罅割れた夢現
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屋敷の主人同様けだるげな、眠気を誘うような口調の使用人。
擦れ違うたび声をかけてくれる彼らと挨拶を交わしながら、〇〇は内心訝しげに首を傾げた。
というのも、好奇と揶揄の含みをそこはかとなく感じ取るせいだった。
(……居心地が悪い)
そこに負の感情がないとわかるだけに、なおさらだ。
思い当たる節はと言えば……あるには、ある。ここ何日間か〇〇は帽子屋屋敷に滞在している。
かといって仕事をしているわけではなく、さらに言えば、ブラッドの部屋から久しぶりに出たのが、つい先ほどのことである。
物理的に監禁されてはいないが、労働と等しく肉体を酷使させられ、出ようという気力も湧かなかったのだ。
足腰が立たないまでに責め続けられた身体には、いまだ生々しさが残るようだった。
そういった事情に、使用人の彼らは薄々気づいている。だから、ああいう目を向けてくるのだろう。
ボスの情婦だという噂を流されたことがあったが、今回はまことしやかに囁かされそうだ。
(そんなの、ブラッドなら一声で打ち消せるはずだけど…)
彼の性格を考えると、面白がってこちらの望むようにはしてくれないかもしれない。
この状況を作り出した当人がそんなふうでは、〇〇はただ事態の収束を待つばかりだ。
「ほんと、だるい…」
屋敷の雰囲気に呑まれて、倦怠感が増す気がした。
不意に、閉ざしても這う視線、拒むことを許さない熱が頭の中に繰り返される。
『――エリオットが男の目をしている。なにがあった?』
なにって、なに。なにもないよ。あたしとエリオットの間になにが起こるっていうんだ。
〇〇の荒い呼吸もおさまってきた頃、ブラッドは耳に問いを吹き込んだ。
そして、その返答を鼻で笑い、ねっとりと纏いつくような声音で続けた。
『えらく君に執心しているようだが、それも私の気のせいだと言うのか』
『懐に入れた人間には、みんなそうだろ』
『それは違う。…少なくとも、私が君を殺せと命じても躊躇するほどには、奴は君を好いている』
聡い君ならこの意味がわかるだろう、とブラッドは言った。わかりたくもない。
〇〇は頭を振るって思考を追い出した。少し外の空気を吸って、気分をあらためたほうがよさそうだと、足を方向転換する。
急かされるように立ち去った、その背後。目を背け続けなければならないものが、間近に息づいているような気がした。
擦れ違うたび声をかけてくれる彼らと挨拶を交わしながら、〇〇は内心訝しげに首を傾げた。
というのも、好奇と揶揄の含みをそこはかとなく感じ取るせいだった。
(……居心地が悪い)
そこに負の感情がないとわかるだけに、なおさらだ。
思い当たる節はと言えば……あるには、ある。ここ何日間か〇〇は帽子屋屋敷に滞在している。
かといって仕事をしているわけではなく、さらに言えば、ブラッドの部屋から久しぶりに出たのが、つい先ほどのことである。
物理的に監禁されてはいないが、労働と等しく肉体を酷使させられ、出ようという気力も湧かなかったのだ。
足腰が立たないまでに責め続けられた身体には、いまだ生々しさが残るようだった。
そういった事情に、使用人の彼らは薄々気づいている。だから、ああいう目を向けてくるのだろう。
ボスの情婦だという噂を流されたことがあったが、今回はまことしやかに囁かされそうだ。
(そんなの、ブラッドなら一声で打ち消せるはずだけど…)
彼の性格を考えると、面白がってこちらの望むようにはしてくれないかもしれない。
この状況を作り出した当人がそんなふうでは、〇〇はただ事態の収束を待つばかりだ。
「ほんと、だるい…」
屋敷の雰囲気に呑まれて、倦怠感が増す気がした。
不意に、閉ざしても這う視線、拒むことを許さない熱が頭の中に繰り返される。
『――エリオットが男の目をしている。なにがあった?』
なにって、なに。なにもないよ。あたしとエリオットの間になにが起こるっていうんだ。
〇〇の荒い呼吸もおさまってきた頃、ブラッドは耳に問いを吹き込んだ。
そして、その返答を鼻で笑い、ねっとりと纏いつくような声音で続けた。
『えらく君に執心しているようだが、それも私の気のせいだと言うのか』
『懐に入れた人間には、みんなそうだろ』
『それは違う。…少なくとも、私が君を殺せと命じても躊躇するほどには、奴は君を好いている』
聡い君ならこの意味がわかるだろう、とブラッドは言った。わかりたくもない。
〇〇は頭を振るって思考を追い出した。少し外の空気を吸って、気分をあらためたほうがよさそうだと、足を方向転換する。
急かされるように立ち去った、その背後。目を背け続けなければならないものが、間近に息づいているような気がした。