愛され少女の日常
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幸いにも午後からの任務や授業も無く、三人は優の遊びに付き合うことにした。
ぽかぽかとした春の陽気に誘われながら、優は三人達よりもうんと前の方を走っては、時折振り返り、彼らの名前を呼んでは手を振る。振り返されたら、へにゃりと笑い、彼らの元に駆け寄り、ギュッと抱きつき、また遠くの方へと走っていき、振り出しに戻るという子供にか楽しさがわからない不思議な遊びをしていた。
「相変わらずだね。少しは自分の可愛さに気がつけよって思うわ」
「当たり前だよ。逆に尋ねるけど、可愛い以外に何があるっていうんだ?」
「うわ、しまった」
変なスイッチが入れてしまったことに後悔すると同時に顔を顰めた。その隣では「出たよ、シスコン兄貴」と悟もまた硝子と同様に吐き捨てた。
だが、傑の気持ちもわからないこともない。
実際、二人も優のことを可愛がっていたし、硝子に関しては「家に連れて帰ってもいい?」と息を吐くように尋ねており、悟に関しては態度や言動はぶっきらぼうとはいえ、頼まれたお迎えの帰り道にコンビニでこっそりとお菓子だのジュースだの買い与えたり公園に寄り道しては遊んでやったりくるなど骨抜きにされている状態。
とはいえ、兄である傑も負けておらず、彼にとって優は言葉の通り、目に入れても痛くない妹。しつけの為と言って、きつく叱った際には、嫌われたんじゃないかと落ち込んだりしては二人にネタにされたり。
はいはい、可愛い可愛いと適当に(事実だが)相槌を打つ。
「わかればいいんだよ。でも、ああ見えても超がつくほどの人見知りでね。心を開けばあんな調子なんだけど、初対面の相手となると、もう。それかちょっとだけ心配」
「別に人見知りってそこまで悪いことじゃなくね?変にハキハキしてたり、馬鹿みたいに声デカくて、自己主張の強い生意気なガキいるじゃん。ああいうの嫌い」
「……それ悟が言う資格ある?」
「生意気なクソガキとか、アンタじゃん。特大ブーメラン」
「は?どこがブーメランなんだよ」
やんややんやと二番、三番煎じとも言えるやりとりをしていると、ついさっきまで笑顔だった優が不安気な顔で駆けてきた。傑に抱きつくと、滑るように背後に隠れ、じいっと道の先を見つめ始める。声を掛けてみるが、優は黙り込んだまま唇をかみしめるばかりで何も答えない。
何があったのだろう。その場にいた誰もがそう思っていると、優の見つめる先の方から、ちょうど任務帰って来たばかりの一年の生徒たちの姿が見えた。
「あ、七海に灰原じゃん。任務お疲れ」
「お疲れ様です」
「お疲れです!家入さん達は今日は任務無かったんですね」
「あー、うん。ウチらは午前中に任務終わらせちゃって。なんせコイツら二人がいるから、すぐに終わっちゃって。午後から暇だから、こうやってプラプラして適当に時間潰してるってわけ」
「今日は天気もいいですし、散歩にはうってつけの日ですよ!あれ、夏油さんの後ろにいるその子は……」
と言って、すぐ後ろに隠れている優の方を見やる。
彼はああと言って、自分の妹だと紹介した。
「この子が夏油さんの妹かー。めちゃくちゃ小さいですね」
「子供だから小さいのは当たり前でしょう」
「あはは、それもそっか」
しゃがみ込み、目線を合わせてくれる灰原だが、優はは意味もなく、自分の小さな指の爪をいじったり、そっぽを向いて、ソワソワ。
「すまないね、人一倍人見知りなもんだから」
ようやく声を出したかと思ったら、耳を澄まさなければ、聞き逃してしまうほどの小さな声で「こんにちは」と言った。彼女なりの精一杯の言葉だった。
「あーあ、やってらんね」
ガシガシと頭をかきながら、不安げな優に目線を合わせるようしゃがみ込む。やはり、その姿はどう見ても行儀がいいとは言えない座り方。
なんてガラの悪い。これじゃあ、お祭りで小さい子供相手にカツアゲしてるヤンキーじゃないか。そこにいる誰もがそう感じた。
「そんなビビんなって。灰原と七海。二人ともいいヤツだから。まあ、確かに七海、金髪の方はすっげえ悪者みたいな顔してるから、怖がる気持ちもわからんでもないけど」
「もう少しまともな例えは無かったのですか」
