愛され少女の日常
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「おにいちゃん、みーっけ!」
ふふふっと腰にぎゅっと抱きつく幼い少女。年齢はざっと見積もり、四、五歳くらい。
ここ都立呪術高専には似つかわしくない来客―――夏油優を前に、呪術高専二年の夏油傑は、「あぁ、またか」と額に手を当てた。
「また、母さんに黙って来たのかい?」
「う、だって」
「だってじゃない」
ダメじゃないかとしゃがみ込み、目線を合わせる。
注意された優は気まずそうにそっぽを向き、尖らせた口を開き、「お兄ちゃんに会いたかったんだもん」と不貞腐れたように呟いた。
妹の言葉に彼は心臓を射抜かれた気分だった。一体、どこでそんな言葉を覚えてくるのかと。だが、ここはやはり兄として教えなければならない。
彼はゆっくりとしゃがみ込み、幼い妹の目を見て、再び口を開いた。
「おにいちゃんも優に会えて嬉しいよ。だけど、黙って来るのはダメだ。大好きな優に何かあったりなんかしたら、父さんも母さんも悲しむし、おにいちゃんだって悲しい」
「泣いちゃう?」
「そりゃもちろんさ」
不安気に揺れる瞳にしっかりと頷く。
すると、幼い優にも直向きな思いが届いたようで、彼女の瞳から不安な色が消え、決意の色が現れた。
「わたし……パパ、ママ、おにいちゃんが悲しむのは見たくないなあ……。うん。わかったよ。これからはちゃんとママに言うし、一人で勝手に来ない」
「わかってくれれば良いんだよ。おにいちゃんとの約束」
「うん!ゆびきりげんまん!」
軽やかな優の歌声と共に小刻み揺れる、絡み合う二本の小指。指切った!とお決まりの言葉を言ったのち、再び大好きな兄に抱きつく優。傑も同様にたった一人の可愛い妹を抱き上げ、ちょっとそこらでも散歩しようかとしたときだった。
「うわー、今日も今日とてお兄ちゃんしてんなぁ」
「少しはお前も見習ったらどうだ?子供への対応の仕方」
「はあ?なんでガキの扱いを学ばなきゃならねーんだよ」
「ガキとか言ってる時点でもう既にダメね」
傑の親友である五条悟と同期の家入硝子が立っていた。二人の姿を見るや否や、「さとるくん!しょうこちゃん!」と目を輝かせ、めいっぱいに手を振った。
「優ちゃん、久しぶりー。って、珍しい。おさげ髪してる」
「えへへ、ママにやってもらったんだー!」
「へえ、似合ってんじゃん、すっごく可愛い」
褒められて嬉しい優は少し照れ臭そうに笑った。
「さとるくん、久しぶり!元気?」
「元気。チビは?」
「良かったー!わたしも元気だよ!このくらい元気!」
と両手を大きく広げて、体現しようとしてくる優に何を思ったのか、「そんだけ?俺の方がもっと元気だし」と対抗する。
「こんくらい元気」
「わあ、大きい……!で、でも、わたしだってこんくらい元気だもん」
「ちっせ。雑魚じゃん。ま、その短い腕ではそれが限界か」
「子供相手に何やってんだ。馬鹿か」
大人気ない彼の言動に硝子は呆れ顔を浮かべた。
本当に同い年なのだろうか。脳味噌を小学校に置いたまま今日まで生きてきたのではないだろうか。
いくら、御三家の坊ちゃんと言われようが、天資英明と謳われようが、脳内はそこらの小学生と変わりやしない。
男子ってそういう生き物だと改めて実感していると、ふとあることに気づいた。
「アンタら二人ってパッと見は兄妹って感じがしないよね。なんていうか、まるで……」
硝子の鋭い視線が交互に傑と優へと注がれる。
「連れ去られる子供と誘拐犯みたいな絵面よね」
「……え?」
「硝子、最高。その喩えはナイスすぎる」
「ゆうかいはん……?なあにそれ?」
「悪い奴。簡単に言うと、傑みたいな顔をしてる奴のこと」
「お兄ちゃんみたいな人……。でも、さとるくん、お兄ちゃんは悪い人なんかじゃないよ?」
だってお兄ちゃん優しいよ?それなのになんで?と次から次へと疑問符を重ねていく優に彼は面倒臭そうに表情を歪めた。
「いや、顔だよ顔。ほら、プリキュアとかいうのに出てくる悪者みてーな顔してんじゃん」
