交差
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26、会えたとき、あなたは名前を呼んでくれますか
見知らぬ部屋で目覚めた●●は、しばらくの間満足に動くこともできなかった。
僅かな身じろぎが目眩に繋がるため、ベッドの弾力に身を預けて目を閉じる。
どれほど時間が流れたのか、ぐるぐる回っていた頭が正常に近づくにつれ、自身の置かれた状況を理解していった。
(……なにか、飲まされて……?)
ファミリーレストランで途切れた記憶。あんなに急速に眠気に襲われるなど尋常ではない。
だとすれば、席を外した隙にグラスになにかを混入されたのだろう。そうとしか考えられなかった。
●●は寝台の上で横になったまま、視線をめぐらせて周囲の様子を窺った。
おそらく、何処かのマンションの一室。生活感のなさはモデルルームのようにも思えた。
ソファーとテレビ。テーブルと二脚の椅子、その向こうにあるのはキッチンだろうか。
「っ……」
慎重に上体を起こし、身体にたいした異変がないことを知ると、そっとフローリングに足をつけた。
折原臨也が自分をここに連れてきたことはわかった。だが、その理由は?
今までになく強引な行動だと思う。意識を奪わなくとも、彼なら言葉を巧みに操り誘導することができたはずだ。
冷蔵庫には食料があり、クローゼットには女物の衣類があった。
細かな日用品が揃えられ、下着までも用意されている。それらから感じる意図は、玄関で判明した事実によって裏付けられた。
「……閉じ込め、られた?」
外に通じるはずの扉には、手をかける場所がなかった。
脇の壁にパネルのようなものがある。ひょっとしてこれが鍵だろうか。
部屋に窓は見当たらず、出入り口は施錠されている。電話はなく、荷物ごとケータイもなくなっていた。
しかし、生活に必要なものが完備されているということは――軟禁、か。
ほんの数時間閉じ込めるだけのつもりなら、こんな用意は不要だ。
折原臨也は、いったいなにをしたいのか。
いつもと異なる雰囲気に不安が募る。だが、真意を問いたい相手は現れない。
唯一時間を教えてくれるテレビによって日数を数えること、三日目。
ようやく訪れた新宿の情報屋は、満面の笑みを浮かべてこう言った。
「〇〇ちゃんなら、シズちゃんの一番柔らかい部分を傷つけられるんじゃないかって、期待してるんだ」
ああ、やはり●●自身に用があるわけではなく、静雄に関わる事態なのだ。
けれど、わからない。この部屋に閉じ込めてどうしようというのか。
(わたしが、静さんを傷つける?)
外出ができないのなら、会うこともかなわないのに。そう思った●●だったが、直後に背筋を凍らせた。
“会えない”――接触を絶つことは、継続して積み上げてきた記憶が忘却に呑まれていくということ。
静雄は、●●のことを忘れる。親しみを抱いた分だけ、彼は苦しむだろう。
完全に忘れ去ってしまうまでの過程を思えば、●●はなにをどう感じればいいのか混乱し、心を掻き乱された。
(静さん……っ)
冷めた目で●●を通して彼の人を見る男は、耳元でそっと囁いた。
あいつの知らない君を俺に見せてよ。そうしたら、解放してあげる。
見知らぬ部屋で目覚めた●●は、しばらくの間満足に動くこともできなかった。
僅かな身じろぎが目眩に繋がるため、ベッドの弾力に身を預けて目を閉じる。
どれほど時間が流れたのか、ぐるぐる回っていた頭が正常に近づくにつれ、自身の置かれた状況を理解していった。
(……なにか、飲まされて……?)
ファミリーレストランで途切れた記憶。あんなに急速に眠気に襲われるなど尋常ではない。
だとすれば、席を外した隙にグラスになにかを混入されたのだろう。そうとしか考えられなかった。
●●は寝台の上で横になったまま、視線をめぐらせて周囲の様子を窺った。
おそらく、何処かのマンションの一室。生活感のなさはモデルルームのようにも思えた。
ソファーとテレビ。テーブルと二脚の椅子、その向こうにあるのはキッチンだろうか。
「っ……」
慎重に上体を起こし、身体にたいした異変がないことを知ると、そっとフローリングに足をつけた。
折原臨也が自分をここに連れてきたことはわかった。だが、その理由は?
今までになく強引な行動だと思う。意識を奪わなくとも、彼なら言葉を巧みに操り誘導することができたはずだ。
冷蔵庫には食料があり、クローゼットには女物の衣類があった。
細かな日用品が揃えられ、下着までも用意されている。それらから感じる意図は、玄関で判明した事実によって裏付けられた。
「……閉じ込め、られた?」
外に通じるはずの扉には、手をかける場所がなかった。
脇の壁にパネルのようなものがある。ひょっとしてこれが鍵だろうか。
部屋に窓は見当たらず、出入り口は施錠されている。電話はなく、荷物ごとケータイもなくなっていた。
しかし、生活に必要なものが完備されているということは――軟禁、か。
ほんの数時間閉じ込めるだけのつもりなら、こんな用意は不要だ。
折原臨也は、いったいなにをしたいのか。
いつもと異なる雰囲気に不安が募る。だが、真意を問いたい相手は現れない。
唯一時間を教えてくれるテレビによって日数を数えること、三日目。
ようやく訪れた新宿の情報屋は、満面の笑みを浮かべてこう言った。
「〇〇ちゃんなら、シズちゃんの一番柔らかい部分を傷つけられるんじゃないかって、期待してるんだ」
ああ、やはり●●自身に用があるわけではなく、静雄に関わる事態なのだ。
けれど、わからない。この部屋に閉じ込めてどうしようというのか。
(わたしが、静さんを傷つける?)
外出ができないのなら、会うこともかなわないのに。そう思った●●だったが、直後に背筋を凍らせた。
“会えない”――接触を絶つことは、継続して積み上げてきた記憶が忘却に呑まれていくということ。
静雄は、●●のことを忘れる。親しみを抱いた分だけ、彼は苦しむだろう。
完全に忘れ去ってしまうまでの過程を思えば、●●はなにをどう感じればいいのか混乱し、心を掻き乱された。
(静さん……っ)
冷めた目で●●を通して彼の人を見る男は、耳元でそっと囁いた。
あいつの知らない君を俺に見せてよ。そうしたら、解放してあげる。