悪者の喩えをされた被害者はジリジリとした目つきで睨み付ける。対する灰原は優に目線を合わせたまま、ニコリと笑いかけ、自ら自己紹介をしていた。
「夏油優……。うさぎ組……」
少し心を開いたのか、辿々しくも優も自ら自己紹介を始める。
「へぇ、優ちゃんっていうんだ。いい名前だね」
「えへへ……ありがとう」
照れ臭そうにふわりと笑う。まるで小さな花が開くように朗らかで実に可愛らしいものだった。
そのまま灰原は優に幼稚園ではどんな遊びをしているのか。好きなアニメのキャラクターについて話を始めた。優も嬉しそうに表情を和らげ、うんうんと頷き、彼女自身も口を開いていく。そこにはさっきまでの不安に塗れた表情はどこにもなく、可愛らしい女の子の姿があった。
さすが下に妹を持つだけある言ったところか。扱いに慣れている。
「そっかー、優ちゃんは隠れ鬼ごっこ好きなんだね」
「うん!いっつもやってるよ!」
「え、じゃあ、今からやろうか!」
「いいの……?!」
「もちろん!久々にやってみたかったし。七海もやるよね?」
「灰原……、何勝手に話を進めてるんだ」
やるわけないだろうと断ろうとしたときだった。
灰原と話していたはずの優がボテボテと七海の元へやってきて、くすみひとつもない純粋な瞳で見上げて、口を開いた。
「……けんとくんも一緒に遊ぼう?」
モジモジしながらも手を握り、遊ぼうと誘ってくる優を彼はじいっと見つめた。いや、目が離せなかった。そして、しばらくの間を置いてから、仕方ないとでもいうようなため息を一つ吐き、「少しだけなら」と答え、誘いを受け入れると、優に手を引かれ、灰原と共に先の方へと歩いて行った。
「やっぱり、コミュ力お化けだわ、灰原。スッと懐に入っちゃう。それにしても七海。完全に射抜かれたね。やられた顔してたもん。ま、なんとなく予想はついていたけど」
「あのお堅い七海が固まってんの、笑い堪えるの必死だったわ。てか、アイツ案外幼女イケる口だったりして」
「私の妹で変なことを考えるのはよしてくれないか。そんなものどんな輩だろうが、問答無用でシメるに決まってるだろう」
「やっぱりアンタが一番ヤバいわ」
優たちの後ろ姿を見送りながら、そんなこんな他愛のない会話を交わした。
ぽかぽかとした春の陽気に誘われながら、優は三人達よりもうんと前の方を走っては、時折振り返り、彼らの名前を呼んでは手を振る。振り返されたら、へにゃりと笑い、彼らの元に駆け寄り、ギュッと抱きつき、また遠くの方へと走っていき、振り出しに戻るという子供にか楽しさがわからない不思議な遊びをしていた。
「相変わらずだね。少しは自分の可愛さに気がつけよって思うわ」
「当たり前だよ。逆に尋ねるけど、可愛い以外に何があるっていうんだ?」
「うわ、しまった」
変なスイッチが入れてしまったことに後悔すると同時に顔を顰めた。その隣では「出たよ、シスコン兄貴」と悟もまた硝子と同様に吐き捨てた。
だが、傑の気持ちもわからないこともない。
実際、二人も優のことを可愛がっていたし、硝子に関しては「家に連れて帰ってもいい?」と息を吐くように尋ねており、悟に関しては態度や言動はぶっきらぼうとはいえ、頼まれたお迎えの帰り道にコンビニでこっそりとお菓子だのジュースだの買い与えたり公園に寄り道しては遊んでやったりくるなど骨抜きにされている状態。
とはいえ、兄である傑も負けておらず、彼にとって優は言葉の通り、目に入れても痛くない妹。しつけの為と言って、きつく叱った際には、嫌われたんじゃないかと落ち込んだりしては二人にネタにされたり。
はいはい、可愛い可愛いと適当に(事実だが)相槌を打つ。
「わかればいいんだよ。でも、ああ見えても超がつくほどの人見知りでね。心を開けばあんな調子なんだけど、初対面の相手となると、もう。それかちょっとだけ心配」
「別に人見知りってそこまで悪いことじゃなくね?変にハキハキしてたり、馬鹿みたいに声デカくて、自己主張の強い生意気なガキいるじゃん。ああいうの嫌い」
「……それ悟が言う資格ある?」
「生意気なクソガキとか、アンタじゃん。特大ブーメラン」
「は?どこがブーメランなんだよ」