「……悟、随分と好き勝手に言ってくれるね」
「さとるくん、お兄ちゃん悪者みたいな顔してないよ?カッコいい顔してるもん」
「ことごとく否定されやんの。それにしても、優ちゃんは、本当に傑のことが好きだね」
「うん!すっごく大好き!しょうこちゃんも大好きだよ!」
パッと向日葵のような笑顔が花開く。その笑顔につられて、硝子もまたほんの少し口元を緩ませた。
おもむろに悟の方に視線を移すや否や、何かを思いついたのか、不敵な笑みを浮かべると、今度は優の方を見て、口を開いた。
「悟は?悟のことはどう思ってる?」
「は?お前何聞こうとしてんだよ」
「大好き?大嫌い?」
「さとるくんも、大好きだよ。でも、少し意地悪してくるし、ちょっと怖いかな……」
視線を泳がせ、ほんの少し気まずそうに告げる優に期待通りの回答だと言わんばかりに傑と硝子は顔を見合わせ、どっと笑う。対する、話の人物は納得いかない、腑に落ちない様子で、只々、顔を顰めるしかなかった。
「初めの頃はめちゃくちゃ嫌われてたよね。一緒の部屋にいるだけで、優ちゃん、泣き出しそうな顔しててさ。二人きりで留守番させたとき、めちゃくちゃ面白かったわ」とトドメを刺す硝子。
「んなこと言ったって。勝手に泣き出されちゃ、どうしようもないだろ。頭撫でて、よしよしいい子いい子して、あやせっていうのか?やってられるかそんなこと」
「そこまでしろとは言ってないよ。だけど、もう少し、目線を合わせるとかしたらどうだい?そんなポケットに手を突っ込んで、見下ろすのは怖がられても当然だよ」
「少し屈んでみろよ」という二人の言葉に、仕方なく、屈んでみることに。「なんで俺が」と憎まれ口を叩きながらも渋々やってみせるが、その座り方はお世辞にも幼い子供を相手にするようなものではなかった。
「うっわ、深夜のコンビニにたむろする族じゃん。ヤンキーかよ」
「うちの優にあまり行儀の悪いことを教えないでもらえるかな?覚えちゃったら大変だ」
「お前らがやれって言ったんだろ」
ふふふっと腰にぎゅっと抱きつく幼い少女。年齢はざっと見積もり、四、五歳くらい。
ここ都立呪術高専には似つかわしくない来客―――夏油優を前に、呪術高専二年の夏油傑は、「あぁ、またか」と額に手を当てた。
「また、母さんに黙って来たのかい?」
「う、だって」
「だってじゃない」
ダメじゃないかとしゃがみ込み、目線を合わせる。
注意された優は気まずそうにそっぽを向き、尖らせた口を開き、「お兄ちゃんに会いたかったんだもん」と不貞腐れたように呟いた。
妹の言葉に彼は心臓を射抜かれた気分だった。一体、どこでそんな言葉を覚えてくるのかと。だが、ここはやはり兄として教えなければならない。
彼はゆっくりとしゃがみ込み、幼い妹の目を見て、再び口を開いた。
「おにいちゃんも優に会えて嬉しいよ。だけど、黙って来るのはダメだ。大好きな優に何かあったりなんかしたら、父さんも母さんも悲しむし、おにいちゃんだって悲しい」
「泣いちゃう?」
「そりゃもちろんさ」
不安気に揺れる瞳にしっかりと頷く。
すると、幼い優にも直向きな思いが届いたようで、彼女の瞳から不安な色が消え、決意の色が現れた。
「わたし……パパ、ママ、おにいちゃんが悲しむのは見たくないなあ……。うん。わかったよ。これからはちゃんとママに言うし、一人で勝手に来ない」
「わかってくれれば良いんだよ。おにいちゃんとの約束」
「うん!ゆびきりげんまん!」
軽やかな優の歌声と共に小刻み揺れる、絡み合う二本の小指。指切った!とお決まりの言葉を言ったのち、再び大好きな兄に抱きつく優。傑も同様にたった一人の可愛い妹を抱き上げ、ちょっとそこらでも散歩しようかとしたときだった。
「うわー、今日も今日とてお兄ちゃんしてんなぁ」
「少しはお前も見習ったらどうだ?子供への対応の仕方」
「はあ?なんでガキの扱いを学ばなきゃならねーんだよ」
「ガキとか言ってる時点でもう既にダメね」
