眠りから醒めるまで
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いつにも増して気持ちいい昼寝だと思ったら、枕がぴったり合っていたらしい。
銀時が午睡から目を覚まして最初に見たものは、優しく微笑む誰かの口元だった。
我が子を慈しむようなくすぐったい手つきで銀時の頭を撫でていた●●は、目が合うとさらに笑みを深めた。
幼い少女がどんなに背伸びしても真似できない表情を、あどけない顔で平然とやってのける。
銀時は起き抜けにぼーっとそんなことを考えていたが、ぽっと頬を染めた●●は手を引っ込めた。
「気持ちよさそうに眠ってたね。よだれ、出てるよ?」
「ん、ああ……」
●●の膝から体を起こし、手の甲で口の回りをごしごしと拭う。
「帰ってきてたんだな」
「結構前にね。銀ちゃんとも話したんだけど、覚えてない?」
「覚えてねー。……ご苦労なこったな。お勤めも、俺の枕も」
「いえいえ、微力ながらお役に立てたようで何よりです」
きっと寝惚けた頭で言葉を交わし、ついでとばかりに●●の膝を借りたのだろう。
足が痺れたらしく慎重に正座を崩す●●は、薄桃色の見慣れない着物を着ていた。今朝方出かけた際はもっと地味な色合いだったはず。
どうせ貢物だろうと銀時は当たりをつけた。年上キラーめ。内心揶揄交じりに毒づく。
人見知りでコミュ障のくせに、●●は年長者に好かれる性質だった。
近所で人手が足りず困っていると耳にすれば、松陽からの使いという体裁で手助けに行く。
内向的な性格からは考えられない行動力のわけを、松陽は困ったようにこう話していた。
『勉学に励むよりも人の役に立つほうが存在意義を得られる気がする、と。此処で生きてゆくことを、まずは彼女自身が許したいと願っているのです』
意味は理解できなかった。●●がどこで息を吸おうと誰も咎めやしないのに。
そうやって村のあちこちに出向く●●は幼いながらも一端の便利屋のようだった。
報酬らしい報酬も受け取らず拝辞するため、先方はせめて気持ちだけでもと食べ物や着物を分けてくれるという。
今●●が身に着けている着物もやはり、娘が昔着ていたお下がりだけれどと譲り受けたらしい。
「ふーん。ま、よかったじゃねーの。食いもんのほうがもっとよかったけどな」
「お饅頭ももらったから、後で持ってくるね」
「おー」
ある面ではどこぞの世間知らずのお嬢さんかと思えることもあれば、ある面では一丁前の面構えでそつなくこなす。
――ぜひ養女に、なんて言われたこともあったとか。●●のためを思えば悪い話ではないのに、松陽と銀時と●●、三人ではなくなるなんて考えられなくて。
銀時はまだ足の痺れが抜けない●●の腕を引っ張って畳に転がした。隙をつくなど造作もない。●●はいつも無防備だ、特に銀時の前では。
「わ……っ」
「昼寝しようぜ。俺も寝るわ」
ごろりと横たわって隣を見ると、真っ赤な顔をした●●の目とかち合った。なんだか恥ずかしいことをしてしまった気になって、銀時は早口でからかった。
「何考えてんだよ、●●ちゃんやらしー。なんなら腕枕でもしてやろうか~?」
●●は何かを堪えるようにぎゅっと両手を握った。潤んだ黒い瞳から目が離せなくなり、銀時の心音が騒がしくなる。
銀時は顔が火照るのを感じ、慌てて上体を少し起こすと誤魔化すように片手をぶんぶん振った。
「じょ、冗談だって。じょーだ、ん……っ?」
同じく体を起こした●●が胸元に擦り寄ってきて、言葉に詰まる。
おねがいします。そんなか細い声がぼそぼそと聞こえたときには、銀時は仰向けにひっくり返っていた。
強かに打った後頭部は意識に及ばず、胸の上に乗っかる他人の重みに動揺した。
「……なにコレ、腕枕じゃなくね?おっぱい枕じゃね?」
必死にツッコミを入れるも聞いちゃいない。からかったツケか、それとも膝枕の仕返しか。そろりと視線を下げた銀時はさらに後悔した。
近い。近すぎる。至近距離にある●●の顔はあまりにも幸せそうに綻んでいた。今度こそ銀時の顔色が疑いようもなく同色に染まった。
チクショーと口の中で唸り腕で顔を隠す。人の気も知らない少女はうるさい鼓動に耳をつけて、しみじみと呟いた。
