交差
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34、再会を願う別れ
手汗をかいてしまうくらい緊張しつつ、静雄史上最高レベルの慎重さをもって●●の手を引いた。
なにかの拍子に力を入れてしまわないかと不安になる一方で、内心の高揚はその上をいった。
見慣れた景色も違って見える。自分の家までの行程は言葉少なに過ぎていった。
なにか言わなければと思ったが、全神経が手のひらに集中して会話どころではなかった。
正直相槌も精一杯な静雄だったが、●●は気にすることなく普段どおりに話しかけてくれた。
「ここが静くんの家…」
「ほら、遠慮すんなよ。……今、親いねぇから」
「ぉ、お邪魔します」
鍵を開けて先に中に入ると、少し硬い顔つきをした●●が恐る恐る後に続いた。
なにはともあれ、まずは風呂だ。彼女を家に招いた実感を噛みしめる間もなく、静雄は慌ただしく準備に取りかかった。
浴槽に湯を張る間に、タオルや着替えなど必要なものを用意する。
(服は俺のが…じゃなくてっ、俺のでいいとして。し、し、下着はどうする…っ)
さすがに母親のものを出すのは抵抗がある。かといって、男物を出すのも躊躇われる。
こればかりは一人で悩んでも埒が明かないと、思いきって●●に相談した。
「気を遣わせちゃってごめんね、静くん」
「俺のことはいいって…それより、ど、どうする…?」
疚しいことを考えているわけでもないのに、顔が熱くなるのを抑えられない。
●●のほうも頬を赤らめながら、うろうろと視線を泳がせた。
が、彼女が出した結論は、静雄を動揺させるための策略としか思えなかった。
「…こんなこと、本当なら言っちゃ駄目だと思うんだけど」
「お、おう…?」
他に誰もいない家の中。内緒話をするように●●は顔を寄せて、ひそひそと小さな声で尋ねた。
「洗濯が終わるまで、そのままで…いてもいいかな?」
「……はあっ!?」
理解に至るまで数秒を要した。そして、驚愕した。
心臓が激しく騒ぎ立てる。そのままとはどのままだ。静雄の解釈が間違いでなければ、つまり。
(それってノーパ……)
多感な年頃で、しかも普段異性との接触が乏しい少年は、あまりの刺激の強さに耐えられなかった。
思考がショートしてしまい、気がつけば、華奢な背中をぐいぐい押しやっていた。
脱衣所に押し込み、ぴしゃりと戸を閉める。静雄はずるずるとその場にしゃがみ込んだ。
思わず……想像、してしまった。思春期らしい不埒なイメージに、頭を抱えて自己嫌悪に陥る。
しばらくして、隔たりを挟んだ彼女のくぐもった声が聞こえた。
「…静くん。静くん、ごめんなさい。無神経なこと言っちゃった、よね…?」
力ない声には反省が見えた。一時は取り乱した静雄も、ふうと息を吐いて平常心を心がける。
(無神経っつーか……無防備すぎんだろ、●●さん)
信頼されていると喜べばいいのか、異性として警戒されていないと悲しめばいいのか。
いや、ひとまずポジティブに考えておこう。打ち解けていなければ、きっと彼女の口からは出なかった言葉だ。
人当たりの柔らかい●●のおかげで、二人の距離が近づくのはとても早かった。
まるで昔からの知り合いのように、いや、それ以上の親しさを感じるほどに、●●の存在は静雄に浸透していた。
ちょっとしたことですぐに暴走してしまう力は、周囲の人間を遠ざけると同時に、静雄自身が周囲から距離を置く原因にもなった。
肉親ではない誰かにしか埋められない、そんな孤独感を優しく和らげたのが、●●なのだ。
共有した時間は決して多いとは言えない。しかし静雄にとって、いつの間にか彼女は特別な人になっていた。
「なあ、●●さん…」
静雄よりも先に生まれた●●には、その年数分だけさまざまな出会いがあったはずだ。
彼女は、誰かを特別に想ったことはあるのだろうか。今も、特別な誰かを心に住まわせているのだろうか。
「静くん?」
「……脱いだ服は、洗濯機ん中に。後で回す。着替えも適当に置いとくから、●●さんの好きにしてくれ」
言いかけたことがこれではなかったと、きっと●●も気づいている。
静雄はその場から離れると、箪笥から出した服が散らかし放題になっている部屋に戻った。
あらためて着替えを選び直し(一番丈の長い、生地の厚いものにした)、素早く脱衣所に置きに行く。
それからまた部屋に引き返し、放り出した衣類をすべて元あった場所にしまい込んだ。
