手をついて迫りくるエリオットの頬を、〇〇はぎゅむと片手で掴んだ。
「はいはい、落ち着いて。ちゃんと話は聞くから」
不明瞭な言葉が返ってきたため、顔から手を離す。ついでに肩を押し返して、無様に倒れ込むという事態を免れた。
冷静な声を受けて、エリオットは幾分平静を取り戻したらしい。が、今度は〇〇の手を引いて連れ出そうとする。
「なあっ、今から行こうぜ!」
「行く…って、その店に?」
「決まってんだろ。あんたと行きたくて迎えに来たんだからな!」
起き抜けの心地では、エリオットのテンションに便乗するのは難しい。
だが〇〇は、しかたないなと唇で小さく笑った。これほど無邪気な姿を見るのは久しぶりだ。
どうして久しぶりだと感じるのか。それを考えれば、要らぬ情景まで思い浮かべてしまいそうで。
(――楽しみたいなら、思い出すな)
口を笑みの形で固定する。意識をただ目の前にだけ集中させた。
負に派生する感情で過去に目を向けることは、不毛なことだと知っているから。
中に入ると鍵をかけ、服を脱ぎ捨ててシャワーを浴びる。湯になりきらない水に打たれ、少し肌が震えた。
他者によって無理矢理与えられた熱を、早く流してしまいたかった。
何故こんな展開になってしまうのか、わけがわからない。はっきりしているのは、〇〇自身には奔放な性生活を送るつもりはまったくないということだ。
(なんであたしが、こんな目に遭ってんの…?)
アリスだ。彼女が絡まれるのなら真っ当なのだ。
この世界のヒロインが役持ちに好かれ、愛情を受けるのなら理解できる。
しかし、〇〇はアリスではなく、単に“余所者”に分類されるだけの人間だ。皆、その肩書きに惑わされているのではなかろうか。
「あー……やだ、な」
自身に関わる性には貪欲なほうではないと、〇〇は思っている。アリスを絡めた妄想力ならば逞しく、頭の中で楽しむことも間々あるが。
徐々に、塗り替えられる。この身がこの世界に馴染まされていく。
プレイヤーとしての傍観が失われつつあると、誰が認められようか。
汗や体液と共に杞憂であるはずの危惧を洗い流して、〇〇は浴室を出た。
清潔な服に着替え、ぼすんとベッドに倒れ込む。洗い立てのように気持ちのいいシーツに頬を寄せ、深々と息を吐いた。
「……。寝るか」
そうだ、そうしよう。心身の疲労を睡眠で払拭しよう。
昼寝なんて久しぶりだと懐かしみ、目を閉じる。できれば、どんな夢も見ずに眠りたかった。
それから何分経った頃だろう。おそらく三十分と経過しないうちに、部屋の扉をノックする音がした。
気が急いているのか、荒っぽい叩き方。そしてうとうとしかけていた〇〇が返事をする前に、扉はばーんと開放された。
「〇〇っ、居るか!?」
「……ノックの意義を吹っ飛ばす勢いだな」
三月ウサギはベッドに横たわる〇〇を見つけると、ぱっと表情を輝かせた。ずかずかと室内を闊歩し、近づいてくる。
礼儀がどうのと言う気もない〇〇は、上体を起こして彼を迎えた。
「あ、悪い。寝てたのか?」
「まあ…ちょっと休んでただけ。あたしになにか用?」
午睡を味わうのは諦め、顔を上げてエリオットを見上げた。彼は頬を上気させ、キラキラした眼差しを注いでくる。
この顔は見覚えがある、と思い出す間もなく、相手はがばっと迫ってきた。
仰け反るように回避しなければ、確実に頭突きを食らわされている。
「っ、あぶな…」
「聞いてくれよ、〇〇!街にすっげーうまいにんじん料理を出す店ができたらしいんだ!」
にんじん。と反芻して、〇〇は納得した。この瞳の輝きに興奮は好物に対する高揚だ。
よほど嬉しいのか、聞いて聞いてと全身から伝わってくる。犬の尻尾があれば、きっとぶんぶんと忙しなく揺れていたことだろう。
でもアナタ、犬じゃなくてウサギだから。ベッドに手をついて迫りくるエリオットの頬を、〇〇はぎゅむと片手で掴んだ。
「はいはい、落ち着いて。ちゃんと話は聞くから」
不明瞭な言葉が返ってきたため、顔から手を離す。ついでに肩を押し返して、無様に倒れ込むという事態を免れた。
冷静な声を受けて、エリオットは幾分平静を取り戻したらしい。が、今度は〇〇の手を引いて連れ出そうとする。
「なあっ、今から行こうぜ!」
「行く…って、その店に?」
「決まってんだろ。あんたと行きたくて迎えに来たんだからな!」
起き抜けの心地では、エリオットのテンションに便乗するのは難しい。
だが〇〇は、しかたないなと唇で小さく笑った。これほど無邪気な姿を見るのは久しぶりだ。
どうして久しぶりだと感じるのか。それを考えれば、要らぬ情景まで思い浮かべてしまいそうで。
(――楽しみたいなら、思い出すな)
口を笑みの形で固定する。意識をただ目の前にだけ集中させた。
負に派生する感情で過去に目を向けることは、不毛なことだと知っているから。