やんややんやと二番、三番煎じとも言えるやりとりをしていると、ついさっきまで笑顔だった優が不安気な顔で駆けてきた。傑に抱きつくと、滑るように背後に隠れ、じいっと道の先を見つめ始める。声を掛けてみるが、優は黙り込んだまま唇をかみしめるばかりで何も答えない。
何があったのだろう。その場にいた誰もがそう思っていると、優の見つめる先の方から、ちょうど任務帰って来たばかりの一年の生徒たちの姿が見えた。
「あ、七海に灰原じゃん。任務お疲れ」
「お疲れ様です」
「お疲れです!家入さん達は今日は任務無かったんですね」
「あー、うん。ウチらは午前中に任務終わらせちゃって。なんせコイツら二人がいるから、すぐに終わっちゃって。午後から暇だから、こうやってプラプラして適当に時間潰してるってわけ」
「今日は天気もいいですし、散歩にはうってつけの日ですよ!あれ、夏油さんの後ろにいるその子は……」
と言って、すぐ後ろに隠れている優の方を見やる。
彼はああと言って、自分の妹だと紹介した。
「この子が夏油さんの妹かー。めちゃくちゃ小さいですね」
「子供だから小さいのは当たり前でしょう」
「あはは、それもそっか」
しゃがみ込み、目線を合わせてくれる灰原だが、優はは意味もなく、自分の小さな指の爪をいじったり、そっぽを向いて、ソワソワ。
「すまないね、人一倍人見知りなもんだから」
ようやく声を出したかと思ったら、耳を澄まさなければ、聞き逃してしまうほどの小さな声で「こんにちは」と言った。彼女なりの精一杯の言葉だった。
「あーあ、やってらんね」
ガシガシと頭をかきながら、不安げな優に目線を合わせるようしゃがみ込む。やはり、その姿はどう見ても行儀がいいとは言えない座り方。
なんてガラの悪い。これじゃあ、お祭りで小さい子供相手にカツアゲしてるヤンキーじゃないか。そこにいる誰もがそう感じた。
「そんなビビんなって。灰原と七海。二人ともいいヤツだから。まあ、確かに七海、金髪の方はすっげえ悪者みたいな顔してるから、怖がる気持ちもわからんでもないけど」
「もう少しまともな例えは無かったのですか」
悪者の喩えをされた被害者はジリジリとした目つきで睨み付ける。対する灰原は優に目線を合わせたまま、ニコリと笑いかけ、自ら自己紹介をしていた。
「夏油優……。うさぎ組……」
少し心を開いたのか、辿々しくも優も自ら自己紹介を始める。
「へぇ、優ちゃんっていうんだ。いい名前だね」
「えへへ……ありがとう」
照れ臭そうにふわりと笑う。まるで小さな花が開くように朗らかで実に可愛らしいものだった。
そのまま灰原は優に幼稚園ではどんな遊びをしているのか。好きなアニメのキャラクターについて話を始めた。優も嬉しそうに表情を和らげ、うんうんと頷き、彼女自身も口を開いていく。そこにはさっきまでの不安に塗れた表情はどこにもなく、可愛らしい女の子の姿があった。
さすが下に妹を持つだけある言ったところか。扱いに慣れている。
「そっかー、優ちゃんは隠れ鬼ごっこ好きなんだね」
「うん!いっつもやってるよ!」
「え、じゃあ、今からやろうか!」
「いいの……?!」
「もちろん!久々にやってみたかったし。七海もやるよね?」
「灰原……、何勝手に話を進めてるんだ」
やるわけないだろうと断ろうとしたときだった。
灰原と話していたはずの優がボテボテと七海の元へやってきて、くすみひとつもない純粋な瞳で見上げて、口を開いた。
「……けんとくんも一緒に遊ぼう?」
モジモジしながらも手を握り、遊ぼうと誘ってくる優を彼はじいっと見つめた。いや、目が離せなかった。そして、しばらくの間を置いてから、仕方ないとでもいうようなため息を一つ吐き、「少しだけなら」と答え、誘いを受け入れると、優に手を引かれ、灰原と共に先の方へと歩いて行った。
「やっぱり、コミュ力お化けだわ、灰原。スッと懐に入っちゃう。それにしても七海。完全に射抜かれたね。やられた顔してたもん。ま、なんとなく予想はついていたけど」
「あのお堅い七海が固まってんの、笑い堪えるの必死だったわ。てか、アイツ案外幼女イケる口だったりして」
「私の妹で変なことを考えるのはよしてくれないか。そんなものどんな輩だろうが、問答無用でシメるに決まってるだろう」
「やっぱりアンタが一番ヤバいわ」
優たちの後ろ姿を見送りながら、そんなこんな他愛のない会話を交わした。