眠りから醒めるまで
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幕府に捕縛された松陽を奪還するために剣を取ると決めたとき、銀時は迷わなかった。
銀時以外の親しい者達は驚き、反対した。――女を戦場に連れていくなんて、と。
たしかに村に残していくことが最善の選択だと誰もが思っただろう。
たとえ少女自身が連れていってほしいと願ったとしても、他の誰が許したとしても、銀時だけは反対の立場であるべきだった。
しかし実際は友の忠言にも耳を貸さず、細い手首を握りしめ、率先して村から連れ出したのだ。
人見知りでもコミュ障でも、●●は周囲の環境に合わせることのできる人間だった。
あのままあそこにいれば戦に関わることなく、きっと普通の村娘として生きていけた。
すべてを終えて松陽と共に帰り、また一緒に暮らせばいい。そう素直に夢を見ることができたら、少女は銀時にとって希望となり得たのかもしれない。
あのとき、燃え尽きて見る影もなくなった松下村塾を前に●●は立ち尽くしていた。
松陽という絶対的な支えを失った姿は頼りなく儚げで、今にも消えてしまいそうに見えた。
そのとき思ったのだ。決して●●から離れてはならない、目を離してはならない。
一度傍から離れてしまえば、いなくなったことにも気づけなくなる、そんな日が訪れる予感がした。
「先生のこと、助けたいよ。でも、わたしには何もできないから……」
ついて来いと言う銀時に消極的な●●は眉尻を下げた。何もできないなど、それは過小評価だ。
「別に刀を握れって言ってるわけじゃねェ。誰もお前にそんなこと期待しちゃいねーよ」
「だったら、ついて行っても足手纏いになるだけ……」
「なんねーって。ほら、戦う以外にもやるべきことってのがいろいろあんだろぉ?お前はそういうこまごましたことをやってりゃあいいの」
やんわりと己の意思を示して村に残ろうとする●●は、銀時よりも冷静で正常な判断力を持っていた。
親しい者達が皆いなくなると聞けば、自分もついて行くと主張するほうがよっぽど娘らしいものを。
優しい気持ちだけを集めて作ったような顔をしながら、酷な現実から目を逸らさず、正しい選択を厭わない。
そしてその選択は●●自身ではなく、銀時のためだとすぐさま理解してしまう。まったく嫌気が差す。
身体能力が長けているでもない、剣術がずば抜けているでもない、ごくごく普通の力ない少女。
しかし、見かけだけでは判じられない何かを秘めている●●。
●●が聞き分けのいい、模範的な“良い子”だからこそ、一緒に育った銀時は●●の分までわがままになってしまったのだろうか。
「目の届くところにいてくれよ。それだけでいいんだ。お前のことは俺が全力で護ってやっから、なっ?」
それが駄目なんだよ。
意地でも連れて行こうと決めて首を縦に振らせようとする銀時に、●●が浮かべた困ったような微笑が、そう言ったような気がした。
銀時以外の親しい者達は驚き、反対した。――女を戦場に連れていくなんて、と。
たしかに村に残していくことが最善の選択だと誰もが思っただろう。
たとえ少女自身が連れていってほしいと願ったとしても、他の誰が許したとしても、銀時だけは反対の立場であるべきだった。
しかし実際は友の忠言にも耳を貸さず、細い手首を握りしめ、率先して村から連れ出したのだ。
人見知りでもコミュ障でも、●●は周囲の環境に合わせることのできる人間だった。
あのままあそこにいれば戦に関わることなく、きっと普通の村娘として生きていけた。
すべてを終えて松陽と共に帰り、また一緒に暮らせばいい。そう素直に夢を見ることができたら、少女は銀時にとって希望となり得たのかもしれない。
あのとき、燃え尽きて見る影もなくなった松下村塾を前に●●は立ち尽くしていた。
松陽という絶対的な支えを失った姿は頼りなく儚げで、今にも消えてしまいそうに見えた。
そのとき思ったのだ。決して●●から離れてはならない、目を離してはならない。
一度傍から離れてしまえば、いなくなったことにも気づけなくなる、そんな日が訪れる予感がした。
「先生のこと、助けたいよ。でも、わたしには何もできないから……」
ついて来いと言う銀時に消極的な●●は眉尻を下げた。何もできないなど、それは過小評価だ。
「別に刀を握れって言ってるわけじゃねェ。誰もお前にそんなこと期待しちゃいねーよ」
「だったら、ついて行っても足手纏いになるだけ……」
「なんねーって。ほら、戦う以外にもやるべきことってのがいろいろあんだろぉ?お前はそういうこまごましたことをやってりゃあいいの」
やんわりと己の意思を示して村に残ろうとする●●は、銀時よりも冷静で正常な判断力を持っていた。
親しい者達が皆いなくなると聞けば、自分もついて行くと主張するほうがよっぽど娘らしいものを。
優しい気持ちだけを集めて作ったような顔をしながら、酷な現実から目を逸らさず、正しい選択を厭わない。
そしてその選択は●●自身ではなく、銀時のためだとすぐさま理解してしまう。まったく嫌気が差す。
身体能力が長けているでもない、剣術がずば抜けているでもない、ごくごく普通の力ない少女。
しかし、見かけだけでは判じられない何かを秘めている●●。
●●が聞き分けのいい、模範的な“良い子”だからこそ、一緒に育った銀時は●●の分までわがままになってしまったのだろうか。
「目の届くところにいてくれよ。それだけでいいんだ。お前のことは俺が全力で護ってやっから、なっ?」
それが駄目なんだよ。
意地でも連れて行こうと決めて首を縦に振らせようとする銀時に、●●が浮かべた困ったような微笑が、そう言ったような気がした。
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