(あー……もっと余裕のある大人の男になりてえ)
手汗をかいてしまうくらい緊張しつつ、静雄史上最高レベルの慎重さをもって●●の手を引いた。
なにかの拍子に力を入れてしまわないかと不安になる一方で、内心の高揚はその上をいった。
見慣れた景色も違って見える。自分の家までの行程は言葉少なに過ぎていった。
なにか言わなければと思ったが、全神経が手のひらに集中して会話どころではなかった。
正直相槌も精一杯な静雄だったが、●●は気にすることなく普段どおりに話しかけてくれた。
「ここが静くんの家…」
「ほら、遠慮すんなよ。……今、親いねぇから」
「ぉ、お邪魔します」
鍵を開けて先に中に入ると、少し硬い顔つきをした●●が恐る恐る後に続いた。
なにはともあれ、まずは風呂だ。彼女を家に招いた実感を噛みしめる間もなく、静雄は慌ただしく準備に取りかかった。
浴槽に湯を張る間に、タオルや着替えなど必要なものを用意する。
(服は俺のが…じゃなくてっ、俺のでいいとして。し、し、下着はどうする…っ)
さすがに母親のものを出すのは抵抗がある。かといって、男物を出すのも躊躇われる。
こればかりは一人で悩んでも埒が明かないと、思いきって●●に相談した。
「気を遣わせちゃってごめんね、静くん」
「俺のことはいいって…それより、ど、どうする…?」
疚しいことを考えているわけでもないのに、顔が熱くなるのを抑えられない。
●●のほうも頬を赤らめながら、うろうろと視線を泳がせた。
が、彼女が出した結論は、静雄を動揺させるための策略としか思えなかった。
「…こんなこと、本当なら言っちゃ駄目だと思うんだけど」
「お、おう…?」
他に誰もいない家の中。内緒話をするように●●は顔を寄せて、ひそひそと小さな声で尋ねた。
「洗濯が終わるまで、そのままで…いてもいいかな?」
「……はあっ!?」
理解に至るまで数秒を要した。そして、驚愕した。
心臓が激しく騒ぎ立てる。そのままとはどのままだ。静雄の解釈が間違いでなければ、つまり。
(それってノーパ……)
多感な年頃で、しかも普段異性との接触が乏しい少年は、あまりの刺激の強さに耐えられなかった。
思考がショートしてしまい、気がつけば、華奢な背中をぐいぐい押しやっていた。
脱衣所に押し込み、ぴしゃりと戸を閉める。静雄はずるずるとその場にしゃがみ込んだ。
思わず……想像、してしまった。思春期らしい不埒なイメージに、頭を抱えて自己嫌悪に陥る。
しばらくして、隔たりを挟んだ彼女のくぐもった声が聞こえた。
「…静くん。静くん、ごめんなさい。無神経なこと言っちゃった、よね…?」
力ない声には反省が見えた。一時は取り乱した静雄も、ふうと息を吐いて平常心を心がける。
(無神経っつーか……無防備すぎんだろ、●●さん)
信頼されていると喜べばいいのか、異性として警戒されていないと悲しめばいいのか。
いや、ひとまずポジティブに考えておこう。打ち解けていなければ、きっと彼女の口からは出なかった言葉だ。
人当たりの柔らかい●●のおかげで、二人の距離が近づくのはとても早かった。
まるで昔からの知り合いのように、いや、それ以上の親しさを感じるほどに、●●の存在は静雄に浸透していた。
ちょっとしたことですぐに暴走してしまう力は、周囲の人間を遠ざけると同時に、静雄自身が周囲から距離を置く原因にもなった。
肉親ではない誰かにしか埋められない、そんな孤独感を優しく和らげたのが、●●なのだ。
共有した時間は決して多いとは言えない。しかし静雄にとって、いつの間にか彼女は特別な人になっていた。
「なあ、●●さん…」
静雄よりも先に生まれた●●には、その年数分だけさまざまな出会いがあったはずだ。
彼女は、誰かを特別に想ったことはあるのだろうか。今も、特別な誰かを心に住まわせているのだろうか。
「静くん?」
「……脱いだ服は、洗濯機ん中に。後で回す。着替えも適当に置いとくから、●●さんの好きにしてくれ」
言いかけたことがこれではなかったと、きっと●●も気づいている。
静雄はその場から離れると、箪笥から出した服が散らかし放題になっている部屋に戻った。
あらためて着替えを選び直し(一番丈の長い、生地の厚いものにした)、素早く脱衣所に置きに行く。
それからまた部屋に引き返し、放り出した衣類をすべて元あった場所にしまい込んだ。
(あー……もっと余裕のある大人の男になりてえ)