真白を染めゆく感情の名は
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感じたとおり、やはり足音の主は愛する少女のものだった。
「アリスっ!」
ペーターは足取り軽く駆け寄ったが、数歩分手前で気づいたように立ち止まった。
怪訝な顔をするアリスに向かって、なにも心配いらないというふうに笑いかける。
「ああ、アリス。本当は一も二もなくあなたを抱きしめたいんですが…」
「それは遠慮するわよ」
彼女の突っ込みを、照れちゃって可愛いです、と難なくかわして、
「今の僕は汚れているので、シャワーを浴びて綺麗にしてきます。ねえ、それからなら思う存分抱きしめてもいいでしょう?」
「だからそういう問題じゃ…」
言いかけたアリスは、ペーターの片手が素手であることに気づき、不思議そうに指摘した。
「ペーター。手袋が片方ないけど、どこかに忘れてきたの?」
「これですか?気にしないでください、あなたの心を煩わせるようなことはありませんからね」
逆に気を引く言い回しになっていたが、アリスが言及することはなかった。
ペーターはアリスの行く手を遮る立ち位置で、彼女に笑顔を向けた。
「アリス、この先を行くことはあまりお勧めできません」
「え…?どうして?」
「あなたの目を汚すものがあるんですよ。あなたの綺麗な瞳にあれが映ると思うだけで、僕は耐えられそうもありません。お願いですから、別の廊下を通ってくださいませんか?」
随分と勝手な言い分だったが、特に強行する理由もなかったらしく、アリスは了承した。
それが嬉しくて、いつもの調子でつい飛びつきたくなったが、ぐっと堪えた。
今のペーターに付き纏うのは、仄かに香る、自分以外の人間の匂いだった。
香水といった人工的なものではなく、石鹸などよりももっと生々しく、ともすれば雄を刺激する性的な匂い。
あの余所者に触れた手でアリスを抱きしめるなんて、とんでもない。忌避すべき行為だ。
それ以上に、この身についた匂いにアリスのそれが混ざることを、どうしても避けたかった。
「よかったら、これから僕の部屋に遊びに来てください。ねっ?来てくださいよっ」
「…わかった。わかったから、そんなキラキラした目で見つめないでよ」
「来てくださるんですね?嬉しいですっ!」
ペーターはぱあっと破顔すると、再度あの廊下へ行かないように念を押して、迎えに行くから自室で待っているようにと約した。
彼女と別れ、シャワーを浴びるために先を急ぎながら、最高潮に気分が高揚するのを感じた。
(こんな気持ち、僕は知らなかった……!)
耳を澄ませば、この手で乱した呼吸音が鮮やかに思い出された。
苦痛と快感に歪む表情を思い浮かべれば、もう一度この手で同じものを与えたくなってしまう。
いや、もう一度などと謙虚にはなれない。何度も何度も何度も何度も――何度でも、いくらでも。
荒々しい熱が、ずぐりと身体の奥で滾る。即刻シャワーを浴びて冷まさねばならないと、白ウサギの歩調が速さを増した。
間違ってもこの高ぶりをあの余所者以外の誰かに吐き出してしまわないように。
ましてや、愛しのアリスにこのように烈々たる“憎しみ”をぶつけてしまうことになろうものなら――。考えるだけで、罪だと思った。
【真白を染めゆく感情の名は】
どんな呼び名を与えたとて その正体はただひとつでしかない
continue…?→あとがき。
「アリスっ!」
ペーターは足取り軽く駆け寄ったが、数歩分手前で気づいたように立ち止まった。
怪訝な顔をするアリスに向かって、なにも心配いらないというふうに笑いかける。
「ああ、アリス。本当は一も二もなくあなたを抱きしめたいんですが…」
「それは遠慮するわよ」
彼女の突っ込みを、照れちゃって可愛いです、と難なくかわして、
「今の僕は汚れているので、シャワーを浴びて綺麗にしてきます。ねえ、それからなら思う存分抱きしめてもいいでしょう?」
「だからそういう問題じゃ…」
言いかけたアリスは、ペーターの片手が素手であることに気づき、不思議そうに指摘した。
「ペーター。手袋が片方ないけど、どこかに忘れてきたの?」
「これですか?気にしないでください、あなたの心を煩わせるようなことはありませんからね」
逆に気を引く言い回しになっていたが、アリスが言及することはなかった。
ペーターはアリスの行く手を遮る立ち位置で、彼女に笑顔を向けた。
「アリス、この先を行くことはあまりお勧めできません」
「え…?どうして?」
「あなたの目を汚すものがあるんですよ。あなたの綺麗な瞳にあれが映ると思うだけで、僕は耐えられそうもありません。お願いですから、別の廊下を通ってくださいませんか?」
随分と勝手な言い分だったが、特に強行する理由もなかったらしく、アリスは了承した。
それが嬉しくて、いつもの調子でつい飛びつきたくなったが、ぐっと堪えた。
今のペーターに付き纏うのは、仄かに香る、自分以外の人間の匂いだった。
香水といった人工的なものではなく、石鹸などよりももっと生々しく、ともすれば雄を刺激する性的な匂い。
あの余所者に触れた手でアリスを抱きしめるなんて、とんでもない。忌避すべき行為だ。
それ以上に、この身についた匂いにアリスのそれが混ざることを、どうしても避けたかった。
「よかったら、これから僕の部屋に遊びに来てください。ねっ?来てくださいよっ」
「…わかった。わかったから、そんなキラキラした目で見つめないでよ」
「来てくださるんですね?嬉しいですっ!」
ペーターはぱあっと破顔すると、再度あの廊下へ行かないように念を押して、迎えに行くから自室で待っているようにと約した。
彼女と別れ、シャワーを浴びるために先を急ぎながら、最高潮に気分が高揚するのを感じた。
(こんな気持ち、僕は知らなかった……!)
耳を澄ませば、この手で乱した呼吸音が鮮やかに思い出された。
苦痛と快感に歪む表情を思い浮かべれば、もう一度この手で同じものを与えたくなってしまう。
いや、もう一度などと謙虚にはなれない。何度も何度も何度も何度も――何度でも、いくらでも。
荒々しい熱が、ずぐりと身体の奥で滾る。即刻シャワーを浴びて冷まさねばならないと、白ウサギの歩調が速さを増した。
間違ってもこの高ぶりをあの余所者以外の誰かに吐き出してしまわないように。
ましてや、愛しのアリスにこのように烈々たる“憎しみ”をぶつけてしまうことになろうものなら――。考えるだけで、罪だと思った。
【真白を染めゆく感情の名は】
どんな呼び名を与えたとて その正体はただひとつでしかない
continue…?→あとがき。