「銀ちゃんは、生きてるんだねえ」
「……ったりめェだろーが」
銀時が午睡から目を覚まして最初に見たものは、優しく微笑む誰かの口元だった。
我が子を慈しむようなくすぐったい手つきで銀時の頭を撫でていた●●は、目が合うとさらに笑みを深めた。
幼い少女がどんなに背伸びしても真似できない表情を、あどけない顔で平然とやってのける。
銀時は起き抜けにぼーっとそんなことを考えていたが、ぽっと頬を染めた●●は手を引っ込めた。
「気持ちよさそうに眠ってたね。よだれ、出てるよ?」
「ん、ああ……」
●●の膝から体を起こし、手の甲で口の回りをごしごしと拭う。
「帰ってきてたんだな」
「結構前にね。銀ちゃんとも話したんだけど、覚えてない?」
「覚えてねー。……ご苦労なこったな。お勤めも、俺の枕も」
「いえいえ、微力ながらお役に立てたようで何よりです」
きっと寝惚けた頭で言葉を交わし、ついでとばかりに●●の膝を借りたのだろう。
足が痺れたらしく慎重に正座を崩す●●は、薄桃色の見慣れない着物を着ていた。今朝方出かけた際はもっと地味な色合いだったはず。
どうせ貢物だろうと銀時は当たりをつけた。年上キラーめ。内心揶揄交じりに毒づく。
人見知りでコミュ障のくせに、●●は年長者に好かれる性質だった。
近所で人手が足りず困っていると耳にすれば、松陽からの使いという体裁で手助けに行く。
内向的な性格からは考えられない行動力のわけを、松陽は困ったようにこう話していた。
『勉学に励むよりも人の役に立つほうが存在意義を得られる気がする、と。此処で生きてゆくことを、まずは彼女自身が許したいと願っているのです』
意味は理解できなかった。●●がどこで息を吸おうと誰も咎めやしないのに。
そうやって村のあちこちに出向く●●は幼いながらも一端の便利屋のようだった。
報酬らしい報酬も受け取らず拝辞するため、先方はせめて気持ちだけでもと食べ物や着物を分けてくれるという。
今●●が身に着けている着物もやはり、娘が昔着ていたお下がりだけれどと譲り受けたらしい。
「ふーん。ま、よかったじゃねーの。食いもんのほうがもっとよかったけどな」
「お饅頭ももらったから、後で持ってくるね」
「おー」
ある面ではどこぞの世間知らずのお嬢さんかと思えることもあれば、ある面では一丁前の面構えでそつなくこなす。
――ぜひ養女に、なんて言われたこともあったとか。●●のためを思えば悪い話ではないのに、松陽と銀時と●●、三人ではなくなるなんて考えられなくて。
銀時はまだ足の痺れが抜けない●●の腕を引っ張って畳に転がした。隙をつくなど造作もない。●●はいつも無防備だ、特に銀時の前では。
「わ……っ」
「昼寝しようぜ。俺も寝るわ」
ごろりと横たわって隣を見ると、真っ赤な顔をした●●の目とかち合った。なんだか恥ずかしいことをしてしまった気になって、銀時は早口でからかった。
「何考えてんだよ、●●ちゃんやらしー。なんなら腕枕でもしてやろうか~?」
●●は何かを堪えるようにぎゅっと両手を握った。潤んだ黒い瞳から目が離せなくなり、銀時の心音が騒がしくなる。
銀時は顔が火照るのを感じ、慌てて上体を少し起こすと誤魔化すように片手をぶんぶん振った。
「じょ、冗談だって。じょーだ、ん……っ?」
同じく体を起こした●●が胸元に擦り寄ってきて、言葉に詰まる。
おねがいします。そんなか細い声がぼそぼそと聞こえたときには、銀時は仰向けにひっくり返っていた。
強かに打った後頭部は意識に及ばず、胸の上に乗っかる他人の重みに動揺した。
「……なにコレ、腕枕じゃなくね?おっぱい枕じゃね?」
必死にツッコミを入れるも聞いちゃいない。からかったツケか、それとも膝枕の仕返しか。そろりと視線を下げた銀時はさらに後悔した。
近い。近すぎる。至近距離にある●●の顔はあまりにも幸せそうに綻んでいた。今度こそ銀時の顔色が疑いようもなく同色に染まった。
チクショーと口の中で唸り腕で顔を隠す。人の気も知らない少女はうるさい鼓動に耳をつけて、しみじみと呟いた。
「銀ちゃんは、生きてるんだねえ」
「……ったりめェだろーが」