真白を染めゆく感情の名は
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廊下に生温かい赤が広がっていく。転がる抜け殻ともども、直に消えてしまうことだろう。
ペーター=ホワイトは感情もなくそれらを一瞥したが、すぐに視線を手元に移した。
銃から時計に戻ったそれは、手の中で冷たく光を反射している。付着した体液は拭われもせずに、無機物を無色に彩っていた。
ペーターは腕の輪の中から抜け出し、俯いている余所者の顎を掬い上げると、時計を彼女の口元に押しつけた。
黒い目が非難の色を宿して自分を見る、それだけのことで背中に心地よい痺れが走った。
「綺麗にしてください。あなたのせいで汚れてしまったんですから」
下肢に生じた熱を押し隠して、ペーターはさらに時計を上唇と下唇の間に割り込ませた。
抵抗を諦めた〇〇が、渋々といったふうに舌を出して舐め始める。
伏せられた瞳を縁取る睫毛が僅かに震え、口にする味を拒むように眉が顰められている。
その様子を視姦ともいえる眼差しで見つめ、ペーターはひとり悦に入った。
いつもわけのわからぬ衝動や感情で自分を掻き乱す余所者。どんな言葉を吐きかけても、動じず揺るぎなく微笑む余所者。
その女が今、初めてペーターの前に屈しているのである。
「――ああ、たまらない……」
熱に浮かされた呟きが零れ、ペーターの目は柔らかそうな肉に引き寄せられた。
口を開いた隙間からちろちろと覗き、戸惑ったように動いている、赤い舌。
それが這う対象は無機物であり、その己の時計にすら苛立ちが湧き上がった。
触れたいという思いが押し寄せる。ペーターは時計を放り出して顔を近づけた。
「っ…!」
「〇〇」
滅多に口に出さない名前を舌の上で味わえば、心が甘く高鳴った。
憎しみとは、こうも甘美なものであったのか。そうと知っていれば、拒絶も我慢もしなかったものを。
引き攣る〇〇の表情を知りもせず、ペーターは女の肉感的な舌を味わおうとした。
そのときウサギの長い耳が聞き慣れた足音を捉えなければ、衝動が抑制されることはなかっただろう。
「――……どうやら時間切れのようです」
閉じた目蓋を上げ、心底残念そうにペーターは言った。
手首を縛ったネクタイを解いて己の首に結び直す。そして、白い肌に残った痕に恭しく口づけを落とすと、
「これからは、こうやってあなたに憎悪をぶつけることにします。この方法が僕にとってもあなたにとっても、最良だと知りましたから。ふふ……大嫌いですよ、〇〇」
それは愛しいと告げる声とどう違いがあるというのか。本人は気づかない。
散々な有様の余所者をその場に置き去りにして、ペーターは足音のするほうへと立ち去った。
ペーター=ホワイトは感情もなくそれらを一瞥したが、すぐに視線を手元に移した。
銃から時計に戻ったそれは、手の中で冷たく光を反射している。付着した体液は拭われもせずに、無機物を無色に彩っていた。
ペーターは腕の輪の中から抜け出し、俯いている余所者の顎を掬い上げると、時計を彼女の口元に押しつけた。
黒い目が非難の色を宿して自分を見る、それだけのことで背中に心地よい痺れが走った。
「綺麗にしてください。あなたのせいで汚れてしまったんですから」
下肢に生じた熱を押し隠して、ペーターはさらに時計を上唇と下唇の間に割り込ませた。
抵抗を諦めた〇〇が、渋々といったふうに舌を出して舐め始める。
伏せられた瞳を縁取る睫毛が僅かに震え、口にする味を拒むように眉が顰められている。
その様子を視姦ともいえる眼差しで見つめ、ペーターはひとり悦に入った。
いつもわけのわからぬ衝動や感情で自分を掻き乱す余所者。どんな言葉を吐きかけても、動じず揺るぎなく微笑む余所者。
その女が今、初めてペーターの前に屈しているのである。
「――ああ、たまらない……」
熱に浮かされた呟きが零れ、ペーターの目は柔らかそうな肉に引き寄せられた。
口を開いた隙間からちろちろと覗き、戸惑ったように動いている、赤い舌。
それが這う対象は無機物であり、その己の時計にすら苛立ちが湧き上がった。
触れたいという思いが押し寄せる。ペーターは時計を放り出して顔を近づけた。
「っ…!」
「〇〇」
滅多に口に出さない名前を舌の上で味わえば、心が甘く高鳴った。
憎しみとは、こうも甘美なものであったのか。そうと知っていれば、拒絶も我慢もしなかったものを。
引き攣る〇〇の表情を知りもせず、ペーターは女の肉感的な舌を味わおうとした。
そのときウサギの長い耳が聞き慣れた足音を捉えなければ、衝動が抑制されることはなかっただろう。
「――……どうやら時間切れのようです」
閉じた目蓋を上げ、心底残念そうにペーターは言った。
手首を縛ったネクタイを解いて己の首に結び直す。そして、白い肌に残った痕に恭しく口づけを落とすと、
「これからは、こうやってあなたに憎悪をぶつけることにします。この方法が僕にとってもあなたにとっても、最良だと知りましたから。ふふ……大嫌いですよ、〇〇」
それは愛しいと告げる声とどう違いがあるというのか。本人は気づかない。
散々な有様の余所者をその場に置き去りにして、ペーターは足音のするほうへと立ち去った。