交差
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21、肝心な言葉はなかなか言えない
臨也の関心が●●に向かったのは、間違いなく静雄が発端である。
静雄が彼女に心を傾けるようになってからは、さらに利用価値があると判断したのか。
自分の知らないところで二人が接触し、なにかが起こる。それがどうしようもなく不安で、イラついた。
(油断も隙もあったもんじゃねえ。あの野郎…今度会ったら即行潰す)
風呂から上がった静雄は、タオルで乱雑に髪を拭きながら苛々していた。
●●と心穏やかな日々を過ごしたいと願っているのに、どうしても奴が関わってくる。
その現実をあらためて思い知らされ、本来ならば心休まるはずの時間にすら、思い出したくもない面を思い浮かべているのである。
思えば、この想いを“恋”と気づいたのも、腹立たしいことに臨也の言葉がきっかけだった。
静雄の目と臨也の目では、見えるものが違う。
認めたくはないが、思いもしない指摘にハッとすることも時にはあるのだ。
「くそっ…」
静雄は苛立ちを沈めようと、短く息を吐いた。タオルを首にかける。
そうして机に近づくと、一番上の引き出しを開けた。大切にしまってあるのは、部屋の合鍵だ。
急く必要はないとわかっている。だが、多かれ少なかれ焦燥感は常にあった。
(――……●●)
いずれは彼女に渡すつもりで用意した鍵。
静雄と●●は“友人”という関係だ。深い仲ならともかく、合鍵を渡すのは尚早かもしれない。
だが、もっと、と思う。誰にも割り込む隙のないほど、近づきたい。早く距離をゼロにしてしまいたい。
臨也が●●に干渉するのは、自分が原因だ。静雄が懸念しているのは、本当にそれだけなのかということだった。
最初の理由がずっとそのままであると誰が言える?
僅かにでも彼女に向ける目に、男が混じったら。特別が芽生えたら。
たとえば●●が他の誰かを異性として好いていたとしても、臨也は手段を選ばず奪う。静雄とは違い、どこまでも強引に自分のものにするだろう。
静雄が躊躇してしまう境界線を、きっと軽々と飛び越えていく。その先に求めるものがあるのなら。
――迷ってるうちに掻っ攫われるなんて、冗談じゃない。
踏み込むと決めたのは自分だと、静雄は手のひらに鍵を包み込んだ。
「え、合鍵?」
差し出された飾り気のない金属を見て、●●は瞬きをした。
表面上は平静を装いながらも、静雄の心臓はバクバクと音を立てていた。
「ああ。要らねぇなら、捨てていいから」
あったほうが便利だろうと話した後、さり気なくそう付け加えた。
受け取るだけ受け取ってほしい。言外にそう伝えたつもりだった。
友人に家の合鍵を渡すのは、世間でも珍しいことだと思う。だが、静雄と●●の仲を考えれば、案外不自然ではないかもしれない。
会いに来てくれる●●はいつも、静雄を探すか、玄関の前で待つかなのだ。鍵があれば便利だという言葉に嘘はない。
「でも…わたしがもらって、本当にいいんですか?」
「お前以外の誰に渡すんだよ」
静雄は柔らかな黒髪に、ぽんと手を置いた。
(お前以外に渡したいと思う奴なんかいない)
その鍵にどういう意味があるのか、わかっているのだろうか。
躊躇いながらも嬉しそうに顔を綻ばせた●●を見下ろして、思う。
なあ、いっそ深読みしてくれ。下心を疑ってほしい。俺を男として意識して、頬を染めてくれたりしたら、抱きしめて離さないのに。
臨也の関心が●●に向かったのは、間違いなく静雄が発端である。
静雄が彼女に心を傾けるようになってからは、さらに利用価値があると判断したのか。
自分の知らないところで二人が接触し、なにかが起こる。それがどうしようもなく不安で、イラついた。
(油断も隙もあったもんじゃねえ。あの野郎…今度会ったら即行潰す)
風呂から上がった静雄は、タオルで乱雑に髪を拭きながら苛々していた。
●●と心穏やかな日々を過ごしたいと願っているのに、どうしても奴が関わってくる。
その現実をあらためて思い知らされ、本来ならば心休まるはずの時間にすら、思い出したくもない面を思い浮かべているのである。
思えば、この想いを“恋”と気づいたのも、腹立たしいことに臨也の言葉がきっかけだった。
静雄の目と臨也の目では、見えるものが違う。
認めたくはないが、思いもしない指摘にハッとすることも時にはあるのだ。
「くそっ…」
静雄は苛立ちを沈めようと、短く息を吐いた。タオルを首にかける。
そうして机に近づくと、一番上の引き出しを開けた。大切にしまってあるのは、部屋の合鍵だ。
急く必要はないとわかっている。だが、多かれ少なかれ焦燥感は常にあった。
(――……●●)
いずれは彼女に渡すつもりで用意した鍵。
静雄と●●は“友人”という関係だ。深い仲ならともかく、合鍵を渡すのは尚早かもしれない。
だが、もっと、と思う。誰にも割り込む隙のないほど、近づきたい。早く距離をゼロにしてしまいたい。
臨也が●●に干渉するのは、自分が原因だ。静雄が懸念しているのは、本当にそれだけなのかということだった。
最初の理由がずっとそのままであると誰が言える?
僅かにでも彼女に向ける目に、男が混じったら。特別が芽生えたら。
たとえば●●が他の誰かを異性として好いていたとしても、臨也は手段を選ばず奪う。静雄とは違い、どこまでも強引に自分のものにするだろう。
静雄が躊躇してしまう境界線を、きっと軽々と飛び越えていく。その先に求めるものがあるのなら。
――迷ってるうちに掻っ攫われるなんて、冗談じゃない。
踏み込むと決めたのは自分だと、静雄は手のひらに鍵を包み込んだ。
「え、合鍵?」
差し出された飾り気のない金属を見て、●●は瞬きをした。
表面上は平静を装いながらも、静雄の心臓はバクバクと音を立てていた。
「ああ。要らねぇなら、捨てていいから」
あったほうが便利だろうと話した後、さり気なくそう付け加えた。
受け取るだけ受け取ってほしい。言外にそう伝えたつもりだった。
友人に家の合鍵を渡すのは、世間でも珍しいことだと思う。だが、静雄と●●の仲を考えれば、案外不自然ではないかもしれない。
会いに来てくれる●●はいつも、静雄を探すか、玄関の前で待つかなのだ。鍵があれば便利だという言葉に嘘はない。
「でも…わたしがもらって、本当にいいんですか?」
「お前以外の誰に渡すんだよ」
静雄は柔らかな黒髪に、ぽんと手を置いた。
(お前以外に渡したいと思う奴なんかいない)
その鍵にどういう意味があるのか、わかっているのだろうか。
躊躇いながらも嬉しそうに顔を綻ばせた●●を見下ろして、思う。
なあ、いっそ深読みしてくれ。下心を疑ってほしい。俺を男として意識して、頬を染めてくれたりしたら、抱きしめて離さないのに。