傑の親友である五条悟と同期の家入硝子が立っていた。二人の姿を見るや否や、「さとるくん!しょうこちゃん!」と目を輝かせ、めいっぱいに手を振った。
「優ちゃん、久しぶりー。って、珍しい。おさげ髪してる」
「えへへ、ママにやってもらったんだー!」
「へえ、似合ってんじゃん、すっごく可愛い」
褒められて嬉しい優は少し照れ臭そうに笑った。
「さとるくん、久しぶり!元気?」
「元気。チビは?」
「良かったー!わたしも元気だよ!このくらい元気!」
と両手を大きく広げて、体現しようとしてくる優に何を思ったのか、「そんだけ?俺の方がもっと元気だし」と対抗する。
「こんくらい元気」
「わあ、大きい……!で、でも、わたしだってこんくらい元気だもん」
「ちっせ。雑魚じゃん。ま、その短い腕ではそれが限界か」
「子供相手に何やってんだ。馬鹿か」
大人気ない彼の言動に硝子は呆れ顔を浮かべた。
本当に同い年なのだろうか。脳味噌を小学校に置いたまま今日まで生きてきたのではないだろうか。
いくら、御三家の坊ちゃんと言われようが、天資英明と謳われようが、脳内はそこらの小学生と変わりやしない。
男子ってそういう生き物だと改めて実感していると、ふとあることに気づいた。
「アンタら二人ってパッと見は兄妹って感じがしないよね。なんていうか、まるで……」
硝子の鋭い視線が交互に傑と優へと注がれる。
「連れ去られる子供と誘拐犯みたいな絵面よね」
「……え?」
「硝子、最高。その喩えはナイスすぎる」
「ゆうかいはん……?なあにそれ?」
「悪い奴。簡単に言うと、傑みたいな顔をしてる奴のこと」
「お兄ちゃんみたいな人……。でも、さとるくん、お兄ちゃんは悪い人なんかじゃないよ?」
だってお兄ちゃん優しいよ?それなのになんで?と次から次へと疑問符を重ねていく優に彼は面倒臭そうに表情を歪めた。
「いや、顔だよ顔。ほら、プリキュアとかいうのに出てくる悪者みてーな顔してんじゃん」
「……悟、随分と好き勝手に言ってくれるね」
「さとるくん、お兄ちゃん悪者みたいな顔してないよ?カッコいい顔してるもん」
「ことごとく否定されやんの。それにしても、優ちゃんは、本当に傑のことが好きだね」
「うん!すっごく大好き!しょうこちゃんも大好きだよ!」
パッと向日葵のような笑顔が花開く。その笑顔につられて、硝子もまたほんの少し口元を緩ませた。
おもむろに悟の方に視線を移すや否や、何かを思いついたのか、不敵な笑みを浮かべると、今度は優の方を見て、口を開いた。
「悟は?悟のことはどう思ってる?」
「は?お前何聞こうとしてんだよ」
「大好き?大嫌い?」
「さとるくんも、大好きだよ。でも、少し意地悪してくるし、ちょっと怖いかな……」
視線を泳がせ、ほんの少し気まずそうに告げる優に期待通りの回答だと言わんばかりに傑と硝子は顔を見合わせ、どっと笑う。対する、話の人物は納得いかない、腑に落ちない様子で、只々、顔を顰めるしかなかった。
「初めの頃はめちゃくちゃ嫌われてたよね。一緒の部屋にいるだけで、優ちゃん、泣き出しそうな顔しててさ。二人きりで留守番させたとき、めちゃくちゃ面白かったわ」とトドメを刺す硝子。
「んなこと言ったって。勝手に泣き出されちゃ、どうしようもないだろ。頭撫でて、よしよしいい子いい子して、あやせっていうのか?やってられるかそんなこと」
「そこまでしろとは言ってないよ。だけど、もう少し、目線を合わせるとかしたらどうだい?そんなポケットに手を突っ込んで、見下ろすのは怖がられても当然だよ」
「少し屈んでみろよ」という二人の言葉に、仕方なく、屈んでみることに。「なんで俺が」と憎まれ口を叩きながらも渋々やってみせるが、その座り方はお世辞にも幼い子供を相手にするようなものではなかった。
「うっわ、深夜のコンビニにたむろする族じゃん。ヤンキーかよ」
「うちの優にあまり行儀の悪いことを教えないでもらえるかな?覚えちゃったら大変だ」
「お前らがやれって言ったんだろ」
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